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罪深い少女漫画たち

更新:2017.1.11 作成:2017.1.11

はじめまして、望月綾乃です。普段はロロという団体で演劇をやっています。お酒と海老とお風呂が大好きです。あ、もちろん読書も大好きです! 今月から私の本棚を皆さんに少しずつお見せすることになりました。よろしくお願いいたします。

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少女たちに夢を見せ、希望を抱かせてくれた少女漫画。辛い片思い、ようやく通じ合う思い、ライバル出現、明かされる出生の秘密……。年端もゆかぬ少女の私は、いつか現実に訪れるはずの素敵な彼との恋の指南書として、月のお小遣いのほとんどを充てた月刊誌をボロボロになるまで繰り返し読み耽っていました。自分にもこんな経験が出来るのだと、本気で信じてやみませんでした。

あれから約二十年。今でも少女漫画を読むことはありますが、あの頃のような読み方はもう出来なくなってしまいました。リアルとフィクションの折り合いをつけ、実際の恋愛と少女漫画を読む脳みそを使い分けています。だって、実際に少女漫画みたいな恋は存在しないと知ってしまったから。

少し寂しい気もしますが、現実の恋愛にも言い尽くしがたい素晴らしさがあることも知っています。大人になるってこういうことなのね、と遠くを見ながらグラスを傾け、溶けかけたロックアイスをカラン、と鳴らす日々です(誇張アリ)。

しかし、幼少期に少女漫画に没頭した代償を負い、今尚苦しめられている女性がいることもまた事実。

知り合いの女性はこう言います。「子どものころに少女漫画に素敵な恋愛を見せられたせいで、いまだに現実の恋愛に失望してしまう」、と。

彼女は少女漫画を恨んですらいるようでしたし、同時にそれは行き過ぎた少女漫画への愛の裏返しでもありました。彼女のような女性が世の中には少なくないのではないか、と想像したとき、私は改めて少女漫画の影響力の高さを思い知ったのです。

今回は、少女のころ私を夢中にさせた少女漫画作品たちの一部をご紹介します。

少女漫画の理想のヒーロー像

3ーThree 1 (フラワーコミックス)

1988年10月26日
惣領冬実
小学館
現在は青年誌で活躍されている惣領冬実さんが80年代から90年代にかけてのバンドブームの頃に描いた作品。

小学生のとき、友達の家でかくれんぼをしていたときに忍び込んだ友達のご両親の寝室の本棚で出会って以来、何度も読み返している漫画です(ページをめくった瞬間から虜になりその場を動けずかくれんぼも続行不可能となりました、私が鬼でした)。

絵の綺麗さ、物語の筆力など素晴らしいところはたくさんあるのですが、この作品の一番の吸引力は、主人公と恋に落ちる男の子、ケイの魅力にあると思います。初期の小学生にも間違われんばかりのキュートな見た目、音楽に魅了され自身のルーツを知っていく中盤の儚さ、すっかり自信をつけた終盤の俺様感(でも根底には脆さがあるのですこれ大事!!)。

物語が進むごとに見た目も中身もどんどんイイ男に成長していくケイくん。少女漫画の理想のヒーロー像をこれでもかと詰め込んだ彼の前には、もはやひれ伏すしかありません(『3-THREE-』以外にも、惣領冬実さんの作品に出て来る男の子たちのカリスマっぷりときたら、凄まじいものがあります。)。

可愛い!切ない!エロい! 

著者
相原 実貴
出版日
可愛い! 切ない! エロい! 三拍子揃った最強の少女漫画です。

作者の相原実貴さんの、「私が描きたかったのは“勉強するコトと一番になるコトしか知らない意地っぱりで可愛らしくない女のコが恋して、愛されて、変わっていくカタチ”」という言葉に、この作品のすべてが集約されていると思います。

すごいな、と思うのが、この言葉に続く、「対して●●●(最終的に結ばれる男の子)は愛して変わってくヤツをやってみたかったのでやってみたんですが、成功率は64%くらい。私的にはあんまりうまくいきませんでした。うーん、不満」というコメント。この反省ののちに、ヒット作『ホットギミック』(こちらも名作!)を生み出して、超俺様気質の強引男が主人公の女の子にメロメロになっていく様を見事に描いています。

とにかく、主人公の今日子を取り巻く三兄弟(環、美人、湛)の三人がイイ男見本市かよってくらいカッコいいのです。三人のうちの誰とくっつくのか、ハラハラしながら読んでください。

ちなみにタイトルの『SO BAD!』、単語を直訳すると、「SO(とても)BAD(悪い)」なので、てっきり「最低!」とか「最悪!」みたいな意味かと思っていたのですが、「ヤバイくらい」「たまらない」というニュアンスの口語的表現らしいです。つまり“I miss you so bad.”だと、「ヤバいくらいあなたに会いたい!」「あなたに会いたくてたまらないわ!」という意味。いつか英語圏の恋人が出来たときに使ってみたいですね。

理想と現実の、ちょうど中間地点

著者
いくえみ 綾
出版日
2008-07-18
みんなが守ってあげたくなるようなヒロイン、ピンチの時どこからともなく現れて助けてくれるカレ、ロマンティックな会話、どれもありません。少女漫画なのに! 少女漫画なのに!!!

仲がいいと思っていた友人に笑顔で駆け寄ったらいきなりビンタされたみたいな、少女漫画に夢を抱く乙女たちが一度は通る、「いくえみ綾ショック」(勝手に名付けました)を私も御多分に漏れず食らいました。え、うそでしょ、これ少女漫画だよね!?と戸惑いつつ読み返し、やっぱり戸惑い、もう一度読み返し、を繰り返し、どんどんその作品の奥深さにはまっていきました。

絵柄も作品全体に流れるトーンも登場する女の子も男の子も総じてどこか冷静、クール、ドライ。今でいうメリーバッドエンド、というのでしょうか、決してめでたしめでたしじゃないんだけど、ぐっとこみ上げるようなものがある作品ばかりです。

どの作品も好きですが、「いちごの生活」「プレゼント」「おむかいのさちこちゃん」「キスミークイック」が個人的リコメンド。「いちごの生活」は、ラスト1ページの愛おしさがたまらないです。

いくえみ綾の作品群は、あの頃、「少女漫画」から「女性漫画(いわゆるレディコミ)」への橋渡しの役割を担っていたんだと思います。理想と現実の、ちょうど中間地点。大人の階段の踊り場のような存在。

いくえみ綾さんの作品がなかったら、私は大人になれてなかったかもしれないなぁ。前述した彼女にもこの本を勧めてみようかと思います。