お笑いにハマって劇場に通ったり、うさぎにハマってうさぎカフェのため名古屋まで通ったりしている雑食ライターが、先月(2021年11月)に読んだ無数の漫画の中から【読んでよかった】と思う漫画を3作品勝手にランキングします。漫画アプリで読むことが多いので、あまりお金をかけたくないという方にもおすすめ!
先月ライターが読んで1番心に残った漫画は、単純そうに見える太線で描かれた絵柄が特徴的な『パリと私たち』。繊細さとは真逆の作画にも関わらず、登場人物らの感情表現がとにかく豊か!リアル!男女の関係性を中心とした日常を綴る淡々とした作風ですが、1話読むごとにずっしりと読者の心に訴えかけるものがあります。
距離を置いているだけだと思っていた彼氏が、結婚していた……。そのことを人づてに聞き、ショックを受けた主人公の奈々美。手につかない仕事を休職し、いつか行きたいと憧れていたパリで過ごすことにしました。
パリのホテルで体調を崩してしまう奈々美は、掲示板で薬の情報を募集。薬を渡しに来てくれた日本人の祐一と出会います。祐一は料理の勉強のため、友達の翔平と春香と一緒にパリに滞在していたのです。彼らと仲良くなる奈々美ですが、その後新婚旅行に来ていた元彼カップルにたまたま出くわしてしまいます。
奈々美をストーカー扱いするひどい元彼とその嫁と、奈々美に惹かれてゆく祐一。その祐一の妹のような存在として片想いをし続けている春香と、春香に気がある素振りの翔平。日本人の男女がパリでくり広げていく素朴な恋愛ストーリーです。
人物の内面の感情の動きを、ありありと言葉にして綴るモノローグが本作の見所。登場人物らの気持ちの落ち込み、葛藤して自分なりの解釈をしていく過程の言葉には1つも無駄がなく、的確です。主人公の思考回路を辿っていると、一般的な少女漫画に出てくる「悩んでいる私が好き」とも思えるような描写とは一線を画しているように感じます。
こんなにも客観的に、自分の感情を言葉にできたらいいなと思ってしまいました。同じような感情になったことがある人にとっては、この漫画が代弁してくれているような気持ちになるはず。
また、主人公をライバル扱いする春香のキャラクターにも注目。
祐一が奈々美に惹かれていくのに勘付いた春香は、「私と祐一の恋を応援してほしい」と奈々美に打診するような人物です。その大人げない言動に「なんて嫌なキャラなんだ!」と思ってしまうのですが、奈々美は決してぞんざいな扱いをしません。主人公が人としてできているので、読者は応援しながら読むことができます。最終的には春香も大人になるエピソードがありますので、春香にも幸せがくるよう願いたくなります。
『パリと私たち』
本作は韓国の漫画家・イゼイによるウェブトゥーンで、LINEマンガで読むことができます。
極道漫画と思いきや……「極道」の要素は、ストーリーを進めるためにほんの少し出てくるのみ。とにかくうさぎが可愛い!!!という漫画です。
飼い主が飼育を放棄し、部屋に残された瀕死のうさぎ。それを助けたのは、「神代組」というヤクザの若頭・高倉龍二でした。桜の花びらに似た模様からうさぎを「さくら」と名付け、1人と1匹の共同生活が始まります。
餌やハウスなど一式をそろえるため、訪れたペットショップ。怖い見た目であったり、餌のことを「草」と表現したりと店員さんの誤解を招きつつもうさぎ飼育の初心者として一歩を踏み出します。
目の上のたんこぶともいえる宿敵、マル暴の白鳥が登場したりなど様々なトラブルも発生。他のうさぎやうさぎを愛する人々も登場します。徐々に龍二のことを信頼して自由奔放にふるまい始めるさくらに、時に翻弄されつつ魅せられていく日々が紡がれていきます。
ヤクザという設定や優美さを感じるヤクザの風貌と、うさぎの無邪気な可愛らしさのギャップにやられてしまう本作。可愛いだけでなく、うさぎを飼うことのリアルを伝える作品です。
おまけページも充実し、正確な飼育方法の情報も学べます。加えて、無責任に動物を飼ってはいけないということも伝える漫画です。さくらも飼育放棄されて弱っているところを助けられますが、実は繊細で飼うのが難しいうさぎ。ひどく病んだ状態で放置されていたうさぎを助けた動物のお医者さんのエピソードもあります。時に涙を誘うシーンも……。
しかし、何ものにも勝る魅力はさくらちゃんのかわいさ!手足や耳の動き、喋っているかのように添えられる言葉にぴったりの表情、そのすべてに作者のうさぎ愛をひしひしと感じます。うさぎ好きなら、「この動きリアルだなあ」と感じることでしょう。さくらの少し毒気のある性格も、愛らしく思えてくるのです。
ヤクザ用語を勘違いしてしまう人が出てきたりと、コメディ要素も楽しい癒やし漫画です。猫、犬の漫画を読み尽くした!という方、「私はうさぎ派!」という方に心からおすすめできる作品です。
ウサゴク~極道、ウサギも極めます~(1)
2021/9/11
この作品の購入を検討したい方は、こちらから。試し読みもできます。
きらきらしたホログラム加工の表紙に魅せられて、ライターが思わず表紙買いしたのが『私のことを憶えていますか』。表紙のきらきらは、物語の鍵を握るスーパーボールのきらめきにリンクしています。主人公が「好きなタイプの顔」の原点である初恋を思い出し、その相手が今どうしているのか突き止めていく切なさが詰まったストーリーです。
ゴシップサイトのライターとして慌ただしい日々を送る遥(はるか)。30歳の誕生日に憧れの俳優・SORAの熱愛が発覚し、ショックを受けながらニュース記事をまとめていると、同僚に“遥が好きになる芸能人は皆顔が似ている”と指摘される。徹夜で書き上げた翌朝、好きだった人の顔を思い出すうちに18年間忘れたままだった初恋の「あの子」の記憶が蘇り……。
こんがらがったまま止まっていた恋が、時を超えて動き出す。
東村アキコ渾身の初恋物語、開幕‼
(文藝春秋BOOKS公式サイトより引用)
1巻だけの特別かと思いきや、2巻以降もそのきらきらの表紙が継続しているため買い集めることをおすすめします。全ページカラーの大判コミックのため少々お値段が張りますが、『海月姫』『東京タラレバ娘』などヒット作連発の東村アキコの最新の絵が贅沢に味わえるだけでも価値がある作品といえます。
作者の作品のなかでも『東京タラレバ娘』や『偽装不倫』のような王道東村アキコ作品が好きな方におすすめ。男女のアレコレに思い巡らせてしまう主人公の、思考回路にぐるぐると巻き込まれてしまいます。
「好きなタイプの顔ばかり好きになる」という点にも共感できる方は多いのではないでしょうか。ライターもいいなと思った人の画像を親友に見せると「あ~またその系統ね。好きだねえ」とあしらわれることがしばしば。主人公は、その原点ともいえる「あの子」=「こうちゃん」との初恋を記憶の奥底に閉じ込めていました。
あるきっかけから、その記憶のフタを開けてこうちゃんのその後を手繰り寄せていきます。そうしてたどり着く先の人物との関係性はなんともドラマティック。昨今作者がドハマりしている韓国ドラマ風の「ドラマティック」とも言い換えられます。
大人になったこうちゃんは、遥のことを憶えているのでしょうか。そして遥の同級生でワイン製造も手掛けるブドウ農家の幼なじみとのある種おきまりともいえる三角関係も……。ヤキモキする展開と、切ないシーンに心を焦らされながら読み進められる作品です。
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