女性をテーマに社会における問題を研究する歴史社会学者・田中ひかる。彼女の研究は、現在、ジェンダーの問題など世界的にも必要不可欠となっています。田中の著書である『生理用品の社会史』は、俳優の杏も自身のポッドキャスト番組にて取り上げています。そんな注目の田中ひかるの著書を紹介します。
世界的な取り組みのSDGs(持続可能な開発目標)。その1つであるジェンダー平等の動きとして、昨今注目されているのが、生理用ナプキンの無償配布です。女性の貧困が社会問題として取り上げられるようになり、公共施設や大型商業施設、また学校などを対象に取り組みが行われています。
この問題は日本だけはありません。世界的にも先進国を中心に広がっています。韓国、アメリカ、イギリス、スコットランド等でも同じような動きが始まっているのです。
発展途上国でも、女性の生理事情において新たな動きがみられる国もあります。2019年、第91回アカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞を受賞した映画『ピリオド -羽ばたく女性たち-』。この映画では、生理の問題を解決することにより、インド女性の経済的自立を促そうとする働きかけをしている人たちを描いています。
こうした女性の社会問題をテーマに新旧において研究を続け、歴史社会学者として活躍しているのが田中ひかるです。彼女は、執筆や講演などを通して、女性の犯罪や貧困などの社会問題、生理用品の社会史などについて広く社会に訴えかけています。
今回は、田中ひかるの著書を紹介。彼女がこれまで発表してきた書籍から、新旧における女性の問題、社会の流れを知ることで、これからの生き方のヒントになるような注目すべき著書を紹介していきます。
『生理用品の社会史』は、生理の歴史を振り返りながら、日本で最初に生理用ナプキンを発売したある1人の女性経営者の奮闘を紹介しています。この本は、2013年にミネルヴァ書房から出版された『生理用品の社会史―タブーから一大ビジネスへ』の文庫版です。
生理用ナプキンなどの生理用品の発展は、女性の社会進出を飛躍させるきっかけとなりました。そんな大きな貢献を果たし、この本でも紹介している生理用ナプキンが「アンネナプキン」です。この「アンネナプキン」の爆発的大ヒットにより、生理そのものの悪いイメージの払拭、経済的効果は計り知れないものがありました。
本書を注目している著名人に俳優の杏がいます。杏のポッドキャスト『JOURNEY TO THE ORIGIN』のゲストとして、著者である田中ひかるが呼ばれました。ここで、田中は生理用品の歴史、進化を語っています。
『生理用品の社会史』に紹介されている生理用品の歴史をみていくことで、日本の社会の変遷そのものを窺うことができます。そんな貴重な資料としても価値のある本です。
- 著者
- 田中 ひかる
- 出版日
1998年7月、和歌山県で起きた通称和歌山カレー事件。この事件について入念な取材をし、一冊のノンフィクションとしてまとめたのが『「毒婦」和歌山カレー事件20年目の真実』です。
事件当日、和歌山市園部地区の夏祭りで振る舞われたカレーにヒ素が混入され、急性ヒ素中毒や死亡の被害が相次ぎました。この容疑者として浮上したのが、近所に住む林夫妻。結果、2人は服役することになりました。
現在、夫の健治は刑を終え出所、妻の眞須美は今もなお、大阪拘置所に死刑囚として服役しています。そして、20年以上経った今も無実を訴えている現実をこの本は記しています。
事件当時、連日マスコミ報道が過熱していったことだけなく、証拠不十分なこと、弁護側の怠慢など、一般的に知られていない真実も本書では語られています。
この事件において日本の司法は、マスコミは、世論は。そして、今後どうあるべきなのか。本書は、我々に問いかけています。平成に起きた大事件のひとつである和歌山カレー事件。真実とは何なのか。今一度考えるきっかけをくれる本ではないでしょうか。
- 著者
- ["田中 ひかる", " "]
- 出版日
『明治を生きた男装の女医ー高橋瑞物語』は、高橋瑞という女性医師を紹介した本です。彼女は、まだ日本おいて、女性が医師免許を受けることができなかった時代にその道を切り開き、お産で失われる多くの命を無償で救いました。
この本の中では、高橋と同時期に活躍した公許女医第一号の萩野吟子、第二号の生澤久野、第四号となる本多銓子らも登場します。彼女たちもまた開拓者でありました。高橋瑞は女性の医師の第三号として資格を得ることとなり、日本橋で開業医を始めるのでした。
その際、頭を五分刈りに、男性用の和装コートである二重回しを着て人力車で往診する姿が噂となり、「男装の女医」と呼ばれました。そして、産婦人科学を究めるため、単身ドイツ留学へ。
近代、女性の医師が誕生してから135年。高橋瑞らの存在が後進へ大きな影響を与えたことは言うまでもありません。確かな目標のために自らができることを精一杯やり遂げる。こんな時代だからこそ、高橋瑞の生き方は特に心に響くものがあります。そんなことを教えてくれるのが本書です。
- 著者
- 田中 ひかる
- 出版日
「女性は生理(月経)の時に犯罪を犯す」という話を聞いたことはありませんか。たとえば、万引きをした女性が「自分は生理だから魔が差した」と言い訳をするドラマのシーンなど、以前はよく見かけたものです。
長くこの考え方が定着していた時代がありました。俗説としてだけでなく、警察での捜査や司法による裁判などでも有効とされていたのです。
本書では、なぜそのような説が一般的に広まったいたのかという背景を歴史社会学者であり、女性の月経に関する研究を続ける田中ひかるが、歴史的な資料をもとに紐解いていきます。驚くべきことに、この「月経説」により、多くの冤罪を生んでしまったという事実にも触れています。逆に月経による気分の変化を「ヒステリー」と位置づけ無罪となることもありました。
こうした歴史的な事実を振り返ることで、「女性の月経」というものを女性だけなく男性も含め、正しく知ることが大事であると本書は気付かせてくれます。現在でも年代によっては、迷信じみた定説をいまだに信じている人もいます。この本を読めば、正しく知る、理解することこそがジェンダー平等への第一歩であることがわかるでしょう。
- 著者
- ひかる, 田中
- 出版日
歴史社会学者である田中ひかるの著書を紹介しました。著書だけでなく多くのメディアでも、女性をテーマとする社会問題などを取り上げています。
彼女のそうした活動は、現代社会において、私たちが考えなければいけないことをわかりやすく教えてくれます。まずは知ることから始めてみてはいかがでしょうか。