カピバラといえば動物園などで子供から大人まで人気のあるアイドル的な存在です。日本にもカピバラに似たような動物が生息しているのをご存知でしょうか。「ヌートリア」と呼ばれる生き物です。今回はヌートリアの生態とヌートリアに関連する書籍を紹介します。
ヌートリアは南米原産の大型のネズミです。
体長60cm
体重4~5kg
日本に生息するネズミの仲間では最も大きいとされています。日本では西日本を中心に分布していて、
定着はしていないものの関東でも目撃例があり、今後分布していない地域への侵入が懸念されています。
大きな前歯が特徴的で、歯はオレンジ色をしています。
泳ぎが得意で川や湖の水辺で生活しています。後ろ足は前足より長く、第1指から第4指までの間には水かきがあり、潜水時間は5分以上も可能と言われています。
警戒心は強く、危険が迫ればすぐに水の中に入ります。
食性は基本的に草食で水辺の植物を食べますが、貝や甲殻類も食べることがあります。かなりの大食漢で、1日に体重の20%に相当する量を食べることもあります。
もともとは暑いところで生活していたため寒さには比較的弱く、冬場の活動は鈍くなります。基本的には夜行性の動物で、日中も活動することがありますが、巣穴などで寝ていることが多いです。
多くは土手や堤防等に複数の穴を掘ってそこに巣を作りますが、水面上に水生植物を集めてプラットホームという浮巣を作って暮らすこともあります。
ルートリアもカピバラも生物の分類上では「齧歯目」のため大きく括るとどちらも大きなネズミということには変わりはありません。
カピバラの特徴
この2種類を見分けるにあたって一番分かりやすいのは、体長の違いです。カピバラが1メートルを超えるのに対して、ヌートリアは50cm前後と、カピバラの方が倍ほどのサイズになります。そして、先ほど説明したヌートリアは前歯のオレンジ色もカピバラとの違いを見分けるポイントになります。また、ヌートリアには30cm~40cmほどの長いしっぽがあるのに対し、カピバラにはしっぽはありません。
一見似てると言われがちな2種類ですが、特徴的な部分が異なるためしっかりと区別することができます。
現在ヌートリアはアライグマなどと同様に外来生物法によって特定外来生物に指定されており、世界と日本の侵略的外来種ワースト100にも選ばれています。
ヌートリアが一番初めに日本にやって来たのは1907年、上野動物園が雌雄のつがいを輸入したのが始まりと言われています。
その後1939年に150頭ほど輸入され、関東~西日本で軍民で多数飼育されました。水に濡れても保温できる毛皮として、非常に質が高いとされ、ヌートリアは日本だけでなく世界各国で毛皮を目的に導入されました。
そして終戦直後と1950年代の毛皮ブームの後に、各地の養殖場から逃げ出したり、放逐されたりした個体が、現在野生に定着したと考えられています。
逃げ出したヌートリアが生態系を脅かすまで増えた理由は、その強い繁殖力にあります。
つがいになると年に2~3回、約5匹程度の子供を出産します。妊娠期間は4ヵ月と他の害獣と比較して長いのですが、生まれた子供は次の日になると泳げるようになり、半年後には出産できるようになります。
子どもは毛が生えた状態で生まれ、雌は生後約 4 ヶ月で妊娠可能となります。
このネズミ特有の繁殖力と適応力に加え、その大きさから日本では特に捕食されるような天敵がいないため個体数が年々増加しています。
1998年度に60頭だった年間捕獲頭数は2015~19年度に679~1308頭に達し、京都府の鴨川など市街地の川を泳ぐ姿も目撃されています。
現在、ヌートリアの生息密度が高い地域では餌としての農作物被害が発生しているほか、寝床を確保するため、稲を倒してしまう被害も見られます。土手が巣穴だらけにされることで田畑の畔や堤防の強度が低下するといった治水上の問題も懸念されています。
農林水産省の調べによると、ヌートリアによる農作物被害は、全国で毎年およそ1億円にもなると言われています。 見える範囲だけでの被害額なため、実際はもっと大きいかもしれません。
また、兵庫県のため池では、水生植物を食害し在来種である 「ベッコウトンボ 」の生息環境を壊滅させるなどの生態系への被害も発生しています。
水稲の被害が非常に多く、若い苗ほど柔らかくて食べやすいため被害を受けやすくなっています。その他にも畑に入り込みニンジン・サツマイモ・キャベツ等の野菜類が食害の対象となっています。
他にも電源ケーブルなどを齧って断線させるなどの被害も多く発生しているようです。
その珍しさから餌をあげる人が多く、その土地の景観を崩してしまうきっかけになっています。
- 著者
- ["ウラケン・ボルボックス", "五箇公一"]
- 出版日
外来生物たちが、なぜ日本にやってきたのか、来たくて来たわけでもない場所になぜ持ち込まれてしまったのか。
そんな彼ら外来生物の生態や歴史的な背景などを、わかりやすいイラストとマンガで紹介されています。
わかりやすい文章で書かれているため、子ども一人だけでも読むことができるようになっています。
さらには、映画やアニメ、特撮などのパロディも満載で、子どもから大人まで楽しめる一冊です。
- 著者
- ["阿部浩志", "丸山貴史", "小宮輝之"]
- 出版日
普段見かけている生き物の中には、もともとは日本に住んでいない種類のものがいたりします。
外来生物とはなにか、外来生物はなぜやってきたのか、外来生物にはどんな害があるのか、どういう対策ができるのかというしっかりとこれからどうのようにして外来生物と向き合っていけばいいのか教えてくれる一冊になっています。
今回はヌートリアについて掘り下げてきました。
人間の都合で連れてこられたにも関わらず、不要となって野生化すると駆除の対象となってしまうと言うのは理不尽とも言えます。
外来生物にされてしまったという表現の方が正しいような気がします。
住み着いてしまった以上駆除しなければならないというのは仕方ないかもしれませんが、それならばこれ以上外来生物が増えない環境づくりを心がけたいですね。