お前の地元は本当に最高か?usagi『地元最高!』底辺女子の絶望ライフ

更新:2023.1.18

Twitterで公開されると同時にバズり、更新の都度トレンド入りを果たす漫画『地元最高!』。 本作は地元こそ最高と信じてやまない頭のネジがとんだ女の子たちが、様々な犯罪行為の傍ら、愉快な仲間たちと楽しく暮らす日常系漫画です。 今回は『地元最高!』のあらすじや魅力を、ネタバレを交えご紹介していきます。

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『地元最高!』の簡単なあらすじ・キャラクター紹介

舞台はとあるスラム街。

主人公の紗音琉(しゃねる)は友人のちひろと共にシャブを売るおにぎり屋で働いたり、よそで盗んだ片方だけの靴を売りさばいたりし、明るく楽しく暮らしていました。

紗音琉の母親は外泊が多く、まだ幼い妹・可子(ここ)を代わりに養わなければいけません。そこで紗音琉は反社の姉貴分・紅麗亞(くれあ)を頼り、仕事を紹介してもらいました。

紅麗亞が斡旋してくれた仕事は大麻、もとい希少種のアサガオの栽培。

仕事場にはアル中シャブ中のこはるがおり、初対面の挨拶からして頭が高いとメンチを切り、たびたび流血沙汰のパワハラ指導を行います。可子を人質にとられた紗音琉は嫌とも言えず、なし崩しに泥沼に沈んでいくのでした。

貧困と暴力の連鎖!きららの極北のアンチ日常系漫画

『地元最高!』はTwitter発の漫画。毎週土曜の夜に更新され、そのたびトレンドを埋め尽くすほどの人気を博しています。

各業界の注目度も高く、裏社会ライターの丸山ゴンザレスが単行本一巻発売を記念し、YouTubeチャンネル『裏社会ジャーニー』内にて担当編集者の草下シンヤ氏と対談しました。

『地元最高!』の舞台は明言されてません。日本のどこにでもある、県庁所在地じゃない荒廃した町をイメージしているそうです。

作者のusagiは本作を描くにあたり、地方の貧困女子を主人公に据えました。DQNネーム改めキラキラネームの主人公、紗音琉からして壮絶な半生を歩んでいます。

最終学歴は小学校中退、漢字もまともに読めません。住んでいるのはゴミ部屋と化した集合住宅の一室。

炊飯器の中のご飯は真っ黒にかび、パンの賞味期限は当たり前に切れています。

これには遊びに来た友人もドン引き、即回れ右。

上記のように悲惨な生い立ちを挙げていけばきりがなく、分厚い不幸カタログができあがります。

一見きゃぴきゃぴした女の子たちのアングラな生活を描く『地元最高!』は、まんがタイムきららの極北に位置付けられた日常系漫画。

紗音琉たちがやるのはガールズバンドでもキャンプでも登山でもなく大麻の栽培と売買、捕まればおしまいです。

破滅と紙一重のギリギリの毎日を生きながら、アホの子・紗音琉はユル~い感じの明るさを失わず、弱肉強食の世の中をこすっからく渡っていきます。

停滞と絶望と閉塞感と。

地元しか知らないが故にどん底が最高と信じて疑わない彼女たちのライフスタイルは、「無知こそ救い」の真理を体現しているようで、ヒリヒリハラハラ目が離せません。

可愛いキャラデザが生み出すエグいギャップにKO!

第二に挙げる魅力は、アウトローを地で行くキャラクターが宿す乙女心。

紗音琉は金髪ツインテ―ルに真っピンクのジャージを合わせ、サンダルもピンク。見た目黒ギャルの紅麗亞は飼い猫のモモをちゃんを溺愛し、目元に肉球タトゥーを入れています。

初登場時から一升瓶で床ドンし、凄まじいインパクトを与えたこはるに至っては、黒髪お姫様カットににゃんこのヘアピンをしていました。

ことキャラデザに関していえば、彼女たちはとてもキュート。ですがお古のジャージだったり背中の和彫りだったり饐えた残尿感だったりが、その存在を残念なものに変えています。

余談ながら『地元最高!』の登場人物は全員20歳以上とされています。紗音琉とちひろの元同級生が登場するエピソードでは、彼女が参加した修学旅行に言及されていますが、それでも20歳以上だそうです。不思議ですね。

紅麗亞は地元で幅を利かす反社グループのリーダー、こはるは大麻のグロワー。

ただのオッサンだったら絵面的にキツいことも、見た目美(少)女がやればシュールなギャグとして受け入れられます。

しかも肉球タトゥーやにゃんこヘアピン、ピンクのボンボンなどの女児精神アピールで、かわいい=怖い=ゲスいが循環するギャップ萌えの製造に成功しました。

根性焼きをする時ですらハートマークにこだわるのですから、彼女たちの「kawaii」は気合の入り方からして違います。

『ハンバーガーちゃん』ぬこー様ちゃんを筆頭に、作者(成人男性)を美少女化したエッセイ漫画が近年台頭してきましたが、『地元最高!』も当該ジャンルに分類可能かもしれません。

それ位『地元最高!』の女子率は高く、フィクションとリアルの境が曖昧なのです。

おにぎり屋でシャブ取引?裏社会トリビアを学べる

『地元最高!』は裏社会トリビアを学べる漫画としても役立ちます。覚せい剤を吸うには鍵に盛るのが一番いい、なんてここでしか教えてくれません。

第一巻には紗音琉とちひろが働くおにぎり屋のエピソードが収録されています。

この店のおにぎりは味とボリュームに定評があり、一般人のサラリーマンも常連として通っているのですが、ある時裏メニュー「山菜おにぎり」の存在を知った彼は、好奇心をおさえれきず注文。

紗音琉たちの前で思いきり頬張った所、中からビニール袋に包まれた覚せい剤がでてきました。

草下シンヤ氏曰く『地元最高!』には作者と担当の実体験が盛り込まれており、山菜おにぎりがシャブの隠語として使われたのと同様に、おでんの具を注文する順番が売り買いの符丁だったそうです。

このように『地元最高!』は、『闇金ウシジマくん』にも通じる裏社会の知識や雑学に事欠きません。

主要キャラが女の子なのでウシジマくんより多少読み味がマイルドですが、パチスロ狂いの母親に性的な意味で売られそうになる幼女など、出てくる人間のクズさゲスさは負けず劣らず。

気になる人はぜひ手に取ってください。

著者
usagi
出版日

『地元最高!』を読んだ人におすすめの本

『地元最高!』を読んだ人には同世界観の漫画、『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平)をおすすめします。

本作はドラマ化・映画化もされた人気漫画。闇金融の経営者・ウシジマを主人公に、負債が膨らんだ人々が堕ちていく姿を赤裸々に描き、読者を震え上がらせました。

『日常系ウシジマくん』と一部で称されている『地元最高!』と読み比べても楽しそうですね。

著者
真鍋 昌平
出版日
2004-07-30

また、刑務所日常漫画『ごくちゅう!』ともよくコラボを行っています。

『地元最高!』がスラムの日常漫画なら、こちらは女子刑務所の日常漫画。紗音琉たちのIFルート、あるいはその後を見ている気分になります。

著者
["こんぱる&ふじしまぺポ", "草下 シンヤ", "雨宮"]
出版日
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