作家サン・テグジュペリの小説「星の王子様」に星を爆発させる恐ろしい木として登場したり、ディズニー作品「ライオン・キング」にも登場する大きな植物「バオバブ」。アフリカを映し出す映像などでみなさんも見かけたことがあるかと思います。

アフリカ大陸に生息するアオイ科バオバブ属とする落葉高木で、世界で最も幹が太くなる植物といわれています。
アフリカ・マダガスカル地方にはバオバブ街道という並木道もあるくらい、現地民に親しまれている植物です。
「バオバブ」という名前の由来はいくつか説があるようですが、アラビア語で「たくさんの種の父」という意味する「ブー・ヒバフ」という言葉がもとになったといわれています。その特徴的な形から、本来は土の中に生えている根が、上へ上へと伸びているようで、まるで木を逆さにして地面に挿したように見えることから「さかさまの木」とも呼ばれています。
一般的に木がどれだけ生きてきたかは、年輪を見て判断しますが、成長とともに年輪は消え、さらに古いバオバブほど内部に巨大な空洞ができているため、正確な樹齢は確認されていません。ただ、世界最大のバオバブは、放射性炭素年代測定法という方法で樹齢6000年と推定されています。
バオバブの仲間は世界で11種(そのうちマダカスカルの固有種が8種)が知られています。環境によって形が変わるため、ずんぐりとしたものや、細い形をしているものがあります。
マダガスカルはアフリカ大陸の東側にある島国です。その面積は日本の約1.6倍といわれ、バオバブは暑くて乾燥した地域に生えています。
乾燥して植物が育ちにくい環境のなかでも、バオバブは幹の中に大量の水分を蓄えることが可能です。大きい個体でなんと5t~10tもの水分を貯めることができると言われています。この木に貯められた水は現地住民や動物にとって貴重な資源となります。
花を咲かせるのですが、一般的に花が咲いて24時間以内に枯れてしまうため、咲いている姿を見るのは難しいそう。
バオバブの木は現地では余すことなく使われ、葉はたんぱく質を含み、果実にはビタミンが豊富なため、これらは食料として利用されています。実を割ると種を覆っている白い粉の部分があり、その粉はジュースやジャム、シャンプーなどにも混ぜて活用されています。
そしてその大きさから固い樹皮をしているようにみえますが、実際は軽くて柔らかいという特徴を持っていますロープや家の壁などを作る際にに使われます。
また、バオバブの木は現地民の家を雨や風から守るなど、現地住民の暮らしを支える存在としても欠かせないものとなっています。
バス停などとしても利用されることがあるそうで、街のシンボルのようなものとしても機能しています。
アフリカ特有の植物ではあるものの、日本国内でもバオバブの木を見られる場所は、いくつかあることをご存知でしょうか?
日本一太い幹のバオバブを育てているのが、広島市植物公園です。推定樹齢400年で、幹の高さ3.5メートルで幹の直径の長さは2mほど。オーストラリア北西部のカナナラの原野に自生していたものを根っこから掘り起こし、海上輸送などを経て、運ばれました。
また観賞用に盆栽や観葉植物などとして育てることもできます。あんなに大きなものを家の中で育てられるの?と疑問に持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の気候では巨大化しにくいそうです。
- 著者
- 堀内 孝
- 出版日
20年以上マダガスカルに通い、各地のバオバブを調べて撮影してきた写真家 堀内孝氏。
“1990年からアフリカのマダガスカル島を訪れ、貴重な動植物や人びとの暮らしを撮影。1996年からは、中国、東南アジアを訪れ、少数民族の暮らしや手仕事の取材を続ける。”
という紹介があるようにバオバブの生態に迫った一冊です。
- 著者
- ["蟹江 節子", "繁, 吉田"]
- 出版日
吉田 繁 氏が撮影、蟹江節子氏が作者となった一冊。
ゴンドワナ大陸の忘れ形見といわれ、アフリカ、マダガスカル、オーストラリアに今も生きる「バオバブ」の奇妙で美しい姿をとらえた不思議な写真集です。
蟹江氏は世界各地の巨樹や森の取材を重ね、「世界の巨樹を見に行く会」でのツアーも行っているそうです。
- 著者
- サン・テグジュペリ
- 出版日
- 2015-11-16
作中では、バオバブが星を爆発させるおそれのある“恐ろしい木”として登場します。
“世界中の言葉に訳され、70年以上にわたって読みつがれてきた宝石のような物語。”
という紹介があるように大人になってからでも読みたくなるような、親子で大切にしたい一冊です。
今回はバオバブの生態についてご紹介しました。日本ではなかなかその大きさを体感することはできませんが、遠いアフリカでは温暖化によって次々とかれてしまっているそうです。現地民の生活を支える植物でもあるため、少しでもバオバブが生息しやすい環境が整うことを願うばかりです。