次にくるマンガ大賞2位!ちょっと変わった女子高生の日常『ルリドラゴン』の魅力と考察

更新:2025.1.30

『ルリドラゴン』は「週刊少年ジャンプ」電子版などで連載中の作品。突然ドラゴンの体質に目覚めた女子高生が主人公で、「ジャンプ」としては非常に珍しい日常漫画となっています。 本作は連載開始前から注目されており、「次にくるマンガ大賞2024」でWebコミック部門第2位に選ばれるほど評価も人気も高い作品です。どういった点が面白いのか、作品の魅力や考察でご紹介していきます。

小説も漫画も映画も基本雑食な、しがない物書き。温故知新で古典作品にもよく触れるようにしています。
泡の子

3行でわかる記事の内容

  • ある日突然、ドラゴンのツノが生えてきた女子高生が主人公
  • 変な体質に四苦八苦しつつゆるい日常を送っていく
  • 「ジャンプ」には珍しい日常漫画で「次にくるマンガ大賞2024」第2位

漫画『ルリドラゴン』とは?

『ルリドラゴン』は電子版「週刊少年ジャンプ」およびアプリ「少年ジャンプ+」で隔週連載されている少年漫画。

本作は主人公のルリに突然ツノが生えて超常能力が覚醒、実は人間とドラゴンの混血だったことが判明するも、特に劇的なことは起こらず体の変化を受け入れながら日常生活を送る現代ファンタジーコメディです。

元々は2020年12月発売の「少年ジャンプGIGA 2021WINTER」に掲載された同名の読み切り作品でした。その後、2021年9月にジャンプ公式YouTubeチャンネルに投稿されたボイスコミックで再注目(現在再生数は300万回を超えており、同チャンネルのボイスコミックで最多)され、2022年6月から「週刊少年ジャンプ」本誌にて正式に連載がスタートしました。

連載開始前後で大きな話題となった『ルリドラゴン』ですが、作者体調不良のため2022年8月から無期限の休載が発表。約1年半後の2024年2月、連載の再開と掲載媒体の移行が告知されて現在に至ります。

休載期間もあって既刊が1巻のみ(最新第2巻は2024年9月4日発売)にもかかわらず、本作は読者人気や業界での評価が非常に高いです。2023年には「全国書店員が選んだおすすめコミック2023」1位、「このマンガがすごい!2024」オトコ編9位に選出され、2024年も「次にくるマンガ大賞 2024」Webマンガ部門2位に輝きました。

このように近年の少年漫画でも特に注目度の高い『ルリドラゴン』。本作のどういったところが面白いのか、何が読者を惹きつけるのか、作品の内容に絡めて魅力をご紹介していきます。

ある朝、ツノが生えているのに気付いた!漫画『ルリドラゴン』のあらすじ

青木瑠璃(ルリ)はこれと言った特徴のない平凡な女子高生でした。ところがある朝、目覚めると額に2本のツノが生えていたことから、彼女の人生が一変します。ルリは世にも珍しい人間とドラゴンの混血だったのです。

最初こそ狼狽えたルリですが、周囲の温かい理解(とその裏の母親の奔走)のおかげで平穏無事――ゆるくてちょっと不思議、でも誰もが似たような経験をする普通の日常を送るようになります。

漫画『ルリドラゴン』登場人物紹介

主人公はルリこと青木瑠璃。15歳の高校1年生です。目力が強いと言われるほど目に特徴があり、ドラゴンの体質が発現してからは瞳孔が蛇のように縦長に変化して、さらに目の印象が強くなりました。変化前から特徴的だと思われていたのは、無意識に眉間にしわを寄せて睨むように人を見る悪癖のせい。

見知らぬ人との対人関係と名前を覚えるのは苦手ですが、人付き合い自体はいいという、良くも悪くも普通の少女。一際目を引くツノが生え、ドラゴンなのが知れ渡ってからは他人に注目される機会が急激に増えて、本人は困惑しつつも半ば強制的に苦手意識を克服するきっかけになっています。

ボイスコミックおよびコミックス発売記念PVでは、ルリ役を声優・小見川千明が演じました。

そんなルリの母親が青木海(うみ)。常に飄々と構える大人の女性であり、ルリに対してはドラゴンなのが判明してもやや放任気味……なのは表面的な印象で、実際にはルリの体質に関する根回しを人知れず行っています。おそらく娘に心理的負担をかけなさせないための親心。大阪出身でノリが良いためか、ルリとは親子というより姉妹くらいの距離感です。

海役は読み切りボイスコミック版が赤星真衣子で、のちに名塚佳織へ交代。

ルリの良き理解者で支えてくれるのが、ユカこと萩原結香(ゆか)です。中学時代からの友人で、ドラゴン化とは関係なく気を遣ってくれます。ルリが日常を送れるのは彼女のおかげと言っても良くて、ある意味ルリの母・海より保護者。

ユカのボイスコミックの声優は読み切り版が春木めぐみ、連載版は立石みこです。

そしてルリがドラゴン化移行によく関わるクラスメイト、神代藍莉(かしろあいり)と前田赤利(あかり)。

神代は黒髪&ピンクのツートンカラーのツインテールが印象的な陽キャ女子です。ルリとはお互い苦手なタイプと思い込んでいましたが、すぐ仲良くなって一緒に勉強することもしばしば。

前田は思ったことをはっきり言う少女で、面と向かってルリを苦手と言い放ち、クラスの中ではほぼ唯一距離を置いています。一応、彼女なりの理由があるようで……。

ドラゴンの体質とは?『ルリドラゴン』のルリに隠された9つの秘密

主人公ルリは人間とドラゴンのハーフです。物語開始時点でドラゴンの性質が発現まで本人も気付いてなかったため、基本的な肉体構造は一般人と大差ないはずですが、理屈は不明ながら劇中では少しずつ覚醒していく様子が描かれます。

体質その1、ツノ。おでこより少し上の頭部に、おそらく皮膚から直接突き出す形で生えてきました。硬質で鉄に似た質感らしく、触ると冷たいようです。見た目通り鋭いようで、ルリが他人に当たらないよう気をつけていたり、ふざけて消しゴムを突き刺したりする描写があります。

体質その2、火を吹く能力。文字通り口から結構な勢いの火炎を吐き出します。くしゃみがきっかけで発現し、初めて出た時にルリは口内を火傷し、血を吐きました。のちにドラゴンの生命力で回復し、ある程度制御出来るようになって克服。

体質その3、放電。ドラゴンは静電気を溜め込む帯電体質らしく、体内の静電気が漏れる形で発現しました。本家の龍が雲の中で暴れて雷として発散するように、ルリも運動で血流を良くして意図的に放電を起こしてコントロール可能に。

まだ単行本化されていないので詳細は伏せますが、現在はさらにもう1つ体質が判明しています。ドラゴンの能力としてはややマイナーで、年頃の女の子にはちょっとかわいそうな体質です。

海曰く、すべて遺伝しているか不明なものの、こうしたドラゴン由来の体質・能力は全部で9つあるとか。他にドラゴン関係でありそうなものと言えば、能力だと飛行や冷気、風を起こす……体が変化するものだと尻尾が生える(読み切り版ではツノが増加)、辺りでしょうか。

日常生活を送る上で突然発現するのは厄介極まりないですが、ルリは友達の提案もあって、謎に満ちたドラゴンの生態を自分たちで研究しようと前向きに捉えます。

ちなみにタイトルの『ルリドラゴン』ですが、単純に考えれば「ルリ+ドラゴン」。ルリという女の子の名前は別段珍しくないものの、ドラゴンと組み合わせるとインパクト抜群になるのが面白いです。

――と、面白いで終わってもいいのですが、実はちょっと深読みするとタイトルと主人公の名前の由来が浮かんできます。

英語で「小さい」を意味する単語「Little」。通常はリトルと読みますが、ラップなどのスラング(俗語)で「Lil」と略すことがあり、その場合は「リル」と発音します。「リル」をひっくり返せば「ルリ」……。

つまり『ルリドラゴン』および主人公ルリの名前は、「リトルドラゴン(小さなドラゴン、ドラゴンの子供)」が由来だと考えられるわけです。

漫画『ルリドラゴン』の魅力

本作のジャンルは「週刊少年ジャンプ」では珍しい日常系。魅力はいくつかありますが、特に優れていてキャッチーなのは主人公ルリの可愛さでしょう。

目力が強いとも言われる特徴的な目、色々な角度からフォーカスの当たる印象的な口、シーンごとの感情が伝わってくる髪の毛の表現。それらを総合した、コロコロとよく変わるルリの生き生きとした表情が読者の心をガッチリと掴んでいます。

ドラゴンとしての生態が少しずつ明らかになる、ルリのドラゴン化に関連した展開も興味深いです。

連載誌が「週刊少年ジャンプ」なので、アクションや謀略があるのでは……と思ってしまういますが、本作にそういった要素は一切ありません。ドラゴンの体質の発現をきっかけとして、本人の成長や他人との関わり方を描いているのがポイント。

悩んで、頑張って、でもだらけてしまって落ち込んで、また立ち直る。それはドラゴンのハーフかどうかに関係なく、普通の学生が当たり前に経験し、感じることばかり。普遍的なせいで陳腐になりがちなテーマながら、ドラゴン化という異質な切り口でワンクッション挟んでいるのがいい効果を生んでいます。

能力によって良くも悪くも注目され、それによって生まれたコミュニケーションで新しい関係が繋がり、視野と世界が広がる。これをそのまま漫画でやると斜に構えてしまいそうになりますが、ドラゴン化が軸になっているおかげで、主人公や周囲の変化をすんなり受け入れて共感しやすいのです。

普通ではない状況なのに、普通より普通な高校生の青春が非常にエモく感じます。

漫画『ルリドラゴン』考察

『ルリドラゴン』はそのまま読んでも面白い作品です。しかし、各話にちりばめられた要素を考えながら読み進めると、さらに深く作品を楽しめます。人それぞれ違う解釈の出来る内容ですが、ここでは筆者独自の視点の考察をご紹介しましょう。

まず大前提として、公式の見解ではないので作者の想定したものとは違う可能性があります。あくまで自分なりの考察をするためのとっかかりとしてください。

魅力のパートで少し触れましたが、本作にはドラゴンの性質発現をきっかけとして、無数のコミュニケーションが生まれています。母親の根回しやおおらかな世界観なのもあって、基本的には好意的(またはポジティブな意味での興味)。ですが、そんな中でも未体験の現象だからこそ、やや無遠慮な台詞がちらほら出てきます。

「そのツノ何?」、「なんで急に生えてきたの?」などなど。あるいは言葉にはしなくても、じろじろ見てくる者は少なくありません。あまりにもデリカシーに欠ける行動にはルリもムッとしますが、彼女と母親の海はそれらに対して言葉や態度で説明し、理解してもらおうと努めていきます。

この構図は、ドラゴン化を現実にある障害問題や人種差別に置き換えても違和感がありません。つまり『ルリドラゴン』とは、身体の変化に対して本人も周囲も異物を理解して許容し、受け入れていく多様性を模索する物語であり、差別・偏見に真っ向から取り組む作品と見ることが出来るわけです。

ドラゴン化そのものも、フランツ・カフカの『変身』へのオマージュとも考えられます。ある朝グレゴール・ザムザが目覚めると、体が巨大な虫になっていた――というあらすじはあまりにも有名。『変身』は虫になったせいで人間関係が変わり、本人と家族の運命が変わるお話ですが、それらはある種の障害と障害者差別問題の比喩とも言われています。

ルリが自身の体の変化に気付いたのも、グレゴール・ザムザと同じく朝目覚めた時でした。もしこれが偶然ではなく意図的なものだとしたら、変化を許容して歩み寄る『ルリドラゴン』の物語は、差別によって関係が崩壊する『変身』へのアンチテーゼ(反証)になっているのかも知れません。

完全に余談ですが、第6話の扉絵でルリがしている構えは、仮面ライダークウガの変身ポーズだったりします。これは『変身』になぞらえた意味深なパロディなのか、あるいは単に作者の趣味なのか……。

閑話休題。差別・偏見が本当に本作のテーマかどうかは、ちょっと穿った見方の可能性はあります。ただルリ自身の内面の問題と体質発現、わだかまりの解消と体質解決が奇妙に一致しているので、少なくともコミュニケーションによる理解と受容に関しては、作品全体の大きなテーマになっているはずです。

考察とは少し話がズレますが、『ルリドラゴン』と「週刊少年サンデー」で連載されている『尾守つみきと奇日常。』が似てると言われることがあります。両者は奇しくも「次にくるマンガ大賞2024」受賞作(Webマンガと一般コミックで部門は異なりますが)。

結論から言うと、『ルリドラゴン』と『尾守つみきと奇日常。』はまったく違った作品です。

要素だけ抜き出すと、どちらも主要人物が人間ではない存在で、日常的な高校生活を送るという点は共通しています。しかし、作中で描かれている内容まで見ていくと違いは明確。

『ルリドラゴン』は現代に近い世界観で、そこでは異質なルリの変化と対人関係に焦点を当てた、一種の成長物語です。一方の『尾守つみきと奇日常。』は多数の人間ではない存在(幻人)が社会的に認知されており、各キャラの幻人としての個性を多様性としつつ、淡い感情をコメディタッチで綴る青春群像劇となっています。

表層的に一部似ている部分はあっても、読んだ時の感覚はまるで別物です。とはいえ近しいものはあるので、『ルリドラゴン』と『尾守つみきと奇日常。』のどちらかが好きなら、おそらく両方楽しめるでしょう。

漫画『ルリドラゴン』の連載版と読切版との違い

概要でさらっとご紹介しましたが、本作は元々読み切りの短編作品でした。読切版の基本的な流れは連載版第1話とほぼ同じ(周囲の好機の目は連載版より露骨)ですが、初めて火を吹くくだりからの展開は完全に別物です。

まず母親の海がとてもドライ。連載版ではなんだかんだ言いつつ、実は会社を休んでまで奔走していたことが描かれました。一方の読切版の海は、普通に会社へ行って放課後まで放置という薄情で変わり者の母親でした。

連載版は第2話でルリが嫌がったため実現していませんが、読切版の後半ではルリと海が山中に住む父親に会うために遠出します。

そして実際に対面も実現。本編だとシルエットでボカされて細部が不明ですが、こちらははっきりと登場します。住居の神社の建物(どう見ても入れないので奉られている?)と同じくらい巨大な四つ目で、トゲトゲしいツノと牙が生えたドラゴン。

ルリにギリギリアウト気味の質問を投げかけられ、狼狽える様子は娘との会話に四苦八苦する父親そのままで、本編とはまったく違う味わいですがこれはこれで愉快です。

読切版は現在のところ単行本には未収録。どうしても読みたいなら、「ジャンプGIGA 2021WINTER」を買うしかありません(手軽なのは各種電子書籍のバックナンバー)。

もしくは読切版を元にしたボイスコミックがまだ公開されているので、そちらで視聴してみるのもおすすめです。

漫画『ルリドラゴン』おすすめエピソード:知らなければわからない【1巻ネタバレ注意】

ツノが生えてくるという前代未聞の異変が身に降りかかっても、なんとなく学校へ登校してしまったルリ。ツノ以外何事もない……と思いきや、授業中にくしゃみをして口から火を吹いてしまいます。一歩間違えば大惨事でしたが、幸い本人の口内火傷と前の席の男子の後頭部(の髪の毛)が少し焼けるだけで済みました。

周囲への影響と体調を考慮して、火炎放射を制御出来るまでしばらく休むことにしたのですが……数日であっさり克服。それはそれで済んだものの、年頃の学生にありがちな性質でうっかりだらだら過ごしてしまい、ルリは1週間ぶりの登校で苦労することになります。

各教科の1週間分の遅れ。そのブランクはルリにとって想像以上に重く、ユカからノートを借りてもちんぷんかんぷんでした。そこへ救いの手を差し伸べてくれたのが隣の席の神代藍莉。

神代は髪の一部をピンクに染めたツートンカラーの少女で、見るからに目立つ陽キャ女子でした。ルリの苦手なタイプでしたが、実は神代も同じでお互い様。神代は苦手を苦手なままにするのを良しとせず、これをきっかけに仲良く出来ればいい、と思って話しかけたと言います。

そうして神代はルリの心を動かしますが、同時に成績優秀なのも発覚。彼女は放課後に勉強会を主催してルリを学業面で支えつつ、今時の女子高生らしい健全な友達付き合いを出来るように導いていきます。

見た目に反して――と言うと少し失礼ですが、神代の人生観といい子っぷりにちょっと感動します。苦手意識が先行するのは仕方ないとして、よく知らない相手でも話してみれば案外なんでもないし、むしろ気が合うというのは珍しくありません。

頭ごなしに決めつけず、何事も知ることから始めた方がいいなと思える素敵なエピソードです。ルリやユカと違って、ぐいぐい行くタイプの神代が引っ張って、仲良くスタバをエンジョイする様子に和みます。

漫画『ルリドラゴン』おすすめエピソード:仲良くならなくてもいい【2巻ネタバレ注意】

火炎放射の騒動も落ち着いて、ルリが再びクラスに馴染んできたある日。ルリは神代の友人・前田赤利から、あからさまに避けられていることに気付きます。

悪意は感じないのでただただ戸惑うルリ。同じころ、テスト範囲を早めに教えることを条件に、彼女は担任の先生から人手不足の体育祭実行委員に誘われました。神代のサポートがあるとはいえ、1週間分のハンデを埋めたいルリには魅力的な申し出です。

そうして体育祭実行委員になったルリですが……もう1人のクラス代表がなんと、前田でした。ルリに問いただされた前田は、他人に無関心なところが気に入らない、ときっぱり拒絶。もやもやしたものを抱え込んだルリは、実行委員なのを利用してあえて前田と接点を増やし、本心の探りを入れていきます。

意外というか、改めて話してみると、前田は悪い印象の女子ではありませんでした。ただ物言いが直接的で、端から見たルリをネガティブに捉えていただけで。彼女は自分から歩み寄り、嫌いなままで構わないから委員会の間だけでも仲良く協力しようと提案し、和解します。

べたべたして肯定し合うだけが人間関係ではない、というのは友人同士が最小単位になっている、高校生の狭い社会観ではなかなか気付けません。その点、このエピソードでは神代との経緯が良い経験となり、ルリの精神的な成長が垣間見えます。

何がなんだかわからなくて、知らないからなんとなく嫌――経験のなさから来る、未成年特有のふわっとした忌避感の空気が上手く描写されています。それを周囲の善意で受け入れられてきたルリが、自力で解決するのが見事。

ルリが真正面から切り込んだことにちゃんと意味があって、前田の態度が徐々に変化していくのも見所ですね。第2巻ラストでもすでに片鱗が出ていますが、単行本未収録の連載分(第3巻の範囲)では前田の行動にちょっと感動します。

作者・眞藤雅興

『ルリドラゴン』の作者は、鹿児島県出身の眞藤雅興(しんどうまさおき)です。1998年8月3日生まれ、現在26歳の若手漫画家。

詳しいプロフィールは非公開となっていますが、商業デビューは2016年の「JUMPトレジャー新人漫画賞」で短編『Twin Peach』が佳作とグランドトレジャー賞に選ばれたことがきっかけです。同作は2017年「ジャンプX(クロス)」vol.1に掲載されました。

さらに「週刊少年ジャンプ」本誌の「金未来杯」で短編『除冷師 煉太郎の約束』がグランプリを受賞(2017年9月発売の「週刊少年ジャンプ」41号に掲載)。

その後、短編を1本経て『ルリドラゴン』読切版を2021年に発表、2022年『ルリドラゴン』の連載を開始して現在に至ります。

作者本人がまだ若く、作品数は多くありませんが、個性的かつ魅力的なキャラクターをしっかり描き分けている画力が秀逸。誇張の入った表情の魅せ方が素晴らしくて、ともすれば作画崩壊や別人になりかねないところを、絶妙なバランスで成立させているのが凄いです。

特に読者の間で評判なのが口。作中でルリをはじめとした女子の口(口内)周りの描写がよくあり、それが生き生きとした感情表現に繋がっているのですが……あまりにも頻度が高いため、作者は口フェチなのではないかと邪推されえいるほどです。

ちなみに先日あった「次にくるマンガ大賞2024」の受賞コメントにて、作者本人は口フェチ疑惑を否定しています。ただ、そこで改めて「女の子の部屋着フェチ」なのが明かされました。

商業デビューとなった2つの受賞作はどちらもバトルもの。「週刊少年ジャンプ」では非常に珍しい、日常系漫画の『ルリドラゴン』とは方向性がまったく違います。

連載にこぎ着けるまでの積み重ねか、表に出していなかった引き出しがあったのか、他にも作品の引き出しがあるのか……『ルリドラゴン』の今後の連載はもちろん、眞藤雅興の別の作品にも期待がかかります。


『ルリドラゴン』は現在も絶賛連載中。漫画アプリ「ジャンプ+」なら全話初回無料で読めるので、興味が湧いたらまずはそちらから読んでみるのがおすすめです。

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