2025年TVドラマ化!『今日のさんぽんた』は脳天気な飼い主に犬がツッコミを入れるお散歩コメディ

更新:2025.2.24

『今日のさんぽんた』は「ゲッサン」と作者公式X(旧Twitter)で連載されている日常コメディです。主人公が散歩中、飼い犬に話しかけるだけのゆるいショート漫画。言葉が通じない一方通行のシュールな笑い、ノスタルジックな内容がSNSを中心に大ウケしました。 その人気から2025年に実写ドラマ化が決定した『今日のさんぽんた』。この作品のどんな漫画で、どういうったところが面白いのかを紹介していきます。

小説も漫画も映画も基本雑食な、しがない物書き。温故知新で古典作品にもよく触れるようにしています。
泡の子

3行でわかる作品と記事の内容

脳天気な少女りえ子と飼い犬のポン太が散歩する日常を描いた作品

くだらない飼い主の一方的な会話に心の中でツッコむ太の図が面白い

2025年2月21日からFODなどで実写ドラマが配信予定

漫画『今日のさんぽんた』概要紹介

『今日のさんぽんた』は田岡りきが2020年2月から、X(旧Twitter)で発表しているショート漫画です。

ちゃらんぽらんな飼い主りえ子と、(犬にしては)しっかりしている柴犬ポン太が特にあてもなく散歩をするだけのお話。人間と犬のコンビなでコミュニケーションはりえ子からの一方通行ですが、りえ子の発言に対して心の中でツッコミを入れるのがお約束となっています。

月刊漫画誌「ゲッサン」で2020年に読み切りが掲載された後、それが好評だったため作者のXアカウントで連載がスタート。その後、少し遅れて「ゲッサン」誌上でも平行して連載が始まりました。

何か劇的な出来事が起きるわけではなく、物凄く耳目を集める展開があるわけでもありません。SNSで公開されている本作は、変わっているのに変わらない日常にちょっとくすりと笑って、共感する読者が続出して大バズり(爆発的人気)しました。

そんな『今日のさんぽんた』ですが、2024年11月に実写ドラマ化が発表。地上波ではなく放送は有料チャンネル「フジテレビTWO」、インターネットではFOD独占で2025年2月21日から配信される予定です。主演は新谷ゆづみ。

漫画『今日のさんぽんた』は一方向のやりとりが楽しい日常【あらすじ】

この春から、大学へ通うことになったりえ子。彼女は柴犬のポン太を家族に迎え入れて以来、散歩に連れて行くのが仕事になっていました。実家を出るという事情もありますが、ポン太ももう11歳なので若くありません。

引っ越しの直前、りえ子は最後の散歩のつもりでポン太を連れ出します。10年以上通ってきたいつもの散歩道や抜け道。変わってないつもりでも、記憶の中の道とは微妙に変化していました。なんとも言えず、しんみりしてしまうりえ子。

……が、それから数ヶ月後の夏。りえ子は夏期休暇で普通に帰ってきて、そこからもちょくちょく実家へ顔を出して、ポン太の散歩を続けることになります。

漫画『今日のさんぽんた』登場キャラクター紹介

本作はメインキャラクターである1人と1匹が中心になって話が進みます。というか、彼ら以外のキャラクターはほとんど登場しません。

主人公はポン太の教育係兼散歩係のりえ子。家族やポン太には自信満々で、なんでも根拠なく強気で話す(関西弁)内弁慶気味の少女です。あまりポン太に話しかける時は非常に表情豊か。頭はさほど良くないようで、集中力がなくて学校の勉強についていけなかったり、忘れっぽい様子がしばしば描かれます。

作中の時系列は前後関係なくバラバラなため、その時々でりえ子の見た目が若干変わります。ポン太と初めて出会った時は小学2年生で、大学3年生の姿まで出てきます。外見はずっと化粧気も飾り気もないですが、セミショートの髪の長さだけは変わりません。

そして『今日のさんぽんた』の主役と言って良いのがポン太です。ころころとした見た目の普通の柴犬。愛想はあまり良くなく、常に真顔なのが特徴です。りえ子とは0歳からの付き合い。りえ子の言葉はわかりますが人語は話せず、彼女の発言に心の中でツッコミを入れるのが作中での役目です。

りえ子のことは散歩の付き人程度にしか思ってないようで、なんなら散歩中の扱いが雑なため、時々りえ子の代わりをしてくれる父親の方を慕っています。ただ、10年以上の付き合いになるので、ポン太なりにりえ子を見守っているようなそぶりも。

ほとんどのエピソードにはりえ子とポン太しか出てきませんが、ごくまれに他に登場人物が関わってくることもあります。

例えばりえ子の幼馴染みの須山康介や友達のみっちゃん、近所のお姉さんの葵など。康介とみっちゃんは何度も登場するため、準レギュラーと言っていいかもしれません。作中には登場しませんが、りえ子の一方的な会話の中で同じ学校の生徒の話が出てくることもあります。

漫画『今日のさんぽんた』の魅力

『今日のさんぽんた』は各エピソードはとても短くて、4ページから長くても10ページ程度になっており、ざっくり言えば散歩中の会話劇を楽しむ作品です。

ただし、会話と言ってもりえ子の一方通行。ポン太は人語を理解しているので反応しますが、あくまで心の中のツッコミなので、りえ子にはまったく伝わりません。その一切成立していない、会話の通じなさが絶妙な面白さを生んでいるのです。

小学生から大学生に至るまで、りえ子はあんまり勉強が出来ない子として描かれます。本人は真剣なつもりでも、ズレたおかしな発言や記憶違いはしょっちゅう。そんな時、ポン太がすかさず鋭いツッコミを入れて、読者が反射的に考える「それは違う」、「そんなはずがない」という思考を綺麗に代弁してくれます。

ちょっと辛辣というか毒舌気味ですが、ナレーションのような形で常に的確にツッコミを入れるポン太が実に爽快。

とはいえ、りえ子にポン太の思考は読めないので、間違ってる場合は間違ったままなのですが……。たまに第三者が偶然行った行動を目撃して、りえ子は自分が間違っていることを察する場面もありますが、誤魔化したりなかったことにしたりとなかなか図太いです。この辺りの言葉のかけ合い、笑いの要素は漫才に通じるものがあります。

『今日のさんぽんた』は日常系コメディの体裁を取っていますが、各エピソードが時系列順ではなく、前後の繋がりに関係なくバラバラに発表されていることも作品の魅力に関係しています。

第1話のポン太は11歳で、人間の年齢に換算すれば60歳ほど。老齢に達して落ち着いた思考になっており、心なしか動作もおっとりしています。その分、りえ子へのツッコミはキレキレですが。逆に若いころはかなりワンパク。ツッコミ時のセリフはひがらなで、本能的に感じたことを言っている感じがします。

同様に昔と今とで、りえ子の成長(思考はあまり変わってませんが)や散歩道の風景の変化などがさりげなく描写されるのも見所です。読者が言葉に出来ない寂しさというか、ノスタルジーに浸って、現実を一時でも忘れられるのが人気の秘訣なのかも知れません。

もちろんポン太の可愛さも魅力の1つ。犬を飼っている人なら、思わず共感する柴犬あるあるがあちこちにちりばめられています。

漫画『今日のさんぽんた』おすすめエピソード:夜中の共犯者【第1巻ネタバレ注意】

りえ子は高校3年生、ポン太が10歳の時のお話。

りえ子はたまに、夜こっそり家を抜け出すことがあります。理由はさまざまですが、今回はコンビニへアイスを買いに行くためでした。玄関を出た音で愛犬が起きたことに気付くと、彼女は用心棒代わりにポン太を連れて、夜中の散歩へ繰り出します。

夜中の外出、夜中の買い食い、しかも甘い物。りえ子は多重に背徳的だからこそ「幸せ」だと豪語し、自分だけアイスを買ってきてポン太の不評を買います。……が、実はちゃんとささみスティックをしっかり購入しており、「おとんには内緒やで」とポン太の分にも「幸せ」を分け与えて共犯者にしてしまいました。

寝起きだからか年齢のせいか、ポン太のツッコミは回数も鋭さもやや控えめ。いつも辛辣なポン太が、思わぬおやつを前にして、素直に喜んでいるのが可愛いらしいです。普段あまり見られない、りえ子とポン太の相棒のような絆が感じられます。

漫画『今日のさんぽんた』おすすめエピソード:秘密の入り口の秘密【第2巻ネタバレ注意】

続いてもりえ子高3、ポン太10歳のお話。

夏が過ぎたある日、散歩中にりえ子はふと、とんでもなく塀の長い家があることに気付きました。興味を引かれた彼女は、塀に沿ってぐるっと周って、どんな建物か確かめようとします。

そうは言っても気が散りがちなりえ子。歩いている間にも色々なところに意識が移ります。金木犀の木、歩道と車道を隔てるカードレール……。賢いつもりのりえ子はそれぞれの特徴、豆知識を得意げに語ります。

ただ、りえ子の意識の逸れた瞬間が、すべて奇跡的に入り口の門の付近でした。そのせいで彼女は2周しても入り口を認識出来ず、秘密の特殊な建物なのかも知れないと納得してしまいます。

ポン太の的確なツッコミが冴え渡り、りえ子のアホさ加減が全開になるエピソードです。灯台下暗しというか盲点というか、端から見ればわかりやすくても、実際自分の身に起きると案外わからないものなの……かも。

漫画『今日のさんぽんた』おすすめエピソード:物忘れ【第3巻ネタバレ注意】

りえ子は高校1年生、ポン太8歳の夏のお話。

午後の散歩は日差しが強く、疲れたりえ子は日陰のあるバス停で一休みします。彼女は熱中症防止で帽子を被ってきたのですが、休憩中は脱いでポン太の頭に乗せました。帽子や傘を体から脱いで適当に置いておくと、忘れてしまうからと。そして散歩を再開する時、案の定りえ子の頭から帽子のことは抜け落ちていました。

だいたいの犬猫は、帽子や服を着せられてもすぐ振り落とすもの。ポン太も例に漏れず、被せられてすぐ帽子を落としてしまいます。ところがりえ子が置き忘れたのを見ると、わざわざくわえて持って行くのが賢い。

それを見てりえ子は帽子を忘れたこと気付くものの、忘れるからポン太に任せて正解だったと言いつつ、なぜか自分では被らず再度ポン太の頭へ。

もはやりえ子がなぜ帽子を被って散歩に出てきたのか完全にわからなくなり、ポン太の「なんでだよ」というツッコミが刺さります。

漫画『今日のさんぽんた』おすすめエピソード:空想【第5巻ネタバレ注意】

りえ子は高校2年生、ポン太が10歳の冬のこと。

いつも通り散歩しながら、翌日に迫ったマラソン大会について愚痴るりえ子。寒空の下、7kmをただただ走るだけの学校行事が憂鬱で、突然りえ子は時間を飛ばすタイムスリップ能力が欲しいと言い出します。

ぶつくさ言っているうちに、彼女はふと気がつきました。7kmは日課のポン太の散歩のたかが数回分なので、そう思えば意外と行けるのではないかと。しかし、ポン太の散歩を成立させるためにはポン太が必要です。まさかマラソン大会に連れて行くわけにはいきません。

そして当日。試しに空想上のポン太――エアポン太を連れてるつもりで走ってみると、想像以上に上手く行っただけでなく、例年より着順が上がっていました。

ある種のプラシーボ効果とでも言うべきか、考え方1つで物事はなんとかなるというお話でした。ただこのエピソードで1番面白いのは、あれだけダルがっていた7kmを走った後で、りえ子がいつも通りポン太の散歩に行っているところでしょう。習慣恐るべし。

2025年に『今日のさんぽんた』実写ドラマ化

『今日のさんぽんた』は2025年2月21日から、実写ドラマ化されることが発表されています。フジテレビが運営する有料チャンネル「フジテレビTWO」とサブスクサービス「FOD」の独占。

新谷ゆづみと安田顕のW主演になっており、新谷ゆづみがりえ子役、安田顕はポン太の声を当てます。ポン太役はアニマルプロ所属の柴犬、のこ。その他にも須山康介役・越山敬達、みっちゃん役・瀬戸琴楓、葵役・円井わんといったキャストが予定されています。

新谷ゆづみは、ここ数年で頭角を現してきた女優です。『異世界居酒屋「のぶ」』エーファ役を射止めて以来、いくつもの作品で主演や主要人物をこなしてきました。『今日のさんぽんた』の舞台は関西のどこかとされていますが、作者が和歌山県出身なので、同郷の新谷ゆづみがドラマ版りえ子を演じるのは作者のイメージに近そうです。

もう1人の主演、安田顕についてはもはや言わずもがな。お笑い系の役から渋い役までなんでもこなせる万能俳優です。特にとぼけたキャラクターには定評があるので、ポン太の心の声にはぴったりかも知れません。

『今日のさんぽんた』は現代日本の日常を描いたコメディです。ポン太は人語がわかりますが、突然喋ったり変な行動をするわけではないので、実写TVドラマになっても違和感はほとんどないでしょう。

また幼少期のりえ子とみっちゃんを、それぞれ子役の松岡夏輝、小井?菫玲が演じることがわかっており、俳優の都合で幼少期のエピソードを改変する、ということもないはずです。

今のところティーザームービーの印象でしか語れませんが、ほぼ原作漫画通りの『今日のさんぽんた』を見られるのではないでしょうか。

『今日のさんぽんた』の作者は田岡りき

作者は和歌山県出身の漫画家、田岡りき。1989年7月25日生まれの35歳で、血液型はO型です。

詳しい経歴は不明ですが、漫画家に鳴前は京都精華大学日本画コースで学んでいました。在学中の2009年、「第5回ゲッサン新人賞」に投稿した『宇宙人の話』が佳作を受賞。その後も投稿を続け、2014年に「ゲッサンmini9号」誌上に『確かめにいこう』が掲載されて商業漫画家デビューを果たしました。

2015年の初連載作『吾輩の部屋である』がヒットし、2017年9月には日本テレビで実写ドラマ化されています。

その後はwogura作画による女子高生のDIY漫画『スクール×ツクール』の原作を担当。平行して同作の掲載誌「ゲッサン」の「しんみり泣ける読切シリーズ」に参加し、『今日のさんぽんた』の原型(というか第1話)に当たる『ラスト・さんぽ』を発表、それが好評を博したことから連載化して現在に至ります。

『スクール×ツクール』はちゃんとかけ合いのある日常コメディですが、田岡りきが単独で発表している連載作『吾輩の部屋である』と『今日のさんぽんた』はどちらも本来喋らないモノがツッコミを担当しているのが特徴。

『吾輩の部屋である』は自宅の一部屋で大学生が他愛のない哲学にふけりつつ、身の回りの置物や家具が話しかけて(という体の主人公の想像)きます。受け答えがあるという違いこそあるものの、『今日のさんぽんた』と構成が近いです。

答えの出ないあるいは答えがどうでもいい話題に対して、自問自答する流れに茶々を入れるのが、田岡りきという作家の作風と言えるかも知れません。

田岡りきは大の犬好き。現在は飼っていないそうですが、犬を愛でられない代わりに『今日のさんぽんた』のポン太を描いているそう。実家で飼っていた犬との経験を反映しているともインタビューで語っているので、しばらくは『今日のさんぽんた』のノスタルジックな世界観に浸れるでしょう。


『今日のさんぽんた』は「ゲッサン」で連載中ですが、作者公式Xや漫画アプリ「サンデーうぇぶり」でも読めます。Xは掲載時期に合わせて公開されるのと、バックナンバーを遡るのがやや面倒なので、基本無料の「サンデーうぇぶり」がおすすめです。

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