『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』2025年上半期の超話題作!作品概要と魅力を徹底紹介

更新:2025.8.14

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は2025年4月から6月にかけて放送・配信されたテレビアニメです。「エヴァンゲリオン」シリーズのスタジオカラーが制作する新しい「ガンダム」シリーズということで、発表の時点で少なくないファンから注目されていました。 そして2025年1月に公開された先行劇場映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』を経て4月の本放送が開始されると、SNSを中心とした一大センセーションが発生、毎話放送の度にトレンドを席巻する異常事態に発展しました。 そんな『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が一体どんなアニメで、何が視聴者を惹きつけたのか。古くから「ガンダム」シリーズに親しんできた筆者の観点から、「ガンダム」について知らない方にもわかるように詳しく解説していきます。

小説も漫画も映画も基本雑食な、しがない物書き。温故知新で古典作品にもよく触れるようにしています。
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3行でわかる記事の内容

  • ガンダム最新作のアニメ『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』が話題
  • 話題を集めて人気になった理由と魅力を紹介
  • 視聴する上で知っておくと楽しめる用語を簡単に解説

アニメ『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』概要紹介

『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX(ジークアクス)』(以下、『GQuuuuuuX』)は2025年に制作されたTVアニメです。

1979年の『機動戦士ガンダム』(以下、『ファースト』)から続く人気シリーズの最新作(2025年7月現在)で、「エヴァンゲリオン」シリーズを生み出したスタジオカラー(ガイナックス主要スタッフのスタジオ)と「ガンダム」シリーズのサンライズがタッグを組んだ野心的な作品。

『GQuuuuuuX』は2025年のアニメの中で、もっとも話題を呼んだ作品と言えます。まだ2025年は終わっていませんが、少なくとも上半期の作品ではぶっちぎりの話題性がありました。

「ガンダム」シリーズは『ファースト』から数えて46年の歴史を持つ日本屈指のコンテンツなだけあって、不定期に新作が生み出されています。スタジオカラーが担当するとあって熱心なファンには意識されていたものの、『GQuuuuuuX』もそんな新作のうちの1つでしかない……はずでした。

風向きが変わったのは本編映像を再編集した劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』(以下、「Beginning」)の公開です。2025年1月17日に公開されるやいなや、鑑賞したファンがネタバレに配慮して様子がおかしくなり、異様な雰囲気がSNSに蔓延しました。

「どうやら何か凄いことが起きているらしい」、と事前に形成された空気感によって注目と期待が極限まで高まり、そして4月9日からスタートした本放送とネット配信で人気爆発。1クール全12回の放送を経た現在でも、未だに話題が尽きないモンスター級の作品に大化けしました。

アニメ『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』の人気が過熱した2つの理由

『GQuuuuuuX』が人気を博した理由は、大きく分けて2つあります。その理由をご説明するためには、序盤の展開に軽く触れざるを得ないのであらかじめご了承ください。

 そもそも「ガンダム」とはどんな話か?

『ファースト』では人類が宇宙に進出した時代を舞台として、地球連邦(地球圏の統一政府)に対して一部の宇宙植民地が起こした独立戦争が描かれました。『ファースト』から地続きの作品は独自の年号「宇宙世紀」の歴史上にあることから、特にUC(宇宙世紀)シリーズと呼ばれます。

ちなみに「ガンダム」には宇宙世紀の世界ではない作品も多く、そちらはアナザーガンダム(近年の公式名称はオルタナティブシリーズ)と区別されています。

 先行劇場版「Beginning」の衝撃

ここで話題を『GQuuuuuuX』に戻しますが、本作の主役メカであるジークアクスのデザインはガンダムにしては異形感が強く、事前情報では「エヴァ」で有名なスタジオカラーらしいカラーが出ているアナザーガンダムだと思われていました。

ところが蓋を開けてみると、目に飛び込んできたのは……。「Beginning」の出だしは既視感のある円筒形コロニーのカット、そして「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させ――」とあまりにも馴染み深いナレーション。TVアニメ版ではいきなりホワイトベース(しかもジオンのマーク!)、サイド6など見覚えも聞き覚えもあるワードが続出しました。

新規ファンにはただ「そういうもの」としか映らない映像ですが、オールドファンなら目に入った瞬間に漏れなく天啓が閃きます。これはアナザーガンダムじゃない、UCのガンダムで、しかも『ファースト』をなぞっている! と(構成が異なるTVアニメ版で判明するのは第2話)。

困惑するオールドファンをよそに、次々繰り出されてくる「知っている」のに「知らない」映像の数々、そして新しい主人公による未知なるガンダムの物語……。『GQuuuuuuX』はアナザーガンダムと見せかけて、『ファースト』の世界観を最新の映像と独自の視点で再構築(パラレルワールド)した野心作だったのです。

「Beginning」公開当初に鑑賞したファンの中には、SNSで「ガンダムを観に行ったらガンダムが始まった」などと、一見すると意味不明な感想を呟く人が多数いました。これはギリギリネタバレを避けつつ、見たままを正直に書いた結果だったのです。

こうしてオールドファンは絶妙なバランスの既知と未知に引き込まれ、新規ファンはただただ目新しい展開に釣られて視聴した、というのが人気の理由の1つ。

 SNSで活発に交わされたナラティブ(物語解釈)なムーブメント

もう1つの理由としては『GQuuuuuuX』が物語を語りすぎず、行間を読ませるタイプの作劇だったことが大きいです。新規ファンにはわかりづらい、旧作を前提とした描写やネタの数々をSNS上でオールドファンが解説し、新規ファンとの交流と考察が盛んに行われました。

1週間かけてああでもない、こうでもないと語り合う様子が多くの人の目にとまり、それがまた新たな視聴者を呼ぶという近年まれに見るムーブメントに繋がったのです。

SNSの代表格X(旧Twitter)では冗談ではなく毎週トレンド上位に登り、最終回放送後には1位から20位までほぼトレンドを独占した上に、『GQuuuuuuX』の公式ハッシュタグのポストが100万件を超える異常事態にまで発展しました。

また深夜放送の関係上、放送翌日にSNSでネタバレを踏む事故が続出し、リアルタイムで視聴するか1日ネット断ちするかの二択が迫られる人も多かったです(筆者含む)。リアルタイムで視聴してすぐ呟く、1日我慢して視聴した思いの丈をぶちまける……。そうやって『GQuuuuuuX』の話題に拍車がかかった一面もあります。ある意味、SNS時代にぴったりハマった結果。

SNSの『GQuuuuuuX』解説・考察をきっかけに、新規ファンが関連する別の「ガンダム」作品に触れる例も多く、『GQuuuuuuX』は作品単体の人気以上に「ガンダム」シリーズへの導線になっているということがもっとも凄いかも知れません。

アニメ『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』あらすじ

宇宙世紀0085年、サイド6のコロニーで暮らしていた女子高生アマテ・ユズリハ(マチュ)は、違法な運び屋で食いつなぐ戦争難民の少女ニャアンと偶然の出会いを果たします。

ニャアンの仕事から非合法のモビルスーツ(MS)戦闘「クランバトル」に関わってしまったマチュ。彼女はそれと同時に、サイド6に潜入した最新鋭MS「ジークアクス」と「ある機体」の戦いに巻き込まれ、サイド6軍警の実態を目の当たりにします。事態の収束に出動したはずなのに難民区域を考慮しない軍警の横暴。

怒りに駆られたマチュは混乱に乗じてジークアクスに搭乗し、特殊なサイコミュシステムを起動させて、軍警のMSを撃破してしまいました。

それ以降、マチュはジークアクスと「ある機体」に導かれるように、日常を逸脱して戦いの渦に誘われていきます。

アニメ『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』主要登場人物紹介

「GQuuuuuuX」は全12話と比較的少ない話数ですが、登場人物はかなり多いです。それぞれ役割があるものの、全員紹介するのは無理があるためストーリーの根幹に関わり、かつ序盤から出番のある登場人物に絞ってご紹介します。

主人公はアマテ・ユズリハ。

母タマキと2人暮らしする女子高生(名門お嬢様学校)でしたが、幼少期のあだ名「マチュ」を名乗って、クランバトルに出場するようになります。常人にはない感性の持ち主で、平穏な生活に違和感を抱いており、特別な何かに惹かれて突拍子もない行動を取ることも。ジークアクスを通じて「キラキラ」を感じ、その体験を追い求めるようになります。

もう1人の主人公と言えるのが、マチュと友人関係になるニャアン。

幼少期に故郷を追われ、家族と生き別れになった難民の少女です。マチュと同じイズマ・コロニーに住んでいますが、暮らし向きは正反対で、非合法の運び屋バイトで日々食いつないでいます。活発なマチュが隣にいるため大人しく見えますが、生い立ちのせいで誰よりも生存に執着しており、それが思わぬ事態を引き起こすことに……。

シュウジ・イトウは物語のキーパーソン。

彼の素性は謎に包まれており、「コンチ」と名付けた四足歩行ロボットを連れ歩いて、コロニーのあちこちにグラフィティアート(スプレーの落書き)を残していること以外は一切不明です。地球行きを目的として活動していますが……。

シャリア・ブルは準主人公と言ってもいいでしょう。本作のファンからは「緑のおじさん」と親しまれています。

「ニュータイプ」と呼ばれる極めて特殊な人物で、ジオン軍の中佐。5年前の戦争では「灰色の幽霊」と呼ばれ、敵から恐れられていました。行方不明になった上官にして友人であるシャアを探しており、シャアとなんらかの関わりがあると思われる「赤いガンダム」を追って、マチュたちのコロニーにやって来ました。

そして「赤い彗星」のシャア。

シャア・アズナブルは数々の功績を挙げたジオン軍のエースパイロットで、劇中ではジオン公国の救国の英雄とも言うべき人物です。5年前の戦争で「ゼクノヴァ」と名付けられた謎の消失現象の現場に居合わせて、「刻(とき)が見える」という謎のメッセージを残して行方不明になりました。

アニメ『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』一口用語解説

『GQuuuuuuX』と「ガンダム」を語る上で、欠かせない用語がいくつもあります。それら用語は本編でも頻出するものの、ほとんど説明されません。すべて解説するとキリがないので、重要なワードに絞って簡単に説明していきます。

宇宙世紀(ユニバーサルセンチュリー、UC):人類が宇宙進出したことを機に、西暦から改められた統一年号。「世紀」と付いていますが、100年ごとに変わるわけではありません。

スペースコロニー(または単にコロニー):宇宙に建造された人工植民地。人口の爆発的増加を解決するアイデアとして、物理学者が提唱した現実にある概念です。「ガンダム」世界では1基のコロニーに数千万人程度住んでいます。

サイド:数十から100基のコロニーが集まったコロニー群。サイド1から7(8がある作品も)まであり、各サイドそれぞれに自治体があるため、おおむねサイド=国と考えて問題ありません。またコロニーには個別に番号が付けられていて、「バンチ」の単位で呼ばれます(例、サイド6の1バンチコロニー)。サイドを国とするなら、バンチは市のイメージ。

ラグランジュポイント:サイドが浮かぶ宙域(宇宙空間の領域)。実際にある天体力学用語で、惑星などの重力に引かれず、物体が一定の位置を保ち続けられる重力均衡点のことです。

地球連邦:地球および全コロニーを支配下に置く、国家の垣根を越えた地球圏統一政府。単に連邦と呼ぶことも。人口問題を解決すべく宇宙移民を敢行した一方で、地球に特権階級を残してしまい、地球・コロニー間の軋轢を生む原因となりました。

ジオン公国:地球連邦の一方的支配に対し、自立を目指すサイド3の国家。ジオンと略す場合は基本的にジオン公国を意味します。建国当初は対話中心でしたが、後述するザビ家の独裁体制になって選民思想の強硬路線に変化し、地球連邦に独立戦争(1年戦争)を挑みました。

1年戦争:ジオン独立戦争。宇宙世紀0079年1月3日にジオンが連邦に宣戦布告し、約1年後の0081年1月1日(本作では1月3日)に終戦協定が結ばれたことから、のちにこう呼ばれるようになりました。正史で事実上勝利したのは連邦でしたが、「ジークアクス」での戦勝国はジオンです。

ジオン・ズム・ダイクン:人の革新として、平和的な「ニュータイプ」論を掲げたジオン共和国の最初の指導者。病死後に側近のデギン・ソド・ザビが後継者となって、ジオン共和国は共和制から君主制のジオン公国に変わりました。ジオン・ダイクンの死はデギンが仕組んだ暗殺と考えて良いでしょう。

ザビ家:デギン公王を頂点としたジオン公国の支配者一族。長男ギレン、三男ドズル、長女キシリア、四男ガルマが主な一員です。

ニュータイプ:ジオン・ダイクンが掲げた概念。人類が重力から解放されて宇宙環境に適応した存在であり、極めて高度な直感力や洞察力を持ち、時間も空間も越えて他者と理解し合えるとされています。ある種の超能力者。

ミノフスキー粒子:レーダー探査や無線通信を無効化する「ガンダム」シリーズオリジナルの架空の粒子。誘導ミサイルを主軸とした既存の長距離兵器がすべて役に立たなくなるため、戦争の方法論が根底から覆りました。劇中ではミノフスキー粒子の応用でビーム兵器なども実用化されています。

モビルスーツ(MS):主に人型をした20メートル前後の機動兵器。目視による有視界戦闘を行わなければいけないミノフスキー粒子散布下において、どんな環境でも生身の延長の感覚で効率的に戦える兵器です。史上初めてのMSをジオン公国が開発し、地球連邦との国力の差を兵器の性能で埋めて優位に立ちました。

サイコミュ:ニュータイプの脳波を増幅して、操作系統に伝達するコントロールシステム。MSに応用すれば思考で直感的に動かせるようになる上に、脳波はミノフスキー粒子の影響を受けないため、無線式ビーム砲台「ビット(ファンネル)」などが使用可能になります。

M.A.V.戦術(マヴ):先制攻撃が圧倒的に有利な有視界戦闘で、初撃を外した際の隙をMS2機1組の連携で補い、断続的に攻撃し続ける戦法のこと。そこから転じて、背中を任せられる仲間をマヴとも呼びます。『GQuuuuuuX』で初めて出てきた用語で、おそらく現実の第2次大戦で考案された戦闘機のロッテ戦術が元ネタ。

アニメ『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』関連作品のあらすじ

『機動戦士ガンダム』

宇宙世紀0079年に起きた一年戦争のうち、9月から12月までの3ヶ月間を描いた物語。

主人公アムロはジオン軍シャアの部隊のサイド7コロニー急襲によって、偶然ガンダムに搭乗して地球連邦の新鋭艦ホワイトベースに乗ることになり、死闘を通じて人として戦士として成長を遂げていきます。

ホワイトベースはほとんどの正規乗組員が失われ、動かせるのは候補生と若い避難民だけという急場しのぎの混成部隊。軋轢や衝突で絆を深めていく、『十五少年漂流記』的な青春群像劇の側面も見所です。幾度となく繰り返されるシャアとの因縁にも注目。

TVアニメ版全43話と、ストーリーを再編集した劇場版3部作があります。劇場版3部作の方が見やすいですが、『GQuuuuuuX』の一年戦争はTVアニメ版を元にした要素が多いです。また富野由悠季監督が執筆した小説版の影響や、初期構想をまとめた「トミノメモ」由来の設定もかなりあります。

 『機動戦士Zガンダム』(以下、『Zガンダム』)

一年戦争から7年後の宇宙世紀0087年。戦争は終結しても混乱は収束せず、地下に潜ったジオン残党の抵抗や、一部コロニーの反地球連邦の気運はいまだになくなっていませんでした。

地球連邦軍は超法規的部隊「ティターンズ」を組織し、宇宙居住者(スペースノイド)への弾圧を強める一方、横暴に反発した地球連邦軍兵士を中心に反地球連邦組織「エゥーゴ」が結成されました。

対立する2つの組織の抗争のさなか、主人公カミーユはティターンズへの反発心からエゥーゴに参加、かつてシャアと呼ばれたクワトロ・バジーナに率いられて戦場を経験していきます。

『Zガンダム』でメインとなるのはグリプス戦役。地球連邦の内紛に第3勢力「アクシズ」が介入し、戦争に翻弄される人々や政治的駆け引きといった複雑な要素が描かれます。TVアニメ版と再構成された劇場版「A New Translation(新訳)」では結末が大きく異なります。

『GQuuuuuuX』的には「ファースト」ほどの関連はありませんが、劇中の時代設定が近いです。また、『Zガンダム』のある人物たちの登場でオールドファンが冷や汗をかきました。

 『機動戦士ZZガンダム』(以下、『ZZガンダム』)

宇宙世紀0088年。グリプス戦役の内紛で疲弊した地球連邦を尻目に、ジオン残党アクシズの実質的指導者ハマーンは地球圏を掌握すべく、新たなジオン――「ネオ・ジオン」を名乗って侵攻を開始しました。

主人公のジュドーはサイド1のシャングリラ・コロニーでジャンク屋稼業を営む少年。グリプス戦役後、ジュドーは補給のために寄港したエゥーゴの主力艦アーガマからZガンダムを盗み出そうとしますが、そこからカミーユに導かれてネオ・ジオンとの戦いに身を投じることになります。

『Zガンダム』に比べるとコミカルな表現が目立ち、前2作に比べると歴史的な出来事は控えめ。ただし『Zガンダム』から続くストーリーの顛末や後の作品への影響など、前後するシリーズでの関連性が強いです。

『GQuuuuuuX』には直接関係ありませんが、宇宙世紀の流れを理解するために軽く知っておいた方が良いでしょう。『GQuuuuuuX』中盤に登場する、とあるMSの型番がなぜか『ZZガンダム』に由来します。

 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(以下、『逆襲のシャア』)

ハマーンが挙兵した第一次ネオ・ジオン抗争から5年後、宇宙世紀0093年。消息不明だったシャアが本来の身分――キャスバル・レム・ダイクンの名を明かし、残存戦力と宇宙の反乱分子をまとめた「新生ネオ・ジオン」を立ち上げ、諸悪の根源である地球人類粛清を標榜して小惑星の地球落下作戦を決行します。

第二次ネオ・ジオン抗争勃発。「ファースト」以来、再びアムロとシャアが敵味方に分かれ、地球の命運という大きな視点と長年にわたる因縁の決着という小さな視点の2つが同時に進行していきます。ここに至るまでのシリーズを踏まえた重厚なストーリー展開、MS戦の圧倒的な映像表現が魅力。

宇宙世紀シリーズはこの後も続きますが、『逆襲のシャア』はシリーズにおいて1つの到達点と言って良いでしょう。

はっきりとは言われていませんが、『GQuuuuuuX』の根幹に関わるある現象は、おそらく『逆襲のシャア』の結末と密接に繋がっていると考えて間違いありません。主要人物の関係性も非常に重要。

メタネタにはなりますが、メカニカルデザインをスタジオカラーの前身ガイナックス(庵野秀明と増尾昭一)が担当しているので、その点でも大いに関係があります。

アニメ『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX』の魅力

大きな熱狂を巻き起こした「GQuuuuuuX」ですが、作品としての魅力は大きく分けて3つあります。秀逸なメカアクション、巧みなストーリーテリング、そしてセンス・オブ・ワンダーに溢れたSF要素です。

 秀逸なメカアクション

本作の素晴らしいところは、まず「ガンダム」シリーズ未視聴でも気持ち良く楽しめるロボット(メカ)アクションにあります。そこで重要な役割を果たすのがストーリーの序盤、「GQuuuuuuX」がまだどんな作品かもわかっていないうちに始まるクランバトル(略称クラバ)です。

クランバトルは民間払い下げの兵器を流用した違法賭博。序盤はクランバトルに絡めたエピソードが多く、そのおかげで毎回必ずアクションシーンが差し挟まれます。2対2の小規模戦闘なので敵味方の判別が簡単、おまけに本格的な戦争よりエンタメ性に富んでおり、ゲストキャラクターの個性と合わせて見栄えのする映像を楽しめます。

しかも制作を担当するのはスタジオカラー。ガイナックス時代から数々のメカアクションを手がけており、監督・脚本を始めとして「ガンダム」シリーズに一家言ある濃いスタッフを多数抱えているだけあって、こだわり抜かれた描写が光りました。

 巧みなストーリーテリング

そんなアクションを成立させるストーリーが見事。

アグレッシブな少女と不思議な少年のボーイ・ミーツ・ガール、境遇の違う少女たちのシスターフッド、それらに大人たちの事情や政治が絡んで予想不可能な展開を見せてくれます。

「GQuuuuuuX」は「ファースト」のパラレルワールド……というか「ファースト」をベースにした仮想戦記(歴史改変)モノです。ところが、エキセントリックなキャラクターと派手でクランバトルで巧妙にその辺りの事情を隠し、徐々に比重を変えていくことで「一見さんお断り」になるのを回避しているのが凄い。

比重の変更に伴うストーリー中の情報開示がまた絶妙で、それとない台詞や描写から「もしも」の積み重ねによって出来た世界であることがわかる仕組みとなっています。もちろん知らなくても問題ありませんが、知っていると気付きがとても多くて、アハ体験に近い発見する楽しさを感じられるでしょう。

 科学的考証に基づいたさりげないSF

そして、あらゆる描写をさりげなく補強するSF要素。大前提として「GQuuuuuuX」はエンタメ重視の作品であって、決してお堅いSF作品ではありません。しかし、普通に見る分にはまったく意識しなくていいような、細部の科学的考証がとても正確でした。

その一例がスペースコロニーです。

「ガンダム」世界のコロニーは一部例外を除いて基本的に円筒形(シリンダー)。これは発案した物理学者ジェラード・K・オニール(実在の人物)にちなんで、オニール・シリンダーと呼ばれています。

原点のアイデアではコロニーが一方向に回転した時に生じるトルクを相殺するために、逆回転の同型シリンダーを並べて2基1対とする設計なのですが、「ガンダム」のコロニーは伝統的に1基で描かれていました。

ところが「GQuuuuuuX」のコロニーは、なんと伝統に反して2基1対。本来あるべき力学的に正しいオニール・シリンダーになっており、SF関係者や宇宙界隈で騒然となりました。ちなみにこの設計にこだわったのは、誰あろうスタジオカラー社長の庵野秀明。

他にも「GQuuuuuuX」に登場するMSが、現実の車と同じボディフレームの中に可動部やエンジンなどを積むモノコック構造なのも面白いところ。

「ガンダム」世界では「ファースト」の時代までMSはモノコック構造で、「Zガンダム」以降に骨格へ装甲板を取り付けるムーバブルフレームという技術が普及したことになっています。

「GQuuuuuuX」は「Zガンダム」とほぼ同時代ですが、正史のムーバブルフレームの実用化は連邦主導だったため、歴史が変わって連邦が敗北したことで特定分野の技術進歩が遅れている――という表現です。

「もしも」を考え抜いた魅力的なSF要素で、これこそ仮想戦記モノの本領発揮といったところ。神は細部に宿ると言いますが、このレベルの細かくてさりげないSF表現が本当に素晴らしいです。


『GQuuuuuuX』の最終回から早数ヶ月経ちましたが、いまだに衝撃が抜け切りません。この記事を通じて、「ガンダム」をよく知らずに視聴していた方や、後から『GQuuuuuuX』を知った方にリアルタイムの衝撃と興奮が少しでも伝われば幸いです。

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