日本に実在したスパイの足跡をたどる5冊の本

更新:2021.12.15

「スパイ」と聞くとどのような想像をするでしょうか。フィクションの世界で活躍する、かっこいいアクションをするスパイたちのイメージは皆さんの中にも根強いと思います。では、実在したスパイとはどのような存在だったのか、今回はそんな彼らのことがわかる本を5冊紹介します。

ブックカルテ リンク

二十世紀前半の東京歴史ガイドブック。『東京を愛したスパイたち』

ロシア、ソ連の諜報員たちの資料を基に、二十世紀前半の東京を描いたドキュメントです。著者は、歴史学者であり、作家であるアレクサンドル・クラーノフ。書かれているのは主に3人の大物スパイ、そして4人の忘れ去られたスパイたちです。彼らがどういう人物だったのかを紹介し、書き残された文書から考えられる足跡を辿っていくのがこの本の主旨となっています。

紹介されているスパイたちの多くは、スパイになろうと思いなったわけではなく、日本文化等の研究を目的としていた者たちでした。つまり、皆日本に対して何らかの関心を持っていた人物たちであったことが推測できます。

著者
アレクサンドル・クラーノフ
出版日
2016-12-22

この本は、歴史ガイドブックとしての側面を強く持っています。著者は古地図と現代の地図を照らし合わせ、スパイたちの書き記した資料を元に、彼らの隠れ家などを探し回るのです。スパイについての歴史本として以上に、日本に関心を持っていた彼らが見た、その当時の東京について描かれている本となっています。

時代に翻弄され続けた、1人の王女の生涯。『川島芳子 知られざるさすらいの愛』

川島芳子、本名を愛新覺羅顯㺭(あいしんかくらけんし)という旧満州の女スパイを主人公にした、歴史小説の風合いが強い本です。彼女は第二次世界大戦後、当時の中国政府に処刑されたことになっていましたが、実際には処刑されていなかったという説がこの本では採用されています。それでは生き延びた彼女は何をしていたのか、彼女の世話をしていたという人物の証言と共に、激動の人生が記されています。

著者
相馬 勝
出版日
2012-01-21

時代の波に翻弄され続けた王女の生涯がわかりやすく、かつ娯楽的に楽しめる一冊。彼女の性分は真面目そのもので、それ故にこのような事態に巻き込まれていったのかと思うと、痛々しいものを感じます。

彼女の生存説については、いくつかの研究書が出ており、中には日本人も関わっているものも。著者はこの本を、その研究をベースにしたノンフィクション・ノベルのようなものであると語っています。川島芳子を30年世話したという段連祥が語る内容は、とても臨場感に溢れており歴史のロマンを感じさせてくれることでしょう。

日本を守ってきた情報活動、その中心にいた人物が語る。『日本最後のスパイからの遺言』

元公安調査庁幹部の菅沼光弘とジャーナリストの須田慎一郎の対談をまとめた一冊です。菅沼光弘は西ドイツの情報機関、ゲーレン機関に派遣され、対外情報活動を中心に35年間もの間旧ソ連、北朝鮮、中国の情報収集にあたった人物です。対して須田慎一郎は彼を非常に尊敬しているジャーナリストの1人であり、菅沼のことを情報収集のプロ、そして情報工作の天才であると語っています。

そんな二人の人物が語るのは、日本の政治、官僚、日米関係などといった政治の話。その話を通して菅沼光弘が日本について何を思っているか、どう見ているのかをジャーナリストの視点から引き出されていくところが見所となっています。

著者
["菅沼 光弘", "須田 慎一郎"]
出版日
2010-12-23

スパイというよりは情報収集の任についた方、といったほうが齟齬はありませんが、この本ではあえてスパイであると言い切りその仕事に誇りを持っていたことが見て取れます。そんな方が語る日本政治の話、その裏側はとても興味深く、非常に貴重な内容です。

大戦の裏側で、一体何が起きていたのか。『天皇のスパイ』

天皇のスパイ、そう呼ばれた一人の男の証言が元になって書かれた本です。この男の名はアンヘル・アルカッサル・デ・ベラスコ。彼は二重三重スパイとして世界を股にかけた大物スパイです。そんな彼が著者に直接話した内容を元に語られるのは、大東亜戦争におけるスパイ活動の裏側で、タブーにまで深く切り込んだ内容となっています。

著者
高橋 五郎
出版日

事実は小説よりも奇なりという言葉がありますが、この本に書かれている内容はまさにそれを体現していると言ってよいのではないでしょうか。職業スパイとしてドイツの諜報機関にも入り、ヒトラーからの信頼も厚かったというベラスコが世界大戦の真相や舞台裏、権力の実態に詳しかったのは当然の話といえます。

何故日本がアジアから金品を収集できたのか、なぜドイツは戦争に負けなくてはいけなかったのか、普通に暮らしているうえでは目にすることもない裏側の情報がたっぷりとこの本に詰まっているのです。

日本人保護に動かなかった、外交官たち。『外務省に裏切られた日本人スパイ』

中国残留孤児二世である、著者の体験を記したノンフィクション作品です。26歳まで普通の中国人として暮らしていた著者は、母親が日本政府から残留孤児と認定されたことをきっかけに日本へと移り住み、東京で外務省官僚と出会います。彼との交流を続けるうちに、著者は中国政府の内部文書を渡してくれないかとの要求を受けるのです。

そんなスパイ活動を続けていく中で、著者は中国政府によって逮捕されてしまいます。常日頃、捕まったら助けると言っていた外務省は、そんな人物など知らないと突っぱね、1人の日本人に対して動いてくれることは最後までありませんでした。監獄内で他の国の外交官が自国民保護のために行動を起こしている話を耳にしていた著者はどんな思いだったのでしょう。

著者
原 博文
出版日
2009-11-19

辛い経験をした著者がこれ以上同じことが起こらないようにとの思いを込めて執筆した本で、書かれている内容はなかなかショッキングなもの。思わず目をそむけたくなるような内容ですが、これもまた確実に現実で起こったことなのだと思うと、いろいろと考えさせられます。

 

いかがでしたか。普段生活している中では考えもしない近代史の裏側を知る、貴重な書籍ばかりです。表とは違う歴史、知っているのが教養であるというものではありませんが、それでも知っておいて損はないことばかりではないでしょうか。

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