ブロックチェーン関連本おすすめ6選。初心者から人文系読者まで

更新:2021.12.5

最近、パスワード化して巷を騒がせている「ブロックチェーン」。結局のところ正体は何なのか、未来社会への影響はどうなるのか。今回は、ブロックチェーンのことを何も知らない人、このテクノロジーとその「革命」の意義を考える人文系読者、「革命」とか「可能性」といった煽り文句に眉をひそめている人におすすめの本たちを紹介します。

ブックカルテ リンク

ブロックチェーンとは

インターネットが世界にもたらした変革を超える技術とも言われる「ブロックチェーン」。IoTやフィンテック、AIやVRなど、テクノロジー関連で話題になるキーワードはたくさんありますが、ブロックチェーンには最大の期待がかかっています。

インターネットが情報を世界中で高速にやりとりする仕組みだったのに対し、ブロックチェーンは「お金」を世界中で高速にやりとりする仕組み、だと言えます。

2008年に発表されたサトシ・ナカモトの論文によって生み出された暗号通貨「ビットコイン」、そのビットコインを含む技術がブロックチェーンです。取引の内容を「ブロック」にして、ネットワークを共有しているユーザー間で「チェーン(繋ぐ)」するプラットフォーム。オープンソースで公開されており、取引内容が特定の一か所にとどまらず分散するのが最大の特徴です。世界中で大企業や政府から独立して開発が進められており、これからの可能性が盛んに議論されているというわけです。

安定の定番本

著者
["ドン・タプスコット", "アレックス・タプスコット"]
出版日
2016-12-02

ブロックチェーンの歴史から、2016年時点での「現状」、そして具体的な課題まで網羅。アメリカ人に受けそうな分厚さ(邦訳版は脚注込みで407ページ)ですが、音楽産業やアートシーンでの導入例が紹介されていたり、より技術的な問題点の列挙もされていたりするなど、定番の入門書となるのも頷ける良書。

つまるところブロックチェーンとは、電子通貨(仮想通貨・暗号通貨)であるビットコインの関連技術であり、そのセキュリティの強固さからビットコインに限らない応用が利き、これもまたいま流行りの「フィンテック」や「IOT」をはじめとする様々な未来社会的な現象の鍵となるのだ、ということがわかります。

「光と闇」というセクションで、具体的な問題点や普及への障壁も詳しく書いてあるのが好感触。

ビットコインの体験談から、ポスト・ブロックチェーンまで

著者
出版日
2016-11-14

上掲の『レボリューション』が分厚くってちょっと手が出ない、もっと手っ取り早く概要を掴みたい、という人向けの1冊。もう少し読み応えが欲しい人にはその名も『ビジネスブロックチェーン』という本がありますが、本書にはビットコインを実際に使ってみる、カラー写真付きの体験談が乗ってるのが楽しいです。

また、ブロックチェーン以後の展開として、スマートシティとIoTやブロックチェーンと組み合わせたプラットホーム「IOTA」、P2Pの惑星間ファイルシステム「IPFS」、さまざまなブロックチェーンを相互につなげる「Cosmos」についても簡潔な解説がついており、単なる軽い入門書にとどまらない拡張性がある点もいいですね。

ビットコインについて軽く広く知るなら!

著者
森川 夢佑斗
出版日
2016-11-28

「一冊でまるわかり暗号通貨」とだいぶ思い切ったタイトルですが、読みやすく網羅性もあり、手っ取り早く暗号通貨の見取り図を得たい人にはオススメ。今回ご紹介してる他の本を読むときにも、傍らに置いてちょくちょく参照すると理解が立体的になって役立つでしょう。ハンディサイズなのも便利。

ブロックチェーンについての独立した説明はありませんが、当然言及はされています。

「台帳」について知ろう

著者
ジェイコブ ソール
出版日
2015-04-08

世界史の薀蓄をワンテーマで串刺しにして紹介する、いわゆる「文化史本」のひとつ。

特に興味深いのは、物流の革命だった「鉄道」の会計に関するところ。

「なにしろ用地と線路から石炭、駅舎、運賃収入、乗務員から列車食堂の給仕にいたるありとあらゆる人員の賃金、そして膨大な量の貨物まで、広い土地に散らばるすべてを数え上げ、管理しなければならないのである。鉄道会社では区間ごとに会計チームを編成し、会計報告を本社に送るため、固定式の元帳ではなくルーズリーフ方式が採用された。」
(『帳簿の世界史』より引用)

ブロックチェーンの「ブ」の字も出てきませんが、「分散型電子台帳」とも呼ばれるブロックチェーンの「台帳」の部分がイマイチ地味だなあ、何が重大なの?というのを理解するための副読本として。
 

人文系じゃないと読めないかも?クセの強い1冊

著者
ジャン=ジョゼフ グー
出版日
1998-09-30

『狭き門』で知られるノーベル文学賞作家アンドレ・ジッドが偽造貨幣を扱って書いた名作『贋金づくり』と、その叔父で経済学者のシャルル・ジッドの理論とを照応する論考。脱線や詭弁が目立ち、どれくらい真剣に読むべきかは慎重を要しますが、金本位制とリアリズムの時代から、信用貨幣の時代へと「真」の意味合いが変わってきたという指摘だけは掛け値無しに興味深いです。

経済学の一般均衡理論の影響を受けたソシュールの言語学では、言葉と言葉の指し示すモノの関係のように「貨幣と財宝」の関係は必然的なものではなくなりました。岩井克人『貨幣論』とブロックチェーンを結び付けたいなら一読をオススメします。

フィンテックのなかのブロックチェーン

著者
長橋賢吾
出版日
2016-12-02

ビットコインの説明、国際送金などの具体的な使われ方の例、ブロックチェーンの説明、ビットコインとブロックチェーンが独立であるとあう説明、スマートコントラクトやR3、rippleなどに絞って紹介。フィンテックの可能性の広がりの中でビットコインとブロックチェーンを捉えたい人向き。細かいことや「深い」ことは他の本で補いましょう。

なお、そういう趣旨なので説明も超簡潔。ビットコインについては

「通貨は基本的には国家などによって価値を保証されています。たとえば日本であれば、日本銀行が発行する日本銀行券、造幣局が発行する硬貨がこれに相当し、税金・賃金などの金銭債務の強制的な弁済手段として利用されることから法定通貨とも呼ばれます。
一方、ビットコインの場合、こうした法定通貨と違い、国家等の第三者の権威による保証がありません。」
(『図解入門ビジネス 最新FinTechの基本と仕組みがよ~くわかる本』より引用)

と説明して、ブロックチェーンはこの「保証」のための仕組みであると説明。重要キーワードである「スマートコントラクト」や、ブロックチェーンを牽引する「R3 CEV」の説明も非常にわかりやすいのも魅力。
 

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