東日本大震災により原子力発電の恐ろしさが明るみに出ました。また、化石燃料がいずれ枯渇することも広く知られた事実です。これらの枯渇性エネルギーの問題点、そして新たなエネルギー開発方法について、分かりやすくまとめられた5冊を紹介します。
化石燃料等の使用により生じるCO2が地球温暖化の主な原因であるという説は、非常によく知られているのではないでしょうか。しかし、本書は冒頭からこの説に疑問を呈し、真実を見極めるよう読者に呼びかけます。
まず序章はCO2温暖化説を打ち破る引き金となった事件から始まり、ミステリー小説さながらの緊迫感に、専門的な内容であるのにも関わらずどんどん引き込まれていきます。驚くべきことに、CO2と温暖化の関連を示すグラフは、一部の科学者によってねつ造されていたのです。
- 著者
- 深井 有
- 出版日
- 2011-07-22
1章では、地球温暖化説の核心に迫ります。地球の気候変動には太陽活動が大きく関係していることや、これから寒冷化に向かっていく可能性など、常識と思われていたCO2温暖化説が覆されていくのです。そしてCO2が地球の気候に与える影響は少ないということがはっきりと述べられています。
2章では日本のエネルギー事情から始まり、化石燃料や原子力による発電の仕組みと問題点、そして、これからのエネルギー源である再生可能エネルギーについて解説されています。一般的に知られている太陽光や風力よりも、水素や藻類を利用したエネルギーに焦点が当てられており、とても興味深い内容となっています。
3章では水素の核融合を利用したエネルギー生産に関する話がメインとなっています。かなり専門的な内容ではありますが、分かりやすい図と丁寧な解説で専門外の人でも理解し易いように構成されています。
4章ではこれまでのまとめとともに、日本がCO2削減のために莫大な予算をつぎ込んでいる事実を示しています。また、最後に付録として、水と大気の流れなど地球環境に関する基礎知識が解説されています。
さて、本書にはCO2温暖化説を否定する話が何度も出てきますが、著者は決して化石燃料を使うことを推奨しているわけではありません。著者が恐れていることは、CO2問題の陰に隠れて、地震や原発事故など優先されるべき事柄が後回しにされてしまうことです。
CO2だけ削減していれば気候が安定するほど、自然は単純なものではありません。私たちは、大きく掲げられた分かりやすい目標に逃げるのではなく、最善の方法と優先すべき事柄を見極めていかなければならないのです。
温暖化の嘘に始まり、再生可能エネルギーの利用、さらには気候学にまで及ぶ、非常に充実した内容となっている本作品。冷静に現代のエネルギー問題を批評しながらも、文の端々にみられる著者の確固たる信念に心を動かされる1冊です。
高速増殖炉もんじゅをモデルとしたゆるキャラのもんじゅ君が著者とされているこの作品。もんじゅ君はツイッターにて原子力発電の危険性を発信し、再稼働の反対を訴え、フォロワー数は9万人を越えるほどの人気者となりました。
本書では、石油や原子力の代わりとなる再生可能エネルギーに関する事柄がまとめられています。解説者となるもんじゅ君を中心に、ソーラーくん、風力くん、小水力ちゃんなどの愛らしいキャラクターが、それぞれの利点や実例を紹介していきます。
- 著者
- もんじゅ君
- 出版日
- 2012-07-21
まず本を開いてみて驚くのは、水力発電や太陽光発電の迫力満点のカラー写真がページいっぱいに載せられていることです。それに続くもんじゅ君の説明も非常に分かりやすく、絵本を読むような楽しさがあります。
また、出てくる漢字には全てふりがなが付いており、固定価格買取制度などの難しい言葉には必ず丁寧な説明が添えられています。さらに、発電の仕組みなどもゆるキャラたちを交えたイラストで表現されていて、子供から大人まで、みんなが理解できるように工夫されています。
メインで紹介される太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマスのほかに、海流や温度の差を利用した発電や、サッカースタジアム内の観客の動きを利用した発電など、わくわくするような内容となっています。
そして電力を作り出すだけではなく、節電することの大切さやその方法を伝えることも忘れていません。本書を通して、ひたすらに脱原発を訴えるもんじゅ君の口からは、時にドキッとするような辛辣な言葉が発せられます。あの震災から時が流れても、原子力発電の恐ろしさが消えることはないのです。
「なにもいわないのは、いまの状態を「いいよ」ってみとめちゃうのとおなじ。」(『もんじゅ君とみる! よむ! わかる! みんなの未来のエネルギー』より引用)
平和を願うもんじゅ君の気持ちと、未来への希望が詰まったおすすめの1冊です。
レスター・R・ブラウン氏による『大転換 - 新しいエネルギー経済のかたち』をベースにつくられたブックレットで、79ページという持ち運びに便利な厚さにまとめられています。コンパクトでありながら内容は濃密で、非常に充実しています。
- 著者
- ["レスター・R.ブラウン", "枝廣 淳子"]
- 出版日
- 2016-01-09
著者がアメリカ人であることから、海外の情報が豊富で、世界と日本のエネルギー事情を比較しながら読み進めることができます。また、本書を作成するにあたり、日本の状況と課題についての章が翻訳者により追加されているため、原著を読んだことがある方にもおすすめです。
まず初めに、化石燃料や原子力への依存度の強さや、エネルギー消費量の推移などがグラフとともに分かりやすく示されており、現状のエネルギー利用方法では環境に負担がかかることが危惧されています。それらを改善すべく始まった、海外では既に再生可能エネルギーへの意欲的な取り組みの例まで網羅。実践例が出ているのも問題定義をした上では大事ですよね。
また、次章では石油や石炭、原子力をなぜ使い続けてはいけないのか、そしてそれぞれが地球や体に及ぼすリスクについても記載。そのほかにも先進国の交通事情や、国別の原子力発電機数などの紹介があり、さまざまな視点からエネルギー問題を学ぶことができます。
再生可能エネルギーを紹介する章では、太陽光、風力、地熱の国別の導入量の紹介や、利用量と技術において最先端をいく国の紹介がされています。また、2013年の時点で中国の風力発電量が原子力発電量を上回るなど、沢山の興味深いデータが集められています。
最後の章では、みるみる増加する海外の再生可能エネルギー利用に比べ、日本は少し遅れをとっていることが述べられています。しかし、東日本大震災以降は日本も確実に再生可能エネルギーの利用量が伸びてきており、未来への希望も示唆されているので、無闇に不安を煽るものではありません。その流れを促進するために何ができるのかを考えさせられます。
本書は、国ごとの詳細な情報がシンプルな図と表を用いて分かりやすくまとめられており、非常に読みやすいものとなっています。世界を知る上でも、まるで教科書のように実用的なブックレットとなっているのではないでしょうか。
同じような歴史をたどり、真面目で几帳面という気質から、日本人とドイツ人は何かと共通点が多いと言われています。しかし、再生可能エネルギーへの転換に関してドイツは日本よりもかなり進んでいるようです本書は、なぜドイツはエネルギーシフトにいち早く成功することができたのか、ドイツ在住の日本人ジャーナリストにより、数々の実例をもとに紹介されています。
- 著者
- 田口 理穂
- 出版日
- 2015-08-18
はじめに、ドイツが変わるきっかけとなった理由が紹介されます。1986年、ソビエト連邦(現:ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所で起きた、世界最大とも言われる原発事故です。2千㎞も離れたドイツでも放射能が検出され、市民は原子力発電の恐ろしさを思い知りました。
さらには、科学技術が発達していると思われていた日本でも2011年に福島原発事故が起き、多くのドイツ人に衝撃を与えました。既に脱原発の意識が高かったドイツ人ですが、これをきっかけに初めて反原発デモに参加した人も少なくないようです。
もちろん、福島の原発事故に誰よりも衝撃を受けたのは私たち日本人です。それではなぜ、日本は再生可能エネルギーの利用において、ドイツや他国に遅れをとっているのでしょうか?その答えとなるであろう、ドイツの市民や企業、そして政府の働きや考え方が、本全体を通して綿密に示されています。
また、本書ではパッシブハウスという、省エネに優れた家についてもかなり力を入れて紹介されています。寒さの厳しいドイツでは、暖房費の削減が大きな課題となっていますが、このパッシブハウスなら、暖房なしでも快適に過ごすことができるというのです。一見すると普通の家ですが、魔法のような機能を持っているとは驚きです。
住居だけではなく、パッシブハウスの幼稚園やスーパーまでもが登場します。また、それぞれの建物は写真付きで紹介されているので、とても分かりやすく読み進めることができます。その他にも、車を一切使わないカーフリーデーや、エネルギー自給自足の村、ハイブリッドバスやブレーキで電力を生み出す路面電車など、ドイツの素晴らしい工夫に驚かされます。
本書の中でも目を引くのが、電力会社が節電を積極的に呼びかけているという事実です。電気を使う量を減らすということは、自社の利益を下げるようなものでは?と思いますが、その答えもきちんと説明されています。
さて、ここまで成功例ばかり取り上げてきましたが、ドイツにも私たちと同様に再生可能エネルギーの価格の問題や、未解決の核廃棄物問題などが残されています。それでも、過去と向き合い、同じ過ちを起こさないようにするドイツ人の努力に私たちは多くのことを学べるのではないでしょうか。
タイトルにもあるとおり、45分で学ぶことができるよう、日本のエネルギー問題 についてコンパクトかつ明確に書き上げられています。本書は非常に読みやすく理解しやすいのもそのはずで、著者は高校の先生とのことです。適度にかみ砕かれた文章と、読み手にしっくりと伝わる言葉選びで、まさに1時間もしないうちにエネルギー問題について詳しくなることができます。
- 著者
- 小林 義行
- 出版日
- 2011-09-28
まずは、日本のエネルギー事情から始まり、原子力発電の歴史についての説明へと続いていきます。さらには原子力発電に関する基礎知識や電力供給の仕組みなどが紹介されています。電力供給については、発電施設と送電施設を分けることの必要性などにも言及されていて、よくニュースで耳にする電力自由化についても掘り下げて知ることができます。
そして、本書の中では「再生可能エネルギー」、「分散型電力ネットワーク」、「蓄電」がキーワードとなります。
著者がこの本の中で伝えたいことは、原子力発電の危険性や再生可能エネルギーの可能性についてです。また、私たちは自分たちが使う電力であるのに、あまりにも無関心なのではないかとも述べられています。政治的な問題や企業の利益のために、テレビではあまり報道されない隠された負の部分へと踏み込んでくれているように感じます。
本書の中で、「地球には人はいないほうがいいのか」という質問を著者が受けるシーンがあります。それに対する著者の答えはノーで、原子力の危険性や資源の枯渇について言及しながらも、未来への前向きな姿勢が伝わってきます。そして、単なる問題提起にとどまらず、詳しい解説、原因や解決策まで述べるのです。この1冊を読み終わった後、これからのエネルギー問題を解決すべく、動き出したくなること間違いなしです。
「排出量取引制度」や「固定価格買取制度」など、ニュースで耳にすることはありますが、その意味はあまり知られていないように思います。しかし、実際それらは自分たちの生活と密接に関係しているのです。まだ再生可能エネルギーについての発展が遅い日本ですが、確実に新しいエネルギー開発に向けて動き出しています。そして、それを実現するためには私たちの理解と支援が不可欠になるでしょう。ここで紹介した本は、それぞれの興味深いデータと魅力的な解説で、すぐにでも私たちにできることがあると教えてくれています。