佐々木倫子のおすすめ漫画ランキングベスト5!隠れたヒットメーカー!

更新:2021.12.15

『動物のお医者さん』、『おたんこナース』、『チャンネルはそのまま!』……。ドラマ化などで何となく聞いたことのある漫画作品を生み出してきたヒットメーカー・佐々木倫子。今回はそんな隠れた名作家・佐々木倫子のおすすめ作品をを5冊ご紹介します!

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聞いたことがある作品ばかり!ヒットメーカー・佐々木倫子

1980年に、白泉社より漫画家デビューした彼女。後に、小学館に移籍し、青年誌をメインに活動しています。北海道旭川市出身であるためか、作品の舞台が北海道であることや、作中に北海道ならではのモチーフが使われることが、多く見受けられます。

何といっても最大の特徴は、しっかりとした取材に基づいて描かれていると感じられる、描写力と言えるでしょう。ある特定の職業や業界を描きながらも、決して説明的ではなく、表面だけを撫ぜるような表現でもない、具体的なエピソードや、本質の部分が、様々な表現方法で各作品に散りばめられています。

そして、現状をありのままに伝えるだけではなく、個性豊かなキャラクターや、作者独自の視点によって、誰が読んでも面白いコメディ作品に仕上げています。その手腕は、佐々木倫子の右に出る者はいないといっても過言ではないのではないでしょうか。

素材を最大限に活かして、極上のエンターテイメント作品に仕上げることができる、そんな佐々木倫子の作品を5冊ご紹介します。

5位:テレビ局のバカキャラを佐々木倫子が描いた!

本作は、北海道のローカルTV局「北海道☆(ホシ)テレビ」が舞台のストーリー。主人公である新入社員、雪丸花子を中心とした、上司や同僚、ライバル局までも巻き込んが、テレビ業界コメディです。

主人公である雪丸ですが、採用試験にはヒッチハイクで訪れたり、採用後も、後先考えずに目の前の仕事を遂行したりと、かなり破天荒な性格。そんな彼女がなぜ「北海道☆テレビ」に採用されたのでしょうか?

著者
佐々木 倫子
出版日

なんとその理由は、代々存在する「バカ枠」に該当したから!花丸と同期入社の山根は、彼女とは真逆の、几帳面で、超が付くほど優秀人間。そんな彼が、花丸の行動が理解できず悩んでいると、☆テレビのディレクターである小倉が、「バカ枠」の存在について、暴露します。

「バカは失敗を恐れない!化けてストライカーになることがある!」(『チャンネルはそのまま!』から引用)

それこそバカ枠の存在意義なのです。しかし、小倉自身も生粋の「バカ枠」該当者。バカ感が溢れた言動がまた、ストーリーの面白さに拍車をかけます。ちなみに雪丸が「バカ枠」なのに対し、山根は「バカ係」と言われているお世話係。結局は雪丸に振り回される山根の姿を、面白おかしく表現されています。

当の雪丸は、入社後、しょっぱなから、大雨による増水のレポートを担当し猿と奮闘。その後も、失踪したオオトカゲの追跡・捕獲、スキージャンプ選手の密着取材でうっかりジャンプ台から滑り出してしまうなど、常にその天然さを発揮し、周りを困惑させます。

取材対象さえも巻き込んでトラブルを起こし、迷惑をかけながらも、しっかりと体を張って「結果良ければ、全て良し」としてしまう実力と勢いは、立派なもの。雪丸、山根や小倉をはじめとする個性的なキャラクターの存在はもちろん、それぞれのエピソードごとに、しっかりとオチがついたコメディの神髄が散りばめられた良作となっています。

4位:クールなスパイの世界を佐々木倫子が描くとどうなる?

この作品は、『花とゆめ増刊号』、『花ゆめEPO』に、1982年から1988年まで連載された、連作短編となります。

今回紹介する他の作品と異なり、日本ではない国が舞台となっているということや、空想的な設定で描かれているという点で、とても新鮮味があります。しかし、ほぼ思い込みによって突っ走る主人公や、それに振り回されるキャラクターの存在など、佐々木倫子独特のコメディ要素は健在です。

著者
佐々木 倫子
出版日

某国が公にスパイを募集したことからこの物語が始まります。単純に、「スパイってかっこいい!」と思った主人公は、友人をスカウントしに来た人物を尾行し、スパイ養成学校に侵入、偶然にも試験に合格してしまいます。そして「ドナルド」というコードネームを与えられ、彼のスパイとしての華麗な?日々が始まります。

本来であれば、過酷で厳しいはずのスパイの世界。しかしドナルドは寮で同室となった、優秀な委員長や、養成学校の校長までを巻き込んで、騒動を起こしながら事件を解決に導きます。

スパイ養成学校という設定から、ミステリーの要素もふんだんに盛り込まれています。そこにドナルドのマイペースが故の奇想天外な行動がうまく融合した読み応えたっぷりの作品です。

また、外国が舞台であるはずなのに、おかしなモチーフが当たり前のように登場します。冒頭からキタキツネが登場したり、防寒具の「タコ帽子」や、十字街といった、北海道を連想させる要素が散りばめられていたり、とあるエピソードでは筑波研究学園都市をモデルにした舞台が描かれています。

他にも、所々にいかにも日本的な小道具が描かれている点が、スパイの世界という非現実的な設定でありながらも、違和感無く、コメディとして楽しめる要素の一つなのではないでしょうか。

3位:ドタバタ、時々感動。佐々木倫子のおすすめお仕事漫画

そのタイトルの通り、新米看護師である似鳥(にたとり)ユキエを主人公とした、看護師の実態を描いた作品です。生死に関わる医療現場とコメディの両立は、非常に難しいように思えますが、しかし、そこはさすがの佐々木倫子。現実をしっかりと捉えた上で、そこに立ち向かい、奮闘する姿を笑いに変えながら表現しています。

著者
佐々木 倫子
出版日

ユキエは、ズボラで短気、しかし基本的には楽天的という性格で熱血漢。本作はそんな彼女が時にはトラブルを起こしながらも、問題に真っ直ぐに向き合い、成長していく物語となっています。

新米であるユキエを支える先輩看護師たちが、皆個性的で、この作品を盛り立てる要素となっています。身近にいる患者さんにすら、看護師の仕事を理解してもらえないというユキエに対し、主任はこんなアドバイスをします。

「他人から評価してもらえなくたって、自信と誇りをもって仕事すればいいじゃないの。」(『おたんこナース』から引用)

この言葉は他のどんな職業にも通じるような、素晴らしいアドバイスではないでしょうか。

一方で、「看護って何ですか?」というユキエの質問に対し、先輩看護師である堀田は、こう言い放ちます。

「ビジネスよ!決まってるでしょ、バカ!」(『おたんこナース』から引用)

まるで身も蓋もないような発言ですが、ビジネスイコールプロであると考えると、なんとも核心をついたセリフに感じられるのではないでしょうか。

時には涙しながらも、最後には前向きな気持ちになれる『おたんこナース』は、働くことの楽しさを思い出させてくれる作品です。

2位:この世の終わり!?佐々木倫子のぶっ飛んだ料理漫画!

タイトルに含まれる、「Heaven」(天国)や、本作の舞台となるレストランの店名、ロワンディシー(この世の果て)。これらの単語から、一体どのようなレストランなのか、想像できるでしょうか?なんとロワンディシーは、墓地の一角にあるフレンチレストランなのです。

著者
佐々木 倫子
出版日

「『ロワンディシー』(この世の果て)という名のそのレストランは、どの駅からも遠かった。

繁華街からも 住宅街からも 利益からも遠く

なにより理想のサービスから遠かった 果てしなく」(『Heaven?―ご苦楽レストラン』から引用)

冒頭から、このように語られるように、立地は最悪、しっかも理想のサービスからもほど遠いという、ロワンディシー。これだけでも、一体どんな物語なのか、興味を惹かれます。

サービスマンであるにもかかわらず、愛想笑いができない主人公の伊賀をはじめとし、本業は小説家で、思い付きや勢いでスタッフを困惑させる、オーナーの黒須。腕は確かなものの、勤めたレストランは必ずつぶれてしまうというシェフの小澤や、優秀な銀行マンでありながら、趣味の資格取得に没頭するあまり窓際族となったソムリエ修行中の山懸など、訳あり、難ありの登場人物達が、このレストランを立ち上げました。

オーナーの無計画さによって、立ち上げ準備の段階から、そしてオープンしてからも、ロワンディシーは何度も窮地に陥ります。それでも、時折発せられるオーナーの核心を突いた発言によって、奮起し、それぞれが独自に、勝手に工夫を凝らすことによって、危機を乗り越えていく様が、テンポよく描かれます。

「伊賀くん、レストランで一番大事なことはなにかわかる?」

「え…いいえ。」

「距離感よ。客とスタッフとの適度な緊張感と距離感よ。そしてスタッフに必要なのはオリジナリティー」(『Heaven?―ご苦楽レストラン』から引用)

オーナー自身の需要によって作られた、一見無茶なスタイルのレストランですが、ついつい行ってみたくなってしまう、そんな魅力たっぷりの作品となっています。

『Heaven?』については<佐々木倫子『Heaven?』の見所全巻ネタバレ紹介!ドラマ化漫画が面白い>の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。

1位:佐々木倫子の代表作!普及の名作コメディをおすすめ!

この作品は、北海道札幌市のH大学獣医学部を舞台に、獣医をめざす主人公、通称ハムテルや、彼を取り巻く家族や友人、そして動物たちの日常を、一部完結型で描いた作品です。

チョビという名のシベリアンハスキーと出会ったことがきっかけで、ハムテルは獣医を目指すことになります。本作が連載されていた頃にはハスキー犬が一大ブームとなるほど、社会に影響を与えた作品です。一体なぜそこまで本作が広く知れ渡るようになったのか?その魅力の一部をお伝えしたいと思います。

著者
佐々木 倫子
出版日

まずは、やはり登場する動物たちの可愛らしさが第一に挙げられます。キャラクター化された可愛らしさではなく、佐々木倫子の画力によって、実際の動物のように忠実に描かれているのですが、その表情や仕草が、絶妙な愛らしさを醸し出しています。

さらにそれだけではなく、彼らの発する人間の言葉に翻訳された台詞が、全く違和感無く、伝わってくるのです。これは、佐々木倫子の観察力、想像力の賜物と言えるのではないでしょうか。

そして、ハムテルをはじめとする登場人物たちの、独特でありながらも言い得て妙な言葉の数々も、本作を楽しめる要素の1つと言えるでしょう。

例えば、ハムテルが小学の時に書いた詩ですが、このようなことが書かれています。

「犬の口にはゴムパッキンが付いている」(『動物のお医者さん』から引用)

犬の口の質感を表現した面白い言葉選びです。他にも、ハムテルの親友である二階堂が、ネズミ嫌いであるが故に実験中に発する台詞や、H大付属家畜病院の病院長で、教授である漆原が考えた語呂合わせの「名作」など、もし動物に全く興味の無い人が読んだとしても、キャラクター達の変人ぶりを楽しめるでしょう。

獣医学部という舞台に、動物を含めた、個性的すぎる数々のキャラクターたち。それらがユーモアと融合して繰り広げられる本作は、佐々木倫子ワールドを存分に味わうことができる傑作です。

『動物のお医者さん』の名言を集めた<漫画『動物のお医者さん』の名言を紹介!もふもふのチョビがかわいすぎる!>の記事もおすすめです。

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