墓地の裏にひっそりと佇むフレンチレストラン「ロワン ディシー」。まさかの立地、迫るオープン日、さらに従業員はフレンチ初心者!? 数々の問題点を抱えながらも、従業員とお客の人間ドラマがくり広げられていきます。 週刊「ビッグコミックスピリッツ」で199年から2003年にかけて連載されていた、漫画『Heaven?』。コミカルな作風で、軽やかに読み進めることができる作品です。今回は、文庫本版の全4巻分をご紹介。あなたも、本作の魅力にはまってみては? ちなみに本作は、2019年7月にドラマ化されることが決定!要注目の話題作です。
レストランのホールで働く、伊賀観(いが かん)。彼はウエイターで接客業をしているのに、笑うのが苦手で愛想のない性格です。ウエイターとしての能力は決して低くないのですが、その性格のせいで、レストランでトラブルを起こしてしまいます。
そんななかで出会ったのが、黒須仮名子という女性。フレンチレストランを新しくオープンするという彼女は、客に対して毅然とした態度で接客する伊賀をスカウトし、彼もまた黒須の理想に共感し、彼女のレストランで働くことになるのでした。
Heaven? 1 (小学館文庫 さF 6)
2010年02月03日
本作は、そのフレンチレストラン「ロワンディシー」を舞台に、従業員と客達の交流をメインとしてさまざまなエピソードが描かれていきます。
主人公・伊賀は笑うのが苦手で、一見するとクールなキャラクターかと思うのですが、読んでいるうちに彼がただ感情表現が苦手なだけで、内には繊細な感情や優しさがあることを感じられます。
そんなギャップのある彼を中心に、ワンマンなオーナー・黒須のわがままや、それに振り回される従業員達のバタバタなどは、楽しい笑いを引き出してくれるでしょう。
なんだかんだといいながらも、結局はよいチームワークを発揮する「ロワンディシー」の面々の物語に、読めば読むほど愛着を抱くこと間違いなしです。
そんな本作は、2019年7月に『Heaven?~ご苦楽レストラン~』の題でテレビドラマ化されることが決定!キャストには石原さとみや福士蒼汰が抜擢され、主題歌はあいみょんの書き下ろし新曲が起用されました。こちらも要注目です!
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本作の魅力は、「この世の果て」という意味のフレンチレストラン「ロワンディシー」を舞台にした物語と、何よりも個性豊かなキャラクター達にあります。
伊賀と黒須はもちろんのこと、他にも注目キャラ多数です。
店長・堤計太郎(つつみ けいたろう)は、もともと牛丼屋で働く優秀な店員だったのに、賄いが牛丼なのに飽きたという理由だけで「ロワンディシー」に転職してきます。
人当たりのよい笑みと、渋い雰囲気が特徴の山縣重臣(やまがた しげおみ)は、元銀行役員のソムリエ。資格マニアで、ソムリエ資格を取るために実務経験を積みたいからという理由で働いています。
さらに、勤めたレストランがことごとく潰れてしまう疫病神のような一流シェフ・小澤や、能天気な霊感少年・川合太一(かわい たいち)など、とにかく一癖も二癖もある人物ばかりなのです。
そんな彼らが巻き起こす物語も、やはり癖の強いものばかりなのです。
伊賀観は、フレンチレストランのホールで働く青年。レストランに勤めてすでに3年になりますが、彼には接客業としては致命的な点がありました。
それは、笑うのが苦手で愛想がないこと。そのことがきっかけで店でトラブルを起こしてしまった彼は、ある女性と出会い……!?
Heaven? 1 (小学館文庫 さF 6)
2010年02月03日
主人公・伊賀が、これからの物語の舞台となるフレンチレストラン「ロワンディシー」に入店するところから始まる本巻。彼は笑うことが苦手で、仕事でもなかなか笑顔を作ることができません。そのうえ融通も利かず態度もぶっきらぼうなので、何かと誤解を生むこともしばしば。
しかし、客の理不尽さに折れることなく毅然とした態度を取ったところを、たまたま来店していた黒須仮名子に認められ、「ロワンディシー」にスカウトされました。
彼をスカウトした黒須は、「ロワンディシー」のオーナーです。強気でワガママなタイプですが、客との距離感を大切にした理想のフレンチレストランを作ることを志し、店をオープンさせました。
彼女の理想に共感した伊賀は、3年間勤めた店を辞めて「ロワンディシー」へと向かいます。しかし、教えられた場所にあったのは、なぜか墓地。途方にくれる伊賀でしたが、迷い込んだ墓地の裏にあったのは、一面に広がる花畑と、その奥にあるフレンチレストランで――。
もちろん、この作品はオカルトではないので、フレンチレストランはちゃんと現実の世界にあるものです。しかし、不気味なシチュエーションと、真顔で「レストランに行ったら死ぬのでは……?」と考える伊賀に、思わず笑いがこみあげてくる方も多いはず。
ちなみに「ロワンディシー」とは、「この世の果て」という意味です。伊賀や黒須を始め、個性的な従業員達によってくり広げられる物語の始まりを、ぜひ読んでみてください。
ふと、大学受験のために上京してきた時のことを思い出した伊賀。あの時、ついてこなくていい、と言う彼を無視して母はついてきたのでした。
そんな母の強引さと、オーナー・黒須の姿を重ね合わせた彼は……!?
- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
大学受験の際、渋る伊賀のことはまったく気にせず、強引に東京へ一緒にやってきた母。最初は、人生の大勝負と慣れない東京で迷子になったら大変だ、などと言っていましたが、実は、彼女はディズニーランドへ行く気満々でした。自己中心的で周りを振り回すあたりは、黒須のキャラクターと被るものがあります。
だからこそ伊賀も、黒須の姿に重ねて母を思い出し、ついでに自分の過去のことも思い出したのでしょう。そんな彼の過去から始まる本巻では、彼の両親が登場する他、黒須が何者かであるかが明かされます。
時々、物事の本質を突く言葉を言うことも多い黒須の正体は、ミステリー作家でした。作家としてはそれほどの知名度はないものの、過去にはそこそこ売れた作品もあったらしく、だからこそ店をオープンさせることができたようです。
作家だといわれると、彼女の言動にも妙に納得できる、と思う方も多いのではないでしょうか。
また、個性の強いキャラクターのなかでも、能天気で霊感の強い美容師上がりのウエイター・川合太一や、腕はよいのに働いていた店が次々につぶれる不運なシェフ・小澤など、他のキャラクターの動きもますます大きくなっていきます。ぜひ、そちらにも注目してみてください。
フレンチレストランとはいえ、お客様から箸を求められれば提供します。ジュースやウーロン茶を求められれば……煎茶を求められれば……。
お客様が喜んでくださるなら何でもしたいと考える伊賀やスタッフ達でしたが、求められるままに応えるだけがホスピタリティではない、とオーナーに言われて……!?
Heaven? 3 (小学館文庫 さF 8)
2010年03月13日
相変わらずのワンマンっぷりを発揮する黒須ですが、そんな彼女がこき使われてしまう展開もある本巻。
お客様が喜んでくれるなら、どんな要望にも応えてあげたいと考える伊賀達ですが、お客様が求めるからといって料理に合わない飲み物を出してもいいのかなど、すべてに応えることが正しいサービスなのかどうかという問題に直面します。
店には店のこだわりやカラーというものがあるので、それを守るのもまた、レストランとして正しい在り方です。軽くて笑えるノリのなかで描かれるそういったテーマは読みごたえがあって、つい引き込まれるものがあるでしょう。
また、黒須をこき使う話では、これまでさんざん彼女のワガママを見せつけられてきた読者にとっては、ちょっと気持ちがスカッとする、なんてこともあるかもしれません。
他にも、「カエルの恩返し」といえるような少し不思議な話や雪まつりの話があったり、シェフの小澤がメニューに悩んだり、川合が霊と会話したりなど、ジャンルもキャラクターもさまざまな本巻。それぞれのキャラクター像もつかめてきたところで、ますます物語を楽しむことのできるでしょう。
「ロワンディシー」でおこなわれることになった結婚式。新婦がお金持ちだということを知った黒須は、もっと他のよいレストランでやればいいのに、と毒づきます。
しかし、どうやら新婦と新郎には、それぞれ秘密があるようで……?
- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
- 2005-02-28
本巻は、レストランでおこなわれる人前式の結婚式の話から始まります。人前式というのは、チャペルや神社で神に誓うものとは違い、列席者を前に将来を誓い合う結婚式のことです。そのため今回の話のように、チャペルなどではなくレストランでおこなうことができます。
しかし、どうやらこの結婚式、何やらすべてがお祝いムードという感じではありません。新婦の父親が結婚を快く思っていなかったり、新郎にも何やら秘密があるよう。そのうえ外は嵐という、なんとも不穏な空気なのです。そして、遂には結婚指輪が紛失するという事件が発生してしまうのでした。
割とミステリー色の強い物語になっていて、次々に明かされる秘密や人間ドラマに、思わず引き込まれて読んでしまう方も多いでしょう。
本巻では、他に収録されている話でもミステリー風の話が多い印象もあり、謎解き系が好きな方であればさらに面白く読むことができるかもしれません。
かといって物語がシリアスになることはなく、端々ではキャラクター達が笑える会話をしたり動きをしたりしているので、最後まで軽やかに読むことができます。
いかがでしたか?墓地の裏にあるレストランという設定と、個性豊かなキャラクターの数々が織りなす本作『Heaven?』の空気感は、他の作品にはない独特なものです。クスクス笑いながら読むことができるので、穏やかな気持ちで読みたい方にオススメです。
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