テレビドラマ化もされた人気漫画『動物のお医者さん』。札幌市にある大学を舞台に、獣医師を目指す学生と教授、そして愛犬のシベリアンハスキー「チョビ」の日々をコメディタッチに描いています。今回は、たくさん笑えてジーンと泣ける本作の名言をご紹介していきます。
佐々木倫子が描く本作は、1988年から「花とゆめ」で連載されたコメディ漫画。基本的には1話完結型で、獣医を目指して奮闘する学生たちの日常を描いています。
動物を扱った作品はデフォルメ体で表されることが多いですが、本作に登場する犬や猫たちは写実的に描かれており、現実的な「あるある」や可愛らしさを見ることができます。その一方で彼らの気持ちもコマ内に記す演出がされているので、どんなことを考えているのかわかるのもポイント。
売り上げはなんと累計2000万部以上。シベリアンハスキーブームを巻き起こし、モデルとなった獣医学部の受験率も跳ね上げました。今回はそんな本作のキャラクターたちが残した名言をご紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
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- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
主人公の西根公輝(にしねまさき)は大学生。「ハムテル」と呼ばれており、まだ若いものの妙に落ち付いた性格をしています。同級生の二階堂とともに学内を歩いていたところ、個性的なことで有名な漆原(うるしはら)教授と遭遇しました。
成り行きからシベリアンハスキーの子犬を押し付けられ、飼うことになり、獣医になる道を選びます。
本作はそんなハムテルと二階堂、そしてシベリアンハスキーの「チョビ」の日常の物語です。
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ハムテルと二階堂が、グロテスクだから……と解剖室のそばを逃げるようにとおり過ぎた時のこと。動物のお墓がある場所に出ました。
そこには後々2人の恩師となる漆原教授と、血で汚れた白衣を着た集団がいます。教授は子犬を抱いて「捕まえたぞ」と言い、解剖室へ向かおうとしていました。
ハムテルは子犬を実験に使うのではと危惧し、思わず声をかけてしまいます。
「かわいそうだって言うのかね。じゃあキミは模型の勉強だけで獣医になったとき、病気が治せると思っているのかね。それともキミが実験台になるっていうのかね。キミのうちはアパートかね」(『動物のお医者さん』1巻より引用)
二階堂は不穏な空気を読み、口ごたえするなと注意しますが、教授は続けてこんな予言を残しました。
「君は将来……獣医になる!!」(『動物のお医者さん』1巻より引用)
そして「カシオミニ」という計算機を賭けるというのです。この賭けと教授の勢いにのせられ、この日からハムテルは子犬のチョビを飼うことになりました。
本作の始まりともいえる重要な言葉。そして教授の予言とおりハムテルは獣医の道を歩むことになるのです。
この言葉はハムテルが二階堂に向けて放った言葉です。
二階堂は、大を何個つけても足りないくらいの「ネズミ嫌い」。しかし獣医を目指す身として、ネズミは避けてはとおれません。寄生虫学実験のためラットを使用する授業が目前に迫っていました。
休んでしまおうかと思案する二階堂を見て、ハムテルはこれまでどうやってネズミを避けてきたのかと、彼の教科書を開きます。するとそこには……
「私はリス しっぽをそられたの」(『動物のお医者さん』1巻より引用)
ネズミに注射を打っている写真に添えられた文字を見て、ハムテルは呆れてこう言いました。
「欺瞞だ、自分を騙している」(『動物のお医者さん』1巻より引用)
とはいえ、ネズミを回避する術を教えてあげるハムテルは、やっぱり二階堂のよい友人です。いざ実験をする際には、こんな言葉もかけていました。
「二階堂、良く聞け。これはリスだ。その証拠に茶色いし、しっぽに毛が生えているし、おかしくもないのに目が笑っている。だから触っても大丈夫なんだよ」
「先生、ぼくはリスでやります!」(『動物のお医者さん』1巻より引用)
結局は二階堂の欺瞞に乗ってあげた、ということでしょうか。
- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
- 1990-04-01
授業中に運悪くネズミが出没。最初こそは他の同級生たちもネズミ捕りを手伝ってくれていましたが、やがてみんな帰ってしまいます。
二階堂は、紙が擦れる音ですらネズミの足音だと怯えるようになってしまいました。
そんな時、ついに目の前に元凶が。そのネズミは子連れでした。ここで繁殖をしていることを知り、二階堂はパニックに。
「戸棚の裏はネズミの卵でいっぱいだー!!」(『動物のお医者さん』より引用)
そもそもネズミは哺乳類なのですが……これを聞いた漆原教授は、「留年させるぞ」と言っていました。
ハムテルと二階堂がいつものようにチョビの散歩をしていると、新顔の犬を発見します。穏やかな顔つきをした、愛らしいプードルのような白い犬。
二階堂は思わず、「チョビと比べても大人しそうだ」とつぶやきます。するとハムテルはこう返しました。
「ほかにどんなかわいい犬がいたとしても、チョビは特別で他の犬とくらべることのできないうちの大切な犬なんだよ」(『動物のお医者さん』5巻より引用)
飼い主の愛がわかるまさに名言。オチとしては、「と機会があったら言ってやらないとだめだな」と続けて呟くのですが……。この会話がまったく聞こえてないチョビと、「今言ってやれ!」と怒る二階堂のやり取りが漫才のようです。
- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
- 1991-03-01
ある日、ブッチャーという白人の男性から、チョビが「犬ぞりレース」へスカウトされました。ついでにハムテルはマッシャー(操縦者)にスカウトされ、彼らは初めての犬ぞりに挑戦することに。
ブッチャーが連れてきた、気性の荒いシベリアンハスキーのシーザーと出会います。
これがとんでもない問題児で、走っている最中も隣にいる仲間にちょっかいをかけたり、目の前に喧嘩をしたい相手がいればコースを無視して飛びかかってしまったり……。
しかしやる気とスピードはピカイチで、いつでも「オレはやるぜ」と遠吠えをかますのです。
初登場時はどうなることかと思いきや、物語が進むにつれて可愛らしく見えてくるのが不思議なところでしょう。
チョビがハムテルの元にやってきたばかりのころ。まだ子犬だったチョビは、自分が楽しいと思うことばかりを優先し、ミケと遊ぶ際も全力でした。本人はアマガミのつもりで噛んでもミケにとっては大ダメージなのです……。
「かげんして噛め言うとるやろ。あそびにはルールいうもんがあるんや。破ったら痛い目にあうで、覚えとき!」(『動物のお医者さん』2巻より抜粋)
教育的指導を忘れないミケ。姉御肌な一面が見れる名シーンでしょう。
- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
- 1989-08-01
チョビの可愛らしさがこれでもかと詰まったひと言。ハムテルに話をふられ、周りがそう言うのなら……とすぐに流されてしまうのがたまりません。
このほかにもチョビは「あそぼ」を連発したり、悩んで自問自答しているハムテルに「そう?」と首をかしげて傍にいたり、苦手な絡み方をされても「やーん」ですませたりと、とにかく可愛い。喧嘩が嫌いで心が優しいのです。
二階堂や、ハムテルたちの先輩の菱沼からも「絶対に怒らない」と信頼されていて、本人は「そうかなあ」と疑問をもちつつ、みんなが言うなら「そうかな……そうかも……」と流され、幸せに日常が過ぎていきます。
チョビがまだ遊びになれていない頃、初めてハムテルがボール遊びを提案したシーンでの言葉です。
ハムテルとチョビがボール遊びをしている時のこと。チョビは、ハムテルが投げたボールを取って戻ってくることを覚えます。しかし、ハムテルがボールを受け取れば、そのまま片付けられて遊びが終わってしまうことも覚えました。
するとチョビは、ボールを取って彼のそばまで戻るものの、渡そうとはしません。これだけでも十分可愛いですが、ハムテルが踵を返すとあわてて足元にボールを落とすのです。しかしハムテルが取ろうとすれば前足で押さえ……「とってほしいけどとっちゃいや」と駄々をこねる姿がたまりません。
- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
- 1992-01-01
清原は、ハムテルと二階堂の同級生の男子学生。少々ケチな性格をしていて、お金にがめついです。平九郎(へいくろう)という犬を飼っている愛犬家でもあります。
ある日、学内で生徒たちの血液検査をおこなった時のこと。採取した血を運んでいた菱沼が事故に遭い、ハムテル、二階堂、清原、菱沼のものがごちゃ混ぜになってしまいました。
全員通過するだろうと楽観視してそのまま提出したから、大問題に……。なんと、二階堂のものとされている血液から、白血球の大きさが人間と違うという結果が出て、センターの医師たちが大慌て。極秘の会議が開かれてしまいました。
ひとりの医師が犬の血液だと気づいて、さらに大問題に発展します。
どうやらそれは、清原が自分のものと偽って提出した平九郎の血液だと判明。なぜ獣医にかからないのかとお叱りを受けると、清原はこう言いました。
「それにしてもどうしてオーソドックスに獣医にかかるという方法を選ばなかったんだ」
「お金がないならカンパという方法だって……」
「金はある。けど払うのがイヤ」(『動物のお医者さん』1巻より引用)
彼の性格がわかるある意味名言でしょう。見方を変えれば、自分の体調よりも愛犬の体調を気にかけているといえなくもないですが……。
とにかく言動がゆっくりなハムテルたちの先輩、菱沼。いつもぼんやりしている彼女に、天敵ともいえるライバルが現れました。
菱沼とは対照的にきびきびと仕事をこなし、研究室もお金持ち。お互いに嫌味ばかり言っています。菱沼は、ある日ライバルから正論と嫌味を浴びせられ、堪忍袋の緒が切れてしまいました。
「相変わらずとろい喋り方ね。口にハエがとまるんじゃないの?」
「失礼ねッアタシだってはやく喋ろうと思えば喋れるのよッ」(『動物のお医者さん』3巻より引用)
菱沼にもやり返す精神があったことい一同は感激。とはいえこの後すぐに「考えるのが追いつかない」となってしまうのが彼女らしいところです。
- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
- 1994-01-01
ハムテルのポリシーは、「ギリギリでもいい、絶対に試験に落ちないぞ」というもの。ここまで単位を落としたことも追試を受けたこともない、ある意味優等生です。
そんな彼を見た二階堂は、「お前は立派だ、勉強の好きな奴はいいよな」と嫌味を言います。
「好きじゃないからさっさと片付けて手を切りたい。ドイツ語を2回もやったおまえのほうが勉強好き」(『動物のお医者さん』1巻より引用)
なるほど……これぞ名言だといえるかもしれません。究極の勉強嫌いが辿りつくのがハムテルのやり方かもしれませんが、こんな返しがすぐに出てくるあたり、やはり頭はよいのではないでしょうか。
ただハムテルは本番に弱く、試験で答案用紙を1つずらしで記入してしまうという凡ミスを犯すのですが、この時もギリギリで通過。ポリシーは守られました。
とうとう獣医として開業を考え始めたハムテルと二階堂の2人。二階堂は跡取りのいない医院を継ぐことになりました。しかしそこは、ハムテルの家の近くにあり、ライバルになってしまうことが判明します。
この状況に、二階堂は青ざめました。知り合いから「2人でやっていくのだと思っていた」と言われると、「ハムテルの足手まといになるまいと思って」と気持ちを吐露します。
そんな彼の言葉を聞いたハムテルがこう言うのです。
「オレは足手まといなどと思ったことはない」(『動物のお医者さん』12巻より引用)
本当はお互いに一緒に病院を営みたいと考えていたにも関わらず、すれ違ってしまっていた2人。この後彼らがどのような選択をするのか、気になりますね。手に汗握る結末をぜひ見届けてください。
- 著者
- 佐々木 倫子
- 出版日
- 1994-05-01
主人公のハムテル、優柔不断で優しい二階堂、そしてもふもふでキュートな愛犬チョビの騒がしくも愛しい日常の物語『動物のお医者さん』。名シーンや名言、または迷言だらけなコミックスです。ぜひご一読ください!
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