2000年代後半から日本でも子どもの貧困問題が取りざたされています。豊かな先進国である日本国内で本当にそんな状況があるのでしょうか。それともこれは一部の特別な問題なのでしょうか。今回は日本が抱える子どもの貧困の現状がわかる5冊を紹介します。
『子どもに貧困を押しつける国・日本(2014/10)』は著者山野良一が長年、児童福祉士として体験から、日本の子供たちに起きている貧困問題の実情を解説、その解決策を探りながら問題提起している本です。
- 著者
- 山野 良一
- 出版日
- 2014-10-15
発展途上国の問題と思われがちな子どもの貧困問題ですが、日本では実に子どもの16.3%、6人に一人が貧困状態にあるといいます。(『厚生労働省公式発表「子供の相対的貧困率」2014年7月発表』より参考)実感がわきませんが、そのわかりづらい現実が日本の貧困問題の特徴だと著者は警笛を鳴らします。
「現在の日本のような豊かな社会では、子どもの貧困は「見ようとしなければ見えないもの」になっていくのかもしれません」(『子どもに貧困を押しつける国・日本』より引用)
あらためて、この問題を掘り下げ、様々な資料やデータで現実の貧困問題を取り上げます。今、子どもたちに起きている問題の根底に気づかされ、社会の一員として何をするべきなのか。貧困という言葉のイメージと意味を考えるきっかけになる本です。
『チャイルド・プア~社会を蝕む子どもの貧困~(2015/4)』は貧困問題に直面した実際の現場を取材して見えてきた、子どもたちの今を知る本です。
子どもの貧困問題対策の最前線として支援活動を行っている団体の取材、学校現場でのアンケート、スクールソーシャルワーカーの取り組みなど、現在取り組まれている対策の現状も取材しています。貧困状態に陥った子どもたちの実例も書かれていて、どれも胸が苦しくなります。車上生活を強いられて学校にいけない子や、親を失い祖母の年金収入だけの状況で貧困生活を強いられた子、親の失業が原因でホームレスになってしまった子など。それらの例から見えてくるのは、親の都合とその犠牲になる子どもたちです。
「若者が活力を失った社会はもろい。社会保障にかかる費用も増大する。その代償を払うのは、ほかでもない私たちだ。子供の貧困は、社会を蝕む」(『チャイルド・プア~社会を蝕む子どもの貧困~』より引用)
蝕まれていく現実に目を背けず、そこから何を学ぶべきか考えさせられる作品です。
- 著者
- 新井直之(NHKディレクター)
- 出版日
- 2014-03-15
貧困状態に陥った子どもたちの実例も書かれていて、どれも胸が苦しくなります。車上生活を強いられて学校にいけない子や、親を失い祖母の年金収入だけの状況で貧困生活を強いられた子、親の失業が原因でホームレスになってしまった子など。それらの例から見えてくるのは、親の都合とその犠牲になる子どもたちです。
「若者が活力を失った社会はもろい。社会保障にかかる費用も増大する。その代償を払うのは、ほかでもない私たちだ。子供の貧困は、社会を蝕む」(『チャイルド・プア~社会を蝕む子どもの貧困~』より引用)
蝕まれていく現実に目を背けず、そこから何を学ぶべきか考えさせられる作品です。
『子どもの貧困II――解決策を考える(2014/1)』は子供の貧困問題を研究する著者阿部彩の『子供の貧困』の続編です。正編は子どもの貧困元年と言われる2008年に発表されました。新たなデータ、解釈を盛り込んでだ、『子どもの貧困―日本の不公平を考える』グレードアップした内容になっています。
- 著者
- 阿部 彩
- 出版日
- 2014-01-22
子どもの貧困問題の実情と対策を社会制度の是非に焦点をあてた本書。諸外国のデータとの比較や対策を例にして、給付制度などの社会保障制度の実際とその検証結果をまとめています。日本だけではなく世界的に問題になっていることがわかるのではないでしょうか。
「子どもの貧困に対して、具体的にどのような政策を打っていけばよいかという問いに対しても、私を含め、「霞が関」も社会学者、教育学者、経済学者といった有識者も、決定打となる答えを示せてないのである」(『子どもの貧困II――解決策を考える』より引用)
これまで政府や自治体が行ってきた政策を検証し、問題点を提起しています。また、それだけではなく、更に必要な制度、政策をも提案する筆者。この問題の根本を理解し解決策を模索するには必読な本と言えます。
『貧困の中の子ども(2014/1)』は下野新聞で連載された貧困問題を取り扱ったシリーズを書籍化したものです。『貧困ジャーナリズム大賞2014』や『新聞労連ジャーナリズム大賞優秀賞』なども受賞した注目の作品です。
- 著者
- 下野新聞子どもの希望取材班
- 出版日
- 2015-03-03
貧困問題に直面している人、家庭を取材し、子どもの貧困問題の今を映し出しています。子ども時代を貧困の中生きてきた人の姿や、生きること、生活することすら大変な子どもの姿、経済的な貧困の中、最低限の暮らしすら脅かされている子どもたちの姿があります。そうした子たちに援助する支援者とそこから変っていく子どもたちの姿など取材で追った生の声は、とてもリアルなもので胸に響いてきます。
「寄り添う心を持つことは、きっとできる。今よりも子どものことを考える社会になるということ。「希望って何ですか」子どもから問われたら、それこそが「希望」なのだと答えたい。いつか問い掛け自体のない日が来る、と信じたい」(『貧困の中の子ども(2014/1)』より引用)
そう結ぶ本作は、これまで知らなかった現実を直視することができる本として、貧困問題を考える貴重な資料と言えるでしょう。
『子どもと貧困の戦後史(2016/4)』は現在言われている子どもの貧困問題と対比し、戦後復興からの子どもの貧困の実態を取り上げた本です。
1950年代、1960年代の膨大な社会調査の結果をデータ化し、日本の子どもをクロースアップした本書。当時の等身大の課題が浮き彫りになります。太平洋戦争での敗戦直後の戦災孤児や浮浪児、復興期の家庭環境の実際と子どもの実態などは歴史的にも残すべき文献と言えます。
- 著者
- ["相澤 真一", "土屋 敦", "小山 裕", "開田 奈穂美", "元森 絵里子"]
- 出版日
- 2016-04-25
高度経済成長期以降の日本経済と子どもの貧困の関係性。またそれに伴う貧困からの脱却を図る政策や検証、分析などがなされています。日本が経済大国に仲間入りする頃の子どもへの対策などは興味深い資料です。
昨今言われている子どもの貧困問題は可視化されないことが問題点と言われますが、本作を読むと戦後は可視化されている子どもの貧困が問題視されていたと気づきます。今の時代では言葉は同じでも種類の違う問題ですが、いつの時代も未来を託す子どもの将来は守るべき大切なものです。過去の対策やデータから現在の問題を解決する糸口が見つかるかもしれません。
日本の将来を左右するとも思われる子どもの貧困問題は決して対岸の火事ではありません。実に身近にあることを理解するためにも関連書籍を読むことをお勧めします。事態の現実を知ることで私たちにもできることがあるのかもしれません。