僕も新しい趣味、始めました。それはアクアリウム、つまり水棲生物の飼育です。
その中でもボトルアクアリウムというものがあります。水槽の代わりとなるのは梅酒を漬けるような大きな密閉ビン。そこに水草と土(バクテリア)と魚を適正な比率で入れることによって、呼吸と光合成、排泄と分解という生命の循環を小さなビンの中に作り出すのです。なんとオシャレな。
早速挑戦しました。そして大失敗しました。水が超腐りました。やはり僕のような長期間家を空ける職業の人間には向かない繊細なものだったようで、魚を入れる以前の手順、水と水草と土を一旦馴染ませる時点で白カビが大量発生。数日ぶりに帰宅した部屋から腐臭が……。
やはり何を始めるにしてもいきなり上級者向けは怪我をするということを痛感しました。
皆様には幸先の良いスタートを切って貰えるよう、「新しい趣味に出逢える本」を3冊選んでみました。
未だに酸っぱい匂いの取れない部屋から。
昭和歌謡曲との出逢い
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
「哀しい歌なのに、明るい」
「希望は何もないのに死にたいという気持ちにさせない」
「地面を這いつくばって生きてる人の歌のような気がするのだが鳥の羽ばたきのようなイメージもある」
名前が一緒というだけで親交を深めるおばさんサークル『ミドリ会』の一員が通り魔に刺殺された。夜な夜な海岸でカラオケ大会に興じる若者グループの一人が犯人らしいと突き止めた彼女達は報復を開始する。往年の名曲達を挿入歌に、復讐が復讐を生む大抗争が今、始まる!!
この小説の面白さは小市民同士の細やかな集まり同士が真剣に殺し合うということ、しかもその激化具合が半端じゃないということに尽きるでしょう。
刺殺には銃殺で、銃殺にはロケットランチャーで、さらにその報復は……と極端にエスカレートしていく様に最早シリアスさは無くコメディ……そう、ドリフターズや笑点、そういった昭和のコントや漫才の様式美を見ているようで思わず笑ってしまいます。
そのくせ登場人物が各々抱えている心の空白はとても他人事とは思えず、共感の涙を流しそうになることも。あらすじの凶暴さだけで敬遠してしまうのは勿体無いかもしれません。
ちなみにこの小説、各章タイトルがそれぞれ昭和歌謡曲の曲名になっています。さあ、あなたもこの本に倣って昭和歌謡曲、聴き込んでみませんか? これでもうカラオケ大会の曲選には困らない!
将棋との出逢い
- 著者
- 柴田 ヨクサル
- 出版日
- 2006-12-19
【一局20万円の賭け将棋にて】
「1分切れ負けだ」
「!!!!」
「持ち時間はお互い“1分”。切れたら負け」
「(アホか! それはもう将棋じゃないだろう)」
プロ棋士への夢を断念した青年・菅田は賭け将棋を生業にする、通称「真剣師」として生きていくことを決意する。しかしその名を上げるにつれヤクザ紛いの真剣師集団『鬼将会』に目をつけられるようになり……。「このマンガがすごい!」など、2007〜2008年の漫画賞を総舐めにした、ハイテンション将棋漫画。
……まずは冒頭のセリフの応酬について解説を。
「持ち時間」とは将棋をするときに予め決めておく、対局に使用できる時間制限のこと。持ち時間を使い切った対局者は局勢に関わらず負け。ちなみに竜王戦だと5時間ずつだそう。
つまり「持ち時間1分」とは「お互いの持ち時間を合わせても最長2分で決着がつく将棋」ということ。
ツッコミが入っているようにそれはもう「将棋」ではなく、そんなものに20万円を賭けるなど「正気」でもない。しかし主人公・菅田始めキャラクターが皆、本気だからこそ生まれる迫力、シュールさに涙腺崩壊&抱腹絶倒です。
作者・柴田先生が元プロ棋士志望であることに加え、監修・鈴木大介プロ(8段)という真剣さも含めて、唯一無二の真剣将棋漫画がココにあります。あとコマ割りとフキダシが超デカいです。
さあ、あなたもこの漫画みたく熱い将棋、指してみませんか?
勿論お金は賭けない方向で!