『ピアノの森』で著名な女性漫画家一色まこと。今回は、そんな彼女のおすすめ漫画ランキングベスト5をご紹介します。
一色まことは短編漫画「カオリ」(ヤングマガジン)で漫画家デビューを果たし、「はなったれBoogie」(週刊少年ジャンプ)で連載デビューを果たした女性の漫画家です。主に青年誌を取り扱っており、作品の中には多くの人情話が取り入られています。
一色まことの作品は、どれも人の本質が垣間見えるようなものばかり。というのは、綺麗事や輝かしい話だけではなく、人間の醜く汚い部分ま包み隠さず描かれているからです。人の本質を描き、それを読み手に問う書法こそが、一色まことの一番の特徴です。また、一色まことは子どもを主役とした物語をよあく描き、良くも悪くも子どもならではの純粋さが伝わってくる作品が多いのも特徴でしょう。
今回は、唯一無二の存在感を放つ一色作品を、ランキング形式でご紹介します。
人とは時にこの世で最も残酷であり、時には最も暖かい生き物です。人は理性があるからこそ周りの人を傷付けてしまうことや、逆に手を差し伸べ助け合ったりできるのではないでしょうか。これはそんな人の悪さや、愛おしさが垣間見える物語の集まった作品集です。
- 著者
- 一色 まこと
- 出版日
- 2010-03-23
本短編集は、一色まことのいくつかの読み切り漫画が集束されてできた作品です。その中に収録されている内の二つを少しご紹介したいと思います。
体が弱く学校を休みがちだったため、友達がいない将ちゃんが軸として描かれる「将ちゃん」。父が他界してしまい母と二人暮らしをしていた将ちゃん。母の地元へ移り住み、転校先の学校で出逢う友達と喧嘩をしながらも絆を深めていきます。
二作目の「駒子」では、日本人の夫婦からなぜか金髪でハーフの女の子駒子が産まれます。更に母は弟を出産すると同時に他界し、父は酒と女に溺れるように。駒子は周りの人達から白い眼で視られながら、なんとも悲しい現実を生きることになります。しかし幼馴染の勝利(カッちゃん)とその家族という、暖かい存在に支えられながら、頑張って生きていきます。
このように様々な種類と題材をモチーフにした物語が多数収録されている本作。どの物語にも、人の醜い部分から人の暖かく温もりのある部分を描かれており、読んでいて「人とは……」と、多くの視点で考えさせられます。短編漫画ということもあり、とても読みやすい作品です。
腕白な5歳の幼稚園児ともこを中心とした、昔ながらの暖かい日常が舞台のホームコメディ漫画『はなったれBoogie』。リラックスしながら読むことができ、思わずプッと笑ってしまう楽しさも詰め込まれています。懐かしい日常が日々の疲れを忘れさせてくれることでしょう。
- 著者
- 一色 まこと
- 出版日
日の本幼稚園に通う5歳の石井ともこは、父母、中学2年生の兄、犬のギンシローの4人と1匹暮らしです。ともこは兄を家族に持つためかとても元気溢れる女の子。家は決して裕福な家庭ではないですが、父のお小遣いが500円であったり、母は昔ながらの「良き母」であったりと、あたたかい家庭が描かれています。
登場人物では幼稚園の同級生、駄菓子屋万ちゃんを営むおばちゃん、女子高生のかすみ等、多くの人物が登場します。駄菓子屋のおばちゃんは、お店の前を通った人には必ず挨拶をする方なのですが、挨拶をきちんと返さない人を追いかけて殴ってしまうことも。それぞれが個性豊かな愛着が湧くキャラクターばかりです。
ゆったりと一時を過ごしたい時間のお供にいかがでしょうか。
『出直しといで!』は、高校を舞台とした青春物語です。
仁子、大福、山田等とJ組通称アホクラスに在籍し、毎日楽しい高校生活を送る茜。ひょんなことから全く関わりのないエリートクラスA組に在籍する土屋に告白してしまいます。しかし実は、土屋は以前から茜に好意を抱いていて——。
- 著者
- 一色 まこと
- 出版日
- 2003-08-07
良くも悪くも素直な性格であり、勉強は苦手だが女子バスケのエースを務める運動神経抜群な女の子森下茜を主人公とした物語です。
お金持ちで容姿端麗ではあるが多くの恋人を持つ遊び人、相馬仁子。強い天然パーマがコンプレックスで、無口な女の子、原ゆきみ(愛称は大福)。茜の幼馴染で茜に好意を寄せる男子バスケ部員、山田素直。動物病院の実家を継ぐべく、成績トップのA組で、獣医獣医を目指すエリート、土屋時彦など、個性際立つ面々が登場します。
恋に対して鈍感で右往左往する茜。様々な重要な事実を知るものの誰にも話せず、一人あたふたする大福など笑ってしまう場面も多く取り入れられています。その他、土屋に好意を抱くA組の美人、葛西涼子という恋のライバルも出現し、恋愛漫画では欠かせない要素も盛り沢山の1冊です。
進路をどうするか悩む場面では、「自分が高校生の時もこんな風に悩んだな」と共感できるところもあり、飽きずに読み進めることができるでしょう。それぞれが高校を舞台に、恋や進路に悩み葛藤しながらも、青春を謳歌するラブコメディ。茜の恋に将来はどうなっていくのか——。もちろん茜を取り巻く登場人物達からも、目が離せません。
ある事故を境に幽霊が視える力を持ってしまった一路。現世に未練が残り成仏できずにいる幽霊達。そんな幽霊達の未練を一路が代わりに晴らすことで、成仏のお手伝いをしていく物語『花田少年史』。一路と幽霊の出逢いが人々に感動を巻き起こします。
- 著者
- 一色 まこと
- 出版日
- 2015-10-23
幽霊が視えるようになった悪ガキ小僧の花田一路に、成仏できていない幽霊達が、自分の未練を晴らしてもらうことで、成仏していくという物語である本作。幽霊と聞いて怖い漫画ではないかと思う方もおられるかと思いますが、こちらの作品、全く怖いものではありません。むしろ幽霊達があまりにも人間らしい未練を抱えているため、笑ってしまう場面が多くあるのです。今回は、その中からいくつかをご紹介します。
浮気の証拠となる手紙を妻が見つける前に代わりに処分してほしいと頼み込む、裸のおじいちゃんの幽霊。欲という欲を抑えて勉学に励み、見事東大合格を果たすものの、その直後、童貞のまま亡くなってしまったため、最後に美人の谷間に顔を埋めたい、織田学。幽霊ってこんな感じなのかなと楽しくなるお話が盛りだくさんです。また、自分の死が原因となり、心を閉ざした母を元気にしてほしい川で溺死してしまった少年の幽霊など、胸が締めつけられるようなお話もあります。このように本作の内容は幅広く、時には胸をグッと掴まれるような名言もあり、どれも素晴らしいお話ばかりなのです。
悪ガキ小僧だった一路が幽霊達のため頑張り奮闘する姿は、見ていて自分の息子のように愛おしく感じます、読んでいて、つい応援したくなるような、笑いあり涙ありの幽霊コメディ作品となっています。
森の中に置かれた一台のピアノ。たった一人の少年を除いては、そのピアノは誰にも弾くことができません。本作は、ピアノを習ったことも、楽譜を読むことすらできない一ノ瀬海が、彼を取り巻く環境に葛藤しながらも、様々な人との出逢いを通し、ピアニストへの道を歩んでいく物語です。
- 著者
- 一色 まこと
- 出版日
- 2005-04-14
主人公の一ノ瀬海を取り巻く環境は、決していいものとはいえません。森の端と呼ばれ、ガラの悪い輩のたまり場である色町で、娼婦の母と貧乏な二人暮らしをしていた海。彼が唯一大好きなことは、森の中に捨ててある、誰にも弾くことができないピアノを弾くことでした。もちろん彼はピアノを習ったことはなく、楽譜すら読めません。しかし彼は、常人が持たない、ある特別な才能の持ち主だったのです。
そんな海の元にある日、ピアニストの家計に産まれ、ピアニストの夢を持つ、雨宮修平という少年が転校してきます。修平との出逢いによって、本当のピアノの世界に触れる海。そして彼は、ピアノを通して個性輝く人々と出逢っていきます。それぞれが感化され合いながら進んでいく物語。海はその中で何を思い、何を感じ、どのようにピアニストへと成長していくのでしょうか。
本作の見どころの一つであるピアノを演奏する場面。漫画から実際に音が聞こえてくるといわんばかりに、躍動感ある描写がされており、まさに目の前でピアノが演奏されているような感覚を味わうことができるでしょう。
海と母の親子としての愛情や絆、さまざまな人間の嫉妬や暖かさなどの本質的な感情が描き出されている本作。ピアノの場面以外でも十分楽しんでいただけるような、一色まことらしい作品になっています。
『ピアノの森』については<漫画『ピアノの森』に感動!完結までの見所をご紹介!【ネタバレ注意】>記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。