中村うさぎのおすすめ本ランキング!人生に気づきを与える珠玉のエッセイ5選

更新:2021.12.16

中村うさぎは福岡出身のエッセイスト。彼女の人生経験をもとに書かれた作品は大胆な切り口で我々に語りかけてきます。人生とは、女とは、自分とは。波乱万丈な人生を歩んできた中村うさぎの「生き様」は多くの人に人生の気づきを与えてくれます。

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破天荒な買い物女王と称された中村うさぎ

中村うさぎは自身の人生を赤裸々に綴ったエッセイで一躍有名になったエッセイストです。その内容から「買い物女王」「整形女王」と称されることもあります。テレビ番組「5時に夢中!」に出演し、美貌とユニークなコメントで日本中に彼女の名前が知れ渡りました。

福岡で生まれた中村うさぎ、本名中村典子は、同志社大学を卒業後、繊維会社に就職するも1年半で退社します。その後は雑誌のライターなどで生計を立て、1991年に角
川スニーカー文庫の『ゴクドーくん漫遊記』でデビューしました。

当初はこども向けのライトノベル作家で、ハンドルネームの中村うさぎもこの時期に「こども向けの小説なのだからこどもが覚えやすい名前で」と担当者に言われて出来たそうです。由来はその担当者編集者の飼っているペットがうさぎということから。「ゴクドーくん」シリーズはヒットとなりましたが、それが散財のはじまりだと後に彼女は述べています。

ライトノベルのヒットから散財をはじめたという彼女。最初はブランドものを買いあさっていたそうです。そのうち散財すること自体に依存するようになってしまいます。ホストクラブに通うようになってからは一層浪費が激しくなり、一時期は光熱費さえ払えないほどでした。その時の編集者にエッセイを書くことを勧められ、出版したエッセイが再びヒットすることに。

作家として成功をおさめた中村うさぎですが、通っていたホストクラブのホストに
振られ、その理由を自分が美しくないからだとし、2002年に顔の12か所を整形、2003年には豊胸手術を施しました。その後は「女の価値を確かめる」として2005年に風俗店で働きはじめます。

数々のヒットを生み出した中村うさぎですが、実はとても繊細でさみしがりな
面があるのかもしれません。特にエッセイを読むと彼女のその片鱗が見えます。

自由奔放にも見える繊細な彼女が歩んできた壮絶な人生。それは私たちの人生について新しい価値観を感じさせるものです。

5位:中村うさぎが語る、宗教とは、救いとは

中村うさぎは東日本震災後の日本の傾向について、朝日新聞デジタルにて苦言を呈したこともあるほど震災後の日本を重要視しています。その問題を宗教的観点から取り上げたのが『聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか』です。

著者
["佐藤 優", "中村 うさぎ"]
出版日


中村うさぎは中学、高校とミッション系の学校に通っていたため、クリスチャンで、洗礼名も持っています。と言っても、とても信心深く教会に通っていたわけではないそうですが。この作品は同じくプロテスタント系キリスト教徒の作家、佐藤優との
対談形式で進んでいきます。

佐藤優は、中村うさぎに対してとても熱心な教徒であったそうです。題名から難しそうに感じますが、聖書や村上春樹、エヴァンゲリヲンなど親しみやすい話題に繋げて震災後の日本の問題を分かりやすく解説しているので、とてもフランクに読めます。

ふたりは互いにキリスト教徒ではありますが、宗派が違うそうです。同じ宗教でも宗派で考え方や価値観が違うのが面白いところですし、仏教にも通じるところがあるので、親近感が湧きます。

また「宗教での救い」をテーマにしていますが、最後まで「宗教での救い」に定
義がつけられていないのも面白さの一つ。あくまで信仰は信仰で、そこに救いを
見いだすのもそれぞれだとしているのです。佐藤優は途中でこう述べています。

「理屈で理解出来ないから信じるのです」(『聖書を語る:宗教は震災後の日本を
救えるか』より引用)

あくまで終着点を作らない対談と、キリスト教視点から見た情勢には読んでいてはっとさせられる気づきがあります。

4位:自分嫌いのプロ、中村うさぎの自分との付き合い方

「こんな私が大嫌い」

多くの人が1度は思ったことがあるであろうタイトルが目を引きますよね。よく「嫌いな自分を好きになろう」や「自分を見つめ直そう」などといった「自分嫌い」への自己啓発本はありますが、これは全く違います。むしろその正反対の内容です。

著者
中村うさぎ
出版日
2011-10-04


中村うさぎ自身が「自分が嫌い」だと言っており、作中でも世間での認識を一蹴しています。

「あるがままの自分を受け入れて、自分を好きになりなさいってそんなのウソだろ」(『こんな私が大嫌い』より引用)

自分を好きになれるのならばそもそも嫌いになっていないと。そうですよね。でも嫌いな相手が自分だからこそ離れられない悩みに困ってしまうのです。

「『自分が嫌い』じゃなくなるってことは『自分への執着」から解放されるってことで、要するに『自分のことを好きでも嫌いでもなくなる』ってことなんだ」(『こんな私が大嫌い』より引用)

中村うさぎはこう綴っています。自分を嫌いなままでも良い、無理に好きにならなくても良いというのが彼女の考え方です。「自分が嫌い」という点以外でも「気分の落ち込み」など、日常でによくある悩みに対しても、解決策ではなく「人間だし仕方ない」と割り切っている、「彼女らしさ」が出た1冊です。

3位:愛されたい、だけど見返したい。全ての女性に投げかける『私という病』
中村うさぎが浪費家ということはあまりに有名ですし、そのなかでホストに入れあげたということも最初に記した通りです。作中での彼女は当時47歳。若い頃はセックスを「させてあげる」立場だった彼女も「させてもらってる」立場になってきたということを痛感したと言います。

「ああ、お願い、誰か、私に欲情して」(『私という病』より引用)

文庫本の帯にも使用された、この衝撃的な一文に彼女の思いが詰め込まれています。『私という病』は、ホストにフラれ「女としての価値」を見出そうと、中村うさぎが風俗店で働いた時の体験談です。作家として成功した「勝ち組」の彼女が「恋愛マーケットでは「負け組」で、「愛されたい」としたうえで「見返したい」というジレンマを抱えた内容は生々しく、だからこそ共感を得られます。

女性が社会進出をはじめ、女性も男性と同じ土俵で戦える現代。より良い仕事をして「男性を負かせたい」と思う女性も少なくなくなっているでしょう。その一方で結婚して子供を育てる「女性としてのありふれた幸せ」も欲しい。この矛盾に苦しめられる女性の言葉にできない「思い」を言葉にしているエッセイなのではないでしょうか。

3位:愛されたい、だけど見返したい。全ての女性に投げかける

中村うさぎが浪費家ということはあまりに有名ですし、そのなかでホストに入れあげたということも最初に記した通りです。作中での彼女は当時47歳。若い頃はセックスを「させてあげる」立場だった彼女も「させてもらってる」立場になってきたということを痛感したと言います。

著者
中村 うさぎ
出版日
2008-08-28


「ああ、お願い、誰か、私に欲情して」(『私という病』より引用)

文庫本の帯にも使用された、この衝撃的な一文に彼女の思いが詰め込まれています。『私という病』は、ホストにフラれ「女としての価値」を見出そうと、中村うさぎが風俗店で働いた時の体験談です。作家として成功した「勝ち組」の彼女が「恋愛マーケットでは「負け組」で、「愛されたい」としたうえで「見返したい」というジレンマを抱えた内容は生々しく、だからこそ共感を得られます。

女性が社会進出をはじめ、女性も男性と同じ土俵で戦える現代。より良い仕事をして「男性を負かせたい」と思う女性も少なくなくなっているでしょう。その一方で結婚して子供を育てる「女性としてのありふれた幸せ」も欲しい。この矛盾に苦しめられる女性の言葉にできない「思い」を言葉にしているエッセイなのではないでしょうか。

2位:中村うさぎの「魂の双子」との文通

芸能界のご意見番と呼ばれるマツコ・デラックス。実は、マツコ・デラックスは中
村うさぎが「発見者」と呼ばれているのです。ふたりは雑誌編集者の紹介で知り合ったと言います。その後「5時に夢中!」での共演を経て「魂の双子」と言うほど親密になりました。中村うさぎが「5時に夢中!」を降板したのをきっかけに『うさぎとマツコの往復書簡』が発行されたのです。

著者
["中村 うさぎ", "マツコ・デラックス"]
出版日
2010-11-06


「往復書簡」の名前の通り、ふたりが手紙をやり取りしている体で進んでいきます。あっさりした文でのやり取りと、気のおけない間柄ならではのユニークな掛け合いでテンポよく読めます。

『うさぎとマツコの往復書簡』はシリーズになっており、現在は4巻まで発行されています。とりとめない話題から政治の話題から体験談まで、ずっとそれぞれの経験からくる思想のやりとりはとても読み応えがあります。

ふたりはまさに波乱万丈な日々を送ってきたよう。「自分の人生は地獄だった」と言いつつ「でも満足してる」と述べています。

「本当の自分探しって、しょっぱい思いをすることそのものであって、泣いたりわめいたり怒ったりしている姿そのものが本当の自分で、それ以下でもそれ以上でもないんだと思うわ」(『うさぎとマツコの往復書簡』より引用)

マツコは結果はどうであれ中身が充実しているのであれば、その過程が「自分」であり満足できるのだそうです。ネガティブな内容なのにどこかずっとポジティブな表現をしているのでとても軽く読めるエッセイです。

1位:中村うさぎの遺言

中村うさぎの集大成とも言える1冊『あとは死ぬだけ』。遺書のようなタイトルは、その名の通り彼女の遺書なのでしょう。「中村うさぎ」が体験してきた「すべての真実」が淡々と綴られています。

これまで彼女はたくさんのエッセイを執筆しましたが、そのすべてに「生」を感じさせる内容でした。浪費すること、愛されたいということ。『あとは死ぬだけ』は「死」の話からはじまります。冒頭は彼女の追想。

著者
中村うさぎ
出版日
2016-07-16


「ひとは幼い頃の記憶というものを、どれくらい保持しているのだろうか」(『あとは
死ぬだけ』より引用)

「私の思考と言葉の形見分けだと考えて頂いて結構だ」(『あとは死ぬだけ』より引用)

波乱万丈な生き方をし、一度は心拍の停止する病を乗り越えた彼女。死の縁にたった者ならではの本当の想いというものがここに語られているのではないでしょうか。内容は総集編ということで、これまで彼女が執筆してきたエッセイからの引用が多く使われています。

「無駄だらけの人生だったが、それなりに私には意味のある人生だった(中略)本人にとって意味のある人生だったなら、それで十分なのではないか」(『あとは死ぬだけ』より引用)

今までの苦悩や後悔すべてを受け入れ、「それが自分」としています。人生は他人が決めるものでも、他人の目を気にするものでもなく、自分が満足することが大事ということでしょう。

本当にこの人生で良いのかと悩むことは誰しもあると思います。悩んだ時に「自分は満足」と思えることが大事であり、中村うさぎはこの1冊で人生を清算したようです。最後に彼女は晴れやかにこう綴っています。

「明日死んでも満足だ」(『あとは死ぬだけ』より引用)

中村うさぎのエッセイには彼女の体験した「真実」と、それをもとにした「想い」が
詰まっています。賛同を得たいわけではない、ありのままの「中村うさぎの人生
論」はあなたにもなにか「気づき」を与えてくれるかもしれません。

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