近藤勇・新撰組局長を多面的な本から読み解く。厳選4冊

更新:2021.12.16

幕末の京都を舞台に活躍した剣客集団新選組。それを束ねていたのが局長近藤勇です。徳川幕府に義を貫いた壮絶な生き方を、様々な面から知ることが出来る本を4冊厳選してご紹介します。

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明治維新を遅らせた徳川幕府最後の砦、近藤勇

近藤勇は、幕末の混乱する京都を警護するために作られた新選組の局長です。彼と新選組の存在は、衰退する徳川幕府を守り明治維新を遅らせた要因ともされています。

近藤勇は何度となく名前を変えています。生まれは多摩の農家、宮川家で幼名は勝五郎でした。15歳の時、江戸牛込(現在の新宿区)にある天然理心流剣術道場の試衛場に入門。剣の才を認められ道場主の家に養子に入り嶋崎勝太と名乗ります。

その後も道場で名をあげていき、嶋崎勇と名乗ったのちに、天然理心流宗家4代目としてついに近藤勇を名乗ることになりました。またこの時期、試衛館には、のちの新選組で中心的な役割を担う、土方歳三、沖田総司なども門弟として入門しており、永倉新八、山南敬助らも食客として出入りしていたのです。

近藤は、幕府が将軍家茂の京都への上洛警護をする浪士組への参加者を募っていることを知り、試衛館の面々とこれに参加します。京都へ上り、京都では浪士組発案者の清河八郎の江戸帰還案に異を唱え、同調した旧水戸藩士芹沢鴨らと京都に残り、京都守護職会津藩預かりの壬生浪士組として、京都の治安警備にあたりました。

その後、近藤らは、会津藩らのクーデター八月十八日の政変で活躍が認められ会津藩から新選組と名称を貰い受けます。この時は芹沢鴨との2人局長で隊を二分していましたが、放蕩な芹沢鴨を暗殺し、他の芹沢派も一掃すると、新選組局長として主導権を握り、池田屋事件、禁門の変など京都での政変で活躍したのです。吉田稔麿や宮部鼎蔵など多くの勤王の志士を憤死させたことで、明治維新を遅らせた殺戮集団と恐れられることになります。

そんな新選組の活躍の甲斐もなく、徳川幕府は終焉を迎え、明治維新を迎えます。新選組は新政府軍との鳥羽伏見の戦いに参陣しますが敗走。近藤勇以下生存者は江戸へ向かいます。尚も進軍する政府軍に対して、甲府、八王子と転戦しますがことごとく敗走し遂に千葉流山で近藤は降伏して出頭。この時、近藤は大久保大和守剛をなっていましたが、捕縛した政府軍に近藤を知るものがいて、正体が露見し処刑されます。そして享年35歳でその生涯を終えました。
 

近藤勇のあまり知られていない7つの逸話

1:強盗退治が近藤家の養子になれた理由

近藤勇がまだ、宮川勝太と言われていた頃の話です。1849年6月のある夜、父が不在で兄二人と留守番をしていた時、賊が家に入り撃退した事で近藤家の養子となります。

賊を追いかけようとした兄を「窮鼠猫を噛む」のたとえもあり、大人を相手に子供が向かっても殺られる事も有るからと止めた事で勇の人生は変わります。近藤周助が、冷静沈着で度胸のある勝太を気に入り近藤家に養子として迎えたのです。

農民から武士へと変わり、そして後に新選組の局長にまでなり歴史に名を残す事になるのです。 

2:近藤勇はわがままと幹部が反旗

永倉新八や原田左之助ら幹部が、会津の藩主松平容保公に対して五か条からなる建白書を提出しています。一か条でも納得出来たら自分達が切腹し、説明が出来なかったら近藤勇が切腹しろと言うものでした。隊士を顎で使うような事もあり、近藤勇も少々天狗になったと言う事です。

この時は、容保公が取り成し事なきをえています。永倉との確執は新選組の最後まで変わる事はありませんでした。

3:禁門の変で死亡?

禁門の変の後で、近藤勇の故郷多摩では禁門の変で近藤勇が死亡したと言う噂が流れました。噂の元になったのは、関東取締出役が「どうも近藤さんは禁門の変で戦死したらしい」と言った事から村人もすっかり信じ村中が静まりかえっていたと伝わっています。

今の時代と違い、すぐに確認も出来なかった時代です。間違った情報に、一喜一憂していた事が分かります。    

4:肩を狙撃され、二度と剣を振るうことができなくなる

1867年12月18日、近藤勇が伏見の墨染あたりで御陵衛士の2~3名の隊士に銃で狙撃され右肩を負傷する事件がありました。この時弾丸が、右肩の鎖骨から脊髄に抜け重傷を負ったものの伏見奉行所に駆け込み命には別段問題はありませんでした。

この時の傷が意外と深く、二度と刀を振るう事が出来なくなったようです。肩の怪我が影響し虎徹を手放したのです。

5:土方や新撰組と流山での別れ

1868年4月3日近藤勇は、大久保大和として官軍に投降しました。戦わなかったのは新選組の主力が演習のため、朝から流山の屯所には居なかったことから戦う事が出来ませんでした。

近藤は、自害すると主張したけれども、ここで死ぬは犬死だから時を稼ぐよう土方歳三の説得に、近藤が折れた。投降お風呂に入って、食事をしてから参謀本部に出向いた。その後、土方などが延命のために江戸で奔走したが叶いませんでした。

6:近藤勇最後の言葉

近藤勇が板橋にて断首されましたが、最後の言葉は警備にあたっていた藩士に対して一言「ながながお世話にあいなった」と告げ顔色も変える事もなく平常心で刑に服しました。

7:近藤勇の首の行方

断首された後の近藤勇の首は、焼酎に漬けられ京都に送られ三条河原に晒されその後大阪の千日前に晒され京都の粟田口に埋葬されたとあります。

しかし一つの説があります、三条河原に晒された近藤勇の首を新選組の下僕が刀と共に盗み会津に持ち去り会津に埋葬した。一緒に持ち去った刀が、「阿州吉川六郎源祐芳」覚え書きと共に横浜在住の方が所有しています。

京都を震え上がらせた男の素顔とは

『近藤勇白書』は、時代小説の巨匠、池波正太郎が描く近藤勇の生涯の物語。フィクションと史実が織り交ざった作品で、近藤勇の素顔に迫る名作です。

多摩の農家で生まれ、武士に憧れていた近藤勇は、新選組として名をあげ幕臣に取り立てられます。そんな義に熱く、武骨な男として描かれることの多い近藤を、情に厚い人間臭い男として描いているのが特徴の作品です。

著者
池波 正太郎
出版日
2006-04-25

物語は、近藤勇が江戸で天然理心流の試衛館道場を開いていたころから始まります。道場破りの飯田金十郎という浪人が現れますが、近藤はその実力に舌を巻き、親しくしている近隣の練兵館道場から渡辺昇を援軍に呼び、このような記述が以下に続いているのです。

「試衛館は、江戸にある剣術道場の中でも先ず二流の下というところで、それはよいのだが強い剣客が試合を申し込んで来ると(先生)の近藤勇はどうも弱腰になる」(『近藤勇白書』より引用)

この記述を読むと、後に京の町を震え上がらせた新選組局長とは思えない姿に驚くでしょう。

その後、飯田金十郎と渡辺昇は近藤の生涯において重要な役割として登場していきます。渡辺昇は、実在の人物で試衛館時代の近藤の証言を後に残している貴重な存在です。飯田金十郎は架空の人物で、この物語のアクセントとなっていて近藤の命を狙う刺客として描かれます。京に上り新選組局長として活躍し、遂には念願の幕臣に取り立てられるも、時代の渦に飲まれ死んでいく近藤。本作からは愛される人間性や意外な近藤勇に出会える作品です。

幕府に殉じた武士道精神

『近藤勇』は、幕末の時代小説を数多く世に出している女流作家、秋山香乃が描く近藤勇を主人公にした小説です。登場人物の心情や葛藤を丁寧に描いた女流作家ならではの作風で読みやすい作品となっています。

本作は近藤以下新選組が絶頂期にあった池田屋事件から、近藤が大久保大和として処刑されるまでを描いています。土方歳三、沖田総司、山南敬助、藤堂平助といった江戸の試衛館以来の新選組同志との掛け合いや人間関係は、これまで多くの作品にあったような堅物としの近藤ではありません。この作品で描かれているのは思いやりがある理想のリーダー像としての近藤勇です。
 

著者
秋山 香乃
出版日

後に意見の違いから袂を分かち暗殺に及ぶ新選組参謀伊東甲子太郎について、本作では近藤勇との思想の違いを対比させるためか、好印象な傑物として描かれている点も作品の特色です。互いに忠節を重んじ真義に溢れる男同士の近藤と伊東。何がふたりを分けたのか。お互いにその能力を認め合ったふたりの考え方の違いを読み取ると、正、悪では分けられない複雑な時代背景が浮かんできます。

近藤が最期を迎える時、土方歳三や若い隊士を思いやる心と、自分が選んだ道を全うする生き様に感動を覚えます。近藤勇の心優しい一面に触れることができる新選組ファン必読の作品です。
 

近藤勇が歩んだ歴史から読み解く

『新選組』は、幕末、京都の治安警護として活躍した新選組を時代背景や思想感から究明する歴史研究書。近藤勇の書簡などを主な史料として、新選組が歴史に名を遺した実像を解き明かします。

幕末に、滅びゆく徳川幕府最後の輝きと称される新選組。その新選組の結成から滅亡までの実像を研究した本です。烈士伝と題して近藤勇をはじめ土方歳三、沖田総司、永倉新八、原田左之助など主要隊士の実像に迫ります。また新選組戦記として様々な事件や戦を調べた内容は、新選組のことを知りたい人には、絶好の研究資料です。
 

著者
松浦 玲
出版日
2003-09-20

人物、事件のほかに、近藤勇が宗家を継いだ剣法天然理心流や京都守護職会津藩とのかかわり、土方歳三が作ったとされる新選組隊規の局注御法度など、新選組に流れていた思想を読み解く項目は、小説のようなフィクション作品にはない本物の侍の姿が映し出されています。

研究書と言っても、挿絵も入った読みやすい文体ですので、抵抗なく読むことができます。新選組の作品に触れ、その実像に興味がある方には、是非手に取ってほしい作品です。
 

漫画で見る新選組の末路

『劇画近藤勇―星をつかみそこねる男 』は、『ゲゲゲの鬼太郎』などで知られる漫画家水木しげるが描いた近藤勇の伝記漫画となっています。作者特有のタッチで描かれた近藤をはじめとした新選組の面々などの登場人物は必見です。

作品は、近藤勇が多摩の農家で生まれてから、下総流山で捕縛され処刑される生涯を描いています。新選組結成までのあらすじや、京都での池田屋事件などの有名な出来事はほとんど網羅されていますが、近藤と隊士のやり取りなどは、ユーモア溢れるやり取りが繰り広げられ、ちょっとほっこりした気持ちで読めると言ってもよいでしょう。新選組ファンはもちろん、水木しげるファンも納得の作品です。
 

著者
水木 しげる
出版日

漫画として一級品の作品ではありますが、面白いだけではなく、近藤をはじめとした登場人物の人間模様や、政治的時代背景もしっかりと描かれていて、新選組を知るうえでの入門書としての役割も満たします。

タイトルにもなっている「星をつかみそこねる男」の通り志半ばで最期を迎える近藤勇。武士に憧れ、徳川幕府に忠義を尽くし、幕臣に取り立てられる頃には、幕府自体が無くなり、明治の近代に移り変わっていく。武士が無用な世の中に変わることに、どう思い死んでいったのか。読者により感じ方は違いますが、最後に作者が述べる近藤への思いには驚かされるはずです。水木しげるらしい感想となっていますので、ぜひお楽しみに。
 

動乱の幕末はたくさんの英雄を誕生させました。その中でも近藤勇は、自らの信じた道を貫き、時代の波に抵抗した希有な人物です。その複雑な心情を読み解くには様々な側面から検証しなければなりません。色々な作品から近藤勇の本心を探してみましょう。

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