アインシュタインの一般相対性理論のわかりやすい解説

更新:2021.12.16

アインシュタインの一般相対性理論は今までで最もわかりやすい理論のひとつかもしれません。

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一般相対性理論と重力

今が西暦2100年だとします。あなたは小さくて窓のない部屋で、ひとりぼっちで目が覚めます。部屋にあるのは小さなボールだけです。もしかすると、この部屋はあなたの町にあるのかもしれませんが、みんなが話していた新しい宇宙船の中かもしれません。どうしたら、自分が今どこにいるかが分かるのでしょうか。

ボールを手に取り、落としてみると、ボールは真っ直ぐ足下に落ちました。落ちる速度を測り、ボールが1秒に9.8メートル加速することを割り出します。この加速度は地球上での重力加速度と全く同じです。

けれども、宇宙のど真ん中の宇宙船でも加速度は同じになり、全く同じ結果になることがあり得ます。さて、あなたはどこにいるのでしょうか。

1911年にアインシュタインは重力質量(重力場を作り出すもの)と慣性質量(加速度に抵抗するもの)は同一であるという説を公式に発表し、この説は「等価原理」として知られるようになりました。この原理によれば、重力場(たとえば地球上など)にいるのか、常に加速度(宇宙船が加速する時に床に押し付ける力のことで、ジェットコースターに乗った時のGフォースと似たようなもの)を体験しているのか、区別することはできないのです。

もうひとつの例は、かの有名な「嘔吐彗星」(正式には「ウェイトレス・ワンダー」)です。これはNASAのトレーニング用の実験用航空機で、ハリウッド映画の撮影に使用されることもあります。先ほどのボールのたとえと同様に、自由落下と宇宙の真ん中などの重力場のない状態にあることの違いを区別することはできません。

この原理からアインシュタインは将来一般相対性理論となる、相対性理論の枠組みに重力を取り入れることを考えるようになりました。

一見これはさほど難しくは見えません。ここまでは、個別の物体の特性は方程式を用いて非常に正確に説明することができました。しかし、重力に関してはどうしたらよいのでしょうか。どのようにして、加速度が重力にも速さの変化にもなり得る組織の特性を推定するのでしょうか。答えは、この問題をどのように見るかにかかっています。

これが「基準系」という考え方に結びつきました。基準系とは、見ている物体がそれぞれの役割を演じる舞台です。もちろん物体が違う風に動く別の系が存在しているわけですから、我々はすべての系の説明と、それらすべてを語る術が必要です。

時空連続体

たとえば、あなたとわたしがお茶の約束をしているとしましょう。この「出来事」をどう説明しますか。選択肢の1つは地図を見ることです。「地図のG5にある建物の2階にあるカフェで待ち合わせね。」3つの座標要素を説明しました。G、5、2階です。これはx、y、zの座標の組み合わせの別の言い方です。こうして我々はお茶をするわけですが、4つ目の座標要素も加えなければなりません。それが時間です。たとえば、待ち合わせの時間を午後2時にしてみましょう。これら4つの要素が時空事象と呼ばれるものです。

一般相対論は、地図は歪んでいる可能性があり、座標要素はそれがどのようにして起こったかによって変わってくると言います。もしわたしが地図を折り曲げるとすると、2つの場所の距離が変わってしまうのです。

平面で三角形の角度を求めて全部を合計すると180度になります。これを曲がった地図でやると、曲げ方に応じて、その値は少し大きくなったり小さくなったりします。同様に、宇宙にも様々な異なる曲率を持った区域があるのです。

さあ、難解な点に差し掛かってきました。

ニュートンのおかげで皆さんご存知かと思いますが、抵抗がない場合、物は真っ直ぐに移動する傾向があります。では、空間が屈曲している場合はどうなるのでしょうか。それでも直線に移動することができますが、線が屈曲に従うのです。バスケットボールの上に直線を引くと考えてみて下さい。ボールに線を書いて、ぐるっと一周し、始めの点と結ぶことはできます。その線は直線ですが、曲がっているのです。

「湾曲した空間」では「平らな空間」とは違った奇妙なことが起こります。たとえば、北へ10キロメートル、西へ10キロメートル、南へ10キロメートル歩けば、歩き始めた地点より10キロメートル西の点に到達すると考えるのが普通です。しかし、同じことを南極でやると、何と歩き始めた地点に戻ってしまうのです。技術的には、これはどこででも起こることなのですが、非円筒図法の地図では、北極や南極で顕著になります。

さて、もっと視野を広げてみましょう。抵抗に影響されることなく、湾曲した空間を直線上に進むと考えてください。特に、質量(あるいはエネルギー。E=mc2の公式より)を伴うものが湾曲した空間の直線上をたどるとします。

このことの実験的証明は、1919年の日蝕の時になされました。この時、星の光が太陽によって屈折したことが観測されたのです。屈折の大きさはアインシュタインによって予測されていましたが、普通の「ニュートン式の」理論によってではありませんでした。

物質は空間の曲率に沿って動くわけですが、重力の源が物質であるため、曲率も物質に応じるということがわかっています。アメリカの理論物理学社のジョン・アーチボルト・ウィーラーの言葉を借りれば、「物質が時空に屈曲の仕方を教え、屈曲した空間が物質に動き方
を教える」のです。

ひとつの場所にたくさんの物質があったらどうなるのでしょうか。傾斜の急な丘を車で上っていると想像してみてください。最大スピードを出しても、あなたの車が通るには急すぎるところがあるとします。同様に、大きな物質をとても小さな空間に持っていくと、曲率がものすごく強くなるので、宇宙一速いとされる光でさえ、通ることができなくなるのです。これがブラックホールです。

美しい曲線

GPSを使ったことがある方もいるかと思いますが、今日では携帯電話の普通の機能になっていますが、GPSの動作は全面的に一般相対性理論に頼っているのです。

地図を折り曲げれば、空間次元の中の地点は互いに近くなるということは既にお話しました。空間と時間は時空連続体として共に動くのですから、時間にも同じことが言えるはずです。我々の質量がとても大きいとしたら、時間次元の屈曲は、時空連続体が屈曲していればしているほど、時計はゆっくり動く(あるいは、屈曲がより少ない地域にいる人にはそう見える)のです。

地上と軌道上では、電波時計が動く速度はかなり違うのです。この修正をしなければ、GPS人工衛星が現在地をあれほど正確に教えることはできません。

一般相対性理論が驚くべき正確さをもって、非常に多くの、実験に基づく偉業を成し遂げてきました。水星の変則的な軌道や連星の軌道減衰、光の重力赤方偏移などの原因も説明しました。ですから、これが重力の完璧な理論ではないと信じるのは難しいことです。

NASAの宇宙船パイオニア10号と11号(現在それぞれ地球から約15,400,000,000キロメートルと12,400,000,000キロメートル離れたところを飛んでいます)が、一般相対性理論の影響を考慮しても、予測されていたよりもずっとゆっくりと減速しつつあると思われ、いくつかの憶測が生まれています。

しかしながら、どうやら宇宙船からの熱放射によってかすかに減速していることが原因と思われ、一般相対性理論は無傷のままです。

一般相対性理論は今までで最もわかりやすい理論のひとつかもしれません。そして、確実に、今回扱ったよりもはるかに多くの側面を持っています。


Photo:C)The Independent / Zeta Image
Text:(C)The Independent / Zeta Image

著者
A. アインシュタイン
出版日
1988-11-16
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