群ようこの猫にまつわるおすすめエッセイ5作品!『かもめ食堂』作者

更新:2021.12.16

読みやすく軽やかな文体で、日常にある風景を魅力的に切り取る作家、群ようこ。小説はもちろん、エッセイでも高い支持を受けています。ここでは、無類の猫好きとしても知られる群ようこの、おすすめエッセイをご紹介していきましょう。

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ユーモラスな癒しを提供する作家、群ようこ、とは?

群ようこは、1954年、東京都で生まれました。日本大学藝術学部を卒業後、広告代理店に就職。半年で退社すると、その後、職を転々と変えていきます。雑誌社に勤めるようになってからは、『本の雑誌』にてコラムを書き始めるようになります。

1984年、『午前零時の玄米パン』を発表し、作家デビューを果たすと、その後も数多くのエッセイや小説を発表。2006年、映画のために書き下ろしたという『かもめ食堂』が話題になり、2012年に発表された『パンとスープとネコ日和』も映像化されました。

それでは軽妙でユーモア溢れる文体が魅力的な人気作家、群ようこの猫エッセイを5作品、お楽しみください。

猫に向ける温かい眼差しが印象的

著者
群 ようこ
出版日

お隣に住む飼い猫「ビー」や、近所の野良猫たちの姿を綴るエッセイ『ビーの話』。全編通して猫についての話題一色となっている、猫愛に溢れた、なんとも癒される作品です。

群ようこの家へ度々遊びに来るという、猫のビー。お隣の家で飼われているのですが、いつも機嫌良く群の自宅へと訪れ、自由気ままに過ごしています。そんなビーが、可愛くて可愛くて仕方ないといった様子の群ようこは、気ままなビーに振り回されつつも、まるで我が子のように面倒を見ているのです。

元飼い主のアリヅカさん、現飼い主のモリタさん、そして群ようこ。ビーの魅力にはまり込んでいる、3人の女性の仲の良さも、読んでいてとても微笑ましいものがあります。ビーの愛らしく甘えて来る姿もさることながら、自分に都合の悪いことは聞こえないフリ、というビーのエピソードに、猫が好きな方なら頬を緩め頷きながら読んでしまうことでしょう。

群ようこの猫愛は、近所にいる野良猫たちにまで及び、猫たちの姿を細かく観察する様子が綴られています。のんびりと好きなように過ごしているようで、猫社会にもいろいろと事情があるらしく、様々なエピソードを興味深く読むことできます。猫が好きな方はもちろん、そうでない方も楽しく読めるのではないでしょうか。猫に対する、群ようこの温かい眼差しが印象的な、心温まる1冊になっています。

群ようこが日常の出来事を綴った痛快エッセイ

著者
群 ようこ
出版日

群ようこが、自身の日常をコミカルに綴る『ヒヨコの猫またぎ』。日々の様々な出来事について書かれた本作は、群ようこの愛猫「しいちゃん」や、お隣に住む「ビー」も登場。友人の愛犬や、「おじさん」という名前のうさぎなど、様々な動物についても綴られている痛快エッセイです。

人気作家の群ようこ。収入も多いため高額な税金を払わなければいけません。ところが銀行口座に「お金がない!」。「人生最大のピンチ」に彼女はどうするのでしょうか。ただ事ではないこの事態ですが、文章がユーモラスで、とても面白おかしく書かれているため、つい楽しく読んでしまいます。

作品が発表された2001年、しいちゃんはまだ若い猫ですが、お隣のビーはすでに16歳という年齢です。体のあちこちに衰えが見て取れ、老いてく動物との付き合い方についても触れられており、いろいろと考えさせられます。実家で飼われているうさぎ「おじさん」と、母親が頬を寄せ合う姿に、「微笑ましいといえば微笑ましく、恐ろしいといったらこの上もなく恐ろしい」という群の見解に思わず吹き出してしまいます。

群ようこの友人や知人も、ユニークな人ばかり。軽快な語り口はとても読みやすく、すらすらとあっという間に読めてしまうため、心地良く気軽な読書時間を満喫できることでしょう。

とにかく笑える!群ようこのおもしろエッセイ

著者
群 ようこ
出版日

日常で起こった、笑いの込み上げるおもしろエピソードを綴った『猫と海鞘』。1995年に発表された本作ですが、時が経っても色あせることなく、今読んでも充分笑いながら楽しめる1冊です。

高校生時代、髪を長く伸ばしていたという群ようこ。本人は自慢の髪型だったのですが、友人から「ミッキー吉野」に似ていると言われてしまいます。その後、度々髪型を変えますがなかなか思うようにいかず、大人になって思い切ってショートカットにしたところ「少年アシベ」のようになってしまった、というエピソードには、笑いがこみ上げてきてしまいます。

シュノーケリングに挑戦したり、ダイエットや恋愛の話題に触れていたりと、内容は盛りだくさん。群ようこ流の失恋克服方法はとても面白く、読めば悩みも吹き飛んでしまうことでしょう。作品内には、冷蔵庫に潜り込んでしまった、食い意地のはった猫も登場します。

日常生活の中に、これほどのおもしろさを見つけられる感性の豊かさには驚くばかりです。群ようこが「暇つぶしに読んでください」という本作。テンポが良く、文章に勢いがあるので、読み応えは充分です。肩の力を抜き、何も考えず笑いたい時に、ぜひいかがでしょうか。

動物たちに愛着が湧く1冊

著者
群 ようこ
出版日

身近にいる動物たちや昆虫など、様々な生き物に関するエピソードがまとめられた『ネコの住所録』。猫はもちろん、犬や鳥、カメや魚、ハチやアリなどが登場し、群ようこの素朴な愛情を伺い知ることができます。

何日も家を空けていたオス猫が、突然子猫を連れて帰ってきたという、ネコの父子の話や、引っ越してしまった恋人ならぬ、恋猫を待ち続けるオス猫の切ないエピソードなど、猫に関する様々な話題が書かれています。他にも、おばあさんが営む雑貨屋を、健気に手伝うマルチーズや、餌が気に入らず不貞腐れるインコなど、バラエティーに富んだ動物たちが登場。動物好きにはたまりません。

驚いたのは、毎日オフィスに休みにやってきたという1匹のハチ。群は「ハッちゃん」という名前をつけ、毎日ハチを中へ入れてやったと言います。サバサバとしながらも、まるで人間を扱うように、動物に対して誠実な対応を見せる群の姿が印象的です。

たとえ動物でも、心を込めて話せばしっかりと通じるのかもしれない、と思わせてくれるエピソードが多数盛り込まれ、群ようこの独特なユーモアと優しさが漂う文体が、様々な動物たちの姿を生き生きと綴っています。魅力的な猫の姿が綴られた、笑いあり涙ありの本書。猫を含め、動物好きな方だったら楽しく読むことができるでしょう。

笑えて泣ける群ようこのほのぼのエッセイ

著者
群 ようこ
出版日

たくさんの動物たちに囲まれた、群ようこの子ども時代を綴るほのぼのエッセイ『トラちゃん』。1986年に発表された、初めて猫愛について書かれた本作では、猫の「トラちゃん」をはじめ、犬や小鳥、金魚やねずみなど、群家に集まる様々な動物たちが登場しています。

ある日、群家に迷い込んできた子連れのトラ猫「トラちゃん」。動物好きの群のお母さんは、追い出すことなく、この猫たちの面倒をゆったりと見ることになります。なんと言っても、このトラちゃんがとても魅力的。凛としてたくましく、子猫たちの躾も上手で、その毅然とした姿には言いようのないかっこよさを感じます。

群家には他にも「金魚のよしこちゃん」や「インコのピーコちゃん」など様々な動物たちがおり、皆しっかりと共存している様子が、ユーモア溢れる文章で綴られています。快く動物たちを受け入れていく、群の母親の寛大さに驚くとともに、動物たちのありのままの姿を受け入れ、淡々と綴っていく群ようこの文章が印象的です。

生き物には、いつか命の尽きる時がやってきますが、最後まで責任を持ち愛情を注ぐ家族の姿に感動することでしょう。別れの時は切なく、涙が溢れてきてしまいます。コミカルな中にも、ひとつひとつの命と向き合う大切さ、動物と暮らすことの素晴らしさを教えてくれる、素敵なエッセイです。

群ようこの、猫にまつわるエピソードが楽しめる、おすすめエッセイをご紹介しました。ユーモアの溢れる作品ばかりですから、猫が好きな方もそうでない方も、ぜひ読んでみてくださいね。

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