たかのてること世界を旅する人気作品!年代順おすすめエッセイ5選!

更新:2021.12.3

たかのてるこの行くところには、いつも眩しいほどの笑顔が溢れています。彼女の他人の懐に飛び込んでいく勇気はいったいどこから湧いてくるのでしょうか?今回はそんな彼女のおすすめエッセイ5選をご紹介します。

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たかのてることは

たかのてるこは1971年生まれ。各地を旅する旅人であり、エッセイストであり、テレビプロデューサーです。
今まで旅行した国はインド、モロッコ、イラン、ヨルダン、ウガンダ、バチカンチェコ、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナなど 60か国以上。

また、テレビプロデューサーとして働く傍ら紀行エッセイを執筆したり講演会を開いたりしながら、世界各国で拾い集めた数々のエピソードを伝え続けています。彼女の旅のモットーは「ことばや宗教・習慣が違ってもみんな同じ時代を生きている仲間」。この信条をもとに世界中の人々と仲良くなるべく各地を飛び回っているのです。

世界中を力強く冒険し続けるたかのてるこですが、この彼女の原動力のひとつとなったのがあの人気作家であり、彼女の親友の吉本ばななが言った「動くてるこを映像にすれば天職になる」という言葉だったそうです。彼女の行動力は留まるところを知らず「地球の歩き方」とコラボで旅グッズの開発に取り組むなど精力的に活動を続けています。

旅好きの人に捧げる旅のバイブル

「世界中のすべてをこの目で見てみたくて、世界中のあらゆる笑顔に会いに行きたくて、旅をしている自分を想像しただけて、体がウズウズしだし、胸がドキドキしてしまう。(中略)”思うことは叶うこと”だ。心はもう、動き始めている。あとは、私の心が『行きたい』と思った国に、体を動かしていくだけでいい。私はもうリュックひとつで、世界中のどこにだって行けるんだ!」(『ガンジス河でバタフライ』より引用)

著者
たかの てるこ
出版日


この言葉を聞いて胸がときめかない旅好きがいるでしょうか?たかのてるこの旅への熱い思いがこぼれ落ちるように伝わってくる力強い言葉だと思います。

この『ガンジス河でバタフライ』は、たかのてるこのインド旅行の様子を綴ったエッセイです。彼女の人生初の海外旅行である香港とシンガポールへの旅行記も掲載されています。

彼女の目を通して見えてくるインドの「ありのままの姿」。朧げな形でしか捉えることが出来なかった「インド」という国の輪郭を、彼女が太線でなぞって示してくれているようです。

例えば列車で知り合ったインド人のおじさん宅に泊めてもらった時のエピソード。作者は偶然おじさんの奥さんがお手伝いさんに向かってスプーンを投げつけているのを目撃してしまいます。

殴る、蹴るなどの暴行までもはいかないものの、スプーンを投げるという屈辱的な行為が妙に現実的で生々しい。そんな現実にたかのてるこはショックを隠せなかったことを正直に記しています。雇われる側と雇う側。カーストはいったいどのような形で人々の生活に潜んでいるのか。いろいろと考えさせられる要素も含まれています。

旅に出る気持ちを駆り立て、そしてもう一度原点に立ってじっくり旅というものを考え直すきっかけを与えてくれるような作品です。旅のバイブル本としてぜひ旅をする際はスーツケースに忍ばせていってください。

モロッコでたかのてるこが大ピンチ?!

『サハラ砂漠の王子さま』は、たかのてるこのモロッコ旅行の様子を綴ったエッセイです。本書の前半には「ヨーロッパ編」も収録。たかのてるこがヨーロッパを経てモロッコに入る様子も詳細に描かれています。

著者
たかの てるこ
出版日


本書をめくるとまず始めに飛び込んでくるのが、今にも動き出しそうな生き生きとしたモロッコの人々の写真の数々。ある写真からは今にもモロッコの風が吹き出し、またある写真からはモロッコの熱い太陽の光が注ぎ出されるよう。たかのてるこのカメラに向けられるモロッコの人々の表情は、どれも実に明るく鮮やか。それを引き出せる作者の才能を感じることが出来ます。

本書で描かれているのは、モロッコ人と日本人の価値観の違い。「恋人はひとりまで」「浮気はいけない」といった日本人が道徳的に信じている価値観が、いかにモロッコ人のそれとかけ離れているかが面白おかしく描かれています。

たかのてること恋人であるモハメッドを「共有」しようとするアイシャ。「自分にも恋人がいるし、浮気は良くないよ」と頑なに拒む作者に彼女はこんな言葉をかけます。

「そんなの黙っておけばいいじゃない。誰だって胸の中にひとつやふたつ、人に言えない秘め事があるものよ。てるこ、バレない嘘は真実なのよ」(『サハラ砂漠の王子さま』より引用)

あまりに冷静に堂々と語るアイシャに「私の方がおかしいのか?」と混乱する作者。一体どのようにこのピンチを切り抜けたのでしょうか……?

日本の「常識」は時に世界の「非常識」であること。本書の大きなテーマになっています。そんな禅問答のようなことを言うアイシャの考えに作者はどう応えるのでしょうか?続きは本書でお楽しみください。

謎に包まれたジプシーの生活を徹底解説!

ジプシーという名前を聞いたことがある人は多いと思いますが、その詳細や実態はどれくらい知られているでしょうか。この『ジプシーにようこそ! 旅バカOL 会社卒業を決めた旅』は、たかのてるこがジプシーとの交流を求めてルーマニアへ渡った紀行エッセイです。

著者
たかの てるこ
出版日
2013-07-05


ジブシーとは「西暦1000年頃から、西に理想の地を求めてインド北西のラジャスタンから旅立った」人々の子孫。ヨーロッパ、アメリカなど世界各地で暮らしており現在は1200万人のジプシーがいるとされています。

「『過去』や『未来』といった概念がなく、いつも『今』しか生きていないジプシー。さっきまで泣いていたのに、もうゲラゲラ笑ってて、テンションがクルクル変わるジプシー」(『ジプシーにようこそ』より引用)

彼らの文化についてこう記しています。移り変わるのは土地だけではなく、心情も揺れ動く彼ら。この作品は、たかのてるこが抱いていたジプシーのイメージと実際のジプシーの大きなギャップが少しづつすり寄っていく様子がとても興味深く描かれています。

時にはジプシーは音楽の才能が素晴らしく、陽気に楽しく暮らしているというイメージを持っていた作者が、約束をあまり守らず人のものを平気でとる、というジプシーの実態にショックを受けたり。時には「ジプシーは乱暴で悪い奴らばかりだ」という町のうわさを真に受けた作者が、ジプシー同士の絆の深さや旅人を受け入れる懐の深さに感動したり。

ジプシーたちの日常生活での自然な姿を映した写真も多く掲載されています。笑ったり、泣いたり、子供同士がじゃれあったり、夫婦が愛し合ったり、これらの写真を見ると全く未知の世界にいるようなジプシーを身近に感じることが出来るでしょう。ページをめくる手が止まらずに一気に読めてしまいます。ジプシーの日常、あなたも覗いてみませんか?

必見!たかのてるこのスピリチュアル日本旅

『ど・スピリチュアル日本旅』は「旅行と言えば海外!」と常々口にしていた、たかのてるこの初めての国内旅行紀行エッセイです。最も身近で最も遠い国、日本。彼女の目を通して見ると、当たり前だった日本の風景がディープでスピリチュアルな魅惑の風景に変わります。

著者
たかの てるこ
出版日
2014-08-07


旅先は和歌山県の高野山、三重県の伊勢神宮、北海道の二風谷、沖縄の本島と離島、そして佐賀の三瀬村。北海道ではアイヌのシャーマンである「アシリレラ」の家にホームステイをし、沖縄では離島を巡り現地の文化や名所、その歴史にも触れています。

ページをめくるごとにふつふつと湧いてくる「自分は日本のことを意外と何も知らなかったのかも知れない」という思い。新鮮な新しい発見と驚きに胸が高鳴り続けていきます。旅先で出会う人々の優しさに、たかのてること母親の息の合ったやり取りに、アシリレラのとっておきの名言に、ページをめくる手が止まらなくなること間違いなしです。

たかのてるこの持つ、人の懐に飛び込んでいけるパワフルさがキラリと光る作品です。人の心の扉を知らないうちにそっと取り外すことが出来る彼女ならではのコミュニケーション術も見どころでしょう。

本書の中にちりばめられた旅先で出会った人々の笑顔の写真も本書の見どころ。若者もおじさんもおばさんも、お坊さんも、とにかくこの本に登場する写真は笑顔で満たされています。旅に出る気持ちが無性に駆り立てられる、そんな1冊です。
 

たかのてるこの抱腹絶倒ヨーロッパ旅行!

本書は18年間働いた会社をあっさり辞めて突然一人でヨーロッパ鉄道旅行へ出かけた、たかのてるこの旅の記録です。距離にしてなんと15000キロ。イタリア、デンマーク、モナコ公国、スペインなど21カ国を2ヶ月かけてまわっています。

著者
たかの てるこ
出版日
2016-10-01


まずびっくりするのが、この本の表紙。表紙の写真はフランスのヌーディストビーチの写真なのです。そんな表紙をめくるとそこは、たかのてるこのおとぎ話のような旅の世界が広がっています。

特におすすめなのが、やはり表紙にもなっているフランスでのヌーディストビーチのエピソード。なんと作者はそこで本当に全てを脱ぎ去ってヌーディストになります。現地の人とのやりとりも笑いを堪えられないこと必至。そして作者のどんなことにも飛び込んでいけるたくましさが、旅を魅力的にするエッセンスとして良い味を効かせています。

この本を読むと「旅の数だけ『たび』があるのだ」という当たり前だけれど大切なことに気付かされます。同じ場所を同じ時期に何度も訪れたとしても、そこで出会う人々、街の景色、自分の心情など、おなじ「たび」は二度とやってこないのです。だからこそ、どんな景色も良い思い出も苦い思い出も、心を癒して満たす栄養になるのかもしれません。

また、たかのてるこがこの旅で自己肯定感を強めていく姿を感じることも出来ます。日本では「慌てん坊」な作者の個性はマイナスにとらわれがちで、彼女のコンプレックスになっていまし。しかしこの旅で様々な人々と触れ合うことで、ぐじゃぐじゃになって解けなくなったコンプレックスの糸がするりと解けていく様子が分かります。まさに彼女の「慌てん坊」は、たかのてるこの世界中の人々を惹きつけるキャラクターの大事な要素になっていたのです。

狭い世界観に自分を閉じ込めてしまいがちな人、自分をもっと愛したい人におすすめしたい1冊です。きっと気持ちが晴れ晴れとすることでしょう。

いかがでしたか?たかのてるこを通して見ると世界は何倍もの面白さを帯びてきます。ぜひあなたも、たかのてること世界を回ってみてください。

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