谷口ジローおすすめ漫画ランキングベスト5!『孤独のグルメ』だけじゃない!

更新:2017.3.5

2017年2月に惜しまれながらも世を去った谷口ジロー。その絵柄や作風により『孤独のグルメ』以外の作品にも再び注目が集まっています。今回は谷口ジローのおすすめ漫画をランキング方式で5作品ご紹介いたします。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

原作も作画も反響を呼ぶ天才漫画家、谷口ジロー

本名谷口治郎である谷口ジローは1947年に鳥取県で誕生しました。高校卒業後、漫画家を目指して19歳で上京します。1971年、24歳で『嗄れた部屋』を発表しデビューとなりました。

石川球太や上村一夫のアシスタント業から独立後、漫画の原作を他に任せ、自分は作画を担当して、青年向け漫画においてハードボイルドや動物もの、冒険、格闘、文芸、SFなどを手がけました。自身で原作も担当する作品もあり、どの作品も生命そのものや人生、命あるものとのかかわり方を軸に作成しているように思われます。

絵はジャン・ジロー(メビウス)やフランソワ・シュイッテンなどのバンド・デシネ(フランスのマンガ)の作家に強い影響を受けているとインタビューでは答えています。そのリアルで美しい絵柄と、起承転結が強く描かれない現実味を帯びた作風が特徴的です。また、いくつかの作品が翻訳され、ヨーロッパで高い評価を受けることとなりました。

多くの作品賞を受賞し、数々の作品集が出版されています。しかし、2014年に連載した『千年の翼 百年の夢』、2016年の『谷口ジロー画集』が最後の作品となり、2017年2月11日、69歳でこの世を去りました。

5位: 飼い主の元へ走る戦闘犬の、血にまみれた追走劇

5位は『ブランカ』です。1984年から1986年にかけて「マガジン・ノン」で掲載されていた全2巻の作品です。

アラスカの大地で密猟をしていたシバとディックが目にしたのは、オオカミの群れに紛れる一匹の白い犬でした。名前はブランカといい、その並外れた運動神経と殺傷能力により、ブランカに銃を向けたディックは一瞬で首を嚙み千切られてしまったのです。

ブランカの正体はR共和国によって生体改造された戦闘犬でした。彼は飼い主パトリシアのもとへ行こうとしているのですが、機密保持のためブランカを殺そうとするR共和国の追手の影が近づきます。さらにはディックや大切な人をブランカに殺されたシバ、ブランカの細胞及び能力に魅了されたヘレンなどもブランカを追います。ブランカは無事パトリシアと再会できるのでしょうか……。

著者
谷口 ジロー
出版日
2009-10-30

ブランカを追って翻弄される周囲の人々と、パトリシアに会うというシンプルな目的で行動するブランカが対となって描かれています。人間の都合で作り上げた戦闘犬を殺そうとして、皮肉にも自分たちが餌食となるあたり、人間の愚かさや生命のはかなさが伝わってきます。

また、絵柄が丁寧なのも特徴で、犬の毛並み一本一本が丁寧に描かれています。ブランカの凶暴さが描かれるシーンでは、手足の動的な描写や人間に食らいつく犬歯のリアリティが読者の恐怖心を煽ります。

荒野や自身の白い身体を血で染め上げるブランカは恐ろしくもどこか神秘的な魅力を漂わせます。しかし、異常な細胞発達や筋肉運動でブランカの身体は徐々に使い物にならなくなってしまうのです。作品の結末を涙なくしては読めないことでしょう。

4位: 中学生にタイムスリップ!過去は変えられるのか?

4位ランクイン作品は『遥かな町へ 』。1998年に上巻、1999年に下巻が出版されました。2010年にはヨーロッパで実写映画化されました。

48歳の会社員である中原博史は、出張に出かけた京都からの帰り道に新幹線に乗ったはずが、どういうわけか故郷の倉吉行きの特急列車に乗車していました。なんとなく東京行きの電車に乗り換える気にならず、そのまま故郷に足を踏み入れます。

そうして訪れた亡くなった母親の墓前で、突然めまいに襲われます。気が付くと、なんと自身の姿は中学生になっており、14歳だった34年前にタイムスリップしていたのです。博史は二度目の青春を体験しつつ、ちょうどそのころに姿を消した父親を今度は引き留めようと画策します。

著者
谷口 ジロー
出版日

本作を読み始めると、落ち着いた列車の雰囲気や穏やかな田舎の街並みが目に入ります。タイムスリップしたあとは、昭和時代を彷彿させる風景が描かれています。本作の魅力は、作品全体に漂うどこか懐かしい雰囲気と言えるでしょう。

学生の頃は勇気がなくて気になる異性にうまく話しかけられなかった、という経験があるかたは多いと思います。そんな甘酸っぱい思い出をもう一度体験できたらいいのに、と考えたことはありませんか?本作はそのような願望を描いた漫画とも言えます。

主人公博史は48年分の貫禄を備えた中学生となって憧れだった女の子と仲良くなっていきます。「大人びている」「英語ができる」といった、学生ならではの他と差をつける能力を垣間見せます。現実ではありえない出来事ですが、もし自分が博史の立場だったらと妄想してみると、ちょっと可笑しいですが愉快であることには違いないでしょう。

さて、父親が蒸発してしまった理由は一体なんなのでしょうか。博史も既に妻子持ちの身です。博史にしても読者にしても、父親と同じ立場になって初めてその蒸発した理由が分かるのかもしれません。自分の為に、家族のために生きるとは一体どういうことなのかをテーマにした、大人の方に読んでいただきたい作品です。

3位: エベレスト登頂を題材にした命がけの戦い

3位は、『神々の山嶺』。全5巻の作品です。2016年には実写映画化もされました。

深町誠はエベレスト遠征で失敗し仲間を失います。一人カトマンズに滞在し街中をさまよっていると、とある故買屋で気になるカメラを見つけます。それは、1924年にエベレスト登頂に失敗して命を落としたジョージ・マロニーの遺品でした。

深町はそのカメラを購入後、調べていくうちに、それはピカール・サン(毒蛇)と呼ばれる日本人から盗まれたものであると判明します。深町は彼に遭遇するのですが、その相手はかつてエベレスト登頂で問題を起こし、その後消息を絶っていた羽生丈二だったのです。そして、羽生丈二が「エベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂」に挑むことを知るのでした。

著者
["谷口 ジロー", "夢枕 獏"]
出版日
2012-02-01

本作には実在のモデルがいる登場人物が多いです。ジョージ・マロニーはアンドリュー・アーヴィンとエベレスト遠征で命を落とした実在する人物です。また、羽生丈二のモデルは森田勝、長谷常夫のモデルは長谷川恒夫という登山家です。

モデルエピソードがあるぶん、物語は深みを増します。命を落とす危険性が高いエベレストの魔の魅力に取りつかれた男たちの生き様をリアルに描いています。

また、小説が原作ということで、漫画のなかでも登場人物によるナレーションが多いのが特徴的です。中年男性のポツポツとこぼす思考が綴られることで、原作の雰囲気を壊さずに物語を進めているのです。

他にも谷口ジローによる漫画化の長所はあります。エベレストの絵は本物の写真のように忠実に再現されています。エベレストに登る直前の深町たちの表情はどこか悟っているような、年を取っているからこそ出せる味が見受けられます。

羽生が異常に登山に拘るのは何故でしょうか。それには悲しくも人間らしい思いが背景にあります。物語のクライマックスからラストにかけて、涙を流さずには読むことはできないでしょう。

2位: 亡くなった父親の過去を知っていく、お通夜での話

2位には、1994年に「ビックコミック」で連載された1巻完結の作品『父の暦』がランクインです。

父親が亡くなったことをきっかけに、陽一は長年訪れることがなかった故郷の地に帰ってきます。どことなく故郷を遠ざけていた陽一ですが、久しぶりに再会した親戚たちは陽一を暖かく迎えてくれました。お通夜でいろんな人と話しているうちに、陽一は父親の知られざる一面を知っていきます。

著者
谷口 ジロー
出版日

陽一の家族は少し特殊です。家が火事で焼失してしまい、その件でもめた両親が離婚、大好きな母親が姿を消してしまいます。その後再婚して陽一は新しい母親と接していくことを強いられます。しかし姉である春子は歳上の分、陽一が知らなかった父親の苦労を知っていたため、両親に協力的でした。そのこともあり陽一は自分だけ溝があることを感じていたのです。

陽一のように、幼いころの家庭内環境の変化は耐えるか目を背けるかしかしょうがないのかもしれません。まだ自分の気持ちを伝え、大人の気持ちを考えることができないからです。自分の記憶の断片から親に対して良くない気持ちを抱き、そのまま話し合わない人はきっと多いはずです。

しかし、陽一は父親の本当の姿を知ることで、父親が生きている間にきちんと向き合わず、距離を置いてきたことを徐々に後悔していきます。自分の過去、そして自分が知らない一面を持つ親と向き合うことで、その後の人生や価値観が変わることだってあるのです。

このような心理描写をうまく引き立てるのが谷口ジローの絵柄です。人間の表情だけでなく、背景への細かい書き込みが、より一層郷愁を醸し出しているように思われます。

一巻通して大きな盛り上がりや感動があるのではなく、淡々と真実を突きつけられていく作風がむしろ一層読者の胸に突き刺さります。家族との向き合い方を改めて考えさせられる作品です。

1位: スーツの男がひたすら食事を実況する飯テロ漫画!

1位に輝いた作品は、『孤独のグルメ』です。雑貨輸入商を営んでいる井之頭五郎という人物が、仕事に行った先々や、時間の合間に立ち寄った店で食事をとる様子がひたすら描かれた作品です。

著者
["久住 昌之", "谷口 ジロー"]
出版日

食べに行くお店を決め、地元の人とおしゃべりし、自分の食事ルールに従って注文する……。この一連の流れを五郎の心理戦とともに展開させるのが本作の魅力でもあります。

心の声をそのままコマに書くため、真顔で「なくてけっこうコケコッコー」「なるへそ」と考えたりしているシーンのシュールさが絶妙です。

また、お店のお皿やルールに疑問を抱いたり悪態をついていたりなど、心の声だからこそあり得る素朴な発言がさらに作品を面白いものにしています。

作中で登場するお店は実在しているものが多いです。漫画を読んでお腹が減ってしまった方は、実際にお店に足を運ぶのもよいかもしれません。

『孤独のグルメ』の名言を集めた<漫画『孤独のグルメ』の名言20選からお一人様の流儀を学ぶ!>の記事もおすすめです。

以上、谷口ジローのおすすめ作品ランキングベスト5でした。孤独のグルメ以外の作品も、興味を誘うものが多いですよね。絵柄を好む人も作風を好む人も、画集や作品集などもあるので、気軽に手に取ってみてくださいね。

もっと見る もっと見る