シベリウスの音楽と人生にせまる本4冊。フィンランドを代表する作曲家

更新:2017.3.12 作成:2017.3.12

ジャン・シベリウスは「フィンランディア」や「交響曲第2番」などで知られる、フィンランドの作曲家です。故郷の厳しい自然を感じさせる作風が大きな特徴。2017年に没後60年を迎える、北欧を代表する作曲家の生涯を知る4冊をご紹介します。

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19世紀末に活躍したジャン・シベリウスとは

ジャン・シベリウスは、1865年フィンランド生まれの作曲家です。 本名をヨハン・ユリウス・クリスチャンと言い、姉と弟との3人姉弟でした。幼いころから音楽に親しみ、姉と弟と室内楽演奏を楽しんだようです。

1885年にヘルシンキ音楽院に入りヴァイオリン・作曲を学び、1889年にはベルリン、1890年にはウィーンに留学します。留学中に様々なコンサートやオペラに通い、様々な作曲家に出会う中、祖国フィンランドへの関心を高めていきます。

帰国後、フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』に基づく『クレルヴォ交響曲』を1892年に発表し、成功をおさめます。また同年、ヘルシンキ音楽院で作曲の教師となり、妻アイノと結婚します。 1899年フィンランドとロシアの関係が悪化し、国内で愛国運動が盛んになりました。そんな中上演された愛国歴史劇の音楽をシベリウスが担当し、人気を博します。これによって彼は国民的英雄の地位を得ました。この時の曲を交響詩としてまとめたものが、有名な『フィンランディア』です。

その後、彼の生活環境や心理状態によって作風の変化を経ながら、交響曲、交響詩、劇音楽、協奏曲、ピアノ曲など多くの作品を残します。しかし、1925年に交響詩『タピオラ』発表後、主だった作品を発表しないまま、1957年その生涯を終えます。

1:母語はスウェーデン語だった

当時のフィンランドは大国スウェーデンとロシアに挟まれ、スウェーデン領となったりロシア領となったりしていました。シベリウスの両親はスウェーデン語を母語としていたため、彼の母語もスウェーデン語でした。後に、学校に通うためにフィンランド語を習得しています。

2:シベリウスにとって、おじの存在は大きかった

2歳の時に他界した父は多額の借金を残しており、シベリウス一家は母方の祖母と暮らすようになります。そこで彼に大きな影響を与えたのが、おじでした。 おじは彼にヴァイオリンを与え、後にシベリウスの作曲への意欲を励ましたのも彼でした。また、本名のヨハンをフランス語風にジョンとしたのも、おじの影響でした。

3:独学で初めての作曲は10歳の頃だった 

シベリウスは幼いころから楽器に親しんでいましたが、初めて作曲したのは10歳の時でした。その時の作品は、ヴァイオリンとチェロのための『水滴』です。

4:一度は大学の法学部への入学した

留年を経て高校を卒業したシベリウスは、1885年、ヘルシンキ大学法学部に入学します。しかし、音楽に集中するため1年で退学し、ヘルシンキ音楽院に入学しました。

5:ヴァイオリニスト志望だった

15歳でヴァイオリンの勉強を始めたシベリウス。当初はヴァイオリニストを志します。1887年にはヘルシンキ音楽院の弦楽四重奏団の第2ヴァイオリン奏者になり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のオーディションを受けたりもしました。

6:激しい浪費家だった

若いころからパーティやギャンブルに興じていたシベリウス。初期の作品の成功によって、1897年にはフィンランド政府から終身年金が贈られることになりましたが、それでも莫大な借金を抱えることに。 1904年にその後50年近くを過ごすヘルシンキ郊外ヤルヴェンパーの自宅アイノラへ移ります。これは、彼を酒場の多い都会から遠ざけるために妻アイノが考えた案だそうです。

7:子だくさんだった

妻アイノと結婚したシベリウスは、子宝に恵まれ、6人の子供を授かります。うち、一人は幼くして死去してしまいますが、全て娘でした。

8:フリーメイソンの一員だった

フィンランドでフリーメイソンが復活した時、シベリウスはスオミ・ロッジの創設メンバーでした。後に、フリーメイソンのための音楽を作曲しています。

9:幻の交響曲第8番とは

1925年に交響詩『タピオラ』発表後、主だった作品を発表していないシベリウス。音楽について公に話をすることも避けていたようです。しかし作曲は続けていたといわれ、「交響曲第7番より良いものが書けないなら、それが私の最後の作品になるだろう」と近しい友人に言っていたそうです。2011年に、ヘルシンキ大学の図書館で交響曲第8番のスケッチが発見されました。

故郷フィンランドを愛した作曲家シベリウスの伝記

フィンランドはロシアやスウェーデンと国境を接する、北欧にある国。自然豊かで雪深い土地にあり、ウィンタースポーツやサウナ文化が盛んであることが日本でも知られています。豊かな自然と独自の民族文化をもつフィンランドで生まれた作曲家、ジャン・シベリウスの生涯をまとめたのが『シベリウスの生涯』です。ハンヌ・イラリランピラ著、日本語訳は稲垣美晴、監修をフィンランド在住のピアニスト舘野泉が行っています。 

シベリウスの生涯

ハンヌ・イラリ ランピラ
筑摩書房


フィンランドを代表する作曲家であるシベリウスですが、その特徴は故郷の自然を感じさせる雄大さや厳しさ、静寂を表現したところにあります。自国の民族文化を多く取り入れるカレワラ・ロマン主義が隆盛した只中に生まれた彼は、自然豊かなハメーンリンナで成長。現在は国立公園となっているアウランコの森は、作曲活動にも大きな影響を与えました。

「フィンランディア」等で人気を博したシベリウスですが、1925年交響詩「タピオラ」発表以降、作品をほとんど発表しなくなってしまうのです。交響曲を書くことに強いプレッシャーを感じていた、と言われていますが、「第8交響曲」が未発表となった原因や経緯について言及しており、彼の苦悩を感じ取ることができます。

シベリウスの生きた時代や、日本からは遠く離れたフィンランドという国の空気を感じることができる本作。どうやらお金に大変苦労した、などというエピソードも残る作曲家の生涯を深く知ることができる1冊です。

8つの交響曲と辿るシベリウスの人生!

ジャン・シベリウスは生涯で8つの交響曲を発表しています。交響曲とは、複数の楽章から構成される楽曲のこと。主にオーケストラで演奏されています。日本でもっとも有名だといわれているのが、「交響曲第2番」。題名は知らなくとも耳にしたことはある、という方も多いのではないでしょうか。指揮者松原千振(まつばらちふる)が、彼の残した交響曲を中心に、その生涯をたどっていくのが『ジャン・シベリウス 交響曲でたどる生涯』です。

著者
松原千振
出版日
2013-07-19


1891年に「クッレルヴォ交響曲」を完成させて以降、「交響曲第1番」から「交響曲第7番」までを残したシベリウスですが、1924年を最後に交響曲の発表はありません。自己批判が強かった、という話も残っているように、自身の名を押し上げていった「交響曲」をたどることにより、シベリウスの苦悩をより強く感じることができます。

クラシックファンにはお馴染みの作曲家ですが、曲は知っていても名前は知らない、ということも多々あるのがクラシック。曲を知り、作曲家が生きた時代、歩んできた人生を知ることにより、曲がより心に深く響くようになります。苦悩に満ちた人生を歩んだシベリウス。その生涯を知ることができる、入門書的な1冊です。

氷の国フィンランドの昔語り集

日本ではイザナミ、イザナギの国造りの神話が残っているように、世界には様々な神代からの国の興りを記したものがあります。フィンランドでは神話や英雄譚を口承で伝えてきました。それらは17世紀より研究が盛んにおこなわれ、19世紀にはまとめられ出版、フィンランド国民に大きな衝撃を与えます。

口承で伝わってきた伝説や神話は独特な韻を踏む叙述詩で、フィンランドの民族叙述詩を「カレワラ」と言います。様々な分野で影響を及ぼしたカレワラを日本語訳し、出版したのが『カレワラ物語―フィンランドの国民叙事詩』。作者はフィンランドのマキネン・キルスティ、訳者はフィンランド民謡の訳も多く手掛ける荒牧和子です。

著者
キルスティ マキネン
出版日


北欧ということもあり、どこかファンタジックな世界観が魅力のカレワラですが、シベリウスはカレワラの影響を受けた作曲家のひとりで、カレワラをテーマにした曲も多数発表しています。「レンミンカイネン組曲」もその1つ。カレワラでは男前で女たらし、身勝手なレンミンカイネンがあちこちで騒動を起こす様子が語られています。

物語調となり、おとぎ話を読むような感覚でページを捲ることができる本作。フィンランドでどのような神話や伝説が語り継がれてきたのかを知るのと同時に、芸術分野に大きな影響を及ぼしたことが感じられます。シベリウスの作品を深く知る一助ともなる1冊、シベリウスの音楽に耳を傾けながら、世界観に浸ってください。

交響詩から考察するシベリウスの音楽観とは?

交響詩はオーケストラで演奏される楽曲のうち、音楽以外の世界観を想起させ、なおかつ作曲家によって交響詩と名付けられたものを言います。シベリウスの代表作である「フィンランディア」は交響詩。元々劇音楽『愛国記念劇』のうちの1曲を改作したもので、帝政ロシアの圧政に苦しむフィンランドが独立運動を起こした時期に演奏されており、フィンランド人の愛国心を沸き起こす作品です。

「ポホヨラの娘」、「レンミンカイネン組曲」など数多くの交響詩を残したシベリウスですが、交響詩から彼の音楽観や世界観を考察していく意欲作が『シベリウスの交響詩とその時代 神話と音楽をめぐる作曲家の冒険』です。作者の神部智は、19世紀から20世紀にかけての西洋音楽を専門とする研究者です。

著者
神部 智
出版日
2015-12-07


日本で出版されているシベリウスに関する本は多くありません。その中でも本作は、交響詩に加え、彼を語るうえでは欠かせない交響曲にも触れながら、成り立ちや魅力について詳しく解説。そこからフィンランドの国民的作曲家として認知されているシベリウスとしてではない、ひとりの音楽家としての彼の姿を浮かび上がらせます。

人は自身の置かれた環境に大いに影響を受けます。シベリウスの作品に、当時の情勢が深くかかわってはいますが、それだけではありません。交響詩と交響曲、両者を解説することにより、彼の音楽は何を目指していたのかを、強く感じ取ることができます。冷静な語り口も魅力的な本作をよめば、彼の曲に耳を傾けたくなる、情熱を感じられる1冊です。

北欧フィンランドは日本から遠く離れた地。大きな文化の違いがあります。フィンランドで生まれた作曲家、ジャン・シベリウスの楽曲は、フィンランドの人々だけではなく、世界中の人々の心を振るわせる力を持った存在です。音楽だけではなく、本人を知ればより、音楽が胸に響くようになる。その助けとなる作品ばかりです。