世界3大美女のひとり、クレオパトラ。知らない人はいないといっても過言ではないほど有名です。絶世の美女として知られている彼女ですが、その私生活についてはあまり知られていません。そんな人物像を詳しく学べるおすすめの書籍を紹介します。
一般的に絶世の美女としてしられている「クレオパトラ」はクレオパトラ7世フィロパトルを指します。彼女はプトレマイオス朝のエジプトで、プトレマイオス12世とクレオパトラ5世との間に生まれました。彼女が18歳の時に父親が亡くなっており、当時当たり前だった血族婚の習わしによって弟のプトレマイオス13世と結婚して王位を受け継いでいます。
しかしふたりの政治的意見は食い違います。夫となったプトレマイオス13世は本国ローマへの貢納はエジプト国民の重税になるとして、たとえ侵略を受けることになろうとも屈しないという考えでした。それに対してクレオパトラはたとえローマの属国になろうとも侵略を受けないためにローマに徹底的に従う考えです。しかし彼女のそんな姿勢が国民の反感を買い、アレクサンドリアから追放されてしまいました。
それと同時にローマでは内戦が続いており、敵を追ってジュリアス・シーザーがエジプト入りをします。そこでクレオパトラは絨毯に包まれて隠れ、贈り物としてシーザーの元へと辿り着きました。そして見事にシーザーと彼女はプトレマイオス13世を打ち倒しました。しかし、シーザーもブルータスの裏切りによって暗殺されてしまいます。
その後もクレオパトラはアントニウスをその美貌で味方につけてエジプト繁栄のために戦い続けました。しかしエジプト連合軍がアクティウムの海戦において、エジプト軍が数で勝っているにも関わらず彼女はアントニウスと一緒に戦線を離脱という不可解な行動を取っています。のちにアントニウスが自殺。彼女も後追うようにコブラに胸を噛ませ、その生涯に幕を閉じました。
1:当時の感覚ではそんなに変ではない?自分の弟2人と結婚!
クレオパトラは18歳の時に自分の弟であるプトレマイオス13世と結婚しますが、最終的には敵対したのち、カエサルと組んで彼を倒します。実はその後、また自分の弟であるプトレマイオス14世と結婚します!当時の習わしとは言え、現代から見ると少しびっくりする展開ですね。
2:美人姉妹の壮絶な争い!その決着とは?
クレオパトラとプトレマイオス13世の争いの際、妹であるアルシエノがプトレマイオス13世側につきました。つまり彼女は弟だけでなく、妹とも戦ったということですね。アルシエノはクレオパトラに負けず劣らず美人だったようですが、結局この戦いの決着は姉に軍配が上がりました。クレオパトラは弟・妹を倒して王座についたことになります。
3:愛する人とは結婚できない、悲恋の人だった!?
前述したとおり、最初の夫であるプトレマイオス13世を倒した後には再度弟であるプトレマイオス14世と結婚したクレオパトラ。カエサルとはずっと愛人関係にありました。カエサルが殺された後に味方となったアントニウスとも結局結婚したかどうかは不明で、二人は共に自殺します。彼女は結局、愛した人と結婚できませんでした。王女という地位にいる人の、悲しい運命かもしれません。
4:自分の目と同じ色だから?エメラルドをこよなく愛した
クレオパトラはエメラルドをこよなく愛し、自分の名前をつけたエメラルド鉱山を所有していたほどでした。その理由は自分の瞳と同じ色をしていたから、とも言われていますが、単に宝石として使うだけでなく、砕いてアイシャドウとして使っていたのではないかという伝説もあるそうです。クレオパトラの、美に対する並々ならぬ情熱が伝わるエピソードですね。
6:最高の贅沢合戦!巨大真珠をビネガーに溶かして飲んだ!?
カエサルが暗殺されたのち、アントニウスの大遠征軍がエジプトにやってきました。ローマ軍は連日大宴会を開きましたが、クレオパトラはエジプトの威信をかけ、それに対抗するような豪華な宴会を開く、と宣言したそうです。
そして開かれた宴会の最後に、自分が身につけていた大粒の真珠をワインビネガーに溶かして飲んでしまったのだとか。実は美容にも効くと考えられていたそうですが、国も買えるほどの宝石を飲んでしまうとは、彼女の胆力たるや相当なものだったのでしょう。
7:アントニウスのプレゼントは図書館だった!?
トルコのエーゲ海側にあるベルガマ(ペルガモン)は、ギリシャ時代から都市が建設された非常に歴史のある街で、世界文化遺産にも登録されています。
ここにはクレオパトラの時代に世界最大と言われ、その後のローマの侵攻により消失してしまったアレクサンドリア図書館を凌ぐほどの大きさの図書館があったそうですが、アントニウスはこの図書館を、ローマが消失させたアレクサンドリア図書館の代わりにプレゼントしたという逸話もあるそうです!
8:実は死因はコブラではない?新説の登場!
クレオパトラの死因として、自殺しないよう監視されていた中、こっそりカゴに入れて部屋に持ち込ませたコブラに自分を噛ませた自殺だった、という話は非常に有名ですが、2010年になってそれを覆す説がイギリスで発表されたようです。
そもそもコブラがカゴに入るほど小さくないことと、コブラの神経毒が弱すぎて死ぬまでに数日かかることが理由だそうで、服毒自殺だったのではないかとも言われています。どちらが真実かはわかりませんが、何千年も後に死因が注目されるほど、クレオパトラが皆にとって魅力に満ちた人物だということですね。
絶世の美女、悪女として知られているクレオパトラですが、その血筋や外交官としての手腕など、知られていない事実がたくさんあります。本書『クレオパトラ』はピュリッツァー賞作家のステイシー・シフによって書かれ、彼女の誤解を解き、真実の姿を伝えてくれる1冊です。
- 著者
- ステイシー シフ
- 出版日
- 2011-12-20
クレオパトラは多くの戯曲の題材にされており、ドラマチックな脚色によって広く人々に知れ渡るようになりました。虚飾にまみれた知識のおかげで、美貌を駆使して権力者を魅了してきた悪女という虚像が流布しているのです。本書はそんな彼女の誤解を解き、彼女の真実の姿を映しだそうと試みている1冊です。
また、外交官としてのクレオパトラの能力を知ることができるのも本書の魅力です。9カ国語を流暢に話せるくらい語学の才能を持ち、味方や敵国の軍事力を把握するほどの能力を持っていたことを本書は浮き彫りにしています。これまでの常識をすべて剥ぎ取り、「悪女」の真の姿を見せてくれます。
男を手玉に取り、権力者たちを骨抜きにしてきたことで知られるクレオパトラ。そんな誇張され過ぎた伝説と、パピルスなどに書かれている事実の両方から彼女の魅力にアプローチしたのが、クリスティアン・ジョルジュ・シュエンツェ作『クレオパトラ』です。
- 著者
- クリスティアン・ジョルジュ・シュエンツェ
- 出版日
- 2007-08-11
本書は伝説と事実を照らし合わせており、そのギャップを味わえるのが魅力になっています。権力者から権力者へと欲望のままに夫をころころと変えたという悪女のイメージが強いクレオパトラですが、策略で渦巻いていた古代において追放や相方の暗殺などに巻きこまれたためであり、その決断は仕方のないことでした。そして彼女が権力者に寄り添ったのは愛した故郷のエジプト存続のため。彼女が悪女と呼ばれるに至った経緯が書かれています。
また、豊富な資料も本書の魅力です。その事実像を古銭やパピルス、碑文などの考古学的資料から解明していく様子が書かれています。考古学的資料といえばわかりにくいイメージですが、年表や系譜、そして地図などの視覚的資料も多く掲載されているので、イメージとして内容も掴みやすいです。
クレオパトラ側に立つわけではなく、かといって批判的に見るのでない。本書はエジプトとローマ双方の資料から、客観的なイメージを浮き彫りにしていきます。劇的なドラマはなく冷静に分析している究極の人物図鑑です。
- 著者
- エディット フラマリオン
- 出版日
本書はフランスのガリマール社が刊行している「知の再発見」双書を日本語訳として出したもののひとつです。カラー図版でわかりやすく、歴史や偉人を学ぶことができます。
多くの絵画や彫刻などの美術品から色々なイメージが見られるのが嬉しい本作。歴史的資料だけでなく、ハリウッド黄金時代を代表する女優エリザベス・テイラーが演じたクレオパトラ像など、現代の彼女に対する見方も載った充実の内容となっています。
朝日新聞日曜版で1面を使ってクレオパトラに関する連載小説を掲載する試みがなされました。それが宮尾登美子著の小説『クレオパトラ』です。弱冠18歳でエジプトの女王となった彼女の波乱に満ちた生涯が描かれています。
- 著者
- 宮尾 登美子
- 出版日
かねてよりクレオパトラ好きを公言していた宮尾登美子が、お得意のねばっこくドロドロした愛憎劇により彼女を表現しました。エジプトを愛しシーザーを愛した人間性が描かれています。
クレオパトラの豪華絢爛な生活が垣間見えるのも魅力です。キラキラした宝石、華やかな薔薇、そして豪華なお香の匂いなど、誰もがため息をついて羨むような生活が多数登場します。古代エジプトの生活を体験したかのような体験ができる作品です。
誰でもその名を知っている絶世の美女クレオパトラですが、その出生や死などその実態はほとんど知られていません。そんな彼女をエジプトの女王としてだけでなく、その時代を生きたひとりの女性としてスポットを当てた小説が本書『クレオパトラ物語―エジプト女王秘話』です。
- 著者
- ミリアム アリ
- 出版日
小説でありながら、知られざる事実も書かれています。プトレマイオス王朝では近親婚が習わしでしたが、その理由は純粋なマケドニア人の血を守るため。歴史的事実に基づいてエジプトを統治していた人々の行動と理由がわかりやすく書かれています。
愛という目線で書かれているのも魅力的です。クレオパトラの生涯を題材にした小説ですが、シーザーとの恋愛がストーリーの中心に描かれています。外交という画策を進めるかたわらでシーザーとふたりのあいだに生まれた子供を愛し、シーザーの暗殺という悲しい別れまでもが美しく書かれた小説です。
謎多き絶世の美女クレオパトラ。彼女について知っていることも知らないことも、色々な角度で研究、表現がなされてきました。戯曲の中に現れる悪女だけでなく、王女として人間として生きた彼女を読むことができる書籍たちです。