水島新司おすすめ野球漫画ランキングベスト5!3位は『男どアホウ甲子園』

更新:2021.11.2

水島新司は「ドカベン」シリーズで有名な、野球漫画の第一人者。自ら野球チームを主宰するほどの野球好きで、それだけに野球に対しては一家言を持っている人物です。ここでは、そんな強い情熱を持って描かれた彼のおすすめの漫画作品の数々をご紹介します。

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日本野球界と共に歩んできた漫画家、水島新司

野球漫画と言えばこの人とも言えるほどの野球漫画家、水島新司。彼の野球漫画には数々の野球選手や芸能人が影響され、そして愛好していることでも知られており、大勢の読者から野球漫画の第一人者として認知されています。

1939年生まれの水島は、父親の借金により金銭的につらい少年時代をおくります。借金先の水産問屋に丁稚奉公に出されますが、そこで睡眠時間を削り漫画を執筆していたそう。この時点ですでに漫画家になろうと決めていたのです。

それから貸本漫画家としてデビューし人気を得ていきます。1964年に上京、「週刊少年キング」で多数の作品を発表。この頃はサッカーなどの野球漫画以外の題材も扱っており、この後に、「週刊少年サンデー」や「週刊少年チャンピオン」で描いた連載作品で野球漫画家としての地位を築き上げていくことになるのです。

彼の描く漫画作品はどれも躍動的で、登場人物たちが生き生きとマウンドを走り回ります。著作は野球漫画だけではありませんが、やはり彼を語るならば野球漫画を語りたいのがファン心理というものです。

「魔球」などの非現実的な表現を用いた野球漫画から、配球の読みなどにこだわった現実的な野球漫画も描く水島は、同じ漫画家のみならず、多くの著名人に影響を与えた人物。漫画家生活50周年には、著名な漫画家からの寄せ書きやイラストが数多く寄せられ、王貞治、長嶋茂雄、ビートたけしなどの著名人からも多くのメッセージが寄せられたそうです。

自他ともに認める野球好きなだけに、それに対しては強い想いがあり、メジャーリーグを嫌っていたり、MLB入りしたイチローや松井秀喜らを非難していたりもします。しかしこれらは、彼が日本の野球を愛するがゆえのものであり、現に彼の作品の中では日本野球界そのものが活気に溢れている姿が描かれているのです。彼の作品を読んだ選手たちが、こぞって作品に登場させて欲しいと願ったというのもうなずけます。

半生を漫画に捧げ、その半分以上を野球漫画を描くことに費やしてきた作家、水島新司。彼の描く現実に則した人情野球は、これぞ日本の野球漫画といった様相を描き出す作品ばかりです。そんな彼の描き出す物語に触れ、人情と野球愛に包まれた水島ワールドを体感してみましょう。

5位:水島新司が描く、野球群像劇

『くそ暑い夏』は水島新司が久々に高校野球ものを描いたファン待望の短編作品。『ドカベン』や『あぶさん』が、ひとりのスター性のある人物を主役として描いた作品ならば、こちらは普通の高校球児を主役として描いた作品です。水島らしい、人情に溢れた群像劇になっています。

将来プロ入り確実と言われるエース、江坂が率いる強豪校を相手に、特に何の変哲もない参加校、青森ねぶた商業高校野球部の面々が奮闘します。この物語に描かれているのは高校球児だけではなく、監督や球児たちの親御さんたち、応援団の人々など、高校野球という舞台に参加する様々な人々です。彼らひとりひとりの想いを丁寧に描きながらストーリーが展開していく人情味のある群像劇として仕上げられています。

 

著者
水島 新司
出版日
2009-07-17


夏と言えば甲子園、甲子園と言えば夏。高校球児の青春の1ページを描くのに、これほど適した題材はないでしょう。水島が久々に高校野球を舞台に描いたことで大きく宣伝をうたれた本作品は、何の変哲もない高校球児の、おそらくプロ入りなどはしないであろう彼らの青春の1ページを描いている作品です。

登場する球児たちは、仲間想いの食堂の息子、悩みを抱えたかつての速球投手、実力はあるが人間的に問題のあるものなど実に様々。一方球児たちを応援する親や応援団も、ベンチ入りメンバーの人選を気にかけているものや、炎天下の中必死に声をあげて応援しつづけるものなど、様々な立場の人物が描かれます。

球児だけでなく、その周囲の人間模様を描き出すことで、甲子園という大きな舞台を他の野球漫画作品とは違った切り口で表現している作品なのです。

本作には超人的な実力を持ったヒーローは登場しません。相手校の江坂も怪物投手とは呼ばれてはいますが、あくまで現実的な範囲内での怪物っぷりです。いわゆるヒーロー投手や打者が活躍する野球漫画とは違い、その見どころとなるのは、平凡な参加校、青森ねぶた商業高校の人間模様です。

水島新司が描く登場人物は、その人物が置かれた状況や人生などを丁寧に描写されることが多く、それによって人情味というものを生み出しています。夏の甲子園に参加した彼ら「普通の」球児と周囲の人間が、どんな人生を織りなすのか、それを見て頂きたい作品です。

2009年に発刊された本作品は、水島作品の中では後期の作品です。しかしどんな時代になろうとも、彼の野球漫画には貫かれているテーマがあります。それは登場人物たちの心情の描き方。どの人物も良くも悪くも野球に対しまっすぐだということ。それは、野球というものに半世紀近くもの間取り組んできた作者、水島新司の野球に対する美学と言えるかもしれません。

4位:連載41年に幕!現実とリンクした野球漫画

『あぶさん』は酒豪の代打打者、あぶさんこと景浦安武の人生を描いた作品。41年もの間続いた連載は、2014年についにその幕を下ろしました。実在の人物や出来事と深く関わらせながら、「現実のプロ野球を漫画化」してきたことで知られる、異色の作品でもあります。

もはや野球漫画ファンの間では伝説ともなっている本作品。その理由は良くも悪くも様々です。連載が終了した2014年時点では、日本で最も長く続いたスポーツ漫画とされており、その41年という長い歴史の中、作品の有り様は大きく変化しています。

当初の作風としては、景浦(あぶさん)という大酒飲みの打者が、代打という一打席に賭ける様が描かれていました。球場の場面だけでなく、決してヒーロー選手とは言えないうだつのあがらない彼の日常を描き、行きつけの店などでの人間関係などもたっぷりと描かれていたのです。作者である水島の最大の持ち味、人情味に溢れている作品です。

 

著者
水島 新司
出版日
1974-05-15


実際のプロ野球とリンクする形で描かれている本作品は、実在の選手や監督などの野球関係者が数多く登場します。野球界の状況なども深く関わり、現実のペナントの結果で漫画の展開なども変わるのです。

当初人情深い雰囲気で展開されていた本作品は、現実の時間の影響を受けながら徐々に変化していきます。作中であぶさんも年を取り、当初26歳の代打打者だった彼は、作中ではなんと62歳まで現役でバットを振るっているのです。

こういった長い歴史で変化していった作風が、良くも悪くもファンの間で語り草となっているわけです。しかしこれは、長く続いた連載、そして現実とリンクした作品だからこそ味わえる変化であり、他の作品では得られない感覚です。特に実在の人物と漫画の登場人物が真剣勝負をするなど、こんなに胸が熱くなる展開は他にありません。

実在の選手が、『あぶさん』に登場したくて頑張っていたなどと語っているなど、野球界に少なからず影響を与えている本作品は、水島新司の野球漫画家人生の半生をつづる作品だとも言えます。彼の野球漫画の集大成を、あなたも味わってみませんか?

3位:度を越した野球バカたちの共演!

『男どアホウ甲子園』は変化球を嫌いストレート一本に賭ける主人公が、女房役の相棒とともに甲子園優勝、そしてその後の阪神タイガース入団を目指す物語です。「魔球」や「必殺打法」などが登場する、実に漫画らしいフィクションが織り交ぜられた作品となっています。

ストレートしか投げない豪腕投手、その名も藤村甲子園は、相棒の岩風五郎(豆タン)を女房役として甲子園制覇を目指している少年です。数々の敵を打ち倒し、後にプロ入り、最終回では阪神タイガースに入団した甲子園が長嶋茂雄と対戦するシーンが描かれます。

 

著者
水島 新司
出版日


本作は「魔球」や「必殺打法」を駆使し、数々のライバルキャラとの死闘が展開されるエンターテイメント性の高い作品となっています。登場するキャラクターたちは、そんな作品に色を添える個性の塊と言える人物ばかり。

孫の出生届を出す際に勝手に名前を書き換えた甲子園の祖父や、幼いころの抗争で右目と右腕を失ったライバルキャラ丹波左文字など、濃いキャラクターが続々登場します。作中には常識外れな描写も多く、ルール上ただのボークにしかならないような「魔球」なども堂々と描かれています。メインヒロインが登場するお話にはちょっとしたサービスシーンもあったりと、良い意味で娯楽に特化した野球漫画と言えるでしょう。

『ドカベン』で人気を博した水島新司ですが、その2年前にはこんな面白い作品を描いていたんです。作風も対照的ですし、隠れた名作といった位置づけができる本作品。古き良き時代を感じさせてくれる勢いのある作品ですので是非読んでみてください。

2位:野球史上初の美人ピッチャーが登場

『野球狂の詩』は投げては打たれ続けるよれよれの50歳投手と、野球界初の女性投手などを中心にした、「野球狂い」たちの奮闘を描く連作。一旦は完結するも、その後読み切りなどで続編が描かれたりと、関連作品全体の経緯を見ると、わりと息が長い作品となっています。

プロ野球セ・リーグに所属する球団、東京メッツ。負け越しに負け越しを続け低迷を続けていた万年最下位の球団に満を持して迎え入れられた若手投手は、なんと女の子でした。東京メッツで50歳を超えながらも現役で投げ続ける投手、岩田鉄五郎がしつこく推薦したこともあり彼女はメッツ入団が決まります。こうして野球史上初の女性投手が生まれるのです。この美人投手の水原勇気や、よれよれの老齢投手岩田鉄五郎などの「野球狂い」たちにスポットを当てて物語が展開されていきます。

 

著者
水島 新司
出版日


まず目を引くのは野球漫画の主人公とは思えないほどよれよれの投手、岩田鉄五郎の姿です。野球漫画と言えば若者の青春や、青年となった彼らの活躍を描く、夢と希望に満ちあふれたイメージがありますが、本作品には、鉄五郎をはじめとする「野球狂い」たちを主人公とした、決して明るいとは言えない現実的なお話が描いてあります。

女性投手、水原勇気のエピソードこそ明るいものですが、岩田鉄五郎のような現実的な悩みを抱えた、陰りのあるキャラクターがたくさん登場する作品でもあるのです。どんな人物がどんな「野球狂い」っぷりを見せるのか、それを楽しみに読んで頂きたい作品となっています。

ちなみに女性ピッチャーということで人気を得た本作品は、映画版とドラマ版で2度も実写化されています。この女性投手という主役がいかに世間の注目を浴びたかを物語っているものです。

水原勇気編では、彼女がいかにしてプロ野球選手となったか、女性である彼女がプロとして通用するためにはどうすればいいのかなどが描かれています。最終的にはドリームボールという「魔球」を投げるようになる彼女を中心に、その魔球を打つことに選手生命をかける人物が登場するなど、現実味のある作風から、遊びの要素の強い作品へとなっていきます。水島勇気という魅力的なキャラクターが描きだすこんな部分も、本作品の大きな魅力と言えるでしょう。

ここで紹介した人物以外にも様々な野球狂いが登場していますので、実際に見て楽しんで頂きたいです。中にはあり得ないだろうとツッコミたくなるようなとんでもない人物も登場しています。当時だからできた作風かもしれませんね。

1位:野球漫画の巨塔。水島新司の壮大な青春ストーリー

『ドカベン』は言わずと知れた水島新司の代表作。当時の野球漫画にはなかった、投手と打者の頭脳戦のような描写を入れ、リアルで戦略性のある野球を描いています。ドカベンこと山田太郎とそのチームメイトたちが、高校野球を舞台に奮闘していく姿を描いている物語です。

ずんぐり体型のキャッチャー山田太郎、通称ドカベン。土方弁当(アルマイト製の大きな弁当箱)がそのあだ名の由来です。その彼と、口に葉っぱを咥えている姿が特徴的な岩鬼正美、エースの里中智などを中心にした、明訓高校野球部の面々が甲子園制覇を目指していく物語です。

冒頭でも解説した通り、非現実的な表現が多かった既存の野球漫画作品に比べ、配球の読みや球児同士の心理戦のようなシーンが描かれたりと、野球漫画の新境地を開いた作品としても知られています。

 

著者
水島 新司
出版日


まずは有名な話ですが、物語序盤のドカベンたちの中学時代は、なんと野球漫画ではなく柔道漫画として描かれています。表紙も柔道着を着た登場人物たちばかり。とても野球漫画とは思えません。単行本7巻目からようやく野球漫画へと移るわけですが、これには、ライバル誌で別の野球漫画を連載していたためという理由があります。

しかし最初から野球漫画を描くつもりはあったようで、野球のエッセンスを感じさせつつ物語が展開していきます。後に柔道時代のライバルが野球でも登場してくるあたりも、ひょっとしたら計算ずくだったのかもしれません。

登場するキャラクターは多種多様。家族の絆なども描く濃厚なストーリーですが、特に見て頂きたいのはやはり、球児たちの絆です。気は優しくて力持ちというキャラを地でいくような山田太郎。彼が、岩鬼をはじめ様々な人物が起こすトラブルを巧みに解決に導いていく姿は実に面白く、時には涙を誘う感動的なエピソードなども描かれます。こういった野球漫画では、描かれるべき青春模様が根幹を成すことが、王道ではあるけれど好きにならずにはいられない物語をつくっています。

そして『ドカベン』を語るうえで忘れてはならないのが最終回のエピソードです。一般的な野球漫画ですと、高校野球の場合、甲子園に優勝もしくは敗北してそれぞれの想いに決着をつけるようなお話が多いかと思います。本作品でもそのように最終回まで物語が展開しますが、問題は甲子園が終わった後に衝撃的な展開が待っているということです。

当時の読者は本当にびっくりしたようで、ファンの間では今でも語り草となっているほど。どういった内容かはここで明かしてしまっては勿体無いのであえて明かしません。どんな衝撃的な展開なのかはご自分の目で確かめてみてください。

そんな最終回を迎えた後、同作者によって『ドカベン』の続編とも言える『大甲子園』が描かれます。この作品は他作品の登場人物がクロスオーバーする作品なのですが、ドカベンこと山田太郎とエース里中の友情を中心に描くストーリー構成となっており、あの最終回があったからこそ感動できる、本当に意味を成す続編として仕上げられています。

感動の高校野球編は、本作品と続編をあわせて単行本全74巻という一代巨編となります。しかもその後も『ドカベンプロ野球編』につづいていきますので、すべてを読み切ろうと思ったら大変です。しかしそれだけの時間を費やすだけの価値はきっとあります。どんな物語なのか、本作品の最終回とあわせてお楽しみ頂ければと思います。

『ドカベン』については<漫画「ドカベン」のキャラクターを31巻までネタバレ紹介!名言やモデルも!>の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。

『あぶさん』に限らず、日本野球界と密接に関わりながら漫画を描くスタイルをとっている水島新司。彼の描く作品には、野球に対する彼なりの美学があります。例え非現実的な内容の漫画であっても、躍動的な絵によって表現されるその登場人物たちは、それぞれが水島の現実の野球への想いを代弁しているかのようです。他の作家とは違う彼だけにしか描けない野球漫画を、是非みなさんにも体感してください。

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