あなたは野球漫画と聞いてどんな作品を思い浮かべますか? さまざまな作品がありますが、「ドカベン」シリーズは、誰もが一度は聞いたことがあるはずです。野球好きでなくても、アニメや漫画を見たことがある方は多いでしょう。そんなドカベンですが、現在どこまで話が進んでいるのでしょうか。今回の記事では「ドカベン」シリーズの登場人物の紹介と、「ドリームトーナメント編」最新巻までの見どころを解説します!
「ドカベン」シリーズは神奈川県の明訓高校に所属する山田太郎と、その仲間たちの活躍を描く野球漫画です。魔球や現実離れした技などが主流だった野球漫画の世界で、配球の読み合いなどを取り入れたリアルな作風が特徴的です。
実在する選手や球団を描くなど、リアリティにこだわった内容で人気を博している本作。作中での時系列も現実世界と並行しており、野球ファンにとどまらず多くの読者を魅了しました。
今回の記事では、『ドカベン ドリームトーナメント編』31巻までのあらすじと、主要キャラクターの名言やモデルをご紹介します!
- 著者
- 水島 新司
- 出版日
『ドカベン』は連載開始当初は柔道漫画でしたが、単行本の7巻から野球漫画になりました。作者・水島新司は、他の雑誌でも野球漫画を連載していたので『ドカベン』は最初は柔道漫画にしておいたのです。
しかし野球を始める伏線は張られており、主人公の山田は途中で野球部に移籍しています。それをきっかけに本作は野球漫画の名作としての道を歩み始めるのです。
野球をテーマに多くの作品を生み出した水島新司。そんな水島新司のおすすめ作品を紹介した<水島新司おすすめ野球漫画ランキングベスト5!3位は『男どアホウ甲子園』>の記事もおすすめです。
- 著者
- 水島 新司
- 出版日
- 1973-03-01
主人公の山田太郎は、優れた身体能力を活かして少年野球で活躍していました。中学生になってからも野球を続けていましたが、プレイ中の事故で相手選手にケガを負わせてしまいます。失明の危険もある重体に陥ってしまい、罪悪感から山田は野球をやめました。
その後、山田がケガをさせてしまった選手は回復し、失明の危険からは免れました。負い目から解放された山田は再び野球をはじめ、岩鬼や殿馬という仲間とともに甲子園を目指します。
ドカベンの魅力といえば、個性的な登場人物です。次からは、各登場人物の魅力や名言について紹介します。
- 著者
- 水島新司
- 出版日
- 2017-10-06
主人公山田太郎は、ポジションは捕手、強肩強打を誇る天才選手といわれています。「ドカベン」というあだ名は、「でっかい弁当箱(どかっと大きい箱)」を持っていたことからつきました。
山田は甲子園での通算打率が7割5分を超えるなど、優れたバッティングセンスを持っています。強肩も持ち味で、遠投は120メートルを超えます。これは、プロ野球選手のなかでもトップクラス。バントやわざとファウルを打つ技術にも優れ、「日本最高の捕手」とされています。
「ドカベン」シリーズはキャッチャーを主人公にしていることもあり、配球(投手がどこにどんなボールを投げるか)を描いているのも魅力の1つです。山田はバッターに的をしぼらせないリードをすることでも優れており、作中に登場する実在の人物、古田敦也や野村克也も驚いています。
そんな山田唯一の欠点は鈍足です。身長175センチ体重85kgとずんぐりした体型のため、ライト前のヒットがアウトになるほど足が遅いのです。岩鬼には「山田の足はリトルリーグ」といわれるほど。その代わり、守備では素早い動きを見せます。
- 著者
- 水島 新司
- 出版日
- 1986-11-01
山田のライバルでもあり親友でもある岩鬼正美も、「ドカベン」といわれる選手です。悪球打ちで知られ、ボール球をホームランにする豪快なキャラクターとして描かれています。彼の打球音である「グワァラゴワガキーン!」は作品の名物となっています。
「1番・三塁手」でホームランを量産するイメージが強いですが、守備の名手でもあり、何度もファインプレーをしました。遠投も150メートルと驚異的な記録を誇っています。プロ入り後も投手として登板したことがあり、セーブも記録。
「ドカベン」ファンの間では「名言製造機」といわれ、数々の名台詞を残しています。最も有名なのは夏の甲子園準決勝で青田高校と対戦した際の言葉です。
延長18回の裏4対3で明訓高校が一点リードしている場面。1アウト満塁というピンチを迎えます。1打でサヨナラ負けとなってしまう状況ですが、岩鬼はナインを集めて言います。
「ええか よう聞けえ!
今こそ青春の正念場じゃ!!
気迫だけは負けたらあかんで!
血をふき 土をなめても守るんじゃい!!」
(『大甲子園』21巻より引用)
本来なら緊張してしまう場面でこのセリフ。豪快な彼を象徴する言葉ですね。
- 著者
- 水島 新司
- 出版日
- 1983-10-01
山田、岩鬼、殿馬とともに明訓高校で活躍した投手です。アンダースローの変化球投手で、さまざまな球種を操り打者を翻弄します。投球フォームのモデルは阪急ブレーブスで活躍した足立光宏選手です。
中学時代はオーバースローでしたが、同級生の小林投手が圧倒的な実力だったためアンダースローに転向しました。必死の努力で変化球を習得し、甲子園でも活躍します。スカイフォークやさとるボールといった変化球が持ち味です。名前の由来は作者・水島新司が尊敬する漫画家「里中満智子」からきています。
明訓高校のエースではありましたが、ケガが多かったため「ガラスのエース」といわれることもありました。そんなあだ名からも感じられるようにクールなイメージがありますが、岩鬼に負けない激情家でもあります。
代名詞でもあるスカイフォークは、本来ならアンダースローでは投げられないとされています。里中は手首が柔らかく、リリースするときに内側にひねることができるので投げられるのです。千葉ロッテに入団した当初は二軍暮らしでしたが、スカイフォークのおかげでストッパーとして一軍デビューすることができました。
男性ファンが多い野球漫画ですが、里中はさわやかなキャラクターのため女性にも人気があります。新しいファンを獲得するのにも一役買っているキャラなのです。
山田たちよりも2学年上で、明訓高校の主将を務めた人物です。モデルは土井垣武です。
強肩強打で県外にも名前を知られるほどの選手でしたが、甲子園とは縁がなかった土井。山田たちが入部したことにより正捕手の座は譲ることになりましたが、彼らと協力して念願の甲子園優勝を果たします。
明訓高校の監督もしていた彼は、山田に全幅の信頼を寄せていました。プロ入り後に東京スーパースターズで一緒になったときも、山田を4番にする采配をするほど。
日本ハムに入団後は、初打席で代打逆転ホームランを放つなどの活躍を見せ、新人王も獲得。山田たちに負けない存在感を放っているキャラクターです。
『ドカベン』は2018年5月現在「ドリームトーナメント編」として連載が続いています。ここで、高校野球編からのあらすじを振り返ってみましょう。
明訓高校に入部した山田太郎ことドカベンは、強肩強打と巧みなリードで正捕手の座をつかみ取り、里中や岩鬼たちとともに大会で勝ち上がります。1年の夏、春と甲子園で優勝を果たし、全国にその名を轟かせました。
常勝軍団となった明訓高校ですが、2年夏の甲子園で初めての敗北を喫します。一回戦の弁慶高校戦でサヨナラ負けをしてしまうのです。
2年春の選抜では、雪が降る中での試合を制して優勝します。このまま夏の大会にむけてチームを作っていきたいと思ったところで、エース里中の母が入院していまいました。里中は母のために退部し、学校も休学しました。
このシリーズはファンの間では「無印」と呼ばれており、ドカベンシリーズの原点ともいうべき物語です。明訓高校での出会いと、甲子園での活躍が描かれます。仲間の不調やケガなど、野球にはつきものの困難を乗り越えて、山田たちが奮闘します。
里中を欠いたものの、明訓高校は優勝候補として予選を勝ち抜いていました。決勝の相手は不知火のいる白新高校です。苦戦を覚悟していたところで里中が復帰します。体力の衰えと悪天候に苦しみながらも試合には勝利。甲子園出場を決めます。
甲子園でも順調に勝ち進みます。準決勝では青田高校と対戦。エース中西球道は160キロを超える速球を武器にした強敵です。里中が怪我をするなどの災難に見舞われますが、延長再試合の末に勝利しました。
決勝では剣道部から野球部になった紫義塾と対戦します。なかなかの強敵ではありましたが、経験で優る明訓高校が勝ちました。
『大甲子園』の見どころは、水島新司の野球漫画の登場人物が登場することです。『一球さん』『野球狂の詩』など、過去の作品の選手が登場し、試合をくり広げます。作者にはもともとこのような構想があったため、どの作品も3年の春で終了しているのです。
- 著者
- 水島 新司
- 出版日
- 1983-08-01
プロ野球編
明訓高校のメンバーはそれぞれプロ入りを果たし、他校のライバルともプロの世界で再戦します。
彼らは一年目から活躍し、球界を盛り上げます。山田は西武ライオンズに入団し、徐々に頭角を現していきました。代打や指名打者で活躍し、シーズン終盤には正捕手として定着しました。里中は二軍生活中に魔球スカイフォークを習得し、オールスターでデビューします。
プロ野球編では、実在する球団や選手が出てくるのが見どころです。イチロー選手や野村監督など、野球ファンでなくとも知っているスターが登場し、山田たちと活躍します。
プロの世界で9年間活躍した山田たちは、それぞれFA権を取得していました。山田を始めとした主要選手たちはそろってメジャー行きを宣言。これに待ったをかけたのが日本プロ野球境界総裁の崖淵壮兵衛です。
崖淵は有望な選手がメジャーに流出することを危惧し、パ・リーグに新球団を2つ設立し、日本プロ野球界を刷新することを提案しました。山田たちはこの提案に乗り、国内の新チームへ移籍。再び熱戦をくりひろげることになるのです。
今作では、登場人物の恋愛描写があるのが見どころです。サチ子と里中、岩鬼と夏子の復縁が描かれます。野球だけではない面白さがありますね。
東京スーパースターズと四国アイランドソックスという新球団ができたパ・リーグは盛況でした。
崖淵は京都と新潟に新たに2球団を作り、セ・リーグも盛り上げようとします。京都ウォーリアーズは微笑三太郎が監督を務め、新潟ドルフィンズは岩田鉄五郎が監督です。
セ・パ合わせて16チームとなった記念に、ドリームトーナメントという大会を開催することになりました。山田たちは阪神甲子園球場で激突します。
「ドカベンシリーズ完結編」ともいわれ、『大甲子園』と同じく水島作品の登場人物が一堂に会するのが特徴です。本誌の連載でも佳境に入っており、目が離せません!
「ドカベン」31巻では、ドリームトーナメントがくりひろげられています。決勝戦は東京スーパースターズと京都ウォーリアーズの対戦です。
30巻では、義経と山田がバッテリーを組むという展開でした。かつて甲子園で対戦した2人が、同じ舞台で今度はタッグを組んだのです。
対する京都ウォーリアーズの先頭打者は居合抜き打法の沖田。変化球で勝負する義経ですが、結果は内野安打。ノーアウトのランナーが出たところでバッターは大楽。試合前の練習ではバントしかしていなかったのですが、試合ではあわやホームランかというファウルを連発。予想外の展開に、山田と義経はどう対応するのでしょうか……。
- 著者
- 水島新司
- 出版日
- 2018-03-08
31巻は山田、義経バッテリーと大楽の対戦が見ものです。特大のファールを見せられたので、山田は高めのボール球を要求します。大楽はこれを見送ります。続く4球目は低めに要求。大楽は手を出し、またもやホームランかと思われるファール。
義経はなんとしても打ち取る気迫をみせているので、山田は低めのフォークを要求します。大楽はスウィングし、打球は高々と舞いあがりますが……。
この白熱の展開で最も読者を引き込むキャラが、大楽です。実力が未知数で口数も少ない彼は、不気味な存在感を放っています。データがないのでどんな配球をしていいかわからず、山田と義経も慎重にならざるを得ません。圧倒的なパワーを誇る大楽とどう戦うのか。対決の行方はどうなるのか。見ものです。
いかがでしょうか。野球漫画の金字塔ともいえる『ドカベン』。その後に続くシリーズも含めて、必見の作品です。野球ファンでなくとも楽しめる内容なので、気になる方はこの機会に読んでみてはいかがでしょうか?