『幸色のワンルーム』は、もしかしたら2017年最高のWEBマンガかもしれません。誘拐犯と誘拐された少女のあたたかな同棲生活を描く本作は、フィクションだからこそ描ける奇跡的な幸福感に満ちた作品です。スマホアプリで無料で読めるので、気になった方はそちらからもご覧いただけます。
出典:『幸色のワンルーム』1巻
14歳の少女が行方不明になって、1週間が経っていました。
「私のことニュースになってる!!」
誘拐された少女はなぜだか元気です。対して誘拐犯の男は低いテンション。ふたりとも、それぞれ口に出せない何かを抱えているようで……。
出典:『幸色のワンルーム』1巻
誘拐犯と誘拐された少女が結婚するなんてことは、現実では99%ありえませんが、本作では、それほどありえない展開に感じられません。ふたりの同棲生活が幸福であたたかいものだからでしょう。
世界に居場所がなかった少女と生きる意味を失った誘拐犯のふたりの同棲生活は、世間の人が知ったら気持ち悪いと感じるような歪なものかもしれませんが、少なくともふたりにとってはこれ以上なく幸福なものとして描かれています。
少女の「こんなに幸せでいいんだろうか」というモノローグが印象的。両親、そして現実から逃れたいと考えていた少女にとって、唯一の居場所が誘拐犯のワンルームだったのです。
- 著者
- はくり
- 出版日
- 2017-02-22
誘拐犯と誘拐された少女の同棲生活という設定の時点で読む人を選ぶ作品ですが、表現に関しても好みが分かれるでしょう。
本作の表現の特徴をふたつ挙げるとすると「コマ割りが少ないこと」と「モノローグが多いこと」です。これはそれぞれウェブマンガ、少女マンガでよく見られる表現方法のため、そういったタイプの作品を読み慣れていない読者には正直合わないかもしれません。
たとえば『ONE PIECE』であれば1話20ページで約100コマですが、本作は20ページで80コマほど。コマ数が多い方が、演出量が多くなるため、情報量、演出量を重視する読み手はコマ数が少ないマンガを低く評価する傾向があります。しかし、コマ数の違いの最大の理由は読まれる媒体の違いだと考えられます。
紙の雑誌や単行本で読む場合は細かくコマを割っていっても問題なく読むことができますが、スマートフォンで読む場合、コマ数が多すぎると、読みにくいと感じてしまうことがあるのです。本作をはじめとするコマ数が少なめな作品がウェブマンガの読者層の熱い支持を受けている事実から考えると、スマートフォンの小さな画面で読む場合は20ページ80コマ程度がちょうどいいと感じる読者が増えてきているということが言えるかもしれません。
電子書籍でマンガを買って、読みにくいと感じたことがある方もいるかもしれませんが、本作は電子書籍で読んでも問題なく楽しめます。気になった方は、電子書籍ですぐにダウンロードして読んでみてもいいかと。
1巻はほとんど事件という事件はなく、ふたりで料理をしたり、デートをしたりといった日常がゆっくりと描かれますが、ラストでは不穏な空気が流れ、2巻以降の事件を予感させます。
誘拐犯と誘拐された少女。ふたりの生活はどうなるのでしょうか。
『幸色のワンルーム』については<『幸色のワンルーム』の魅力を全巻ネタバレ紹介!結婚前提の誘拐物語が無料!>の記事で詳しく紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。