町おこしを学ぶおすすめ本5冊!小説から成功事例まで

更新:2021.12.17

「町おこし」という言葉が昨今よく叫ばれていますが、そのリアルなドラマを知る人はどれくらいいるでしょうか?今回はそんな町おこしを学ぶのにもってこいのおすすめの5冊の本を集めました。

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最近よく聞く言葉、「町おこし」とは

町おこしとは若者離れによる人口減少や、それに伴う高齢化などが原因で衰退してきている町の文化や経済を活性化させることです。主に住民が主体になってその町のアピールを行い、地域の復興を目指します。また、住民がさらに良い生活を求めて町の建造物や幹線道路、歴史的文化などを改善するプロセスのことを「町おこし」と呼ぶこともあります。

具体的にはその地域に因んだキャラクターをつくりアピールしたり、特産物を使ったグルメなどで観光客を呼んだりする方法が一般的。ただ失敗してしまう例もあり、人々を惹きつけるような前例のない工夫が求められることもあります。

町おこしへの関心は広がりを見せており、「町おこし協力隊」という活動団体が衰退化している町に赴いて町おこし活動を行うこともあるようです。

町おこしに奮闘する人々を描いた長編

1947年、ニューメキシコ州ロズウェルにUFOが墜落した出来事は「ロズウェル事件」と呼ばれ、そのUFOの破片を米軍が回収したとして大きな話題を呼びました。そのオカルト事件を利用することで町おこしを試みた青年クラブのメンバーたちを描いたのが、この『ロズウェルなんか知らない』です。

 

著者
篠田 節子
出版日
2008-07-15


一見オカルト路線で観光客を呼び込むという突拍子もないポップなストーリーのように見えますが、実はかなり現実の地に足をつけた冷静さに支えられいます。それが良く表れているのがこの文章。

「考えてみれば第四次産業、観光などというもの自体が胡散臭さなしには、成立しない。どうということもない海や山、小さな歴史上の出来事にもったいをつけ、何かありがたげなイメージを作り上げて、訪れる物好きを幻惑して非日常を提供するのが観光産業なのだから」(『ロズウェルなんか知らない』より引用)

現実離れしたフワフワとした展開でなく、現実的で理路整然とした思考を持ち合わせた大人も納得できる筋の通ったストーリーに仕上がっています。ビジネスライクに町おこしを進めようとする青年クラブのメンバーたちと、その土地に古くから暮らす固定観念にしがみ付く高齢者の衝突なども非常にリアル。どんどん新しい問題が噴出してテンポよく物語が展開、発展していくので飽きずに読み進められると思います。

架空の物語のように一筋縄にはいかない現実を知っているおとなだからこそ、納得させられ、引き込まれる、そんなエンターテイメント性に富んだ作品です。町おこしの面白さに一気読みしてしまうこと間違いなしでしょう。

団塊世代が廃れた商店街を救う!

『エキスペリエンツ7 団塊の7人』は「団塊」という言葉の名付け親である堺屋太一によって書かれました。人生の辛酸を舐め尽くしてきた団塊世代の7人の男女がとある廃れた商店街の再生のために奮闘する様子をコミカルに描いた作品です。

 

著者
堺屋 太一
出版日
2008-12-25


本を開くとまず目を引くのが登場人物紹介。「夫の実家の蕎麦屋を継いだが経営は厳しい。夫は脳梗塞を患いリハビリ中。娘と息子は独立して暮らしている」「若い頃に結婚したが2年で離婚、以後独身を保っている」「妻は食品スーパーに勤務、母親は要介護状態、子供はすでに独立」など、登場人物一人一人の設定が非常に細かく決められています。そのため作品の中の登場人物がとてもリアルで生き生きしているのです。

物語の舞台は「梅之園ハッピー通り商店街」。上野から各駅停車で4、5駅、駅前にはコンビニ、くたびれたファミリーレストラン、そしてパチンコホール。 商店街の入り口には数年前に閉店した銀行がシャッターを下ろして佇んでいる、というどこにでもありそうな「廃れた商店街」です。

町おこしに取り組んだのは定年を間近に会社社会から離れつつある団塊世代の「エキスペリエンツ7」。ハッピー商店街の復興という1つの夢を追う「夢縁の人々」として奮闘します。

「人間 年を重ねて、お金と世間と将来から自由になれば、本当に好きなことが分かるんです」(『エキスペリエンツ7 団塊の7人』から引用)

この言葉が示す通り「町おこし」という目標に向かって新しい人生を歩んでいく7人の姿がドキュメンタリー風に描かれた本作。主に登場人物の会話がストーリを繋いでいくのですが、登場人物の背景の設定や町の設定、それに関わる銀行や団体の歴史など、全てが丁寧に決められているので、リアリティをもって物語を感じることが出来ます。

エキスペリエンツ7を応援する気持ちで一気読みしてしまうこと間違いなしでしょう。町おこしがどのように行われ、どのような問題にぶつかっているのかを知ることが出来ますので、町おこしのバイブルとしても一読に値する作品です。

ある田舎町の再生へのサクセスストーリー!

町の特産といえばみかんぐらい。地元の人々は退屈な日々を朝からお酒を呑んだり人の悪口を言うことでやり過ごしていました。そんな寂しい田舎町に現れたひとりの青年、横石知二。『そうだ、葉っぱを売ろう!過疎の町、どん底からの再生』は、この本の作者である彼が町の人々と協力して町おこしをする再生の物語です。

 

著者
横石 知二
出版日
2007-08-23


人に売るものなど何もないと信じられていた過疎の町、上勝町。上勝町農協に採用された横石知二が目をつけたのが「葉っぱ」でした。町に捨てるほどある葉っぱを料理のつまものとして高級料亭などに降ろすビジネスに目をつけたのです。

廃れてしまった町をおばあちゃん達と立て直していくノンフィクションの要素だけでなく、ビジネス書としての要素も織り込まれています。現場主義に徹してお年寄りや女性の活躍できる場所を提供する。売れる商品を編み出すのでなく「もともとある物がどのようにしたら売れるか」という流通のルートを開拓する、などビジネスのヒントがたくさん記されています。

この本を読むとビジネスとして適切な戦略としくみを整えること、その町に住むひとりひとりが自分の役割を生き生きとこなすことが町づくりのヒントだということが分かるでしょう。そうしてお年寄りが活躍できる場所を提供することが「町おこし」に繋がっていくのだと思います。

横石知二の町おこしの功績は多方面から評価され経済産業大臣や地域活性化担当大臣から「地域中小企業サポーター」、「地域活性化伝道師」の称号を与えられています。

本の表紙のおばあちゃんの笑顔がこの町おこしが実に地域の人の心を活性化させたのかを物語っているでしょう。上勝町の奇跡のストーリーをぜひあなたの目で確かめてみてください。

まちづくりに必要なとっておきの10の鉄則

作者は木下斉、高校生時代から地域活性化事業に携わる「町づくりのエキスパート」です。手がけた事業は数知れず、その経験やノウハウを活かして多くのまちづくりに関する本を手がけています。この『稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則』はそんな作者が誰にも言わなかった地方再生事業成功の鍵となる10の鉄則を初公開した作品です。

 

著者
木下 斉
出版日
2015-05-08


痛快なのが作者の綺麗事一切なしの的を得た指摘の数々。「まずは地元で発言権を持つ不動産の持ち主を動かすべき」「まちづくりはボランティアでも慈善事業でもない」「経営者視点を持ってすれば地方は必ず再生する」など、何度も深く頷きながら拍手を送りたくなるような的確なアドバイスがぎっしり詰まっています。

また「補助金」に関する考え方も独特。それは「補助金に頼るべきでない」という考え方です。木下斉が学生の頃携わった地域再生事業で、その功績が認められて国からの補助金が出ました。しかし補助金が出た途端予算を食い潰す為に無駄な事業を起こすようになり、それに時間と予算を注ぎ込むようになってしまったそうです。

補助金に「使われて」しまうくらいなら、いっそ頼らないで自力で事業を進めた方が有効的。これは正に現場で奮闘した経験を持つ作者ならではの貴重なアドバイスなのではないでしょうか。

長い時間の中でたくさんの失敗を繰り返してきた作者だからこそ得たまちづくり事業の10の鉄則がこの本の中で惜しげも無く吐露されています。まちづくりに関わる人もそうでない人も今までの視点をぐるりと180度変えられてしまうかも知れません。ぜひたくさんの人に一読してもらいたい一冊です。

地方が誇りを取り戻すための5つの法則

『田舎力 ヒト・夢・カネが集まる5つの法則』は食環境ジャーナリストである金丸弘美が「発見力」「ものづくり力」「ブランドデザイン力」「食文化力」「環境力」の5つにフォーカスして町おこしを掘り下げていく作品です。

 

著者
金丸 弘美
出版日


子供が生まれたのをきっかけに全国800の田舎をまわって来たという作者。それぞれのまちでの体験が事細かに書かれており、教養本としてだけでなく紀行エッセイ的な読み方をすることも出来ます。

本書で明かされる多くの町おこしの成功例は、開発が進むことが一番ではないのではないか、という疑問を私たちに与えてくれます。例えばひとつの例として長崎県五島列島の話。開発から取り残されている、と言われていた五島列島にとある外国人の若者たちが訪れた際「世界一の場所だ」と絶賛されたエピソードです。開発されていなかったからこそ海外の人々をも惹きつけた、という固定概念の転換をうながすとっておきのエピソードだと思います。

このような成功例を分析し、ポイントを分かりやすくまとめた本書。自分の足で渡り歩いて来た作者ならではの物の視点やヒントが満載です。町おこしをに関わる人々の参考書としても使うことが出来るでしょう。町おこしをもっと知りたいひと、日本の田舎の魅力を再確認したい人にぜひ読んでもらいたい一冊です。

今回は町おこしを学べる5冊を紹介しました。どの本も読み応えたっぷりで、私たちの町おこしへの興味を深めてくれるものだと思います。ぜひ手に取ってみてくださいね。読んで頂きありがとうございました。

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