5分でわかる力士!引退後の再就職は角界の課題。相撲の歴史、力士になる方法、年収など解説!

更新:2023.11.9

日本の国技である「相撲」。そのスポーツをおこなう人たちのことを「力士」と呼びます。誰もが一度はテレビで相撲を取っているところや、お相撲さんと呼ばれる力士を見たことはあるはずです。しかし、力士になるための条件や、力士がどのような生活を送っているのか、どれくらいの収入があるのかなど、その実態は謎に包まれています。 本記事では、知っているようで知らない力士という職業について、日々の生活、引退後の再就職・転職事情にいたるまでを徹底調査してきました。力士の実態を知ってみたい方、必見の内容です。

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力士とは

力士とは、日本の国技と呼ばれる伝統的なスポーツ「相撲」を職業とする人たちのことです。相撲取りと呼ばれることもありますね。

相撲の古いスポーツで、その歴史は1500年以上。起源を遡ると、古事記(712年)や日本書紀(720年)の中に書かれている力くらべなどがあげられます。最初はその年の農作物の収穫を占う祭りの儀式としておこなわれてきたという背景もあります。

鎌倉時代から戦国時代にかけては、武士の戦闘訓練として相撲がおこなわれてきました。これは現代の相撲に近い形に感じられますね。

そして江戸時代に入るとようやく、相撲を職業とする人たちが現れます。この時期に、今日の大相撲の基礎が培われたと言われています。長い歴史のなかで相撲の目的が変化し、スポーツとして様式化され、日本の伝統文化となりました。

参考:相撲の歴史

力士になるには?

実際に力士になるにはどのようにしたらよいのでしょうか。

率直にいうと、日本相撲協会ホームページでは年6回おこなわれる「新弟子検査」に合格することで、晴れて力士の仲間入りを果たすことになります。詳細の条件を以下に抜粋しています。

力士になるための条件(平成27年5月末日現在)

  • 身長167センチ以上
  • 体重67キロ以上
  • ただし、三月場所新弟子検査受検者で、中学校卒業見込み者に限り、身長165センチ以上、体重65キロ以上

これに「義務教育を修了した健康な男子で、所定の身長・体重の基準を満たし、一般は23歳未満、日本相撲協会が指定している社会人や大学のアマチュア大会で一定の成績を残した人については25歳未満であること」とされています。

参考:力士になるには

最も多いのはスカウト

日本相撲協会に所属する各相撲部屋に問い合わせ、新弟子検査を受けに来るケースはもちろんあります。ですが、実際には部活動や、町の相撲クラブなどでよい人材を見つけ、後援会や各相撲部屋の親方がスカウトをするケースが多いようです。

たとえば2017年に秋場所で21連勝をした炎鵬は、白鵬がスカウトした力士です。彼は身長169cm、体重95kgと小柄ですが注目を集める選手として成長しています。

参考:小兵だが強い!白鵬がスカウトした炎鵬 衝撃の21連勝

どうにもできない身長問題。女性力士のプロ活動は

新弟子検査を受けるにあたり、問題となるのが「体格」です。体重はまだ何とかなることが多いのですが、問題は身長です。あの舞の海関が頭にシリコンを注入したとかしていないとかの噂もあるほど、低身長の人に力士を目指すことは高い壁となっていました。

最近ではこの体格が基準に満たない人にも体力テストに合格できれば入門することができるという制度が設けられ、この検査で合格することで体格が基準に満たない人でも入門することができるようになりました。

いずれにしても健康な男子に限るという条件が設けられていますので、内臓系の検査も厳しくチェックし、医師の診断が得られた上で試験を受けることができます。この大相撲の「男子のみ」伝統は、見直すべきとの声も上がっていますが、今のところ改定はおこなわれていません。

女性が「力士」として取り組みをおこなうには「日本女子相撲連盟」が開催する大会に参加し、力士として活動をおこなうことができます。現在はアマチュアとしての競技になっているようですが、オリンピック競技入りを目指し、世界各国でも活発に活動がおこなわれています。

力士の年収や収入は

夢や希望・理想を掲げてその職業を唯一無二のものとし、選択する場合もあるとは思いますが、それでもやはり気になることといえば年収ですよね。今回はまず、力士と呼ばれる方たちの年収がどのくらいなのかを調査してみました。

幕下以下は2カ月に1度の支払い

実際には、力士の年収はその番付によって大きく異なります。そしてそのお給料の支払元は「日本相撲協会」です。いわゆる「関取」と呼ばれる横綱から十両までの力士、彼らは月給制になります。

対して幕下以下の力士たちは2カ月に1回、相撲協会から場所ごとに支払いがあります。幕下以下も、番付ごとに支払額は変わってきますが、収入はおよそ7万~20万といわれています。そして多くはないですが、年2回のボーナスもあります。

それらの中から各力士たちは税金や積立金を納めますので。実際に手元に残るのは微々たるものです。しかし、実際に力士たちは相撲部屋に所属し、その生活の一切を相撲部屋に依存して生活していますので、生活費はかかりません。ですので、自分自身で自由に使えるお金として考えると、そう少ないとは言い切れないとおもいます。

十両から月給はぐんと上がる

では同じ力士でも「関取」以上になるとどのように変わるのか見ていきましょう。

基本的に関取になれば支払いは月給制になります。関取で1番下の「十両」でも月給は100万ほどで、「横綱」になれば280万にもなるといわれています。さらに報酬金や勝ち越し金、懸賞金などもありますし、場所により副賞がもらえるところもあります。

横綱であれば、年収はおよそ4500万、十両でも1600万以上の年収は見込めそうです。

力士の年収や収入の裏には、涙ぐましい努力がある

思った以上に高収入だと驚いた方は多いのではないでしょうか。筆者も調査していて驚きました。しかしその収入を維持するには、涙ぐましい努力が必要なのです。

相撲はスポーツ。実力主義の世界

関取以上は、毎場所ごとに熾烈な番付争いがおこなわれます。横綱は一度昇進してしまえば、引退まで番付は下がりませんが、それでも負け越しが多くなり、横綱としての力量不足と判断されれば「横綱審議委員会」という場所で審議され、引退を余技なくされる場合もあります。

幕下以下もその番付争いは熾烈です。場所ごとに番付が変わり、番付ごとに給料も大きく変わります。とくに関取から幕下以下になれば、その生活様式もがくんと落ち込み、個人部屋が与えられていた環境から、集団生活に逆戻りです。

十両以上は毎場所毎日試合をおこないます。そのため、体調管理はもちろんのこと、怪我をして欠場がないように気を付ける必要も出てきます。当然ですが、日々の稽古なども怠ることはできません。

幕下以下の力士たちも目の色を変えて稽古に明け暮れ、十両以上の番付を目指しています。十両以上になることができる力士の人数は限られているため、どの力士たちも今以上の地位をキープし、さらに上を目指すよう虎視眈々とその地位を狙っているのです。それには先輩や後輩、友人関係などはまったく関係ありません。

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力士はどんな生活を送っているの?

力士は、いわゆる相撲の世界「角界」に入門すると、その年齢に関係なく誰もが所属する相撲部屋に入ることになります。

本場所ごとにお給料は発生しますが、幕下以下はほんのお小遣い程度です。しかし、基本的には衣食住すべてを所属する相撲部屋=相撲協会から支給される「力士養成費」によって生活することになりますので、日常生活でお金がかかることはほとんどありません。

日常生活をこの相撲部屋で、他の力士たちと協力しながら日常生活と稽古をして過ごしていくことになります。

力士の一般的な1日の過ごし方

とある相撲部屋の1日のスケジュールをご紹介します。

  • 5時:起床、幕下以下の力士たちが稽古の準備を始める
  • 6時:幕下以下が稽古を開始
  • 8時:十両以上が稽古開始
  • 11時:稽古終了
  • 13時まで:昼ごはん
  • 昼ごはん終了後:入浴
  • 14時~16時:昼寝
  • 16時~18時:各当番の仕事(清掃、夕食準備、洗濯など)
  • 18時:夕食
  • 夕食後:自由時間
  • 22時:就寝

これはあくまで一例です。相撲部屋によって行動スケジュールや時間は多少異なりますし、実力のある相手がいなければ出稽古に行くこともありますので、スケジュールも変わることになります。

また、担当する生活当番によっても1日の行動パターンは変わるでしょう。大相撲がおこなわれる場所によってもまたスケジュールは変わってきます。後援会の方々と食事会を開くこともあります。

力士にも稽古の休みはある

力士には基本的に休みがないというイメージを持たれるかもしれませんが、そんなことはありません。およそ週1回ほど休みはあるとされていますが、各部屋ごとに異なる部分ではあるでしょう。

そして、休みというのは「稽古」が休みなのであって、日常の生活当番はあります。このあたりが力士には休みがないと誤解を生む要素になっているのかもしれません。

休日には部屋の力士たちでレジャーランドに行ったり、ご飯に出かけたり、十両以上の兄弟子におごってもらうという楽しみもあったりするようです。大相撲がおこなわれている場所によっては、実家に帰省したり、彼女とデートする力士もいるようです。さすがに息抜きもできないと力士も続けていられませんよね。

力士の基本は相撲部屋での共同生活

基本的に力士は、集団生活を送っています。十両以上になると個室がもらえるようにはなりますが、自分が就寝したり休んだりする場所が設けられるだけであって、それ以外の生活はやはり共同生活です。

角界に入会した以上は相撲部屋での共同生活が基本となります。ですが、関取としての地位が盤石であって、継続できると判断された場合には、近所に部屋を借りて住まうことが認められるケースもあるようです。そういった場合には、番付の地位の継続が認められたということになりますので、この場合は結婚なども認められることにつながると考えられます。

引退した力士の再就職・転職問題

力士という職業は、華の時間が短いと言われています。幕内の力士の平均的な引退年齢は30歳前後。そのため力士を引退した後のセカンドキャリアは角界の大きな課題となっています。

元貴乃花親方が取り組む力士の再就職支援

元力士のセカンドキャリア問題については、元貴乃花親方も積極的に取り組んでいます。

元貴乃花親方が言うには、元力士のセカンドキャリアに関してはほとんど手付かずなのが現状なのだそう。そのため自身の相撲部屋では引退を考えている力士にキャリアの希望を聞き、運転免許を取得させたり、料理学校で学ぶことを支援したりしています。

現役時代に横綱として活躍するような力士は、親方として新しい人材や才能の育成をおこないます。しかし全ての力士が親方になれるわけではなく、親方になるために必要な年寄名跡(親方株)がは105しかないのが現状です。そのため多くの元力士は、再就職の道が必要とされます。

参考:セカンドキャリアに人材育成、元貴乃花親方が考える相撲界改革

再出発サポートのある相撲部屋も

元力士が就ける職業は少ないと言われています。たとえば介護職は、相撲をする上でつちかった力や、集団生活をする上で身に付けた料理や洗濯の能力を活かすことができます。しかしその他の業種、パソコンスキルが必要なIT職、スーツ着用が必須の仕事などは再就職できる可能性が低いです。

そんな現状を変えていくためのひとつの取り組みとして、元力士の再出発をサポートする相撲部屋もあります。荒汐部屋では引退後、再就職に向けた全面的なサポートが整えられています。

  • 引退後、最長1年を限度として、荒汐部屋での生活を続けることができる(生活環境の一時保証)
  • 希望する就業に必要な、資格や免許の取得について、その費用の一部または全部を荒汐部屋が負担する(修業技能習得機会の保証)
  • 就職希望先への推薦・紹介を、荒汐部屋ならびに関係者が積極的におこなう(よりよい就職環境の保証)
  • 就職後も、さまざまな問題等について、荒汐部屋ならびに関係者は、その相談・援助を積極的におこなう(生活上の諸サポート)

しかしこのサポートは条件つき。5年間相撲道修行をやり抜くことにより、サポートを受けることができます。

5年間の相撲修行をやり遂げることは大変ですが、このような体制が整っていると安心して相撲に邁進することができそうですよね。

参考:入門・修行・そして引退後まで 荒汐部屋の相撲人生構築ポリシー

医学的見解から相撲への理解を深める

著者
桑森 真介
出版日

これから力士を目指す方、今すでに競技として相撲をたしなんでいる方、またはスカウト来ないかな?と待ち望んでいる方。相撲の技術についてDVD付きで解説している書籍があります。

著者は「桑森 真介」で明治大学教授であり医学博士でもある作者は、明治大学相撲部に在籍中、全国学生相撲選手権大会個人2位・団体優勝という経歴を持っています。長年相撲の体力・生理学の研究に情熱を燃やし、その経歴から本書を著作しました。

医学的な見解から解説した本書は、相撲の動きや技術的な見解の理解を深めるのにおすすめの一冊です。

力士の生活はどんな感じ?

著者
陽子, 下角
出版日

こちらの書籍は、相撲ジャーナリストでもある「下角陽子」さんが著作したものです。力士の日常生活にから実際に日々おこなわれている稽古、体づくりの基本となる食事についてまでを面白おかしく記述しています。

力士を目指す方だけではなく、大相撲が好きで、力士の生活について知ってみたいという方にもおすすめの1冊です。

小柄な力士が角界での戦いに挑む漫画「火の丸相撲」

著者
川田
出版日
2014-09-04

こちらの書籍は、小学生の頃から相撲一筋の少年「潮 火ノ丸(うしお ひのまる)」が新弟子検査の体格基準に満たない小柄な体格ながらも角界入りを果たし、見事幕内に昇進するまでのストーリーとなっています。

火ノ丸は、小学生の頃は国宝の刀、「鬼丸国綱」の異名をとるほど、子供相撲界では敵なしといわれる強さを誇りました。しかしその後、体格に恵まれず、角界入りを断念せざるを得ないような状況になりつつありました。しかしながら、高校相撲会での勝利を収めながら知名度を上げ、実績を得て、体格を不当とする例外資格「付け出し」を得て、ついに角界入りを果たします。

角界入り後もケガにより欠場し、一時は番付も下落、スランプに陥りましたが、その後回復し、関取・小結まで上り詰めます。最初のうちは、相撲一色でしたが、その後、心から理解し合える最高の伴侶と出会い、火ノ丸の相撲への意識が変わり始めたのもまた見所です。

この漫画では、「国宝級」といわれる強さを誇る力士が多数登場し、彼らが実際にある「国宝級」の名刀になぞらえるところもまた、作品に彩を添えています。

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世間的にはあまり知られることのない相撲界=角界の実情。今回はその実態に迫ってみました。

日本相撲協会に登録されている力士は700名ほどですが、そのなかでも幕内以上に慣れるのはわずか70人ほどといわれています。それでもその地位や名誉を目指し日々稽古に明け暮れている「力士」たち。日本の象徴でもある国技を競技しているその様は「圧巻」といわざるを得ません。

観戦している私たちにいつでも興奮を覚えさせてくれる「力士」。興味があるようでしたらぜひ一度紹介した書籍も手に取ってみてくださいね。

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