ノンフィクションのサバイバル本おすすめ6選!実話なのがすごすぎる傑作

更新:2021.11.23

非日常的で困難な状況下でも、知能と技術を駆使して生き残る術を探すサバイバル。ゲームや映画などで目にすることが多いですが、事実は小説より奇なり。過酷なサバイバル体験を綴ったノンフィクションは、圧倒的な衝撃をもっているのです。この記事では、傑作と呼ばれる海外と日本の作品を紹介していきます。

ブックカルテ リンク

江戸時代のサバイバル記録。おすすめノンフィクション『漂流』

 

時は江戸時代。悪天候により黒潮に乗ってしまった船が、草木もほとんどない絶海の火山島に漂着しました。水も食べ物もなく、乗組員の男たちは次々と倒れていきます。

そんななか土佐の漁師である長平が、ただひとり生き残りました。壮絶なサバイバルの期間は、なんと12年。彼の生存の秘密と生きざまが描かれたノンフィクションです。

 

著者
吉村 昭
出版日
1980-11-27

 

史実にこだわりノンフィクション小説を描く作家、吉村昭の作品。1975年に刊行されました。

本作は主に伝承や風土記をもとにしているそうですが、無人島での壮絶な体験はまるで本人にインタビューをしたかのようなリアリティさ。資料から史実を掬い出す筆力が魅力です。

近くをとおる船はなく、本土に帰る術はありません。おまけに仲間が周りで死んでいるという壮絶な状況ですが、長平はそれでも希望を捨てず、コツコツと規則正しい生活を送り、神仏に祈るのです。目標を自分でつくり、準備を重ね、それで無謀すぎる行動はしない分析能力や冷静さは目を見はるものがあるでしょう。感動的なノンフィクション生還劇を堪能してみてください。

 

ベストセラーノンフィクション!奇跡の生還を果たしたヨットマンのサバイバル手記『大西洋漂流76日間』

 

1981年、造船技師だったスティーヴン・キャラハンは、自身が設計したナポレオン・ソロ号でアメリカを出発しました。イギリスを経由し、翌1982年、大西洋上で嵐に遭い沈没します。

なんとか救命いかだに逃れたものの、ここから壮絶な漂流生活が始まるのです。海難事故で遭難した者の9割が3日以内に死んでしまうなか、何度も死の淵をさまよい、孤独とも闘かったキャラハンは、76日後に奇跡の生還を果たしました。

 

著者
スティーヴン キャラハン
出版日

 

造船技師であり作家でもあるスティーヴン・キャラハンのノンフィクション。アメリカではベストセラーとなりました。

彼が投げ出された海は無線が届く場所ではありません。雨水をためて飲み水を作り、手作りのモリで魚を突き、壊れたゴムボートを修理しながらサメの恐怖を回避します。海の真ん中で孤独と闘いながら、1日を生き延びるために我慢強く、そしてポジティブに過ごすのです。

生還までには、当然自然を罵ったり、涙を流したりする日もありますが、それでも諦めないキャラハンの人柄に惹かれます。なによりも本作がノンフィクションだということに価値があるでしょう。

ひとつひとつの文章は端的ですが、どこか誌的で魅力的。重要な場面の説明では図も用いられていて、サバイバルブックとしても面白く読める一冊です。

 

残された手記をもとにしたノンフィクション。不朽の名作サバイバル本『サハラに死す』

 

1973年。1頭のラクダとともに前人未踏のサハラ砂漠横断の旅に出た上温湯隆。ガイドもなく、東西7000kmの道のりを行きます。

1月にアフリカのモーリタニアを出発するものの、道中でラクダが死亡したため中断。ヒッチハイクでナイジェリアのラゴスへ行き、体力の回復と資金調達にあたります。

4月、ラクダを再購入してラゴスを出発しますが、5月にメナカから送った手紙を最後に消息不明になってしまうのです。

 

著者
上温湯隆
出版日

 

1975年に刊行された作品。22歳で亡くなった上温湯隆の手記をもとに、ノンフィクション作家の長尾三郎が構成しました。

上温湯隆は、1970年からアジアや中東、ヨーロッパ、アフリカなど実に50ヶ国以上をヒッチハイクで旅していた冒険家であり探検家。ただ本作は冒険の記録というよりも、自身がどのように生きるべきかを模索しながら放浪する若者の心の内が描かれたものになっています。

「自分探し」という言葉がありますが、大自然の脅威がもたらす困難に直面し、自分の生命力を感じられるサハラ砂漠という場所は、魅力がたっぷり。若さゆえの純粋さと、強い情熱に心動かされる一冊です。

 

緊張感が漂うノンフィクションサバイバル本『SAS戦闘員』

 

湾岸戦争から奇跡の生還を果たし英雄となった、イギリスの陸軍特殊部隊(SAS)の軍曹アンディ・マクナブ。

入隊までの生い立ちや17年間の軍歴、そして世界各地でおこなった秘密作戦やテロリストとの死闘などを赤裸々に語ります。

 

著者
["アンディ マクナブ", "McNab,Andy", "威蕃, 伏見"]
出版日

 

1995年に刊行された、イギリスの元軍人であり作家のアンディ・マクナブのノンフィクション。その衝撃的な内容から、イギリス国防省が一時出版を差し押さえたという問題作です。

SASの内情を書いた本はほかにもありますが、ほとんどは輝かしい戦歴を扱うもの。本作ほど機密性が高く、隊員の訓練や任務、プライベートな部分も書いてあるものはないでしょう。戦闘テクニックや最新兵器の扱い方など、第一級の軍事情報が盛り込まれています。

中東、アメリカ、北アイルランドなどさまざまな現場に従事するのですが、どの現場も常に命の危険がともなう状況。体力はもちろん、知力を駆使してサバイバルしていく様子は圧巻です。また戦闘の描写からは、ノンフィクションならではの重みも感じられるでしょう。

 

16人でサバイバル!奇跡のような実話の漂流記『無人島に生きる十六人』

 

1898年、太平洋で大嵐に遭い、龍睡丸という帆船が座礁しました。乗組員16人はボートに乗って脱出し、小さな無人島に流れ着きます。

船長はすぐに、全員の心をケアする4ヶ条を作ったそう。乗組員たちもそれを守り、互いに尊重して生活。飲み水を確保し、見張り櫓を作り、日々工夫して助けあいながら再び日本に戻れる日を待ち続けます。

 

著者
須川 邦彦
出版日
2003-06-28

 

1943年に刊行され、「野間文芸奨励賞」を受賞した須川邦彦の作品。当事者に取材をして書き起こしたノンフィクションです。

注目すべきは、16人全員が勇敢で聡明なこと。年齢を問わず互いに敬意をもって協力し、創意工夫を凝らして生き抜く姿は奇跡的です。だからこそ、全員で生還できたのだと納得させられるでしょう。

また船長の統率力にも感服。彼が作った「島で手に入るもので暮らす」「できない相談は言わない」「規律正しい生活をする」「愉快な生活を心がける」という4ヶ条をもとにしたサバイバル生活は、現代社会における組織論にも通じ、こうありたいと思わせてくれる一冊です。

 

想像を絶する体験を綴ったおすすめノンフィクションサバイバル本『たった一人の生還』

 

1991年の年末。神奈川からグアムへと向かう外洋ヨットレース中に、「たか号」は巨大な波にのまれて転覆。艇長は死亡しました。乗組員6人は救命ボートに乗って脱出します。

ところが、混乱のなか遭難を避けるための積載物が流され、ボートは太平洋をあてもなく漂流することに。乗組員たちは次々に亡くなり、生き残ったのはたったひとりだけでした。

 

著者
佐野 三治
出版日

 

1992年に刊行された佐野三治の作品。27日間にわたって太平洋を漂流し、たったひとりで生還した作者の壮絶な体験を綴ったノンフィクションです。

漂流した6人は、狭いゴムボートの中で極限状態に追い込まれますが、紳士さは失いません。しかし徐々に衰弱し、命を落としていきます。その様子は、数あるサバイバル本のなかでも、もっとも過酷といっても過言ではないでしょう。

本作を書くにあたり、作者が苦しみながら記憶を辿ったであろうことは想像に難くありません。彼自身にとって都合の悪いであろうことも正直に記され、仲間たちが最後までヨットマンとしての尊厳を失わなかったことを伝える内容に胸が締め付けられます。本人だからこそ描けるノンフィクションのサバイバル本、おすすめです。

 

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る