それは、気が遠くなるような未来。宝石の国の物語
- 著者
- 市川 春子
- 出版日
- 2013-07-23
遥か遠い未来、人の形をした「宝石」たちが主人公の物語。永遠ともいえる寿命を持つ彼らはそれぞれの特性を生かした仕事を持っています。主人公のフォスフォフィライトは、壊れやすい特性からなかなか仕事を与えられなかったのですが、博物誌を編む仕事に就くことに…というところから、物語はスタートします。
わたしは「人間でいたくない」ということをテーマに詩を書くことがあります。肉と血で出来ていて、他者を平気で傷つけたり悪の心も宿す人間の存在そのものに、嫌悪感を抱く瞬間が、時々ですがほんの少しあるからです。この作品は、そんなわたしの理想である宝石の人々のお話―どこまでも美しく、触れ合えば壊れる人々の世界が描かれているということは、前々から知っていました。そのためずっと読むのをためらっていたのですが、知人のすすめで読むことになり、思っていた通りに読み進めるほどに強く引き込まれていきました。ずっと憧れていた世界が、この作品の中にあったのです。“好きになりすぎるのってちょっとこわいな”と思うくらい、久々に日常を変える本に出会ったという感覚です。
(こんな風に、「好きになりそうだから踏み出せない、読みたいのになぜか開く勇気がない」という臆病なわたし、主人公フォスの、ほんのちょっとの無鉄砲さと行動力が時々うらやましい…)
作者の市川春子さんは、なんとわたしと同じ札幌在住! 街のどこかですれ違っていたりしないかなぁ…。
最高にカラフルでキュートな魔界へ!
- 著者
- 安野 モヨコ
- 出版日
- 2004-03-26
女の子のダイスキが詰まった、安野モヨ子先生初の少女漫画。「なかよし」に連載され、アニメにもなった作品です。ショコラとバニラ、二人の魔女が次期クイーンになるための試験と勉強を兼ねて人間界へやってくる…! というストーリー。後半は魔界でのお話が中心になり、ますますドキドキの展開に!
たくさん出てくるキュートな魔法のアイテムも、本当にあったらいいのにな~…って思ってしまうものばかり。わたしもアニメに夢中になって、ショコラのペンダントを学校にこっそり持って行っていました(没収されなくてよかった…)。安野先生も、描きたいものを好きなだけ描いて、かわいさ全開の世界観がとってもお気に入りとお話しされていた作品。読者層が低年齢ということもあって、ストーリーがわかりやすいのも寝落ち向き!(と、思っています)キャラクターもそれぞれ魅力的で、とってもカラフルな夢が見られそう♪
ふすまを開ければそこは…夢のような異世界!
- 著者
- 大和 和紀
- 出版日
主人公のカチコさんは、超真面目で堅物な女の子。そんな彼女が押し入れのふすまを開けると、そこが異世界への扉となって…!
30年近くも昔の作品ですが、今でも新鮮さを失わない展開。堅物で真面目とみんなに言われるカチコさんもやっぱり女の子。「かわいくなりたい」という自分の隠された願望が、異世界で実現! 超絶美女に変身してしまいます。その他にも個性豊かな登場人物がたくさん登場して…。賑やかな異世界の中で、カチコさんの成長とアイデンティティの確立が描かれた、ドタバタでじんわりくるお話です。
そして、大和和紀先生の絵のタッチがすごくカワイイ!(特にメガネの変身前のカチコさん)大人の人には懐かしい絵柄なのかもしれないですが、テン年代の世代にとっては、グッズにしたいかわいさなのでは?(わたしもこの絵のジャケットでCD出してみたい…!)
今回ご紹介した「異世界マンガ」では唯一、普通の女の子が主人公の「異世界トリップもの」。この作品における異世界の存在は、どことなく明晰夢(夢だと自覚し、思い通りにできちゃうこと)につながるような気がしています。