その施策、相手に刺さっている?もっと顧客を知るために読んでおきたい3冊

更新:2021.12.6

営業やマーケティングをする上で、打った施策がなかなか成果につながらずに悩んでいませんか? 自分の頭の中でグルグル考えて、次の手を打って、でも打破できなくて…。そういった負の連鎖にはまってしまっているという方もいらっしゃるかもしれません。結構しんどいですよね。その場合、改めて考えた方がよいポイントのひとつが、「自分は本当に相手(顧客)のことを理解できているのか?」ということ。一生懸命やっても、相手にマッチしていなかったら効果は限定的です。今回は、そのために参考になる書籍をご紹介します。

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営業やマーケティングをする上で、打った施策がなかなか成果につながらずに悩んでいませんか? 自分の頭の中でグルグル考えて、次の手を打って、でも打破できなくて…。そういった負の連鎖にはまってしまっているという方もいらっしゃるかもしれません。結構しんどいですよね。その場合、改めて考えた方がよいポイントのひとつが、「自分は本当に相手(顧客)のことを理解できているのか?」ということ。一生懸命やっても、相手にマッチしていなかったら効果は限定的です。今回は、そのために参考になる書籍をご紹介します。

相手への理解を深めていくために、ペルソナを作成してみる。

著者
["Ziv Yaar", "Steve Mulder"]
出版日
2008-02-23

マーケティングの勉強をしていると「ペルソナ」という言葉に出会うと思います。端的にいうと、「企業が提供する製品・サービスにとって最も重要で象徴的な相手(顧客、見込み顧客など)のモデル」のことです。属性(性別・年齢・職業など)だけでなく、趣味や価値観・行動特性なども組み合わせることで詳細な顧客像に落とし込んでいきます。マーケティングにとって価値を提供したい相手を明確にすることはとても大切なこと。そのことを通して、アプローチしたい相手に対する理解を深め、その人に合った商品企画や改善、あるいは広告やSEO、Webサイト等を通したコミュニケーションの設計・実行の精度を向上させることができます。また、関係者が多くなると陥りがちなアプローチしたい相手像のブレや、顧客のニーズからずれた企画・コミュニケーションなどを防止するために意思統一を図るうえでも活用できるものです。

ただ、実際にペルソナを作り上げようとしたときに「どのように作成を進めていけばいいのか?」というところで手が止まってしまうことも多いもの。また、存在する可能性の低い「理想」の顧客像を作り上げてしまったがためにペルソナを作成しても成果につながらないということも意外と起こるものです。今回ご紹介する書籍では、そのような事態を回避しながら具体的にどのようにしてペルソナ構築を進めていけばいいのか、その視点や方法、方法別の長所・短所、注意点などを具体的に紹介しています。

翻訳本特有の読みにくさや表現のまわりくどさを感じることはあるものの、内容はいたって実務的かつ体系的。すぐに現場で活用することができます。しかも、実際の作成の流れに沿って具体例も織り交ぜながら詳細に説明されているので、読みながらペルソナの作成を進めていくだけでも理解が深まりますし、力もついてくると思います。つまずいた部分を中心に読み進めても役に立つのではないでしょうか。Webサイト設計のための書籍ではありますが、それ以外の目的でも十分に参考になる内容です。その場合は、書籍内で紹介されているWebサイトに関する事例を自分が扱う製品・サービスに置き換えながら読み進めるとより理解が深まると思います。

相手が法人顧客の場合、どのような視点で考えることができるか。

著者
佐藤 義典
出版日
2011-12-24

ホンシェルジュをご覧になられている方々の中には、法人顧客に対して製品・サービスを提供されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ただ、私が書籍を見ているかぎりでは個人に対するマーケティングの書籍に比べると、法人顧客をテーマにしたものはまだ意外と少ないように見受けられます。前者と後者では、例えば「意思決定者の数」や「意思決定のための基準・かかる時間・プロセス」、「製品・サービスに対するリテラシーの高さ」などのような点で違いがあるもの。法人顧客に対する営業やマーケティングを書籍で勉強したくても、その機会は限られていたのではないでしょうか。

そのような中で、法人顧客に対する営業・マーケティングに取り組むための大切な視点を、具体的かつ体系的に解説しているのが本著です。「戦略BASiCS(Battlefield:戦場・競合、Asset:独自資源、Strength:強み、Customer:顧客、Selling message:メッセージ)」という分析フレームを提唱している著者。そのフレームを活かしながら自身のコンサルタントとしての経験などを織り交ぜつつ、売れる人が無意識でやっている選ばれる理由作りを言語化・体系化することで、誰でもより高いパフォーマンスを発揮できるようにすることを目指しています。

「ドリルを買いに来た人がほしいのはドリルではなく穴である」という言葉もありますが、顧客は製品・サービスを購入したいのではなく、実現すべき「目的」を実現したいもの。その目的とは(最終的には)、顧客に対して自社の商品を通して価値を提供すること、その結果しっかり稼いで無駄なコストは削減して利益を生み出し続けていくことではないでしょうか。製品・サービスはあくまでもそのための手段にすぎません。それを実現するために法人顧客にとって「製品・サービスの活用方法」、「コストパフォーマンスはどうなのか」などを提案することが不可欠。しかも、「会社にとってのベネフィット」「部署にとってのベネフィット」「(役職や担当業務、リテラシー等に応じた関係者)個人にとってのベネフィット」の視点で切り分けて、アプローチすることが大切であると著者は指摘しています。

私は営業を受ける側にもいますがこれらの指摘はもっともだと思います。ただ、このような視点で提案をいただける方にお会いする機会は残念ながらほとんどありません。自分も営業・マーケティングに取り組む身として気を付けねばと自戒の念を込めつつ。

相手の「本音」にどれだけ迫れているだろうか?

著者
桶谷 功
出版日
2005-02-17

インタビューなどを通して顧客のことがわかってきたつもりだけど、それをもとに施策を打ってもなかなか思うようにいかない…と壁にぶつかることもあるのではないでしょうか。顧客のことを理解することって本当に難しいですよね…。検証すべき点はいろいろありますが、導き出した結論が顧客のインサイト(著者の言葉を借りると本音)にどれだけ迫れているのかということも考え直した方がよいポイントのひとつです。

インタビューやアンケートなどで相手が回答していることが、本音だとは限りません。本人が気づいているか否かは別として、実際は別のところに真意があるかもしれないのです。

例えば、著者が自身の経験談として冒頭で紹介しているのが、ある新製品に関するグループ・インタビュー。たまたまインタビューの司会者が席を外した途端、参加者同士が本音で自由気ままに、インタビューのときとはまったく異なる話を始めた様子を目の当たりにして愕然としたといいます。インタビューの内容を額面通りに受け入れてしまうとミスリードを起こしていたかもしれません。様々な要因の影響で、相手はなかなか本音を話してくれないものです。

相手の本音を理解するのは、インタビューやアンケートなどの回答内容だけでは困難です。そのときの話し方や表情・身振り手振り、場合によっては実際にサービスなどを利用しているシーンを観察するなど言葉の内容以外の切り口から見ないとわからないことも実に多くあります。そのために著者は、エスノグラフィック調査、ポラロイド写真調査、コラージュ・エクササイズなど本音に迫るための様々な手法を紹介していますが、多角的に見て初めて本音に迫れる可能性が高くなるのではないでしょうか(時にして、物事はもっとシンプルだったりもするものなのですが)。

本著では、インサイトに関する基本的な考え方や調査方法をはじめ、ハーゲンダッツや髭剃りのシックをケースとして取り上げて、いかにして顧客のインサイトに迫り、それをビジネス活動の中に取り入れていくのか具体的な事例も紹介しています。顧客のインサイトにいかにして迫るか、内容を読みながらご自身のケースでも考え抜くことで、ヒントが見えてくるのではないでしょうか。

顧客に対する理解を深める。口で言うのは簡単なことですが、本当に難しいものです。様々な角度から考察を深めていってようやくたどり着けることもあれば、逆にとてもシンプルだったりもする。本音にどのように迫り、価値を創出していくか?それがマーケターとしての腕の見せ所ですし、醍醐味ではないでしょうか。今回はこうして参考になる本をご紹介しましたが、本を読んだからといってできるようになるものでは当然ありません。自分もまだまだこれから。学んだら、実践あるのみ!試行錯誤を繰り返しながら、顧客理解の旅を、産みの苦しみを感じつつも楽しんでいきましょう!

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