おすすめ詩集5選!好奇心だけで気楽に手に取れる本

更新:2017.3.21

詩集をよく読む人も、今まで読んでこなかった人も、気軽に読める詩集を5冊ご紹介します。タイトルに好奇心が湧いたら、ぜひ手に取ってみてください。

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あなたに合う詩集、探してみませんか?

普段から詩を読む人も、いままでなかなか詩を読んでこなかった人も、初心者から上級者まで気楽に手に取れる詩集を5冊、紹介します!

一言で「詩」といっても、様々なテーマがあります。

日常。生。死。孤独。恋。あこがれ。悲しみ。喪失。

心を揺さぶる言葉が、きっと見つかると思います。人生の宝物になるような言葉が詰っている詩集を紹介します。

今回は若手からベテランまで、幅広い作品をご紹介します。
 

「死」へ向かう心の機微『夜空はいつでも最高密度の青色だ』

最果タヒは、京都大学在学中に、当時女性としては最年少で、優れた現代詩集に贈られる中原中也賞を受賞しました。現代若手詩人の代表の一人である彼女の詩集を紹介します。

著者
最果 タヒ
出版日
2016-04-22

『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は、映画化もされるほど人気の作品です。清新な言葉で語られる本作では、「死」へのある種の肯定が見受けられます。読んでいると生きながらにして死んでしまっている感覚に陥るのですが、ここに生と死との境目は、非常に曖昧なものとしてしか存在していません。読んだ後には、「死」に対しての感覚が、ガラッと変わってしまうかもしれません。例えば以下の部分引用では、生と死の循環が描かれています。

「好きと嫌いと優しいとかっこいいと素敵とまたねで出来上がった私たちに車がつっこんで、だれかが死んで、そのうち恋がうまれて、そのうち子供ができて、そのうち誰かがまた死んで、だれかが死んで、老いて、全員いなくなって、次の子たちが走り回る」(『夜空はいつでも最高密度の青色だ』「星」より引用)

この詩集では、筆者の「好きなもの」と「嫌いなもの」がはっきりと描かれていて、自分の「好きなもの」や「嫌いなもの」と比べながら読むのも面白いと思います。

おとぎ話のような世界で繰り広げられる人間への疑問『寺山修司少女詩集』

寺山修司は老若男女、ファンの方が多い作家です。「天井桟敷」の劇作家としての顔だけでなく、歌人、小説家、評論家、随筆家、俳人、俳優、写真家など、幅広い活躍をした人物です。そんな寺山修司の魅力に迫れる詩集を紹介します。

著者
寺山 修司
出版日

『寺山修司少女詩集』は、少女以外の方にもおすすめの作品なのでご安心ください。海、マサーグース、猫、人形、花など、モチーフは多岐にわたり、童話を読んでいるかのような心地よさがあります。そうした簡潔な言葉でありながらも、人間を根底まで掘り下げると出てくる疑問が、次々に浮かび上がってきます。

「母のない子に 本がある
 本のない子に 海がある
 海のない子に 旅がある
 旅のない子に 恋がある
 恋のない子に 何がある?
  ひまわり咲いた
  日が暮れた
 恋のない子に 何がある?」(『寺山修司少女詩集』「ある日」より引用)

以上のように引用した詩では、人間に許された「愉しみ」が、徐々に明らかにされ、最終的には「恋」のところで探求は止まります。寺山ならではの独特の視点であると言えるでしょう。

また、「階段」という詩では文字が階段状に並び、「ハート形の思い出」という詩ではハート型に文字が並んでいて、詩の枠にとどまらず、遊び心が詰った作品になっています。連続する短文のリズムが心地よい、おもちゃ箱のような詩集です。

谷川俊太郎にとっての「優しさ」とは『これが私の優しさです』

谷川俊太郎は子供から大人まで愛されている詩人です。第一詩集『二十億光年の孤独』や『六十二のソネット』など、たくさんの詩集がありますが、そんなこれまでの作品から、いくつかの詩を集めて再録された本があります。

著者
谷川 俊太郎
出版日

『これが私の優しさです』には、これまでの詩集を横断して、様々な詩が収められています。しっとりした静かな悲しみ、孤独、そこから湧き上がる生の喜び、愛が描かれ、人間の存在の尊さを感じさせてくれます。

「名を除いても
 人間は残る
 人間を除いても
 思想は残る
 思想は除いても
 盲目のいのちは残る
 いのちは死ぬのをいやがって
 いのちはわけの分からぬことをわめき
 いのちは決して除かれることない
 いのちの名はただひとつ」(『これが私の優しさです』「除名」より引用)

詩に「優しさ」という言葉が出てくるわけでもなく、人生こうしなさいといった教訓めいたことを言われるわけでもありません。けれども、読み終わった後には誰かに優しくしたくなる作品です。谷川俊太郎流の「優しさ」をぜひ感じてください。
 

甘美な世界で繰り広げられる女心『すみれの花の砂糖づけ』

江國香織は『きらきらひかる』や『神様のボート』、『号泣する準備はできていた』などの、清爽な小説で有名ですが、実は詩人としての顔もあるのです。小説とは一味違った、彼女の詩を紹介します。

著者
江國 香織
出版日
2002-11-28

詩集『すみれの花の砂糖づけ』は、タイトルにもある通り、甘いものがたくさん出てきます。キャラメル、キャンディ、チョコレート、キウイ、メロン、黒砂糖。甘い食べ物がそのまま甘美な世界を作り上げています。そうした中で女性の心が詠まれていきます。

「キャラメルの
 男の子用のおまけみたいなあなたと
 女の子用のおまけみたいなあたしが恋をしたから
 世界は急に遊園地になった
 閉演時間なんて誰が気にする?
 ずっと
 遊んでいられるものだと思ってたのに」(『すみれの花の砂糖づけ』「遊園地」より引用)

「キャラメル」という言葉が作り出す甘い世界の中で遊んでいる少年と少女。しかし、いきなりやってくる終焉が、大人になってからの回想という形で書かれます。

『すみれの花の砂糖づけ』では、純粋な喜び、悲しみ、願いを想っていた少女時代、情熱的でありながら空虚感も感じている乙女心。日常の中で、安らぎを求めつつも寂しさを感じている「あなた」への想いは、甘く切ないものがあります。

純粋な少女時代と大人の女性となった今を自由自在に往来する、温かくも鋭い江國作品ならではの、宝石がつまったような詩集です。
 

好きなものを好き、嫌いなものを嫌いと言う、当たり前だけどできないこと『詩集 すみわたる夜空のような』

ファンの方も多い、鋭利でありながら清々しい銀色夏生の詩。そんな銀色らしい詩集、『詩集 すみわたる夜空のような』を紹介します。今まで銀色作品を読んだことがない人に、ぜひおすすめの作品です。

著者
銀色 夏生
出版日

本作では、かつてそこにあったもの、そして消えていくものへの想いが詠まれています。出会いと別れの中で気付くものが、ここにはあります。喪われていくものがあるからこそ、〈今〉、〈ここ〉の肯定がなされていき、孤独すらもが認められていきます。

「何かがだんだんあいまいに死んでいくようなつきあいより
すみわたる夜空のような孤独を」
(『詩集 すみわたる夜空のような』「すみわたる夜空のような」より引用)

例えば表題作ともなっている引用部の詩は、直情的で鋭い清々しさが存分に現われ、のどごしのいい詩となっています。『詩集 すみわたる夜空のような』では、てらいもなく、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと述べられているのですが、これは当たり前のことであるようで、なかなか出来ることではありません。読んだ後に、自分に正直になれる一冊です。
 

いかがでしたでしょうか。読めばきっと心の中に残る、大切にしたい一文があると思います。気軽によめるものばかりですので、ぜひ手に取ってみてください。