ズバリ、人形に恋するお話でございます。連作短編の名手、加納朋子さん初の長編ミステリー。優しい雰囲気の作品が多い加納さんですが、今作は打って変わってダークな印象。不穏な空気が漂っています。
しかし、結末は意外にも爽やかなので、心地よい読後感が味わえます。恋愛要素も強く、普段ミステリーを読まない方にもおすすめな一冊。
主な登場人物は、人形師の如月まゆら。そして、彼女が作った人形に恋をした青年。そしてそして、その人形と瓜二つな容姿の女性。この三人を含む登場人物たちの複雑な関係が、物語を格段に面白くしています。 今作は、そのうち二人による一人称パートが、交互に描かれていくというトリッキーな構成。ここ重要です。テストに出ます。
そしてもちろん、叙述トリックが使われております!! 気持ちの良いどんでん返し。この爽快感がたまらないんです!! いやはや、小説って素晴らしい。
読み慣れている方は、途中でトリックに気付いてしまうかもしれませんが、ストーリー自体も面白いのでぜひ読んで頂きたい!! 今回ご紹介する5冊の中でも、特に読みやすい作品だと思います。非常におすすめです!!!
神のロジック 人間のマジック
最初に言っておきますが、こちらは厳密に言うと叙述トリックではありません(ふぁ!?)。じゃ何で紹介すんねんっ!!って感じですが、実はこの作品、オチがとても叙述トリックっぽいんです。
タネの明かし方といい、重要ポイントの伏せ方といい、全体を通してほぼ叙述トリックなんです。なので紹介しちゃいます。だって面白いんだもの。自分でこの記事のタイトルを「叙述トリックを用いた小説」にしたのに、華麗に無視します。
この本は、私の大好きな作家、西澤保彦さんのミステリー小説。物語の舞台は、荒野に建つ謎の「学校」。六人の子供たちが幽閉されており、何も知らないまま共同生活を送っています。やがて、一人の新入生が来たことによって悲劇が起き、驚愕の真実が明かされるという物語です。
今回ご紹介する5冊の中で、最も不気味な作品です。舞台や設定など、奇妙で謎めいた事が多すぎて気味が悪い。正直、読んでいてゾクッとしました。ホラーやグロテスクとは一味違います。
得体の知れないモノと対峙したときのような、何とも形容し難い恐怖に襲われます。簡単に言えば、ブラックボックスの中に手を突っ込んで「いやぁーん。今なに触ってるのこれぇー。なんか気持ち悪いぃーん」的な感じです。
初めにも言いましたが、今作の仕掛けは叙述トリックではありません。叙述トリックとは、作者が読者を騙すものであって、登場人物が騙されていてはダメなのです。
とかなんとか言ってるとネタバレになってしまうので、これ以上は控えます。読んで頂ければわかりますって!! ね!!
片眼の猿―One-eyed monkeys
道尾秀介さんの長編ミステリー。
主人公は、盗聴専門の私立探偵、三梨幸一郎。彼の持つ特異な「耳」を生かし、産業スパイとして調査をしている最中、冬絵という女性と知り合います。冬絵はいつも大きなサングラスをかけており、彼女を同類だと感じた三梨は、すぐさま探偵事務所にスカウト。後に起きた殺人事件がきっかけとなり、波乱の展開を迎えます。
この小説は、他の叙述トリック作品とは一風変わったオチが待っています。大抵の場合、最後の種明かしのところで「えぇぇええーっ!? マジかぁあぁああ!!!」という衝撃をくらうのですが、今作は一味違います。どんでん返しという点では同じなのですが、他作品とは少し違った意味で面食らいます。衝撃度は若干低めですが、騙された人はかなり多いのではないでしょうか。
ちなみに私も騙されました。とても新鮮なオチです。「そっちかいっ!」って突っ込みたくなります。
叙述トリックを読み慣れてる方でも楽しめる作品だと思います。映像化できないとは、まさにこの作品のことですね。ふふふ。