西岸良平の画風は個性的。あの特徴的な顔の絵を見たことがある人も多いはず。西岸良平のオススメ作品3つを紹介します。
西岸良平は、『ビックコミック』で長年活躍している東京都出身の漫画家です。代表作には実写化された『ALWAYS 三丁目の夕日』や『鎌倉ものがたり』があります。
鉄道好きな作者の作品には、しばしば実際の鉄道が登場するほか、『鎌倉ものがたり』の主人公は鉄道模型が趣味という設定。西岸良平作品は、別の作品で容姿や設定が同じキャラクターが登場する、スターシステムを採用しています。作品を読みながら、スターシステムのキャラを探してみるのも楽しいですよ。
『三丁目の夕日』しか知らないという人におすすめなのが、『ポーラーレディ』と『ミステリアン』です。この2作品は別々の作品ですが、女性が主人公で別世界からやってきた点が共通します。
『ポーラーレディ』は、人の願いを叶える魔法を売る江戸川蘭子が主人公。魔法という不思議な商品を売っていますが、蘭子はドジでかわいらしい女性。魔法を使うことでどうなるかを契約前に水晶で見せるので、契約が破談になったり中途解約されたりすることもしばしばあります。
- 著者
- 西岸 良平
- 出版日
- 2013-10-12
魔法という不思議の要素と、皮肉の要素が入り混じった作品です。主人公の蘭子には人の欲望が見える能力があります。ほのぼのした絵柄と、蘭子のかわいらしさとは裏腹に、人の世の残酷さや理不尽さも描かれています。欲望を実現するとどうなるか。特に、9話の「世界一の美女を妻にした男」は、美の基準が変わってしまった男の話ですがなかなかシュールです。
顧客の願いを叶えるという点では、よく知られているものに藤子不二雄の『笑うせぇするまん』があります。こちらは喪黒(笑うせぇするまん)がかかわった人はみな不幸になりますが、蘭子の顧客は幸せになるパターンもあります。最終話で蘭子の正体が分かり、それまでのストーリーが腹落ちしますよ。各話1話完結型のスタイルの作品です。
『ミステリアン』の主人公ヒロミは、地球にやってきた宇宙人。なぜかペンギンと共同生活をしています。地球にやってきた目的は地球人になりすまして、地球人の調査をすること。OL、喫茶店の店員、保育士、女子高生、画家と同棲する女性などさまざまな人生を生きます。
しかし、自身も地球で生活しているうちに、次第に特殊能力が失われ、地球の快楽や欲望に染まる「地球病」にかかっていきます。傍観者の立場から当事者になってしまうというテーマ。
- 著者
- 西岸 良平
- 出版日
- 2010-09-21
地球人の中に宇宙人が溶け込むという設定は物珍しいものではありませんが、私たちが日ごろ当たり前と思っているものを疑問に感じる視点が非常に興味深いと言えるでしょう。アル中になったり、男におぼれたり、不良少女になったりと、この世の酸いも甘いも経験していく様子は見ものです。直接的に語らないからこそ、読む者に幸せとは一体何かを考えさせてしまう面も。
西岸良平の作品には、ほのぼの作品と日常の中に溶け込んでいる不思議を取り上げた作品があります。『ポーラレディ』と『ミステリアン』は後者。ほのぼの作品しか読んだことがないという人には、違った魅力を知ることのできる作品です。
『たんぽぽさんの詩』は5巻完結の短編集です。一話が見開き2ページ程度の分量なのでサクサク読み進めることができます。イラストレーターの主人公たんぽぽと、夫でカメラマンの慎平、娘のスミレの3人家族の日常を描くほのぼの作品です。家族のぬくもりを感じられるので、疲れているときに読むと心がやすらぐでしょう。
ドジで抜けているという設定のたんぽぽ夫婦。物語は、一家が郊外の一戸建ての家に引っ越してくるところから始まります。
- 著者
- 西岸 良平
- 出版日
一話目の引っ越しから早速やらかすしてしまう、たんぽぽ。なんと一人娘のスミレを置いて、新居に引っ越してしまうのです。いくらしっかりしているとは言っても、幼稚園に入る前の子供を放置して、しばらく帰って来ないというのは今なら問題になりそうですね。それもおっちょこちょいで済ませられてしまうのが、大らかな時代だったということでしょうか。
『鎌倉ものがたり』は、湘南の鎌倉に住む、ミステリー作家の一色正和と、年の離れた妻亜紀子が主人公です。鎌倉で発生する事件を解決していくというストーリー。
一色先生は優男ながらも博識で剣道の腕前にも覚えがあるという設定。鉄道模型好きで、かなりのグルメ。夫婦そろっておいしいレストランに食事に行く様子もたびたび描かれています。亜紀子はかなりの美人。学生時代に出版社のアルバイトで夫と知り合ったという経緯から、夫を「先生」と呼ぶこともあります。子どもがおらず、仲のいい夫婦として描かれています。2017年3月時点で、既刊は33巻です。
- 著者
- 西岸 良平
- 出版日
- 1985-05-19
作中の鎌倉は、寺社仏閣が多く、かつて幕府があり戦いがあったという歴史から、たびたび魔物や妖怪、幽霊が登場します。鎌倉警察署には魔物がらみの事件が発生するので、心霊課という部署が存在することになっています。一色先生がエンマ大王と顔なじみであったり、妖怪退治に妖刀を使ったりと、摩訶不思議な設定ですが、その不思議感が独特の空気を作り出していると言えるでしょう。
舞台が鎌倉なので、実在する鎌倉の名所が登場します。博識の一色先生が、エピソードを交えて紹介してくれるので、このマンガを読むと鎌倉について詳しくなりますよ。2017年12月に堺雅人と高畑充希のキャストで実写化が予定されています。
『三丁目の夕日』は昭和30年代の夕日町三丁目を舞台にした作品です。2017年3月時点で、既刊は64巻。一話完結の短編集です。主な登場人物は、鈴木オートを経営する鈴木一家。鈴木夫婦には、一人息子の一平がいます。
鈴木家メインの話もあれば、一平のクラスメートたち、駄菓子屋のおじさん、タバコ屋のおばあさん、ときにはネコがメインの回になっていることもあります。夕日町にすむ人や動物が主人公なのです。特にこれといってストーリーはなく、戦後の色がまだ残る日本の人々の日常生活を描いた作品です。
- 著者
- 西岸 良平
- 出版日
- 1975-09-29
『三丁目の夕日』の魅力は、昭和30年代の日本人の生活を垣間見ることができることです。このマンガを読むと、30年代は近所で味噌や醤油の貸し借りが普通に行われていたこと、冬場は火鉢で暖をとっていたとか、箱根の山を国産車で越えるのは大変だったといったことなど、雑学的な情報をたくさん得ることができます。
64巻まで読めば、当時の日本通になれることは間違いなしです。明るい話ばかりではなく、ちょっと物悲しくなるような話もあります。つぎをあてた服や、すき間風の吹く部屋。登場人物たちの生活は決して裕福ではないものの、懸命に生きていることが感じられる作品です。
2005年に『ALWAYS 三丁目の夕日』として実写化。鈴木一家のキャストは、堤真一、薬師丸ひろ子、小清水一揮。実写化された鈴木家のお父さんは短気なところがあったり、男性の六さんは堀北真希演じる六子になっていたりと多少異なる点はありますが、原作の雰囲気をうまく伝える作品になっています。
『三丁目の夕日』と『鎌倉ものがたり』はまだ連載中の作品です。西岸良平の作品を読んだことがない人はこれをきっかけに1巻から読んでみてはいかがでしょうか。最新刊にたどり着くころには、新刊が出るかもしれませんよ。