漫画『ピースオブケイク』の魅力を結末まで全巻ネタバレ紹介!面白い!

更新:2017.6.21 作成:2017.6.21

実写映画化もされた大人の恋愛漫画『ピースオブケイク』。どこにでもあるような「普通」の日常をここまで生々しく、美しく描けるのかと驚かされるようなストーリーです。今回は読者の心も痛くする切ない名シーンをご紹介!ネタバレを含むのでご注意ください。 ちなみにスマホアプリで無料で読むこともできます!

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目次

漫画『ピースオブケイク』が面白い!見所を最終回まで全巻ネタバレ紹介!【無料】

著者
ジョージ朝倉
出版日
2004-05-08

本作はざっくりと分けると主人公の志乃、バイト先の店長、店長の彼女・あかりとの三角関係パートと、謎多き女あかりの過去バレパートの2部のストーリー構成です。そのストーリーは大人ならではのリアルで複雑な恋模様とジョージ朝倉の美しい作画で彩られています。

しかしその様子は出来事だけ追うと何てことないものです。浮気がバレて、別れて、引っ越してまた恋が始まる。描き方が異なれば真逆のラブコメなどでも描ける内容かもしれません。

しかしその展開が波乱万丈だと感じられるのはジョージ朝倉の心理描写の描き方が生々しく、それでいて美しいドラマチックさがあるから。

この世界観は読んでみないと分からないものなのでぜひ作品でチェックしていただきたい独特の魅力です。普通だけどダメダメな主人公を見ているとあきれながらも身につまされるようなダメさがあります。

今回はそんな本作の1巻からの名シーン、2巻以降の作品の見所をご紹介します!


『溺れるナイフ』などでも知られるジョージ朝倉。そんな彼のおすすめ作品を紹介した<ジョージ朝倉の恋愛漫画おすすめランキングベスト6!結晶のような作品>の記事もおすすめです。

漫画『ピースオブケイク』の見所1:だらだらの関係【1巻ネタバレ注意】

志乃はもともと元彼の正樹が働いていたCD屋でバイトをしていました。初対面で告白してきて根負けして付き合ったら3回目のデートでプロポーズしてくるほど志乃に惚れ込んでいた彼。

しかし志乃は遊びの関係だったミツとも別れないままずるずると正樹と付き合い、その浮気がバレてしまいます。正樹はまだ志乃が好きな気持ちが捨てられず、彼女は償いの気持ちで付き合い続けることを選ぶのです。

それ以来トゲトゲした発言で彼女を責める正樹、下手に出るしかないけれど心の中では彼のトゲに意地悪い気持ちを持っている志乃。

ある日ついに正樹は志乃に手をあげ、そのまま犯すように彼女を抱きます。

出典:『ピースオブケイク』1巻

この関係の不毛さに気づきながらも志乃はこう思うのです。

「でも私からは言い出してなんかやらない」

ずるい女ですね〜、志乃。この気づかれないくらいの小さなずるさに共感する人も多いはず。

おそらく正樹はイライラしながらも、自分が彼女を責めていることに罪悪感があります。それを肌で感じている志乃は彼の罪悪感を利用することで、気づかれないくらいの小さな復讐を。きっとこのシーン以外にも何回も彼にしているのでしょう。

あざなえる縄のように、上下関係や行き詰まった関係の責任の所在は、連鎖して繋がっています。男女関係の恐ろしさがリアルに表現されたシーンです。

漫画『ピースオブケイク』の見所2:誰にも癒せない寂しさ【1巻ネタバレ注意】

正樹と別れた同じ日に仕事もなくした志乃。仕切り直したい、と母親からの電話で泣いてしまい、引っ越しがトントン拍子で進んでしまいました。いきなり決まった引っ越しに困った彼女は友達に泣きつき、どうにか荷ほどきなどを手伝ってもらいます。

友人のひとり・ナナコはそのまま夜まで残ってくれ、正樹の話を一緒に笑い、悲しんでくれました。彼女が寝る姿を見ながら、志乃はありがとう、と心で思い、電気を消して庭に出ます。

じめじめした夏の暑さと、ひとりだという寂しさが彼女にまとわりついてきます。 

出典:『ピースオブケイク』1巻

多くの人が誰といても拭えない寂しさを感じたことがあるかと思います。もしくはそれに気づかないようにしていたり。

志乃は自分の気持ちを夏の夜空の下で観察しています。どうしてこんなに自分の気持ちを観察できるかと言うと、結局のところなんだかんだダメな自分も好きで、悲劇のヒロインをきどって酔っているのです。

それを自分の中の正樹が指摘してきます。シリアスに考えているようで実は自分に酔っている。煮詰めすぎた夜中の考えもまた、誰しも身に覚えがあるものではないでしょうか。行き場のない不快な空気感が漂うシーンです。

志乃からは自分に酔っていながらも、やっぱり本当にまっすぐに寂しいと思う気持ちも見え隠れします。ひとことで表せない気持ち、何度も同じところをループするような思考。大人の寂しさは複雑です。

漫画『ピースオブケイク』の見所3:そんな寂しさをあなたが【1巻ネタバレ注意】

漫画『ピースオブケイク』の見所3:そんな寂しさをあなたが【1巻ネタバレ注意】
出典:『ピースオブケイク』1巻

そんな寂しさがぬぐえないまま、眠れない志乃は庭の草むしりをし始めます。そこに隣に住む京志郎が庭に出てきます。どう見ても不審者の志乃。怪しい者じゃないと慌てて言う志乃に、彼は屈託のない笑顔で「大変スね」と言うのです。

その時、じめじめした夜にやっと風が吹きます。志乃が感じていた嫌なムードは、京志郎の間の抜けた笑顔によって一変。そして彼女は24歳になって初めて恋を知るのです。
 

志乃は好きな人などできないだろうと思っていた分、無防備に恋に落ちてしまいました。この後も不慣れなので好きな人へのアプローチの仕方が分からず、ただただまっすぐにぶつかっていきます。

まっすぐではあるのですが、それは青春漫画のような純粋さとは異なるもの。迷いながらも諦められない姿はみっともなくて、恋に溺れているようで客観的な視点があるから中途半端で、全然綺麗じゃない。

でも、修復不可能になって、汚くなってから諦めないのが大人のまっすぐさなのではないかと思わされるパワーがあります。

他は全部だめだと言っても過言ではない志乃が唯一諦めない気持ちは、周囲や環境が汚ければ汚いほど引き立つ、不思議な美しさがあるのです。果たして唯一の大事な想いはどんな結末を迎えるのでしょうか?

漫画『ピースオブケイク』の見所4:初恋をあきらめる覚悟【2巻ネタバレ注意】

1巻で京志郎への想いに気づき、彼にアタックするものの、彼女のあかりがいることを理由に断られた志乃。しかし思いは溢れて止まらず、彼にアタックし続けます。

志乃がタイプの京志郎は、彼女に惹かれているからこそ、何度も断ります。しかし惹かれているからこそ無下にもできずズルズルと曖昧な関係が続きました。しかしさすがにしつこすぎる志乃に、京志郎も困るようになります。

著者
ジョージ朝倉
出版日
2005-05-20

そんなある日、志乃はバイト先のビデオ屋で気になるポップのついた映画を借りることに。そのストーリーに感動して号泣し、翌日同僚にそのことを伝えると、それは京志郎がおすすめしていた映画だということを知るのです。

いてもたってもいられず、彼のもとに走ります。そしてそこで彼と目がうと、今まで全力で志乃を拒否しようとしていた京志郎が出会った日のように満面の笑みを見せ、こう言うのです。

「あーあ やっぱ来た」

その瞬間、志乃は彼の笑顔がとても好きだということを改めて実感し、京志郎とあかりの仲を壊してそれを壊さないことに決めたのでした。

しかしそんなあかりは京志郎が好きだという気持ちが強くなるのを恐るかのようにテレクラのバイトをして彼を心配させ……。

あかりのまさかの行動に、京志郎も読者も驚かされます。ふたりの言い合いの様子は本当の気持ちを話せない彼女のことを考えると胸が苦しくなります。いつもはかなりワガママでどうしようもない女なんですけどね。

そんななか、やはり見所は志乃が京志郎への気持ちを強くしたがゆえに離れていくことではないでしょうか。彼女が彼のおすすめのビデオを借りたことを知って全速力で駆けるシーン、彼の笑顔を見てすべてを理解したシーンは、初めての恋にうかれていた彼女が少し変化した様子を見ることができます。

漫画『ピースオブケイク』の見所5:コントロールできない初恋【3巻ネタバレ注意】

2巻であかりが出ていったことをきっかけに、ふたりはなし崩し的に付き合うように。バイト先でも家でも幸せな時間が続きます。

しかし志乃が気になるのはやはりあかりの存在。京志郎は志乃を大事にしてくれていますが、彼女がいなくなったから付き合えたのではないか、といつか来るかもしれない別れの予感に常に怯えることになるのです。

著者
ジョージ朝倉
出版日
2006-07-07

そしてその不安な気持ちは行き場を失い、京志郎にあかりが帰ってきたと嘘をついてみたり、ふとした瞬間に苛立ちを溢れさせたりしてしまうのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして志乃はそれにどこか既視感を感じます。このどうしようもない関係は、まるで過去の正樹と自分のことのようだったのです。自分の頭の中でつくりあげた架空の正樹がこう語りかけてきます。

「因果応報ってヤツ?」

それまでなぜ正樹があんなことをしてきたのか分からなかった志乃ですが、彼もコントロールできない自分の感情に振り回されていたのだと知るのです。

しかしそんな不安定な彼女に愛想をつかすことなく、京志郎はひたすら志乃に自分の気持ちを伝え続けます。そうしていつしか関係は落ち着き、家の立ち退きも決まったのでふたりは一緒に住む新しい家を探すことに。

そして志乃は友人の劇団の衣装係りを手伝いうことになり、そこである衝撃の事実を知ることになり……。

初めての恋がやっと成就したものの、そのきっかけから素直に喜べず、感情を持て余してしまう志乃の様子がリアルです。しかも京志郎の愛で丸く収まったかと思いきや、また新たな事実がふたりの絆を試すのです。

漫画『ピースオブケイク』の見所6:明かされるあかりの過去【4巻ネタバレ注意】

劇団の仲間に借りた19歳が書いた今売れている本に載っていた顔写真から、作者があかりだと知った志乃。あかりの本名は渋谷ナオミというもので、その年の若さにも驚きます。

著者
ジョージ朝倉
出版日
2007-03-07

そして4巻の内容は、あかりの自叙伝ともいえる私小説の内容が描かれます。小説内では彼女のことをナオミと呼んでいるので混同しないようご注意ください。

ナオミが生まれたのは夫に他界され、毎日恨みつらみを聞かせる母親のもとでした。彼女はいつもナオミに呪詛の言葉を吐き、重い喘息を患っていました。

そんな苦しい環境ながらも、ナオミには叔父・京志郎が営む本屋という癒しの場所があったのです。彼女は本を読み、小説を書くことを生きがいとしていました。

しかし身内の間で叔父のもとに自分を嫁がせる話が出たと聞き、しかもそれを彼が受け入れたということにショックを受け、気持ち悪い、と一蹴します。そしてその話はナオミが断ったことからなくなるのですが、後日少し話をして別れた日を最後に、彼は自殺してしまうのです。

祖母から彼を殺したのは自分だと責められ、信頼していた叔父の考えが分からず、深い闇に落ちていきます。そしてさらに母親が駆け落ちして自分を捨てたことをきっかけに、ナオミは故郷を去ることにしたのでした。

そこまでが小説の内容で、志乃は京志郎のことが書かれていなかったことに安心しますが、最後のあとがきに、どう見ても彼へのメッセージがあるのを見つけ……。

あかりの正体がまさかの19歳の少女だということには驚きですね。しかも次々と彼女を試すかのように起こる試練からあの無愛想で不安定な性格が生まれたのだと知ることができました。

しかもそこまで器の広さを見せた京志郎ですが、ここからまさかの不安になる言動を連発。志乃が彼を信じたいと思いながらも少しずつ疑うようになってしまう様子は、読者にも同じ焦燥感、不安感を感じさせます。

漫画『ピースオブケイク』の見所7:ふたりの思いが実る最終回【5巻ネタバレ注意】

ついに最終巻です!4巻で母親が亡くなったことから頼る相手がおらず、京志郎のもとを訪ねたあかり。小説を読み、泣いて頼って来た彼女に冷たくできずに志乃に嘘をついてサポートしてしまう京志郎。そんな彼を信じたいものの、どう見ても嘘をついていそうな態度に心配になる志乃。

3人の物語がついにいったん幕を閉じます。ここから5巻の見所をお伝えします。

心配になる志乃を分かってはいながらも、京志郎はついに約束を破って朝帰りしてしまいました。

そしてあからさまに怪しすぎる態度からむしろシロなんじゃないか、一緒にいちゃいちゃしている時はシロに見える、と自問自答し続けます。しかしあとなにかもうひとつ確証が欲しいと、ついに志乃は京志郎が最近頻繁に会いに行っている「入院中の田中」に電話をかけてしまうのです。

そしてそこに出たのはあかり。

志乃はその携帯をお風呂に入っている京志郎に投げつけます。そこから彼の言い訳がはじまるのですが、志乃はこう怒鳴りつけます。

「行くなよ!死ぬわけないじゃないの(中略)
ギャーギャー言う女なんで結構いきていけんのよ
しかもあかりさんなんて最もしぶとい部類の女よっっ」

そしてその話し合いのあと、何やかんやとあり、志乃は京志郎のいない間に家を離れる決意をします。そこで間に合わずに彼が帰って来てしまい、引き止められますが、決意を固くし、彼女は彼に合鍵を返します。

「…もう別れるしか考えはないわけ?」

そう聞く京志郎に、志乃は彼のことを一生信じられない、と言います。しかしその言葉を聞き、京志郎は寂しそうに、どこか皮肉そうに笑ってこう言うのです。

「…信じてくれたことなんてあった?」

そのままふたりは別々の道を歩むことになってしまいました。

そのあと荒れに荒れまくり、というよりはもとのフラフラとして主体性のない流され女にもどってしまった志乃。そしてどうしようもない気持ちになりながらも、前の恋が特別だっただけで、もともと自分はこうだったと言い聞かせます。

しかしそんな関係を続けてきた川谷と旅行をしたことをきっかけに、そんな自分を変えようと決意するのです。

懸命に流されないようにしながらも、京志郎のことを思い出して、泣く志乃。彼への思いの強さに、読者までも泣きそうになってしまいます。

そして最終回はそれから1年半後のこと。ドラマチックな結末で際立つのは、志乃の心を示すかのようなモチーフとしてのクワズイモ。たくさんのその植物のなかで締めくくられる最後のシーンは美しく、先読みのできない人生、生きていることの素晴らしさを感じられます。

漫画『ピースオブケイク』の詳しい結末は作品で読んでみよう!

著者
ジョージ朝倉
出版日
2009-02-07

ご紹介した3場面は1、2話で展開される内容。別れて、気持ちがぐちゃぐちゃで、その中で恋に落ちて、とスピーディーなストーリー展開だということがお分かりいただけるかと思います。

そんな序盤で引き込み、どんどん深くなっていく各巻のストーリーは見応えのあるもの。どこにでもあるような日常だけど、強く心揺さぶられるものあるジョージ朝倉の世界観がその物語を彩ります。

ぜひこの機会にジョージ朝倉が描いた名作恋愛漫画を覗いてみませんか?