奨学金返済地獄はなぜ生まれる?その実態と解決策に迫ったおすすめ本2選

更新:2017.3.30

今や50%以上の学生が借りているといわれる奨学金。一方で、奨学金返済に苦しむ人がいます。今回は、実態と解決策を知ることができる本をご紹介していきます。

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代表的な奨学金制度

日本では今や2人に1人が何らかの返済義務のある貸与型奨学金を受給しているといわれています。その中でも有名な奨学金が、日本学生支援機構による奨学金。すべての大学と短大、多くの専門学校などで申し込める奨学金です。

日本学生支援機構の奨学金は、返済義務のある貸与型の奨学金。この奨学金は、無利息の奨学金である「第一種」、上限3%の利息がつく「第二種」という2種類に分類されます。

なお需給者の7割以上が、利息のつく第二種奨学金の利用者といわれています。またこれとらとは別に、入学時特別増額貸与奨学金という奨学金を入学初年度に借りることができます。

奨学金受給者は、社会人になった後に利息と原本を月々返済していくのが通常です。しかし、この奨学金の返済滞納者が増加し、滞納額が増加するという大きな社会問題となっています。

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参考HP:奨学金なるほど相談所『代表的な奨学金[日本学生支援機構]の種類,金額,申込方法,条件を解説』

奨学金返済地獄の実態とは?なぜ返済滞納者が増えるのか

それではなぜ奨学金の返済滞納者が増えているのでしょうか。大きく2つの理由があります。

1つ目は、「学費の高騰化」です。私立大学だけではなく、安価だと思われている国立大学でも、初年度納付金が80万を超え、異常に急騰しています。日本は他の先進国と比較して、国による公的支援が少なく、ゆえに大学側も学費を上げざるを得ない状況なのです。

2つ目は、「家計の収入減少」です。3人に1人が非正規雇用と言われるようになり、低収入者が増加したため、家計も苦しくなってきています。親元を離れた学生への仕送りも、年々減少しているそうです。このような状況から、大学進学のためには奨学金に頼りたくなくても、頼らざるを得ない学生が増えています。

更に、返済が伸びれば伸びるほど発生する「延滞金」も奨学金返済地獄を生む大きな原因でしょう。年利5%の延滞金が、返済が滞れば滞るほど発生し、大きな負担となっています。ただですら生活を切り詰め、それでも奨学金の返済が滞ってしまう受給者にとって、延滞金は返済の大きな障害となっているのは間違いありません。

このような奨学金返済地獄の実態を追求し、解決策を提案している本2冊紹介します。

奨学金返済地獄の実態を追求した1冊

著者
岩重 佳治
出版日
2017-02-01

前述通り低賃金や雇用の不安定化などによって、奨学金返済ができずに苦しむ人たちが日本においても認知されるようになってきました。奨学金返済のために、ホームレスになる、風俗で働く、家族の関係が悪くなる……。まさに地獄絵図のような風景を『「奨学金」地獄』は伝えます。著者は弁護士でもある岩重佳治です。

実は前述した日本学生支援機構は、2004年の日本育英会廃止に伴って改編された組織です。組織改編以降は、奨学金の財源として「民間資金の導入」を進め、効率的な運営が求められるようになりました。

結果として、奨学金制度は金融事業化され、第二種奨学金の比重の増加に繋がったといいます。そして民間資金調達で事業を続けるためには、回収率の強化が進められることになります。かくして厳しい取り立てが始まるようになったのです。こうして返済地獄が生まれたのしょう。

格差が広がる社会の中で、かつてとは異なる奨学金の現状を知ることができる必読の1冊です。

過酷な奨学金返済への解決策を探る

著者
大内裕和
出版日
2017-02-13

当面の解決策としては、言わずもがな、奨学金についての正しい理解などが必要となってくることでしょう。しかし根本的な解決策としては、どのようなことが考えられるのでしょうか。『奨学金が日本を滅ぼす』では、その解決策の一つとして、大学授業料の引き下げや、返済義務のない給付型奨学金制度の導入を提唱します。

これらの資金源は、富裕層と、「たび重なる法人税減税や租税特別措置による減税、労働者の賃金抑制などによって」内部留保が増加した大企業への課税によって得られるといいます(本書より引用)。そしてこの富裕層と企業への適正な課税によって、給付型奨学金の整備はもちろんのこと、大学の授業料無償化が達成できるというのです。このような具体的な解決策の提示は、本書の圧倒的な魅力といえるでしょう。

また著者は冒頭で、奨学金に対する「世代間のギャップ」についても述べます。著者の学生時代(1980年代半ば)、利用していた奨学金は国立大の授業料年間30万円に対して、月額2万円程度。奨学金利用者も少数派だったそうです。それだから著者は、今の学生の奨学金利用は月5万円くらいだと考えていました。

しかし実際には月8〜12万円、中には17万円以上もの奨学金を借りている学生もおり、奨学金利用者は半数を超えていたのです。そしてこのような世代間ギャップが、奨学金問題の理解を難しくさせているといいます。

「ブラックバイト」という名を生み出した著者が、奨学金問題の現状、背景、そして解決策に迫っていく1冊です。

奨学金返済の事情は、雇用形態などが崩れ去り、かつてとは異なる様相を見せています。まずはその「地獄」のような現実に目を向けてみませんか。

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