わたしの初恋は、小学生の時にお家が近くだったクラスメイトの男の子でした。わたしが通っていた小学校では、近所のこどもで集まって集団下校をすることが決められていたので、毎日家までその子と遊びながら帰るのがとても楽しみだったことを覚えています。それからおよそ10年。綺麗な女の子が好きすぎる気持ちを少しこじらせて、ひとりお家でグラビアモデルさんのDVDを鑑賞することが趣味になった今。初恋の甘酸っぱさも忘れかけてしまっているわたしにとって、恋愛小説は恋のキュンキュン感を味わえる唯一の手段となってしまいました。時にはゾッと背筋が凍る物語にも出会いますが…。そんなわたしが厳選した、女性作家さんが描くちょっぴり変わった愛の形を綴った小説3冊をご紹介します。
傷つき傷つけられながらも、愛することをやめられない全ての人々に
妻はアルコール中毒、夫は同性愛者で恋人あり。それなのに“純度100%”。癖の強すぎる二人のお話なのに、他のどの恋愛小説よりも純粋で切なくてやさしい物語です。あとがきで江國さん本人がおっしゃっているように、これは「ごく基本的な恋愛小説」なのだと思います。
ふたりはお互いを心から大切に思い、愛し合っています。でもその愛の形はけっして一致しない。それぞれに問題だって抱えているし、想いが爆発してしまうことだって、淋しくてたまらなくなることだってある。好きすぎる小説が映画化されると、見るのにかなり勇気がいるのですが、この物語は映像でもとても素敵でした。
誰もが共感し、人を好きになることの美しさを実感できる作品だと思います。
好きになるということは、好きになると決めること
母性より女性を匂わせる母と、売れない画家の義父に育てられた姉妹ユリエとマリエ。高校教師になった妹マリエは教え子のミドリ子の兄と恋に落ちるが、ミドリ子の愛人は母の恋人だった――。裏表紙のあらすじだけで、一筋縄ではいかない恋愛小説だということがありありと伝わってくるこの作品。
川上さんの小説に登場する人物はみんなつかみどころがなく、何を考えているのかわかりませんが、「いとしい」はその印象がより濃厚でした。それでもみんな、恋愛ということになると何か強い力で惹かれ合ってしまう。たとえば「好きですといったとたんにわっと泣き伏してしまうくらい好きなんです――。」こんな文章を、ふわふわ揺蕩うように生きている登場人物が語ると、恋をする人の根底にある純粋さが際立って伝わってきました。
でもやっぱり曖昧で、ショートムービーを見ているかのような、おとぎ話のような雰囲気で物語は進んでゆきます。そのなかに時折胸をえぐるような現実的な描写があり、少し怖いのに病みつきになってしまう。そんな不思議な一冊です。