1972年、日本に返還された沖縄。しかし米軍の基地問題は、未解決のままです。その理由は、戦後沖縄の歴史をひも解くことで見えてくるように思われます。現在の沖縄問題を理解するためにも、沖縄の歴史を学んでみませんか。
沖縄、元の琉球王国が日本国に組み込まれたのは、1879年のこと。明治政府のもとで琉球が近代日本国家に組み込まれていった「琉球処分」によって、450年ほど続いた琉球王国が滅びました。かくして1879年に、沖縄県が誕生します。
そんな沖縄では、第二次世界大戦中に多くの住民を巻き込んだ、日本で唯一の地上戦が行われました。戦後の1945年からは、アメリカによる統治が開始。1972年に日本に返還されましたが、米軍基地は残されたまま。基地問題は、2017年を過ぎても未解決です。
基地問題についてはニュースで目にする方も多いと思いますが、その背景をより詳しく知るために、沖縄の歴史を踏み込んで学んでみませんか。ここからは沖縄の歴史、とりわけ戦後史を学ぶ際に役立つ本を3冊ご紹介していきます。
・沖縄基地問題についても詳しく知りたい!→まずは、1冊目をチェック
・写真で戦後沖縄の歴史を知りたい!→まずは、2冊目をチェック
・多角的に沖縄の現代史を網羅したい!→まずは、3冊目をチェック
- 著者
- 新崎 盛暉
- 出版日
- 2016-01-21
1冊目にご紹介する本は『日本にとって沖縄とは何か』。著者は沖縄現代史研究の第一人者である新崎盛暉です。
本のタイトル通り「日本にとって沖縄とは何か?」という問いに対して、沖縄返還後も続いた「構造的沖縄差別」という立場から、話が展開されていきます。なお新崎が定義する「構造的沖縄差別」とは、「対米従属的日米関係の矛盾を沖縄にしわ寄せすることによって、日米関係(日米同盟)を安定させる仕組み」のことです(本書より引用)。
つまり、沖縄の犠牲が日米関係を安定させているということ。新崎は「構造的沖縄差別」が日本の政府によって利用されてきたともいいます。
日米関係の安定のために沖縄が犠牲になっているという指摘は、世の中の見え方が変わるきっかけになるではないでしょうか。本書では戦後沖縄の歴史を辿り、「構造的沖縄差別」をどのようにして乗り越えるべきか、ということにまで話が及んでいきます。
また辺野古(へのこ)や普天間(ふてんま)の基地問題、2014年に沖縄で行われた選挙に関する記述も豊富な点も魅力的です。今まで沖縄の政治ニュースに関して「なんとなく」関心を持っていた方には、特におすすめの1冊といえるでしょう。
- 著者
- 石川 文洋
- 出版日
- 2015-04-22
2冊目は、豊富な写真が特徴的な『フォト・ストーリー 沖縄の70年』です。新書ではありますが、カラー写真が多く含まれている点が魅力的です。文字だけで歴史を追うよりもより気軽に、またよりヴィジュアル的な想像がしやすい1冊となっています。
著者は、沖縄生まれ本土育ちの自称「在日沖縄人」。沖縄の歴史が体系的に学べる1冊目の本『日本にとって沖縄とは何か』とは異なり、戦争と基地を軸にして、個人的な経験や取材などがメインで綴られた1冊です。しかしだからこそ、リアルな沖縄の姿が伝わってくるのでしょう。そこに写真というビジュアルという要素が伴うので、なおさらです。
またタイトルに「70年」と銘打ってあるように、第二次世界大戦中の「集団自決(強制集団死)」における生存者の声から、2015年に行われた辺野古への取材まで、長期間にわたる沖縄の歴史を学べる点も魅力的です。
とりわけ沖縄の新聞では頻繁に報道されているような事実——海上保安官によって、辺野古新基地移設に抗議する市民が抑え込まれる様子など——は衝撃的であり、沖縄問題に無関心ではいられなくなる威力すら持っているように感じられます。
- 著者
- 櫻澤 誠
- 出版日
- 2015-10-22
3冊目におすすめする本は、政治・経済・文化の観点から沖縄の現代史を描き出す『沖縄現代史』です。新書としてはやや分厚い350ページ強の本ですが、話が時系列に進み、特別難易度が高い単語も出現しないため、「戦後の沖縄の歴史についてあまり詳しくない……」という人にとっても読みやすい1冊となっています。
本書の魅力は、そのわかりやすい構成と、文化にまで話が及んでいることでしょう。4つの節で構成される本書は、1・2節で政治的項目、3節で経済的な項目、4節で文化的な項目に触れられています。沖縄史に関する本は、ともすると政治がメインテーマとなる本も多いといえますが、本書では文化も含む沖縄の歴史を多方面から見つめ直すことができるのです。
沖縄の今の問題を辿っていく上で、戦後の沖縄の歴史を知ることは欠かせません。基地問題や写真、そして政治・経済・文化と多角的な視座から、ぜひ戦後の沖縄史を学んでみてください。