樹なつみのおすすめ漫画ランキングベスト5!色褪せない名作少女漫画

更新:2021.12.18

カッコイイSFというのは、意外に少女漫画では少ない作風です。叙情的なSF少女漫画も捨てがたいですが、男性にも自信を持っておすすめできるSFものを多く生み出してきた、樹なつみの作品をご紹介します。

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今なお輝くその魅力、樹なつみの描くヒーローたち

樹なつみは1993年に『OZ』で星雲賞を受賞し、1997年には『八雲立つ』で講談社漫画賞を受賞しました。1979年のデビューから、現在に至るまで人気作を生み出し続けています。

樹なつみの作品は、緻密で繊細、かつ壮大なストーリーが多いのが特長で、そのテーマは多岐にわたり、例えばオカルトものの『ヴァムピール』や『八雲立つ』、SF作品の『OZ』や『獣王星』など、さまざまです。そういった壮大なテーマでありながら、少女漫画らしい絵が魅力的。さらに、男性キャラクターの設定や描き方には定評があり、女性のあまり登場しない人気作も多くあります。

さらに、樹なつみの少女漫画は映像化されることも多く、『八雲立つ』や『花咲ける青少年』、『OZ』等はアニメ化や舞台化され、さらなる新たなファン層を広げることにつながっているのです。


『八雲立つ』については<『八雲立つ』の魅力をラスト、続編までネタバレ紹介!無料で読める!>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

5位:人外好きな貴方におすすめ、愛を描くSF少女漫画

これぞSF少女漫画、といえる樹なつみの『デーモン聖典』をご紹介します。

近未来で蔓延する病、逆行症候群(リターン・シンドローム)。それは瞬く間に生まれた時まで肉体が若返り、姿を消してしまうというものです。主人公は、その病に侵された少女・りなと、その双子の妹・もな。実は未知の生命体との接触が原因となるこの病(現象)ですが、突然現れた青年・ミカにより、亡き母とりなの逆行症候群の因果を知らされます。

別次元から襲来する生命体のデーモンと、それを唯一従わせることができる「鎖」。亡き母も、その何十万から何百万人に一人という稀な存在であったと知らされたもなもまた、新たな「鎖」としてデーモンを召喚することになります。K2と名付けられたデーモンと彼女の絆が深まる中、世界の存亡へと物語は進みますが、果たしてデーモンの目的とは、「鎖」の役割とは何なのでしょうか?

著者
樹 なつみ
出版日
2003-08-05

科学では解明できない存在に人類が直面し、存亡をかけて戦うというSFらしい壮大な物語の少女漫画です。デーモンの設定や研究機関による解明、克服の鍵となる「鎖」との関係などが非常に細かく作りこまれ、全11巻を読み終わったあとにはヘトヘトになってしまうかもしれません。そのくらいの情報量です!

未知の存在・デーモンを唯一従えることのできる「鎖」の中には、さらに特別な「聖典(サクリード)」が存在するのです。序盤では、デーモンであるミカと、聖典であるもなの母とのセンチメンタルで美しい絆が描かれています。しかし巻を追うごとに、ただ美しいだけではないデーモンとの関わりやその残酷さ、哀しさが克明に描写され、絆とは何なのか、考えさせられるでしょう。

りなともなの保護者として登場する忍がこの漫画のキーマンとなります。1巻の始まりから、りなともなのどちらかとくっつくのでは……という少女漫画的要員なのかと思いきや、もはや主人公なのかもしれない?という思えるほど重要な存在でした。これから読む方、最後に伏線が綺麗に回収されていきますから、彼をマークしておくと読み終わった時に感嘆するかもしれませんよ。

4位:闘う本能と、生きていく希望を描く

第4位は、樹なつみの壮大なSF少女漫画『獣王星』。アニメ化され、主人公・トールの青年期には、声優に堂本光一がキャスティングされました。

西暦2436年、コロニー「ユノ」で暮らす少年・トール。双子の弟ラーイとともにエリート一家の一員として送る幸せな日々は、突如終わりを迎えます。両親が殺害され、死刑相当の罪人が送られる惑星「キマエラ」へ落とされてしまうのです。

「獣王星」とも呼ばれるキマエラは、「獣王」をトップとして争い合う弱肉強食の世界。その中で這い上がり、台頭していくトール。しかし、彼の出生には、人類の存亡をかけた重大な秘密が隠されていて……。

彼が獣王となるまでを中心に描く1部と、彼が獣王星の謎に迫る2部で構成されています。

著者
樹 なつみ
出版日

子供たちの弱肉強食サバイバルサスペンスである、1部。大人は子供を産み捨て、食い扶持を稼げなければグループ内から殴る蹴るといった、容赦ない制裁を受けるという……過酷な世界です。

ラーイとトールはおぼっちゃんでしたが、病弱なラーイにかわってトールが抜群の適応力でなんと人殺しをするまでになってしまいます。トールは罪悪感を覚えながらも「仕方がない」と割り切れるところに、ヒーローとして大丈夫かと思いながらも、その行動には頷くしかないのです。なぜなら、過酷さが伝わる描写がとにかく凄いから。

謎が明かされていく2部は、「希望」を描く章。1部で出てきた主要人物がそれぞれに希望を抱きますが、それをへし折られ、また諦めずにもがきます。それでもやはり失敗し、次々に死んだり傷ついたり……ここからは怒涛の展開なので、覚悟を持って読みましょう。特にトールを支え、獣王へと押し上げた謎の男・サードの望みが切なくて……彼のラストは号泣必至です。

人類の希望によって、またそのために生まれた、トール。彼自身の希望がその腕に抱かれたところで、物語は終わりを迎えるのです。

3位:新撰組ってこんなだっけ?まさかの食漫画

樹なつみ作品にはこんなものもありますよ!第3位『一の食卓』。

明治4年、まだまだ珍しいパン屋で西洋料理人を目指す少女・明は、ある男と出会います。男の名前は藤田五郎といいましたが、その正体はなんと!あの新選組の斎藤一でした。

どうやら彼にはある使命があるようですが、明のお師匠・フェリに侍として気に入られ、パン屋で働くことになります。原田佐之助をはじめ、新選組の元隊士や彼らの過去も登場する、グルメを練りこんだ一風変わった新選組ものです。

著者
樹なつみ
出版日
2015-03-05

壮大なSF作品も多い中やや異色な本作は、ひとことで言えば、とても楽しい物語になっています。

美形で誠実ってあまり斎藤一像としては聞きませんが、これが非常に魅力的。ヒロイン・明に惚れるシーンなどは、女性はきゅんとくるのではないでしょうか。出てくるパンも、どれも美味しそうです。

2巻から原田佐之助が登場しますが、それ以降は過去編として佐之助、一ら隊士の情熱や後悔も描かれます。新撰組作品は他にもたくさんありますので、読まれた方も多いでしょうが、「こうくるか!」という印象でまた楽しめるでしょう。

老若男女問わず、気負わずに楽しく読める樹なつみの作品です。

2位:どのヒーローも選べない!格好いいってこういうこと

少女漫画だけで選んだら文句なしに1位!樹なつみの『花咲ける青少年』をご紹介。

主人公・花鹿は、父親のある思惑から世間から隔絶された孤島で育てられます。14歳になったある日、父親が持ちかけてきたのは候補者の中から夫を探すというゲーム。そのゲーム終了後には、花鹿の背負う宿命を話すというのです。幼いころから花鹿を見守ってきた青年・立人とともに、世界に踏み出す花鹿。出会った3人の候補者達は魅力に溢れていますが、影と弱さを併せ持ち、様々な事件に直面します。

立人との関係も変化していく中、最後に花鹿が選ぶのは誰なのでしょうか?

著者
樹 なつみ
出版日

飄々として普段は斜に構えているようなのに、その本質は情熱的で誠実。愛する人のためならば、何をおいても助けにいく……!そんな樹なつみ作品的ヒーローの魅力があちこちで大爆発するのがこの少女漫画です。

危険な程魅力的なのに、ある意味不器用なユージィンや太陽のようなカリスマ性を持つルマティ。また、心を理解してくれるカールに、包容力のある兄的ポジションなのに時々熱く強引な立人……どのキャラクターも女性からの人気は絶大です。

王子であるルマティに関わるクーデター騒ぎや大財閥同士の駆け引きなど、緻密なストーリー運びはさすがの一言ですが、何よりこの樹なつみの少女漫画には恋するようにときめいていただきたいものです。

各キャラクターの名言も随所に登場しますので、是非お手元に置いて何度も読み返してみてはいかがでしょうか。

1位:プログラムじゃない、この熱いきもち

そして1位は、『OZ』。星雲賞を受賞、アニメ、舞台化された、少女漫画の枠を超えた樹なつみの名作です。

核戦争によって荒廃した未来で、傭兵ムトーは天才科学者である少女・フェリシアを護衛し、一体のサイバノイドを連れてある場所を目指すことになります。その都市の名は「OZ」。この暗い世界で唯一の理想郷のような、伝説の場所なのでした……。

サイバノイド・1019には役割があり、その他にも登場する多くのバイオロイドたちの創造主である、フェリシアの兄であるリオンの命を受けて一行の元へ現れたのです。兄・リオンの狂気を感じながらも、旅をともにするムトーに心惹かれていくフェリシア。ただの人形であるはずの1019には、不可解な感情ともいうべき揺らぎが見え始め、やがて真の「OZ」の姿とリオンの目的が人類の未来へ影を落とし、ムトーらはそれに向かっていくことになります。

著者
樹 なつみ
出版日
2004-11-05

ロボットは、人間を害さない。ロボットには、愛が分からない。ロボットの行動は全てがプログラムである……多くのSF作品はこれらを否定し、ロボットがまるで人間のようになり、人間と心を通わせるという筋書きが多いですが、大雑把に言えばこの作品もその一つ。

そう分かっていても、人間になりたいと思う女型のサイバロイドの一生懸命さや、そんな彼女をいつの間にか本当に愛してしまう男・ネイトなどが登場し、何度読んでも涙がこみ上げてしまいます。とてもありがちとは思えないこの感動は、やはり樹なつみ作品ならではの丁寧で繊細なキャラクター造形によるものなのでしょう。

世界の名作「オズの魔法使い」では、願いを叶えたあとのドロシーは仲間たちと離れますが、この物語でも皆一緒にハッピーエンドとはなりません。悪が去り問題が解決したように見えても、もうみんなで旅に出ることがないと思うとなおさら過去が切なく思い返されてくるものです。

結末まで読んだ後、始まりからもう一度読まずにはいられなくなるでしょう。

一作一作が、良質の映画のように印象的なシーンを残すものばかりです。長いおやすみがとれたら、是非一気読みしてみてはいかがでしょうか。おすすめの樹なつみ作品をご紹介しました。

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