親が知るべき9つのいじめの対策法!定義や原因、自治体の取り組みも紹介

更新:2021.12.3

2015年度に全国の学校で認知された「いじめ」の件数は、22万件と過去最多でした。そもそも「いじめ」はどのように定義され、その対策としてはどのようなものがあるのでしょうか。

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いじめの原因とは?なぜ起こってしまうのか?

いじめが起こってしまう原因は様々ですが、「家庭環境」が大きく影響しているといわれています。いじめる側の子供は、人格形成の時期に、親が冷たかったり、子供に無関心であったり、問題が起こったら力技で片付けなさいなど教えられてる家庭環境の傾向があるようです。このような家庭環境の下で育った子供は、言葉での暴力や手や足を使って問題を解決するようになります。

また、親の重度な過保護や過干渉も影響するそうです。子供のしたいこと、やりたいことを好き放題させてあげていると、子供は自分は何もかも思う通りに出来ると勘違いし、態度が傲慢になり、我慢をすることを知らない子供になってしまいます。それにより、友達との交流の中でも我慢をすることが出来ず、怒りをあらわにし、いじめへと発展することがあるのです。

一方、いじめられる側の子供も、家庭環境が引き金でいじめられるようになることがあります。家庭で協調性を教えない環境で育った子、子供の清潔さに無関心の親、親の職業などが、いじめを引き起こす原因として考えられるでしょう。

もちろん子供自身の悪口を言ったなどの行動がきっかけでいじめが起こることもあります。しかし、家庭環境がいじめの原因に深く関係していることを、親は認識しなければいけないでしょう。

そのために、いじめの定義から、自治体の動き、親が知るべき対策法を紹介する3冊を紹介します。

「いじめ」の定義とは

2013年に施行された、いじめ防止対策推進法。同法では、いじめの調査や防止対策の徹底などを定めており、以下のようにいじめを定義しています。

「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」

すなわち、いじめか否かという判断は《いじめを受けたという子どもの立場に立って行われるもの》なのです。

著者
森田 洋司
出版日

また定義には「インターネットを通じて行われるものを含む」と書かれています。近年問題となっているインターネットを使用した「いじめ」について、『いじめとは何か―教室の問題、社会の問題』では、以下のように述べられています。

「インターネットへの書き込みは、直接の人間関係がない人でも見ることができ、どれだけの人が見たのかを確認することが不可能である。その被害は予想以上に広がっている場合があり、被害者の不安も大きい。(中略)携帯メールやインターネットへの書き込みは、いつでも、どこでも、切れ目なく飛び込んでくるため、被害を回避できない状況に相手を追い込む」(p. 81)

本書が出版された年は、2010年。そこから情報テクノロジーはますます発展を遂げ、問題は複雑化しているでしょう。

大津いじめ自殺事件の教訓を生かす自治体の動きとは

冒頭で触れた、いじめ防止対策推進法。同法の成立は、2011年10月に起きた「大津市中2いじめ自殺事件」がきっかけでした。この事件では、過酷な「いじめ」を苦に、中学2年生の男子生徒が自らの命を絶っています。

それから約3ヶ月後、大津市に越直美(こしなおみ)という市長が誕生しました。事件後に就任した知事ですが、直接利害を持たない第三者によって構成される「第三者調査委員会」を設け、大津いじめ自殺事件について徹底した調査を導いた人物です。

その越直美がいじめについて語ったのが本書です。

著者
越 直美
出版日
2014-10-08

『教室のいじめとたたかう -大津いじめ事件・女性市長の改革』によれば、大津市では独自のいじめ対策が2013年からスタート。2014年からは、前掲書でも触れられていたインターネット上のいじめ対策にも取り組むようになったといいます。

再発防止に向けて、どのような取り組みを大津市が行っているのか、また大津で起きたいじめ事件について問題になった教育委員会の隠蔽体質の背景などにも迫っていきます。

さらに「いじめ問題に強い意志を持って取り組む礎(同書より引用)」になったという自身のいじめ体験、転機となったアメリカ留学などニュースなどでは見えてこないであろう著者の姿が読み取れることでしょう。

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・補足①:2017年2月、大津市の教育委員会は、被害者側がいじめ調査報告書の公表を求めた場合には、調査報告書を公表することを決定。それまでは、プライバシーを保護するという点から原則非公開でしたが、2015年9月にいじめによって不登校となった児童の家族の意向を受けて、その方針を転換させました(参考:毎日新聞「いじめ調査報告、公表へ 被害者側が望んだ場合 方針転換 /滋賀」、2017年2月22日)。

・補足②:2017年4月、大津市の市立中でいじめを行った加害者生徒に対して、学校側が「いじめ」行為だとは伝えずに指導(代わりに「相手は傷ついている」などと指導)を行い、いじめが止まなかったことが報じられました。なお学校側は、いじめ事案とは認定しており、クラス分けや、校内接触を避けさせることを目的とした教諭による監視といった対応をとっていました(参考:京都新聞「『いじめ』指摘せず生徒指導、被害止まず 大津の市立中」、2017年4月8日)。

親が知るべき9つの対策法を紹介!

いじめられている子どもの親は、どのような対策をたてることができるのでしょうか。『教室の悪魔』では、親がが取り組める9つの対策が述べられています。

陰湿化しているいじめの実態を追求すると同時に、いじめの被害をなくすべく、大人がするべきことは何かを説いています。

お子さんをお持ちの方には、必読してほしい1冊です。

 

著者
山脇 由貴子
出版日
2006-12-21

①子どもがいじめにあっていると感じられた場合には、ためらうことなく学校を休ませる

②学校を休むことは身の安全のためであり、いじめ問題が解決するまでは学校に行く必要はないことを保護者のメッセージとしてきちんと伝える(保護者は絶対に味方であることを理解してもらう)

③学校を休ませるだけではなく、加害者との接触を避けさせるため、一人では外出をさせない(友人や同級生との接触も控える)

④無理に、いじめについて聞き出さない

⑤学校を休ませた後、家の中では暗くならず、子どもとは楽しい時間をたっぷり過ごす

⑥いじめられた子どもの話を全て受け止め、それを真実として扱う

⑦人が誰かからいじめられる理由は存在しないので、保護者の側もいじめられる側に原因があると考えない

⑧いじめは犯罪なので、立ち向かわせたり耐えさせたりさせない

⑨保護者が学校に相談に行く場合には、子どもに必ず許可をとる

その他にも、いじめをなくすための具体的な対策、いじめに気づくチェックリストなども載っています。

また第2章では、過酷ないじめの事例も確認できます。児童相談所で心理司として働き、いじめに関する相談も受けているという著者だからこそ提供できる情報が詰まった1冊といえるでしょう。

社会問題化している「いじめ」。いじめの定義や現状を改めて知りながら、「いじめ」のない社会を目指していく必要があります。ぜひ紹介した3冊を読んで、いじめについて再度考えてみてください。

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