老若男女問わず人気の登山を題材にした漫画ランキングベスト10です。ほのぼのとした山ガールのお話から、緊張感溢れる命を掛けたクライマーたちの話まで、幅の広いジャンルとなっています。これを読んだら、あなたも山に登りたくなるかも?
ゆるふわアウトドア漫画と称される『ヤマノススメ』は、女子高生の主人公あおいが幼馴染のひなたと一緒に登山に挑戦する物語です。同時に、山登りを通じていろいろな人とも繋がり、あおいの成長も感じることができます。
可愛い少女たちが懸命に山を登るストーリーはどこかほのぼのとしていて、まったりと楽しみながら読むことができる作品になっていて、アニメ化もされるほどの人気登山漫画です。
- 著者
- しろ
- 出版日
- 2012-06-12
高校生になった主人公の雪村あおいは、幼い頃に幼馴染の倉上ひなたとした約束をすっかりと忘れてしまっていました。ひなたとは中学校時代に疎遠になってしまっていて、インドア派で内気な性格のあおいには仲のいい友達もいません。そんなあおいの元に、偶然にも同じ高校に入学したというひなたが現れます。ひなたは、あおいとの約束を覚えていて、一緒に山登りに行こうと誘いました。
二人が幼い頃に交わした約束は、高校生になったら二人で登山をしようというものだったのです。しかし、インドア派のあおいは全く乗り気ではありませんでした。あおいは強引にひなたの実家に連れていかれ、ひなたの家でテントを組み立てることに。そしてそのテントの中から見た夕日に当時幼かったころに見た山からの美しい景色を思い出し、山登りを決意します。
本作の魅力は、なんといってもこの可愛い絵、そして本格的な登山の描写です。登山グッズなどに関してもしっかりと説明がなされていて、経験をしたことがない人でも、とても入り込みやすい設定になっています。今まであまり興味がなかった人にも、『ヤマノススメ』は読みやすいのでおすすめですよ。
上下巻からなる、登山を題材とした連作漫画『岳人列伝』。岳人と書いてクライマーと読みます。短編8話からなる短編集ですが、ところどころで同じ登場人物が出ることも。短い作品ながらも、山登りとはなにか、人生とはなにかを考えさせられる本格派の登山漫画です。
- 著者
- 村上 もとか
- 出版日
- 2011-05-14
エベレスト南西壁、プチドリュ北壁、グランド・ジョラス、K2北西稜などに挑むさまざまなクライマー達の物語です。この物語は、命を掛けてまで山に情熱を燃やす人や、生まれながらにして、山と共に生きる宿命を持った人たちの話で、山岳漫画の金字塔とも評されています。
山の偉大さ、美しさ、そしてあまりにも無慈悲な恐ろしさに挑み続ける男たち、そしてその帰りを待つ家族の心情が見事に描かれた作品です。
なぜクライマーたちは生死を掛けて山に登るのか。そこになんの意味があるのか。多分意味なんてものはないのでしょう。「なぜなら、そこに山があるから」という言葉をよく耳にしますが、この作品を読むと本当にそうなんだな、と心から感じることができます。様々な男たちの人生を掛けた登山の物語、ぜひ一度ご覧ください。
『しずかの山』は、ネパールにあるヒマラヤ山脈のナムチェ・バザールが舞台。そこで山岳ガイドとして暮らしている、日本人登山家・高遠静がガイドとして出会う様々な人間の葛藤のドラマを描いた物語です。
全3巻と読みやすく、かつ密度の濃い作品になっています。
- 著者
- 松本 剛
- 出版日
- 2010-03-23
物語は大きく3編に分かれていて、一つ目は、神の山として入山が禁止されているマチャプチャレが舞台です。マチャプチャレで消息を絶った息子モーリスを探してほしいという依頼を受けた高遠は、モーリスと同じ時期にマチャプチャレに単独で登頂したというアルピニスト、ジアンとともに神の山に挑みました。当初、ジアンはモーリスのことは知らないと言っていましたが、襲いかかる危機を静とともに命がけでかいくぐり、山頂を目指して進むうちに、ジアンとモーリスの二人に何があったのか、真実が明らかになっていきます。
二つ目では、若き天才アルピニスト間宮勇也が企画したアンナプルナ登頂に、ひょんなことからポーターとして参加していましたが、その後急遽シェルパとして帯同することになりました。そしてこの話では、日本人である高遠がなぜネパールで山岳ガイドの仕事をしながら生活をしているのかについての謎が明らかになっていきます。
そして3つ目は、アフガンゲリラに拉致された日本人を救助する為、医師を装ってナンガ・パルバットの麓にいると思われるゲリラのもとへ潜入するという話です。最後の最後でとてつもなくスケールの大きい話になりました。
この登山漫画のキャッチコピーにもなっている、「山は巨大な密室だ」という意味は『しずかの山』を読めば納得できるはずです。
主人公は「山ガール」と呼ばれることを嫌い、単独登山女子を自称する、27歳会社員の日々野鮎美です。彼女が山を登り、山頂で食事をするエピソードを基本に、会社勤めの日常の人間関係や悩み、山を通じて様々な登山者と出会う漫画です。
- 著者
- 信濃川 日出雄
- 出版日
基本的には1話完結の読切形式ですが、ときどき連続したストーリーもあります。登山入門編としてはとても親切な作りになっており、その中に出てくるアウトドア料理や飲み物などがとても美味しそうに描かれていて、それだけでも山を登ってみたくなる作品になっています。
例えば、山頂にて、道中で汲んだ湧き水を利用してコーヒーを煎れるシーンがあるのですが、それだけでも登山をしてみたい、と思える程によく描写されていてグルメ漫画としても楽しめます。
本格山岳漫画のハラハラドキドキもとても面白いですが、たまにはほっこり癒される『山と食欲と私』で息抜きもいかがでしょうか。
月刊誌「山と渓谷」にて1993年から掲載されている漫画『でこでこてっぺん』は、作者自身が山を登る女性ということで、エッセイのような分類の作品。それだけに山でのあるあるネタ等が実にリアルで多くの人に愛されているのです。
- 著者
- ゲキ
- 出版日
- 2010-03-05
奥深くハードでマニアックな山の情報まで扱っている為、一般的なコミックエッセイとはちょっと違うと評判です。1ページ完結で、山にかかわる様々な情報が発信されているのですが、中には怪談ものの話からトイレや山小屋でのこと、骨折してしまった話など、本当に多岐に渡る内容となっています。
また、長期連載によるエッセイなので、途中で妊娠をしたため山に登れなくなるなど、作者自身の人生も垣間見ることができます。怪談ものの幽霊の話なんかは、経験者が話しているだけに、さすがに怖いですね。ここだけ切り取ったら、山には行きたくないと思ってしまうかもしれません。
ただ、コメディー要素を多く含む本作だけに、読んでいて思わず笑みが生まれます。登山が好きな人が笑えるエピソードから、登山をしたことがない人でも笑えるエピソードまでありますので、どうぞこの山エッセイを読んでみて下さい。
『高尾の天狗と脱・ハイヒール』は、主人公ノリコが、軽い気持ちで訪れた高尾山を舞台とした、登山が題材の4コマ漫画です。
寿退社を前提にして3年間交際していた彼氏に、ワガママな性格を理由に振られてしまったノリコは、海外へ傷心旅行に行くことを思い立ちました。しかし、ノリコはそんなお金を持っておらず、結局職場のある新宿から電車で50分で行ける高尾山に向かいます。
- 著者
- 氷堂 リョージ
- 出版日
- 2015-01-17
高尾山といえば、年間登山者数が世界一を誇る、東京都八王子市にある山ですね。天狗が住む山としても有名なのだとか。
そんな山に軽い気持ちで訪れたノリコですが、なんとハイヒールを履いてきてしまいました。いくら高尾山といえどもハイヒールで軽々と登れる山な訳はなく、山の中腹にある寺院で疲れ果ててしまいます。そんなノリコの前に、なんと天狗の親子が出現するのです。
天狗の親子に出会ったことにより、ノリコはどんどんと高尾山にハマっていき、山に必要な装備や心構えなどのスキルが徐々に上がっていきます。ストーリーが進むにつれ、ノリコの格好がどんどんと本格的になっていくのは見ものです。
また、高尾山が舞台ということもあり、高尾山の四季の雰囲気を知ることができたり、季節に合わせたイベント情報も把握できたりします。
舞台が高尾山というところ、主人公が登山に関して全くの無知というところからも、これから登山を始めようとする方の指南書にも成り得る作品です。
『孤高の人』は、実在する登山家の加藤文太郎の生涯を、実際の登山記録に基づき作られた新田次郎の小説を原案とし作られた漫画です。小説を原案としているものの、小説とは大きく異なった物語が展開され、時代背景も違います。
絵がとても綺麗で、高所の描写などでは思わず手に汗を握る程にリアリティを感じられるでしょう。
- 著者
- 坂本 眞一
- 出版日
- 2008-04-18
主人公の森文太郎は、過去のある事件から他人に対して心を閉ざしていました。しかし、転校先の高校でルートクライミングに触れたことで、彼の人生は大きく変わり始めます。
人付き合いが苦手で不器用な森は、とにかく誰とも関わらずに一人で生きていたいと望んでいました。しかし、ひょんなことから出会った登山で、険しい山の上なら独りになれることに気づきます。そして彼は、非常に険しく高い山K2登頂を目指すことを夢見るようになるのです。
ところが、山を登る為には装備などでたくさんのお金が掛かります。森はお金を稼ぐために働くようになるのですが、社会に馴染めず、人と接することを余計に嫌うようになってしまいました。
そんな森が一人になれる唯一の場所が山。自身の奥深くの心情や山との会話を繰り返し、ストイックに山に登り続けます。登山家の方たちが山に登っている時、こういう風に自分と向き合っているのかなと感じることができたり、現代社会の不条理を感じることができたりと、読んでいていろいろと考えさせられることが多い作品です。
もちろん、登山家の人たちがみんな同じ考えではないでしょうが、森のような人もいるのも事実でしょうし、森の心の奥深くを覗き見れる本作はとても素晴らしい物語なので、おすすめですよ。
『孤高の人』については<漫画『孤高の人』が面白い!見所をネタバレ紹介!最終回の結末は?>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
『人生山あり谷口』は、谷口菜津子のエッセイ4コマ漫画です。休みの日に植物園や庭園を訪れていた作者が自由に生い茂る草木や絶景を見たいと思い、登山を始めるところからストーリーが始まります。
- 著者
- 谷口菜津子
- 出版日
- 2015-10-09
たいした装備もせず15時出発と大分遅めの出発で痛い思いをした初登山の高尾山から少しずつ登山を学び、登山グッズも手に入れて登山に挑戦する著者。猛暑と孤独と戦った頭高山、滑落しそうになった御岳山、体力のなさに直面した大山、膀胱のキャパと戦う岩殿山など、あちこちの山に登った体験を描かれています。
正直、これなら自分でも楽に出来るのではないか、と思う程に楽しむ読めるギャグ漫画。4コマということもあり、おもしろおかしいエピソードばかりで話が進んでいくため、本当に楽しくストーリーが進んでいくのです。初心者が陥りそうな失敗、しかし実際に経験したら大変だろうと思えるようなエピソードも、本作で読んだらおもしろエピソードに変わってしまいます。
ケラケラと笑いながら読める、登山漫画『人生山あり谷口』はサクッと読めてしまうので、空いた時間におすすめです。
実写映画化もされている、山岳救助隊の物語『岳』。基本的に1話読切で進行する為、大変読みやすい作品になっています。
『岳』は、山岳救助隊が様々な現場を経験し、厳しい現実に悩み葛藤しつつもしっかりと向き合い、プロとして成長していく物語です。救助そのものだけでなく、山の安全に関わる人や山を訪れる人たちとの交流などの人間模様や山が持つ魅力なども細かに描かれています。
- 著者
- 石塚 真一
- 出版日
- 2005-04-26
若くして世界の名峰に登頂し、アメリカで山岳救助経験を積んだ主人公の島崎三歩は、日本へ戻り主に北アルプスで民間山岳救助ボランティアとして活動しています。そんな彼のもとに、長野県警山岳遭難救助隊の新人としてやってきた椎名久美が、三歩と山岳救助隊チーフの野田の元、他のメンバーとともに山岳救助のプロとして成長していくのです。
三歩の仕事は山での遭難者を一刻も早く見つけ出し救出すること。豪雪の中で救助に向かうことも珍しくなく、ここまでに助けないといけない、というタイムリミットもあります。そんな中、助けられる人もいれば、どうしても助けられない人も。発見した遭難者を担いで搬送している最中に亡くなってしまうこともあるのです。
そういった修羅場を幾度となく経験している三歩だからこそ、常に冷静で迷うことなく明るく強く直面する非常事態に向き合います。そして、そのたびごとに三歩が発する数々の言葉に心が救われるでしょう。
大抵の人が関わったことがないであろう山岳救助隊ですが、本作ではその姿がたいへん細かく描かれているので、彼らがどのように救助をしているのか、山とはどのような場所なのかがよく分かります。そして、とてもリアルに描かれている為、山の恐ろしさがまじまじと伝わってくるのです。では、なぜ人はそんなにも恐ろしい場所に足を向けるのか。その答えが『岳』の中にあるような気がします。
夢枕獏の小説が原作の『神々の山嶺』は実写映画化もされている人気作品。漫画版は全5巻完結ですが、かなり密度の濃い物語になっています。
- 著者
- ["谷口 ジロー", "夢枕 獏"]
- 出版日
- 2006-10-18
主人公のクライマー兼カメラマンである深町誠は、エベレスト遠征の際にカトマンドゥにある古道具屋で偶然年代物のカメラを見つけました。それはイギリス人登山家ジョージ・マロリーが1924年のエベレスト遠征時に持参していたカメラでした。「マロリーはエベレストに登頂成功したのか?」という謎を明かす可能性のあるカメラを軸にストーリーは進んでいきます。
そして本作では、もう一人の主人公、岩壁登攀に天賊の才を持つ孤高のクライマー羽生丈二が登場するのです。協調性がなく、なによりも登山を優先させるその生き様のため、彼につくザイルパートナーは長続きしません。さらには過去に起こった事件を引きずり、単独登攀を好むようになっていきました。
その後いろいろとあり、ネパールに滞在しシェルパとして働きながらエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂を計画していたのですが、その間に偶然発見したマロニーの遺体とカメラが縁となり深町と出会うことになります。
もちろん、マロニーの謎だけが本作のストーリーではありません。そこはやはり登山漫画、この作品の素晴らしいところは、なんといっても主人公達の心理描写が秀逸なところ。山に登っているとき、彼らは自分自身と会話をしています。なぜ山に登るのだろう、なんの目的の為に生きているのだろう、そんな問いかけを続けながら登り続けるのです。
『神々の山嶺』を読んで思いました。山登りは人生だと。人間が生まれること生きていることに理由がないのと一緒で、山登りにも理由がないのです。それでも我々は生き続けます。そして彼らもまた山を登り続けるのです。
以上、登山漫画のおすすめベスト10を紹介させて頂きました。ゆるい気持ちで読めるものから、息詰まる本格派登山漫画までバラエティーに富むラインアップとなりましたが、あなたに合った作品が見つかれば嬉しいです。