なんだか変なところに来てしまったーー。そんな感覚から始まったのに、読み進めるうちにいつの間にか物語のすべてを信じ込んでしまっていることがよくあります。 ファンタジー、作り話、物語、嘘。事実と真実は似ているようで別物。人によって作られた物語が真実に触れることができる。そんな瞬間に出会ったことが何度もありました。今回はそんな物語の本棚からオススメしたい5冊を、ご紹介します。
月が窓から、貧しい絵描きに話し掛ける。地球の周りを巡って見てきた物語を月は絵描きに、いつも語ってくれるのです。ほんとうに月が見てきたお話しなのだと信じ込んでしまうくらい、限りなく近くて限りなく遠い、人間の悩みも喜びもすべてを包み込んでしまうような月の視点を、ここにある沢山の短い物語たちから感じ取ることができます。
- 著者
- アンデルセン
- 出版日
- 1952-08-19
天衣無縫の作り話。姫草ユリ子は虚構の天才であり、自ら紡ぎ出した虚構の中に生きていました。嘘の話を進めながら増していくユリ子の美しい目の光に、彼女にとっての虚構が純粋な生きがいであり、芸術であったのだと、納得させられてしまった。そして作り出した地獄に、遺した一枚の手紙は、自ら創作した彼女の物語のクライマックスでもあり、最後まで虚構の中に死んでいった証のようでもありました。
- 著者
- 夢野 久作
- 出版日
- 1976-11-29
タイミング良くいろんなことが起きて、自分が何かに導かれているような感覚になることってありませんか。小説を読み始めてすぐ、なんだか変な所に来てしまったと思ったら、そんな導かれる感覚とともにいつの間にか物語の世界にすっかり馴染んで入り込んでしまいます。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
- 1995-04-06
さりげないファンタジーの世界に連れて行ってくれる、絵本のような小説のような物語。孤独で美しく、ひどい嘘つきの女の子“しおん”は、嘘を物語と呼び、次々にその物語を友達である“私”に語り掛けます。そして、物語の中にしか真実は存在しないと言うのです。守屋恵子さんの素敵な挿絵が、この本を読んでいる時の掴み所のない不思議な感覚を、さらに高めてくれます。
- 著者
- 江國 香織
- 出版日
ほとんどのカモメにとって、重要なのは、飛ぶことではなく食べることだった。でもカモメのジョナサンにとって重要なことは、食べることよりも飛ぶことそれ自体だったのです。何か一つのことを極めるということ、それを好きとしている人にとってはとても実感と重なるところの多い物語だと思います。
- 著者
- リチャード バック
- 出版日
- 2015-06-26
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。