初めてWebサイトを制作する前に読んでおきたい参考書3冊

更新:2021.12.6

マーケティングに欠かすことができない要素のひとつWebサイト。力の入れ具合の違いはあるかもしれませんが、ほとんどの組織がWebサイトをもっているかと思います。ただ、そのWebサイトが目指す成果につながっているかというと、いかがでしょうか? 成果が出ていないとしたら、その理由は何でしょうか? 今回は初めてWebサイトを制作、もしくはリニューアルするという方を対象に、取り組む前におさえておきたいポイントを学べる書籍を紹介します。お勧めの本は多くありますが、まずは土台となる「考え方」に焦点を当てます。

ブックカルテ リンク

意外と疎かにされがちな「情報の扱い」。でも、実は最も大切なことだと思います。

著者
長谷川 敦士
出版日
2009-10-28

「情報アーキテクチャ(以下、IA)」という言葉をご存知でしょうか?著者の言葉を借りてシンプルに紹介すると、「複雑な情報をわかりやすく伝えるための技術」のことです。

「情報をわかりやすく伝える」というと簡単に聞こえるかもしれません。ただ、「伝える」と「伝わる」は異なります。「伝わる」ためにわかりやすく「伝える」ことは、思いのほか難しいこと。「伝わる」確率を上げていくためにも、IAが大切なのです。

著者は、そのためにも3つの要素に対して理解を深めることが必要だとしています。まずはユーザー分析。ユーザーに対する理解を深めペルソナなどに落とし込み、Webサイトの設計やデザインなどが相応しいのか考える判断材料にします。次に、コンテンツ分析。既存コンテンツやコンテンツに使える材料などをリスト化し、グループ分けすることでそれぞれの関連性を整理。Webサイト全体をどう作るかを考える参考になりますし、既存コンテンツを移行する際の段取りもつけやすくなるでしょう。そして、コンテキスト分析。サイト構築の目的や予算などの制約を明らかにすることで、より目的にかなったWebサイトを構築できるようにしていきます。

それらを総合的に踏まえて、まずユーザーにWebサイトを通してどのような体験(何を感じ、どのような行動をとるかなど)を提供したいかを考え、それを実現するためにどのようにWebサイトの骨組みを設計するか、サイト内の導線をどうするか、導線となるメニューやボタンの名称などをどうするかを決め、各ページの構成を落とし込んでいきます。

このようにすることで自身の意図通りに情報を提示でき、ユーザーも自分が必要とする情報を探せて役立つWebサイトを構築できる可能性が高くなります。また、Webサイトは時が経つにつれて新たなコンテンツが増えていくことになると思いますが、その際も最初にこうして整理しておくことで、カオスと化すことを防ぐことができます。

IAの流れの全体像を俯瞰しつつ、それぞれのプロセスでどのようなことを考えればいいか概要がわかりやすくまとめられているのが本著。まず流れを理解する上では参考になる本だと思います。

なお、ユーザー分析については以前私が書籍を記事にまとめておりました。内容をご覧になられたい方は、プロフィールの私の名前をクリックして私の本棚をご確認ください。

Webサイトは作ったら終わりではない!PDCAをまわして継続的に改善を!!

著者
小川 卓
出版日
2012-03-22

苦労して作り上げたWebサイト。自分の子を送り出すような想いで実際に公開してみると、思ったような成果につながらないということも…。それもそのはず、情報を収集・整理して作り上げたとはいっても、それは「こんなWebサイトにしたらいいのではないか」と仮説にもとづいたもの。目的を果たすためにも、仮説を検証しながらWebサイトの長所・短所を見極め、長所は伸ばし、短所は補い続けていく必要があります。次は、しっかりとWebサイトを育て上げていく段階です。

ご事情は様々かと思いますが、作ったらそのまま放置、あるいは更新していても「お知らせ」部分のみということは意外とよくあるものです。

その理由がWebサイトの効果検証の方法や視点、次のアクションへの活かし方がわからないことによるものであれば、Google Analyticsなどよく使われるツールに直結したポイントを学べる良書も多数ありますが、まずはツール問わず基本となる考え方を学ぶことをお勧めします。その際に参考になる書籍のひとつが本著。

ツールに関する情報は現在すでに内容が変わっているものもありますが、分析に必要な考え方は不変(少なくても現時点では)。Webサイトの目的・目標にあたる「KGI(Key Goal Indicator:経営目標達成指標)」やそれを達成するための「CSF(Critical Success Factor:重要性好要因)」「KPI(Key Performance Indicator:業務評価指標)」の設定方法や考え方から、アクセス分析で使われる指標の内容、分析・レポーティングをするための統計やグラフの基礎知識、分析の切り口を体系的に学ぶことができます。初めてのうちは少し難しく感じるかもしれませんが、まずはこれらをもとに取り組むことでPDCAをまわしやすくなるのではないでしょうか。

また、本著では分析方法の解説以外にも、集客施策やその最適化のための考え方も解説されています。せっかくWebサイトをつくっても見てもらえないと意味がありません(ただ集客すればいいというわけでもないですが)。ご自身の目的を果たすためにはどのような集客施策が考えられるのか。この点も併せて考えてみると、より成果に近づくのではないでしょうか。

忙しい中で、いかに実行する時間を確保するか。

著者
村中 剛志
出版日
2008-03-27

マーケティングについて勉強をしていて「やる必要があるのはわかるけど、忙しくてできない…。」と思ったことはないでしょうか。特に、少ない人数でマーケティングをしていたり、ひとりで複数業務を兼務していたりする場合などは尚更です。自分もずっとそのような状況にい続けてきたので、お気持ちはよくわかります。

仕事をしていく中で時間がない理由は、上記のもの以外に何かありますでしょうか?急な上司からの依頼、社内や顧客とのトラブル、仕事のやり直しなども理由として考えられそうですね。

そのような状況の中で参考になるのが本著。「先読み力(起こりうる出来事・問題を推測・発見する力)」をつけ、先手を打ってこのような事態を回避することで、「自分のために投資する時間の確保」「目標の短期間での達成」「早いスピードでの成長」を実現できると著者は指摘しています。

その肝となる要素のひとつがタイムマネジメント。書籍の中で著者は、タイムマネジメント力を向上させるための手帳を使ったトレーニング方法を紹介しています。手帳を手元に用意したら、1日のタイムラインのうちまず半分に予定を書き込みます(縦型の場合は左半分、横型の場合は上半分)。そして、残り半分(縦型の場合は右半分、横型の場合は下半分)に実際にその行動を終えるのにかかった時間を書きます。

そして、先延ばしにしてしまった仕事には青で、予定せずに実行した仕事(予定していた時間内に終わらなかった仕事、もしくは想定外の仕事)には赤で印をつけます。そして、先手を打てたことには青い丸を、後手になってしまったことには赤い丸をつけていきます。これらを検証し、うまくいかなかったことに対して対策をすることで徐々に先手を打てるよう自身の行動を修正していくというものです。それを、1日から1週間へ、そして3週間まで範囲を広げてタイムマネジメントを試みていきます。

私もこの方法を取り入れてから1年以上が経ちますが、徐々に先手を打って仕事に取り組めるようになり、時間当たりのパフォーマンスが向上しました。時間の使い方の実績を「見える化」する効用は、意外とバカにならないものです。自分もまだまだですが…。

学びは実践で活かせてこそ。そのために必要な時間の確保、大変だと思いますがぜひご自身の業務内容を棚卸して確保されてください。行動の先に、成長ありです!(と、自分にも言い聞かせる…。)

Webサイトを作るときによくSEOについてアドバイスを求められることがあります。SEOもたしかにとても大切な要素ですが、Webサイトに対する基本的な考え方(もっと言うと、マーケティング全般に対する基本的な理解)がしっかりしているからこそ、その効果も出てくるもの。そのため、今回はSEOなどテクニック的な内容には触れずにすべてのベースになる考え方に絞って本を紹介しました。他にも、Webサイト関連で大切な要素はあるのですが、それらはまた別の機会にご紹介をさせていただこうかと思います。

なお、冒頭でWebサイトはマーケティングの要素のひとつとお伝えしましたが、Webサイトはマーケティング活動全体の中での位置づけや活用方法がとても大切だと思います。Webサイトだけに注目していると、部分最適に陥りがちです(敢えて部分最適に振り切るということも場合によってはありますが)。それを避けるためにも、マーケティング活動全体を俯瞰しながら、Webサイト制作に取り組まれると良いのではないでしょうか。

今回の記事以外にも、私がこれまでまとめてきた記事が少しでもそのお役に立てるようでしたら幸いです。過去の記事をご覧になられたい方は、プロフィールの私の名前をクリックして私の本棚をご確認ください。

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