「友情」という愛情の形
色々なところで取り上げられている本であり、芸能界をテーマに書かれていると聞いたので、手に取った作品です。9歳から一緒にいた、幼馴染みの河田大貴と鈴木真吾。ふたりは高校生の時に、読者モデルとして共に活動を始めます。しかし、真吾だけが華やかなステージへと登っていったことで、2人はすれ違ってしまいます。芸能界という場所をテーマに、友情とはどういうものなのか、人を想う気持ちの尊さを感じることができる作品です。
これは、読み終わるのに時間がかかったお話でした。面白くないわけではなく、ずっと歯がゆい感じがしていました、途中までは。真吾が自殺をしてしまってからの後半は、止まらずに一気に読み終えました。私はこの後半からが物語の本番だと思います。最後の、2人がシンクロしていく過程は圧倒的で、全く想像出来ませんでした。
段々と疎遠になっていっても2人の間には深い愛情があった。恋愛だけでなく、友情という愛情の形もあるのだと、この本から学ぶことができます。答えが出ない終わり方なのも色々な捉え方ができるので、この曖昧さが一つの魅力だと感じます。
「存在」すること、その意味は
少し長編の物語を読みたいと思った時に、題名に惹かれて読んだ作品です。恋人を殺されたことがきっかけで日常が狂い始めた香奈子と、妹の異常な行動を観て多重人格を疑っていた根本。次々と起きる悲惨な事件によって引き合わされた2人。なぜ2人は出会ったのか、そして存在しない彼女とは誰なのか、結末までページをめくる手が止まらない作品です。
私は最後まで展開が予想できず、一気に読んでしまいました。そして、タイトルに隠された本当の意味も分かります。確かに、彼女は存在しなかった。初めから。ラストのどんでん返しにはとても驚きましたし、衝撃的すぎて少し理解するのが大変でした。それくらい描写が細かく引き込まれます。ミステリー要素もありますが、人が存在するということはどういうことなのか考えるきっかけにもなりました。結末を知ったうえで、また読み返したいと思える作品です。