嵐山光三郎おすすめ本5選!芭蕉論は必読!

更新:2021.12.19

嵐山光三郎といえば、テレビの「笑っていいとも」に登場していた人という印象もある方もいるのではないでしょうか。実は、作家やエッセイストとしても活動しています。 今回は、そんな嵐山光三郎のおすすめ本を紹介します!

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作家、エッセイスト、編集者嵐山光三郎のプロフィール

1942年、静岡県浜松市に生まれ、國學院大學文学部国文科を卒業しました。1965年、平凡社へ入社。雑誌「太陽」の編集長を経た後に、作家活動に入りました。文筆だけでなく、テレビ出演もしており、フジテレビ「笑っていいとも増刊号」編集長としても出演経験があります。

趣味は料理で、その趣味を作品にした『素人庖丁記』や、文学者たちの暴食ぶりを描いた『文人悪食』『文人暴食』なども出版されました。

「昭和軽薄体」と呼ばれる、独特の文体による軽妙な風俗評論やエッセイで知られ、人気を博しています。
 

食を通し、文豪の本質に迫る

著者
嵐山 光三郎
出版日
2000-08-30

夏目漱石や中原中也などの文人の意外な「悪食」の紹介本です。文豪と食が好きな嵐山光三郎だからこその斬新な切り口で文豪たちの食卓と作品が描かれています。

単に教科書の中に書いてある文人たち。その文人の食生活、食の意識をたどることにより、どんな人物だったのか見えてくるでしょう。

多くの人の人生が様々ある中で、「食」は皆共通事項です。人間の三大欲求の1つでもある食欲は、人間の生きざまをあらわし、健康や精神に直結します。それぞれの食事がすでに物語になっており、作品と深い関係にあるのです。

夏目漱石から始まり、森鴎外から三島由紀夫まで37人の食と作品の関わりが700冊の文献を参考に書かれています。森鴎外の好物は、ご飯の上にあんこ入りの饅頭を割って乗せ煎茶をかけて食べる「饅頭茶漬」、泉鏡花は大根おろしも煮て食べるほどの病的な潔癖症という意外な「悪食」の数々。 

食意識、料理、店との関わりなどさまざまなエピソードを通し、文人たちの本質にせまる、珠玉の一作となっています。気に入った方は続編の『文人暴食』もどうぞ。

不倫・心中未遂・離婚・再婚。面白い明治人妻人生

著者
嵐山 光三郎
出版日
2007-08-23

夏目漱石に森鷗外、芥川龍之介の妻、与謝野晶子など、明治大正昭和の近現代の有名人妻53人の人生紹介の本です。どれも波瀾万丈、昔の人妻、女性の生き方を垣間見ることができます。

最近の女性は強い、昔の女性は静かで奥ゆかしかった、という価値観を根底から覆されます。この本に登場する女性は、皆方向性は違うながらも、たくましさやしたたかさを秘めており、圧倒されるでしょう。

ところどころに嵐山光三郎のスパイスを効かせた人生観が入っており、それも読みやすい要因の1つです。

文豪やその妻、昔の人妻に興味がある人だけでなく、倫理観や周囲の目線を気にしてうまく自分と向き合えない人にもおすすめの一冊となっています。1人あたり4ページほどと短くまとめられており、どこから読んでも楽しめるでしょう。

メロンのぬか漬け、空飛ぶステーキ、ジャムのおむすび……

著者
嵐山 光三郎
出版日
2008-01-07

厨房でふるまう、さまざまな料理を記した本。ただの料理本ではなく、素人が試行錯誤して編み出したレシピなので、面白そうで美味しそうな珍しい料理本になっています。

この本を開いてみると、まず目次に書いてあることから、驚くでしょう。

メロンのぬか漬け、空飛ぶステーキ、ジャムのおむすび……。おおよそ、普通の料理本には載っていないメニューの数々。嵐山光三郎のセンスを感じます。

字面だけ見ると美味しくなさそうに感じますが、読むと一転、食べてみたい、作ってみたいと感じさせるものばかり。

メロンのぬか漬けも、嵐山光三郎の探求心からできた逸品であり、同時期に作ったジャガイモの味噌漬け、昆布の粕漬、メロンのぬか漬けの中で一番おいしいため紹介されています。メロンの甘さはぬかによって消され、糖分とぬかが混ざり良い味になるのだそう。

思わずよだれが出てしまう一冊です。

芭蕉狂いが巡る、紀行エッセイ

著者
嵐山 光三郎
出版日

芭蕉狂いで有名な嵐山光三郎が松尾芭蕉の全紀行文の足跡を追いかけた紀行エッセイ集。芭蕉を心の師としてあおぐ著者が、平成10年より2年間かけて実地踏査した大作です。

中学3年の国語の授業で「奥の細道」に感銘を受け夏休みに日光、白河へとひとり旅を決行しました。大学時代には自転車で「奥の細道」の全行程を走破したといわれるほど、嵐山光三郎は芭蕉狂いとして知られています。

松尾芭蕉は、巡った先々でパトロンを獲得し人脈をつくる相当のやり手で、弟子は、豪商と医者と武士が多く、地方興行するときに役に立つ職業でした。

嵐山光三郎によれば芭蕉は危険人物であり、体力強健で食欲と名誉欲、そして意思も人一倍強かっただろうとしています。

そんな芭蕉を思い描きながら著者が巡る旅は、とても読み応えある一冊です。野ざらし紀行やかしま紀行、クライマックスの有名な奥の細道など、松尾芭蕉で有名な場所を嵐山光三郎が巡っています。

芭蕉の生い立ちも書いてあるのですが、芭蕉紹介だけでなく、その土地の美味しいものの紹介をしたり鹿島アントラーズの試合を観ていたり、自分も機会があれば行ってみたいと感じるでしょう。嵐山光三郎手描きの絵地図があるのも、微笑ましいです。

この本を読むと松尾芭蕉やそのゆかりの土地を身近に感じることができ、芭蕉をよく知らない人にも是非読んでいただきたいおすすめの一冊となっています。

老人アイドルを俗人として考える

著者
嵐山 光三郎
出版日
2008-09-30

俳聖としてあがめられ、数百二亙研究所や評釈集も、芭蕉を「求道の人」「詫びさびの俳人」とされている松尾芭蕉。しかしながら、周囲は危険人物だらけであり、芥川龍之介に「彼は実に日本の生んだ三百年前の大山師だつた」と言わしめるほどの人物でした。

本書は『悪党芭蕉』というタイトルをつけ、あえて俗人と同じレベルで考え直そうとした本です。

本の表題から挑戦的であり、内容もそれに沿い挑戦的なものとなっています。

芭蕉狂いといわれる嵐山光三郎だからこその膨大な知識、教養、捜査能力や行動力を駆使し、芭蕉の人生と俳句の関係性を暴き、弟子たちとの確執と晩年の孤独、焦燥を見事に表現しました。

「古池や 蛙飛び込む 水の音」など、誰でも知っている句への驚きの切り口や実況のように描かれる解説の面白さ。知れば知るほど、芭蕉の凄さが見えてきます。

嵐山光三郎は、この本を書き終えて、ますます芭蕉捜査への意欲をかきたてられ、じっとしていられないと言いました。同じように、この本を読むことでますます芭蕉について知りたくなることでしょう。

松尾芭蕉や食を通して昔の人物像などを考察しています。それが好きな人はもちろん、そうでない人も、短編集が多く気軽に読める本となっているため、おすすめです。

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