愛は時間をかけ育つから、自覚するときには心の準備が出来てます。でも恋は突然訪れるから、平穏さがないのです。それでもいつだって私達は恋に落ち、愛を想うのです。悲しい恋の結末を迎える恋愛漫画をベスト5で紹介します。
第一部から第六部までかけて、それぞれの主人公の恋愛と悲劇と最終話の大団円を描いた、名前の通り吉原の女郎のお話です。
朝霧は女郎の母を持ち、火のついた煙管を押し当てられるなどの虐待を受け育ちます。やがて母はお歯黒どぶに身を投げて死に、朝霧は物語の舞台である山田屋に売られてきました。
小柄で地味な幼い顔立ちの朝霧ですが、皮肉なことに母に虐待を受けた火傷の跡が「熱を帯びると身体に赤い斑点が浮かぶ、花が咲く」と人気女郎になる理由の1つになりました。
ある日に妹分の女郎/八津と朝霧は縁日に行き、草履の鼻緒が切れてしまいます。それを助けたのが半次郎。草履の鼻緒が半次郎の染めたものであったことが縁となり、会って間もない2人は恋に落ちます。
「花魁道中をやってないから、やりたかった」そう半次郎に呟く朝霧。
ある悲劇から、半次郎は朝霧の上客/吉田屋を殺し、指名手配されます。手配書がまわる最中、会いにきた半次郎に「花魁道中をさせてやる」と言われ、半次郎の作った着物を羽織り2人だけの花魁道中を。
それはこのあと悲劇が待つ2人にとって、悲願の花魁道中でもあり、そしてさながら祝言のようでした。
- 著者
- 斉木 久美子
- 出版日
- 2010-02-10
各部で主人公が異なり、どの主人公も魅力的です。地味とか、容姿に恵まれてないと設定されている女達も、やっぱりどこかしらの愛らしさや、華やかさがあります。
一番印象的だった話は、第三部「霧里」。
駆け落ちをした両親は霧里を産みましたが、父は家に寄りつかなくなりました。母は執念で弟/東雲を産み、病んだ母はなお一層美しく、美しさと幸せとは無縁であることを幼い霧里は学んだのです。
母がある日、自殺します。動揺する霧里と東雲の元に帰宅した父。子供たち以上に動揺し狂乱した父は、霧里を強姦し東雲に切りつけ逃走しました。
父の残した借金のカタに姉弟ともども売られそうになりますが、霧里はなんとか自分だけにと懇願し、東雲を養子に出して自分は色街に入るのです。身の危険も顧みずに父から霧里を守り顔に傷を作った東雲は、霧里にとって大切な宝物になったのです。
時流れ、霧里は島原の遊郭で評判になりますが、諸事情から江戸に引っ越すことに。いい人のいない霧里にとって寂しいのは、東雲=半次郎に会えなくなること。半次郎は腕のよい染物職人になっていました。
姉である霧里の美しさを「女性の美的標準」として成長しつつあり、評判の美男子に成長しているにも関わらず、半次郎は身持ち固く暮らしていました。
やがて半次郎の元に、縁談話が持ち込まれ……?
どうして第一部で、朝霧の上客/吉田屋を半次郎が殺したか。第一部の全ての謎が、縺れた糸をほぐしていくようにわかります。せめてものこの話の救いは、霧里が最後の最後には、半次郎に会えたことでしょうか。
最終話を読みおわったあと、またもう一度1巻から読んでみると、更にお話の符号を楽しめます。悲しめます。
華麗であること、豪華であること、絢爛であること。それらを何よりも誇りにしていた吉原の女達の意気込みが伝わってくる「泣ける漫画」です。
彼氏いない歴17年の女子高生リイコは、変な格好の謎の青年ガク・ナミキリに出会います。好きな人にふられ、幼馴染の少年/浅元ソウシにからかわれる毎日を過ごしていたリイコ。ガクに欲しいものを聞かれ「彼氏!」と叫びます。
ある日届いた荷物はなんと、人間にしか見えない精巧なロボット。男前で優しく賢いそのロボットに、リイコは「ナイト」と名付けました。ナイトはリイコの通う学園に、組織力(!?)で転入してくるのです。
実は幼いころからリイコに恋をしていたソウシと、リイコとナイトは三角関係になってしまいます。最終話でリイコの隣にいるのは、ナイトでしょうか?ソウシでしょうか?
- 著者
- 渡瀬 悠宇
- 出版日
- 2003-10-25
日本のみならず台湾でも実写化された作品。対象年齢はどちらかというと、ティーン向けです。サクランボのような甘酸っぱさがあるお話。漫画から、実写化されたドラマを楽しんだ人もいるでしょう。逆に、ドラマや映画から、漫画を読んだ人もいるでしょう。
ドラマ化された際の日本版でのキャストは、ナイトは速水もこみち、ソウシは水嶋ヒロでした。キャストの人気を思うと「ドラマは全部観たけど原作は見てないよ」な人も多いでしょうね。
私のクラスには心惹かれる人がいない……そんな貴女が夢見る恋が、ここに詰まってますよ。
速水もこみちが出演した作品を見たい方は、こちらの記事もおすすめです。
速水もこみちの実写化した映画・テレビドラマの役柄を原作と照合!【出演作品一覧】
舞台は江戸時代。男の子のみかかる赤面疱瘡という伝染病が流行します。罹患した男の子はほぼ全員死に至るという恐ろしい病のため、成人年齢まで成長できる男の率がとても低くなってしまいました。
世の中の男女比率に変化が起き、主だった職業の全てを女性が担うことに。男性は大切に家の奥で育てられる、いわゆる箱入り息子状態になる有様です。市井の男達は、一夜を共にすることで相手女性からお金を貰えたり、感謝され拝まれたりする日々。吉原遊郭も、女がお金で女装男性を買う場所に様変わりします。
女将軍が政務を執るようになったことから、大奥にも変化が。見目麗しく着飾った男達を前に、女将軍が今宵の相手を選びます。代々の女将軍達を中心とした、男女の愛憎という名の政治劇が繰り広げられる場所、それが大奥なのです。
- 著者
- よしなが ふみ
- 出版日
- 2005-09-29
このような男女大逆転の驚きの設定ですが、泣ける場面はいくつもあります。
イチ推しとしては、身体にも知性にも障害を持つ(と周囲に言われている)七代将軍、家重の話でしょうか。
まず家重は、自身が何も持たないことを知っています。無知の知をしり、立ち位置を把握しています。ですので頂点の権力を手に入れました。のちに暗愚無能な将軍と呼ばれる七代将軍家重の治世の始まりです。
家重は自信が容姿にも人望にも恵まれていないことを知っています。だから正室を迎えたときは不安さが募りました。しかし正室は、優しいおおらかな人でした。家重を「ふくふくとして可愛らしい」「おそろいのあばた面や」「仲良うしましょう」
政略結婚でこんな風に言われたら誰でも「いい人で良かった」と安心するでしょう。そして短くても穏やかな仲睦まじい日々を過ごしていたのでしょう。なのに正室は自分を1人残して亡くなりました。そのことを共に泣いてくれた、正室の侍従を無理矢理に将軍の権力で側室にして……。
正直に言って恋愛要素に関しては、映画化もされた三代将軍家光のお話や、五代将軍綱吉の話よりも地味な印象が拭えません。ですが家重が絡むお話は、ヒューマンドラマとしての本筋の素晴らしさに、こういった恋愛要素も考えさせられてしまうのです。
色々な1つ1つのエピソードにも、泣きどころの多い『大奥』は2017年現在まだ完結していません。最終回はどう魅せてくれるのだろう?と期待が膨らむ一作です。
楽譜通りに弾くことしか知らなかった天才ピアニストが、個性的で明るいヴァイオリニストの少女と出会うことによって、自分らしい音楽を模索していくというストーリー。いくつもの壁を乗り越えながら、自分の音楽にまっすぐ向き合う登場人物の姿に、胸を動かされる作品です。
- 著者
- 新川 直司
- 出版日
- 2011-09-16
主人公の有馬公生は母親の厳しいレッスンを受け、小学生で数々のコンクールを総なめにしてきた天才ピアニスト。周りからは「ヒューマンメトロノーム」と揶揄されるほど、楽譜通りに完璧な演奏をします。
しかし母親の死をきっかけに演奏中ピアノの音が聞こえなくなり、恐怖から弾けなくなってしまいます。そんなとき、天真爛漫なヴァイオリニスト・宮園かをりと出会うのです。かをりの音楽にまっすぐに打ち込む姿勢に心を打たれ、公生は少しずつ音楽に向き合うようになっていきます。
この作品では公生を軸として、演奏者たちが音楽を通してお互いの心を支えあっています。公生の演奏に魅了され、公生を超えることを目指すライバルたち、そんな彼らの思いに刺激を受け、ピアノに向き合う公生。恐怖に押しつぶされそうになりながら、音楽を通してお互いを支えあう姿に心が打たれます。
また、かをりと公生がお互い支えあう様子は魅力的です。公生はかをりの自由な演奏に心を奪われ、徐々にどんな時もまっすぐで前向きなかをり自身にも好意を持ち始めます。しかしかをりは公生の親友の渡に恋をしているため、公生はかをりへの思いを隠し続けます。
そんなかをりは、ひとつだけ「秘密」を抱えていて……。公生は明るさの裏に隠されたかをりの「秘密」に向き合い、最初は過去のトラウマから恐怖を抱きつつも彼女を支えていきます。その姿を見ていると、切ない思いで胸がいっぱいになります。
ラストの場面は感動的。印象的なタイトルに隠された切ない意味が明らかになります。好きなことに一生懸命打ち込むことの大切さを教えてくれる感動青春漫画、ぜひ読んでみて下さい。
富裕層の一人娘ナタリーは、捨て子のフランシスと共に育ちます。やがて2人は愛し合うようになり結婚したいと望みますが、親戚は身分違いの恋だと反対。両親は2人の結婚を認めていましたが事故で亡くなってしまいます。
思い詰めた2人は崖から海に飛び込み心中を図りますが、ナタリーは助かってしまい、フランシスは見つかりませんでした。
時は流れ、故郷を離れたナタリーは童話作家として生活していました。偶然に、無事に生き延びていたフランシスと再会します。フランシスはショックから記憶喪失になっており、ナタリーのことを思い出せません。そして、既に別の女性との間に2人の子が産まれ幸せに暮らしていたのです。
フランシスがナタリーのことを思い出したのもつかの間、フランシスは交通事故に合い亡くなってしまいます。後を追ってフランシスの妻も自殺し、ナタリーは2人の子供を引き取って育てることに。
母親を恋しがる2人の子供のうち5歳の少年には、ナタリーは「フランシス」と名付けます。
お嬢様育ちのナタリーは慣れない子育てに翻弄しますが、なんとか3人で仲良く生活出来るようになっていきます。少年フランシスが幼いうちは、自分の子供のように愛していたナタリー。今は亡きフランシスの年齢に近づくにつれ、男性として見ている自分に気づき、苦悩します。
そんなナタリーに対して、成長したフランシスは……。
- 著者
- 一条 ゆかり
- 出版日
少女漫画界の大御所の中の大御所、一条ゆかりの初期作品です。悲劇のあとに悲劇が起こり、また更なる悲劇がという、発刊された昭和のこの年代においての、王道のラブストーリーです。
一条ゆかりといえばこの『砂の城』と『有閑倶楽部』が代表作です。『有閑倶楽部』の初期の頃の絵柄に、『砂の城』の絵柄の面影が味わえます。ご本人も大御所の風格と、姉御肌の気さくさが混じり合ってるかたです。数々の著名な漫画家との交流が、やりとりが、面白くて目が離せない魅力ある人ですね。
色々な盛り込み要素が素晴らしいと、当時とても話題をさらった作品です。連載された当初は年代が年代なだけに、海外旅行もまだ高かったころですから「舞台はヨーロッパ」「金髪碧眼の美少女」「身分差の恋を反対される」「年の差婚」「でも最後は悲しくも主人公の笑顔で」この年代の少女が胸をときめかせる要素が沢山のストーリーだったのです。
なので刊行されてからしばらくの期間をおいてなお、外国ではなくて日本のお話に設定を少し変えて、お昼のテレビドラマ番組になりました。
読めば読むほどに画面構成や人物描写、背景の描き込み、どこをとってもきちんとしています。
一般の書店や、古本屋さんでは見つけづらい年代の本です。ネットを通じたほうが確実にお手元に届きます。「昔読んでた!」というかたも、メディアに漫画があふれてる今だからこそ、あえてこの年代の漫画の面白さを純粋に感じたいかたも、一読の価値ありでしょう。
どこまでも苦悩する主人公ナタリーの、最後の薔薇の微笑みを見たい、涙したいかた。そして読んで涙を流したその後は、ドラマ版の『砂の城』も楽しみたいかた。そんな貴方におすすめです。