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ジャーナリスト、青木理の本5冊。安倍政権から徳田虎雄まで。

更新:2017.4.29 作成:2017.4.29

骨のあるジャーナリスト。最近はほとんど見なくなってしまったような気がしますが、青木理は現代日本における数少ない骨のあるジャーナリストの一人です。政治を中心に現代日本に鋭く切り込む青木の著作には注目すべきでしょう。

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気鋭のジャーナリスト、青木理

青木理、最近はテレビ番組のコメンテーターなどとしても見かけるこの人物ですが、いったい何をして、どんな本を書いているのでしょうか?

彼は慶応大学卒業後、共同通信社で新聞記者として働きました。1995年に起こった震災、オウム事件などの一連の事件における警察の行動に、密着して取材を行っています。この仕事は、まさに彼の原点であるとともに、その後の著作に大きな影響を与えているといえるでしょう。

その後、新聞記者を辞めた青木理は、フリーのジャーナリストとして活躍。様々な媒体で記事を執筆しています。そんな中でも、講談社ノンフィクション賞を受賞した『絞首刑』(2009年)は大きな注目を集めました。

その後も日本社会に切り込んでいくような鋭いジャーナリズムに基づいて、数多くの記事を執筆するとともに、著作を刊行しています。

日本政治の裏側に迫る

2016年、青木理は現代日本政治の核心に迫るような衝撃的な1冊を世に問います。それがこの『日本会議の正体』です。日本会議とは何か、どのような勢力が現代日本の政治で勢力を持とうとしているのか。そんな現代日本の政治に関心を持つ読者に、筆者は直球で答えようとしています。

本書を一読すれば、現政権に対して批判的な視線を保ち、その政治的バックボーンを常に問い返そうという青木理の強い意志が、にじみ出ているのが分かるでしょう。
著者
青木理
出版日
2016-07-09
日本会議とは、憲法改正などを訴え活動する保守的政治集団です。現代日本においては政治を中心に、その影響力は日に日に高まっているともいわれています。

青木理は、そのような日本会議に正面から迫るのです。丹念な聞き取りなどを基にしてつづられる本書は、日本会議の起源からその現在における具体的な姿にいたるまでを、はっきりと浮き彫りにします。

安倍首相の隠されたルーツとは

1960年の日本は、安保改定をめぐって揺れていました。その時の総理大臣は、岸信介。2017年現在の総理大臣安倍晋三の祖父です。様々な評者が安倍と岸の関係性について論じており、その結びつきは明白といえるでしょう。

一方、本書で青木理は、岸ではない安倍のルーツを明らかにしようと試みます。それは、祖父・寛です。「反戦」すら訴えたと言われるその姿は、ある意味岸と対照的といえるでしょう。筆者は、そんな隠された安倍のルーツを本書で解明していきます。
著者
青木理
出版日
2017-01-20
本書が注目するのは、祖父・寛だけではありません。世間的にも知られている安倍の父にして自民党の有力政治家であった安倍晋太郎についても、筆者はページを割いて論じています。

晋太郎は「反戦」を訴えた寛を尊敬していた。そんな一般的イメージとは異なる晋太郎の姿を青木理は明らかにしています。安倍首相のルーツには実は「反戦」があった。彼はそれを本書で示そうと試みているのです。

「絞首刑」から死刑制度そのものを問う

作者紹介でも述べたように、本書は講談社ノンフィクション賞を受賞し、ジャーナリスト・青木理の名前を一躍有名にしました。青木の丹念な取材に基づくノンフィクションの原点はここにあるといえます。

『絞首刑』というタイトルは衝撃的です。タイトルを見て、一瞬目を背けたくなるかもしれません。しかし、論争的な死刑制度の本質に迫る作品といえるので、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
著者
青木 理
出版日
2012-11-15
本書で青木理は、実際に起きた5つの事件を取り上げ、それぞれを丹念に取材し、死刑囚に対する取材までをも行うことによって、その実態を異常なリアリティのもとで明らかにしています。

死刑は廃止すべきか、それともこのまま維持すべきか。それは社会的にも意見の分かれる大きな問題です。しかし、どちらの立場にたつにせよ本書は手に取る価値があるでしょう。死刑制度とは何か、という問いに対する青木理なりの解答案がここに示されています。

あなたは徳田虎雄を知っていますか?

徳田虎雄、その名前を聞いてすぐに「あの人のことか」と言える人は決して多くはないでしょう。医療法人・徳洲会の理事長であり、政治家としても活躍したその人物について、筆者が語ります。

徳田はALSという難病を患っています。ALSとは神経に障害が生じ、全身の筋肉が萎縮し、筋力低下も生じてしまう病気です。徳田は2002年からこの病気と闘っています。人間と病気、それもこの本の大きなテーマといえるでしょう。
著者
青木 理
出版日
2013-11-06
2013年に、徳田が理事長を務める徳洲会関係者の政治的活動をめぐって、公職選挙法違反の疑いが持ち上がります。徳田は病気だけでなく、この事件という脅威にもさらされることになりました。

青木理は、このような過酷な状況の中を生きる徳田に、持ち前の丹念な取材力を発揮して迫ります。難病に苛まれる病院理事長。その姿が本書においてはリアリティあふれる筆致で描かれています。

朝日新聞は「戦犯」か?

2014年、日本を代表する新聞社である朝日新聞社は「慰安婦報道」をめぐって大きく揺れます。朝日新聞の「慰安婦問題」をめぐる報道の中に「捏造」があったことが指摘されたのです。

これは、朝日新聞が1980年代以降に取り上げた「吉田証言」と呼ばれる慰安婦の強制連行を示す証言が虚偽であったことが判明したもので、朝日新聞は2014年にこれを撤回し、謝罪会見をすることになります。当然、朝日新聞に対しては保守派からの批判が強まりました。
著者
青木 理
出版日
2014-12-17
青木理は、保守派から、このような一連の慰安婦報道における「戦犯」というバッシングを受けた朝日新聞社の報道が、本当はいかなるものであったのか、それを丹念な取材をもとに明らかにします。本書は、一方的批判に対するジャーナリストとしての誠実な「抵抗」の試みです。

「歴史修正主義」は、今この国の歴史が直面している大きな問題です。「本当の」歴史はいかなるものであったのか。そして「事実」を明らかにすべき新聞社はどのような報道をすべきなのか。その大きな問題が問われているのです。青木は、本書を通じて、朝日新聞が出した答えとその意味に迫ろうとします。「歴史修正主義」の一方的な攻勢にあらがうために。そのためには青木のようなジャーナリストが展開する「抵抗」は大きな意味を持つといえるでしょう。

青木理、彼ほど「反骨」という言葉が似合うジャーナリストが今この国にいるでしょうか。政治や社会的な問題に切り込み、そして鋭くその本質を示す。しかも丹念な取材に基づいた青木の文章は、読む人に対して強い説得力を持つものだといえます。